4年 社会 くらしを支えるガス

くらしを支えるガス ── 止まるときは、だれかが止めるのではなく自分で止まる

水道・電気・ごみとならぶ、四つめのライフラインがガスです。火を出すものなのに、どうして家の中まで引きこんで平気なのか。その答えは、安全のしくみが「人がかけつける」ではなく「機械がひとりでに止まる」という形で作られているところにあります。

ガスは、どこで使われているか

電気とちがって、ガスを使っているものは家の中に多くありません。数えてみると、たいていこれだけです。

場所ガスを使うもの何のために
台所ガスこんろ調理の火
おふろ・洗面所給湯器お湯をわかす
部屋ガスファンヒーター暖ぼう(地域による)
まちの中工場・パン屋・銭湯・給食室高い温度を長時間出す

数は少ないのに、ガスが止まると生活はかなり困ります。ガスが受け持っているのは「熱」だからです。食事を作る、おふろに入る、冬に体をあたためる。どれも電気でもできますが、電気で同じ熱を出そうとすると時間も電気代もかかります。とくに工場やパン屋のように、強い火を何時間も出し続けたい場所では、今もガスがよく使われています。

だから災害のあとの新聞で、「電気は3日、水道は1週間、ガスは1か月」といった復旧の日数がならんでいるのを見たら、ガスがいちばん最後になるのがふつうだと覚えておいてください。理由はあとで出てきます。

二種類のガス ── 管で来るか、ボンベで来るか

「ガス」とひとことで言いますが、日本の家に届く方法は大きく二つに分かれます。

くらべる点都市ガスプロパンガス(LPガス)
届き方地面の下のガス管家の外に置くボンベ
多い場所都市部・住宅の多い地域山間部・家がまばらな地域
空気とくらべた重さ軽い(上にたまる)重い(下にたまる)
警報器をつける高さ天じょうの近くゆかの近く

表の下の二行が大事です。同じ「ガス警報器」でも、都市ガスの家とプロパンの家では取りつける高さが逆になります。都市ガスの主な成分はメタンで空気より軽いので、もれると天じょうにたまります。プロパンは空気より重いので、ゆかをはうように広がります。どちらか一方だけを知っていると、引っこした先で警報器を見て「変な所についている」と勘ちがいします。

なぜ地域で分かれるのかというと、ガス管を地面の下に通すには長い工事が必要だからです。家が遠くはなれている地域では、一軒のために何キロも管を引くより、ボンベをトラックで運んだほうが安く早い。同じサービスでも、人がどれくらい集まって住んでいるかで届け方が変わるのは、水道やバスとも共通する考え方です。

都市ガスは、外国の海の底から来ている

都市ガスのもとになる天然ガスは、その大部分を輸入にたよっています。ではどうやって海をこえて運ぶのでしょうか。気体のままでは、船いっぱいに積んでも少ししか運べません。

そこで使うのが、冷やして液体にする方法です。天然ガスをマイナス162℃まで冷やすと液体になり、体積がおよそ600分の1になります。これを液化天然ガス(LNG)と呼びます。

気体のまま 600L ぶんの天然ガス

 ↓ −162℃まで冷やす

液体になると 1L

= 同じ船で 600倍 運べる

まるい大きなタンクを背負ったような形のLNG船が、産ガス国から日本の港まで運んできます。港には受け入れ基地があり、そこでまた温めて気体にもどし、においをつけてから、地下のガス管でまちへ送り出します。

においの話をしましょう。天然ガスにもプロパンにも、もともとにおいはありません。無色無臭のまま配れば、もれても気づけない。そこでガス会社は、玉ねぎがくさったようなにおいの成分をわざと混ぜています。「ガスくさい」と言うときのあのにおいは、天然のものではなく人が安全のために足したものなのです。

ガスの道すじ

ここまでを一本につなげると、こうなります。

外国のガス田(海の底)

 ↓ −162℃で液体に

LNG船

 ↓

受け入れ基地(気体にもどす・においをつける)

 ↓ 太いガス管

整圧器(ガバナ)で圧力を下げる

 ↓ 細いガス管

家のガスメーター → こんろ・給湯器

電気の道すじが「発電所→送電線→変電所→変圧器→家」だったのを思い出してください。取り出す場所はうんと遠く、そこから細くしながら家まで届けるという形はそっくりです。電気の変電所にあたるのが、ガスでは整圧器です。まちかどにある「ガバナ」と書かれた緑色の小さな箱がそれで、通学路で一度は通りすぎているはずです。

