学校へ行くとき、あなたは道路を歩きます。買った品物はトラックにのって道路をやって来るし、火事のときの消防車も、けがをしたときのきゅうきゅう車も、道路を走ってかけつけます。毎日ふんでいるのに、たぶん一度も考えたことのない問いがあります。「この道は、だれの物?」。空や海とちがって、道路は自然にできた物ではありません。だれかが作り、だれかがお金を出し、だれかが直し続けています。そして じつは、日本中のすべての道路に、持ち主(管理する人)が一本ずつ決まっています。この記事では、いちばん身近なのに いちばん知られていない「道路」のしくみを、足もとからたどっていきます。
まず、「道がある」というのは どういう状態なのかを考えてみます。アスファルトでほそうされる前の道は、土の道でした。土の道は、雨がふれば ぬかるんで、車輪の通ったあとが みぞになり、かわけば ほこりが まい上がります。ほうっておくと、道はどんどん通りにくくなっていくのです。だから昔の人は、石をしいたり、もり土をしたり、橋をかけたりして、通れる状態を人の手で作ってきました。地域の発展につくした人の話に、用水路とならんで「道を切り開いた人」がよく出てくるのは、そのためです。
つまり、道路は「あって当たり前の物」ではなく、作って、守り続けて、はじめて道の形をたもっている物なのです。ここをおさえると、次の問いが自然にわいてきます。守り続けるには、人手とお金がかかる。では、それを出しているのは だれなのでしょうか。
答えはこうです。日本の道路は、法律で種類が決められていて、種類ごとに「管理する人(=持ち主のように世話をする役所や会社)」がちがいます。おおまかに分けると、次の4種類です。
| 道の種類 | 管理する人 | 日本中の長さ(およそ) |
|---|---|---|
| 高速道路 | 高速道路の会社 | 1万km |
| 国道 | 国や都道府県 | 6万km |
| 都道府県道 | 都道府県 | 13万km |
| 市町村道 | 市・町・村 | 103万km |
この表には、びっくりすることが2つかくれています。1つ目は長さです。日本の道路をぜんぶつないで一本にすると、およそ123万km。地球を30周できるほどの道が、この せまい国土に しきつめられているのです。
2つ目は、市町村道のけたちがいの多さです。123万kmのうち103万km、つまり道路10kmのうち8km以上が市町村道。テレビのニュースに出てくるのは国道や高速道路ばかりですが、あなたの家の前の道、通学路の道、公園のよこの道──名前もついていないような身近な道は、そのほとんどが市・町・村が管理している市町村道です。道路の世界の主役は、じつは いちばん細い道たちなのです。
「種類がちがう」と言われても、見た目はどれも同じアスファルトです。でも、見分けるための目印がちゃんと用意されています。道ばたに立っている、番号の書かれた青い標識です。
国道の標識は、その形から「おにぎり」というあだ名でよばれています。番号は1号から507号まであります。ただし、59号から100号までは「欠番」といって、番号だけあって道がありません。昔、国道の決め方が変わったときのなごりで、番号がとんでいるのです。
国道1号は、東京と大阪をむすぶ道です。そのルートの多くは、江戸時代に人びとが歩いた東海道に重なっています。そして東京の日本橋は、国道1号をふくめて7本の国道の出発点。江戸時代に五街道の起点だった場所が、今も国道の起点のまま受けつがれているのです。道路の番号をたどると、県の地図だけでなく、歴史まで見えてきます。
こんどは、道路そのものを よく見てみましょう。じつは、ほとんどの道路はまん中が はしより少しだけ高く作られています。ちょうど、かまぼこを ねかせたような形です。平らに見えるのは、かたむきが とてもゆるやかだからです。
なぜ わざわざ高くするのか。雨水を道のはしへ流すためです。雨がふると、水はかまぼこの坂を伝って両はしへ転がり、はしにあるみぞ(側溝)に集まって、下水道や川へ流れていきます。もし道路がまっ平らだったら、水は行き場をなくして道のまん中にたまり、車はすべり、ほそうの下に水がしみこんで、道はあっというまに いたんでしまいます。「水たまりが道のはしにできやすい」のは、ぐうぜんではなく設計なのです。
白い線、ガードレール、カーブミラー、街路じゅ。これらもぜんぶ、ばらばらの飾りではなく「道路の一部」として、道路の管理する人が取り付けて、点検しています。
道路のはたらきは、車と人を通すことだけではありません。道路の下をのぞいてみると、もう一つの顔が見えてきます。
家々に水をとどける水道管も、使った水を運び出す下水道管も、ガスの管も、ほとんどが道路の下にうめられています。管は人の土地の下には かってに通せないので、みんなの物である道路の下が、くらしをささえる管の「通り道」として貸し出されているのです。道路にマンホールのふたがたくさんあるのは、下にうまった管を点検するための出入り口だから。道路は、まちのくらしを入れて運ぶ大きな いれものでもあるのです。
「この前ほったばかりの道を、また工事でほっている」と大人がこぼすことがあります。あれにも理由があって、水道管は水道局、ガス管はガス会社というように、管の持ち主がそれぞれちがうからです。別の持ち主が、別の時期に、自分の管を直しに来る。道路が「みんなのいれもの」であるがゆえの、ちょっと不便な一面です。
アスファルトの道路は、完成した日から少しずつ いたんでいきます。重いトラックが何万回も通れば、わだち(タイヤの通り道のくぼみ)ができる。夏の熱と冬の冷えをくり返せば、ひびが入る。ひびに雨水がしみこむと、ある日ぽっかりと穴があきます。この穴は「ポットホール」とよばれ、自転車やバイクには本当に危険です。
