5年 社会 貿易と運輸

貿易と運輸 ── 資源を買い、製品を売る国

日本は資源が少ない国です。それでも豊かになれたのには、理由があります。

加工貿易という形

日本の貿易には、はっきりした特徴があります。

加工貿易 原料を輸入 ↓ 工場で加工して製品にする ↓ 製品を輸出 → 資源がなくても 技術で価値を生み出す

たとえば、を考えてみましょう。

鉄鉱石を輸入(オーストラリアなど) ↓ 製鉄所で鉄にする ↓ 自動車や機械にする ↓ 世界へ輸出 原料の何倍もの価値になる

これが、資源のない日本が豊かになれた理由です。

ただし、近年は形が変わってきています。

最近の変化 ・海外に工場を移す → 現地で作って現地で売る ・部品を輸入して組み立てる ・完成品の輸入も増えた → 単純な「加工貿易」では 説明しきれなくなった

何を輸出し、何を輸入しているか

貿易の中身を見ると、日本の産業構造が分かります。

輸出品(多い順)輸入品(多い順)
機械類機械類
自動車原油
自動車部品液化天然ガス
鉄鋼衣類
半導体製造装置医薬品
プラスチック石炭

注目すべき点が3つあります。

① 輸出も輸入も「機械類」が1位 → 部品を輸入し、 製品を輸出している ② 輸入にエネルギー資源が並ぶ → 原油、天然ガス、石炭 → ほぼ100%輸入に頼る ③ 衣類や医薬品の輸入が多い → 昔は国内で作っていた → 今は海外生産が中心

②のエネルギーが最大の弱点です。

日本のエネルギー自給率 約13% → 8割以上を輸入 → 原油の約9割は中東から

もし輸入が止まれば、電気も車も止まります。これが日本の抱える大きなリスクです。

だから、輸入先を分散させる努力が続けられています。1つの国に頼りすぎると、その国との関係が悪化したときに困るからです。

船と飛行機の使い分け

貿易品は、飛行機で運ばれます。使い分けには明確な理由があります。

飛行機
速さおそい(数週間)速い(数時間〜1日)
運べる量非常に多い少ない
費用安い高い
向くもの重い・かさばる・急がない軽い・高価・急ぐ
石油、鉄鉱石、自動車、木材半導体、精密機械、医薬品、生鮮食品

ポイントは、重さあたりの値段です。

半導体 → 小さくて軽いのに、高価 → 飛行機で運んでも 費用の割合が小さい 石炭 → 重くて安い → 飛行機で運んだら 運賃のほうが高くなる

だから、貿易額では空港が上位に来ることがあります。量は少なくても、金額が大きいのです。

貿易額の多い港・空港 成田国際空港 … 貿易額 全国1位級 名古屋港 … 自動車の輸出が多い 東京港・横浜港 関西国際空港

成田空港が「日本最大の貿易港」と呼ばれるのは、この理由からです。

コンテナという発明

海上輸送を大きく変えたのがコンテナです。

コンテナのしくみ 規格が世界共通の大きな箱 ↓ 中に何を入れてもよい ↓ 船、トラック、鉄道に そのまま積みかえられる

コンテナ以前は、荷物を1つずつ人が積み下ろししていました。時間も費用もかかり、荷いたみも起きました。

コンテナの利点 ・積み下ろしが速い (クレーンで一気に) ・盗難や荷いたみが減る ・雨にぬれない ・トラックや列車に そのまま載せかえられる ・世界中で同じ規格

この「規格を統一する」という発想が、世界の物流を変えました。

そして、日本国内の輸送も見ておきましょう。

手段特徴課題
トラック戸口から戸口まで運べる渋滞、運転手不足、二酸化炭素
鉄道大量・定時・環境にやさしい駅から先が別途必要
船(内航)大量・安いおそい、港が必要
飛行機速い高い、量が少ない