ただし、決定的にちがう点が一つあります。電気の電線は空を通り、ガスの管は地面の下を通ります。これがのちのち、復旧の早さの差になってきます。

止まるときは、自分で止まる

この記事のいちばん大事なところです。地震が起きたとき、ガス会社の人が一軒ずつ走ってきて元せんを閉めて回るのでしょうか。そんなことは、できません。

かわりに働くのが、各家についているマイコンメーターです。ガスメーターの中に小さなコンピュータが入っていて、次のようなときに自分の判断でガスを止めます。

つまり安全のしくみが、人がかけつけるより先に、家の外側で自動的に終わっているのです。「だれかが止めてくれる」ではなく「もう止まっている」。ここが、火を使うものを家の中まで引きこんでも成り立つ理由です。

そしてもう一つ、知っておくと役に立つことがあります。地震のあとガスが出なくなっても、それは設備がこわれたのではなく、メーターが止めただけのことがよくあります。メーターの表示ランプが赤く点めつしていたら、近くにある復帰ボタンを押して約3分待つと、自分で使えるようにもどせます。ただしガスのにおいがするときは、ぜったいに復帰させてはいけません。その判断だけは、必ず大人がします。

ガスのにおいがしたら

やることの順番が決まっています。あわてて逆をやると危険なので、順番ごと覚えてください。

順番やることやってはいけないこと
1火を消す新しく火をつける
2窓とドアを開けるかんきせんを回す
3ガスの元せんを閉めるそのまま使い続ける
4外に出て、大人とガス会社に連らくする家の中で電話やインターホンを使う

2と4の「やってはいけないこと」が意外に思えるかもしれません。かんきせんも電気の照明も電話も、スイッチを入れた瞬間に中でごく小さな火花が出ます。ガスがたまった空気の中では、その火花で十分に火がつきます。「電気のスイッチを入れる=火をつける」と同じことだと考えてください。窓を開けるのは手で押すだけなので、火花が出ません。だから窓が先なのです。

なぜ復旧にいちばん時間がかかるのか

災害のあと、電気は数日でもどることが多いのに、ガスは数週間から一か月かかることがあります。理由は三つあります。

  1. 管が地面の下にある。どこが折れたのかを、上から見ただけでは分からない。掘って調べるしかない。
  2. もれたまま送ると、火事になる。電気は通してみてだめなら止めればすみますが、ガスはもれた状態で流すと大事故になる。だから安全を確かめる前には絶対に送れない。
  3. 一軒ずつ人が確かめる必要がある。送り出す前に地域のすべての家をまわって元せんが閉まっているかを点検し、送ったあとにもう一度まわって火がつくかを確認する。

三つめが大きく効いてきます。まちの中に何万軒もあれば、それだけ訪問の回数が必要になります。ガスの復旧がおそいのは、手をぬいているからではなく、一軒ずつ人の目で確かめるという手順を省けないからです。大きな災害のときは、全国のガス会社から応えん隊が集まって、この訪問を手分けしておこないます。

ここから、災害への備えも決まります。ガスが一か月止まっても困らないようにするには、カセットこんろとそのボンベを用意しておくのが現実的です。水は運べば手に入りますが、熱を作る手段だけは、その場に道具がないとどうにもなりません。

やってみよう

Q1 都市ガスとプロパンガスで、ガス警報器を取りつける高さがちがうのはなぜですか。

A 都市ガスは空気より軽くて上にたまるので天じょうの近く、プロパンは空気より重くて下にたまるのでゆかの近くに取りつけます。

Q2 天然ガスをわざわざマイナス162℃まで冷やすのはなぜですか。

A 液体にすると体積が約600分の1になり、船で一度にたくさん運べるからです。

Q3 ガスのにおいがしたとき、かんきせんを回してはいけないのはなぜですか。

A スイッチを入れた瞬間に小さな火花が出て、たまったガスに火がつくおそれがあるからです。手で窓を開けて空気を入れかえます。

Q4 地震のあと、ガス会社の人が来る前にガスが止まるのはなぜですか。

A 各家のマイコンメーターが強いゆれを感じて、自分でガスを止めるからです。

Q5 家のガスが都市ガスかプロパンか、外に出て確かめてみましょう。

A 家の外がわに銀色や灰色のボンベが立っていればプロパン、なければ都市ガスであることが多いです。ついでにガスメーターの場所も見ておきましょう。

まとめ

おうちの方へ

この単元は飲料水・電気・ごみと同じ「くらしを支える」系列で、教科書では地域の事情に応じて選択的に扱われます。そのため学校で深く触れないまま終わることも多く、家庭で補う価値が高い題材です。
おすすめは、家のガスメーターの場所を一緒に確認しておくことです。復帰ボタンの位置と「においがするときは押さない」の一点だけ共有しておけば、いざというとき判断できます。検針票(ガスご使用量のお知らせ)を見せて、冬と夏で使用量が何倍ちがうかをくらべるのも、熱を作るコストの実感につながります。
また、防災の備えとしてカセットこんろとボンベの残数を一緒に数えてみてください。「ガスだけ復旧が一か月」という数字は、備蓄の必要性を子ども自身が納得しやすい根拠になります。