だから道路の管理する人は、道路パトロールカーという車で受け持ちの道を見回り、ひびや穴を見つけては直し、消えかけた白線を引き直しています。雪の多い地方では、夜中に除雪車を走らせるのも道路を管理する仕事のうちです。
この見回りと修理には、たくさんのお金がかかります。そのお金のもとは、みんなの家の人がおさめている税金です。道路を「タダで通れる」のは、通るたびにはらうかわりに、みんなで先にお金を出し合って作り、直しているから。高速道路だけは通るときに料金をはらいますが、あれは「使う人が直すお金をはらう」という、もう一つのやり方なのです。
新しい道路が通ると、まちには何が起きるでしょうか。トラックが速く、たくさん走れるようになると、品物の運ばれ方が変わります。工場は「高速道路の出入り口の近く」に建てられるようになり、大きな店は「広い道ぞい」にならびます。地図で工場や大型店の場所をたしかめると、太い道路にそって、まるで実のように ぶら下がっているのがわかります。道路は、まちの形そのものを決めているのです。
そして、道路のありがたみが いちばんはっきりするのは、使えなくなったときです。大きな地しんのあと、いちばん先に行われる仕事の一つが、道路の上のがれきをどけて、通れる道を作ること。たすけに来る人も、水も食べ物も毛布も、ぜんぶ道路の上を運ばれてくるからです。災害にそなえる話のかげには、いつも「道路が生きているか」という問題がかくれています。道路は、ふだんは くらしの土台、いざというときは命をつなぐ線になるのです。
「国道は、ぜんぶ国が直している」とはかぎりません。国道のうち、国が直接管理しているのは交通量の多い大事な区間で、それ以外の区間は都道府県が管理しています。「国道なのに、直しているのは県」という道は、めずらしくありません。名前は「種類」を表していて、「だれが世話をするか」とは少しずれることがある、と覚えておきましょう。
「番号の標識がない道は、だれの物でもない」も、まちがいです。標識が立っていない細い道のほとんどは市町村道で、ちゃんと市・町・村の台帳にのっています。また、団地の中の通路や店のしき地の中の道のように、会社や個人が持ち主の「私道」もあります。どんな道にも、必ずだれかの管理がついているのです。
標識の形のかんちがいにも注意。おにぎり(丸みのある さかさ三角)が国道、六角形が都道府県道です。ドライブ中に見分けられると、ちょっとした自まんになります。
① 通学路で標識さがし。おにぎり型と六角形、どちらが見つかるでしょうか。番号もメモしてみましょう。見つからなければ、あなたの通学路はほぼ市町村道だということです。
② マンホールのふたを読む。ふたには「おすい(汚水)」「うすい(雨水)」「水道」「ガス」などの字がほってあります。家から学校までに、何種類の管が足の下を通っているか数えてみてください。
③ 雨の日に、水たまりの場所を見る。水たまりは道のまん中と はし、どちらに多いでしょうか。かまぼこ型の答え合わせができます。
④ 道路工事のかんばんを見る。工事中のさくには「発注者:○○市」「○○県」のように、たのんだ人の名前が必ず書いてあります。その道の管理する人の名前が、そこでわかります。
Q1 道路の種類を、管理する人のちがいで3つ以上あげてください。
A 国道(国や都道府県)・都道府県道(都道府県)・市町村道(市・町・村)、そして高速道路(高速道路の会社)です。日本のすべての道路に、管理する人が決まっています。
Q2 日本の道路のうち、いちばん長いのはどの種類ですか。
A 市町村道です。およそ123万kmある日本の道路のうち、およそ103万km、つまり8割以上をしめています。家の前の身近な道は、ほとんどがこれです。
Q3 「おにぎり」とよばれる青い標識は、何の道のしるしですか。
A 国道のしるしです。丸みのある さかさ三角の形に番号が書かれています。六角形の標識なら都道府県道です。
Q4 道路のまん中が、はしより少し高く作られているのはなぜですか。
A 雨水を道のはしの側溝へ流すためです。平らだと水が道にたまって、車がすべったり、ほそうの下にしみこんで道をいためたりしてしまいます。
Q5 道路の下にうめられている管を、2つ以上あげてください。
A 水道管・下水道管・ガス管などです。マンホールは、これらを点検するための出入り口です。
4年生の社会科では、水道・電気・ガス・ごみなど「くらしを支える仕組み」を順に学びますが、それらすべての土台でありながら単元として扱われにくいのが道路です。本文では「この道はだれの物か」という問いを入り口に、道路法上の区分(高速道路・国道・都道府県道・市町村道)と管理者、排水のための横断勾配、占用物件としての地下埋設管、維持補修の財源という骨組みを、学年相当の言葉に置き直して整理しました。
数字はいずれも概数です。道路延長は国の道路統計に基づくおよその値(実延長・合計約123万km、うち市町村道が8割超)を用いています。また表では簡略化のため高速道路の管理者を「高速道路の会社」としましたが、正確には資産を国の機構が保有し、会社が管理運営を行う仕組みです。国道も、国が直接管理する指定区間とそれ以外(都道府県等が管理)に分かれます。
散歩や車での移動は、そのまま教材になります。「おにぎり標識の番号さがし」「マンホールの文字読み」「工事看板の発注者さがし」は、子どもが標識・路面・地下という3つの層で道路を見直すきっかけになります。身近な道の持ち主を調べたくなったら、市町村の道路課のウェブサイトに認定路線の情報があります。