国内輸送はトラックが約9割を占めます。便利ですが、環境負担と運転手不足が課題です。

そこで、モーダルシフトという取り組みが進んでいます。

モーダルシフト トラック輸送の一部を 鉄道や船に切りかえる → 二酸化炭素を減らす → 運転手不足に対応 → 長距離ほど効果が大きい

貿易をめぐる問題

貿易は、国どうしの関係に直結します。

貿易摩擦(まさつ) 日本がたくさん輸出する ↓ 相手国の産業が打撃を受ける ↓ 「輸入を減らせ」と要求される ↓ 対立が生じる

1980年代には、自動車の輸出をめぐってアメリカとの貿易摩擦が大きな問題になりました。

解決策の一つが、現地生産でした。

現地生産の効果 相手国に工場を作る ↓ 現地の人を雇う ↓ 相手国の経済にも貢献 ↓ 対立がやわらぐ

今では、日本の自動車会社の多くが海外に工場を持っています。

もう一つ、関税の問題もあります。

関税 輸入品にかける税金 高くする → 国内産業を守れる → でも消費者は高く買う 低くする → 安く買える → でも国内産業が苦しい

各国は交渉して、お互いに関税を下げる協定を結んでいます。ただし、守りたい産業(日本なら農業)をめぐって、いつも議論になります。

貿易には、得をする人と損をする人がいる。だから簡単には決まらないのです。

資源をめぐる備え

資源のほとんどを輸入に頼る日本は、さまざまな備えをしています。

① 備蓄(びちく) 石油を国が買ってためておく ↓ 約200日分以上 ↓ 輸入が止まっても しばらくしのげる
② 輸入先の分散 一つの国に頼りすぎない ↓ その国と問題が起きても 他から買える
③ 省エネルギー 使う量そのものを減らす ↓ 燃費のよい車 高効率の家電 断熱性の高い建物
④ 再生可能エネルギー 太陽光、風力、地熱、水力 ↓ 国内で作れる ↓ 輸入に頼らずに済む

とくに④の再生可能エネルギーは、資源のない日本にとって大きな希望です。太陽も風も、輸入する必要がありません。

ただし、課題もあります。天候に左右される、設置場所が必要、費用が高いなど。まだ主力にはなりきれていないのが現状です。

そして、都市鉱山という考え方も注目されています。

都市鉱山 使い終わった電子機器に 金・銀・レアメタルが含まれる ↓ 集めて取り出せば資源になる → 日本にある金の量は 世界の埋蔵量の1割以上とも

捨てられていたものが資源になる。リサイクルの考え方が、資源問題の答えの一つになりつつあります。

つまずきやすいところ

その1 加工貿易の意味があいまい

ただ輸出入することだと思う。
買ってきた材料に技術を加えて価値を高めてから売る形です。ここが日本の産業の特徴です。

その2 船と飛行機の使い分けが分からない

どちらで運ぶか判断できない。
重さあたりの値段で決まります。軽くて高価なら飛行機、重くて安いなら船です。

その3 貿易額の多い港を港だけで考える

空港を含めずに考える。
成田空港が貿易額トップ級です。量は少なくても高価なものを運んでいます。

やってみよう

Q1 加工貿易とはどんな形の貿易ですか。

A 原料を輸入し、加工して製品を輸出する形です。日本の産業を支えてきました。

Q2 半導体を飛行機で運ぶのはなぜですか。

A 軽くて高価だからです。運賃が高くても、商品の値段に比べれば小さな割合です。

Q3 コンテナの利点を2つ言いましょう。

A 積み下ろしが速いこととそのまま積みかえられること。規格が世界共通です。

Q4 家にあるものの原産国を調べ、地図に印をつけてみましょう。

A どれだけ多くの国とつながっているかが見えてきます。

まとめ

おうちの方へ

貿易は、日本という国のあり方そのものを表す単元です。資源がないという弱点を、技術で補ってきた歴史が見えてきます。
家庭にあるものの原産国を調べる活動は、手軽で効果的です。服のタグ、家電の表示、食品のラベル。世界地図に印をつけると、つながりの広さに驚きます。
「なぜ半導体は飛行機で運ぶのか」という問いは、経済的な思考の入り口です。重さと価値の関係を考えると、輸送手段の選択に理由があることが分かります。
エネルギー自給率13%という数字は、日本の弱点を示しています。「もし輸入が止まったら」という想定は、少し怖い話ですが、考える価値があります。
貿易摩擦や関税の話は難しい内容ですが、「得する人と損する人がいる」という視点だけでも伝わると十分です。