今ある田んぼも、水路も、堤防も。誰かが作らなければ、存在しなかったものです。
まちを歩くと、田んぼが広がっています。水路に水が流れています。川には堤防があります。
これらを見て、「昔からあったもの」と思うかもしれません。でも、ちがいます。
誰かが働きかけたから、今の姿があるのです。
この単元では、そういう人たちの働きを学びます。教科書に出てくる人は地域によってちがいますが、やったことと苦労は共通しています。
地域の発展につくした人の仕事には、いくつかの型があります。
| 種類 | やったこと | 解決した問題 |
|---|---|---|
| 用水 | 水路を引いて水を運ぶ | 水がなくて作物が育たない |
| 治水 | 堤防を築く、川の流れを変える | 洪水で田畑や家が流される |
| 新田開発 | 荒れ地や湿地を田にする | 米が足りない、土地が足りない |
| 干拓 | 海や湖を陸地にする | 平らな土地が足りない |
| 産業おこし | 新しい作物や技術を広める | 収入が少ない |
| 教育・医療 | 学校や病院を作る | 学べない、治せない |
共通しているのは、「困っている人がいた」ということです。
水がなくて苦しむ人、洪水で家を失う人、貧しくて学校に行けない子ども。その苦しみを何とかしたいという思いが、大きな事業の出発点でした。
いちばん多く取り上げられるのが用水です。どれほど大変なことか、考えてみましょう。
とくに②の測量が難しい仕事でした。
今のような機械はありません。それでも、何kmも先までわずかな傾きを保って掘らなければなりません。少しでも間違えれば、水は流れないのです。
昔の人は、水を張った容器やちょうちんの明かりを使って、夜に測量したと言われています。知恵と工夫の結晶でした。
そして、山にトンネルを掘る場合は、両側から掘り進めて中で出会うという高度な技術が必要でした。
大きな事業には、必ず反対がありました。
とくに上流の村との対立は深刻でした。水を分けてもらう側と、取られる側。どちらも生活がかかっています。
だから、先人たちは説得に長い時間を費やしました。何度も足を運び、話し合い、時には自分の財産を投げ出して信用を得ました。
そして、工事そのものも危険でした。
自分が生きている間に完成しないかもしれない。それでも始めた人たちがいました。
「次の世代のために」という思いです。この考え方こそ、この単元で学ぶべきいちばん大切なことかもしれません。
先人の働きは、いろいろな形で残っています。
・石碑:功績をたたえて建てられた
・神社:神としてまつられていることもある
・地名:その人の名前がついた土地や水路
・祭り:感謝を伝える行事が続いている
・資料館:道具や記録が保存されている
まちを歩いていて古い石碑を見つけたら、読んでみてください。そこに地域の歴史が刻まれていることがあります。
自分の地域の先人を調べる方法を紹介します。
とくに大事なのが②と④です。
「何をしたか」だけでは、ただの出来事です。どんな問題があって、どんな苦労をしたかを知ってはじめて、その人のすごさが分かります。
そして⑥も忘れずに。作られた用水や堤防が、今も使われているかどうか。もし今も使われているなら、何百年も役立ち続けているということです。
実際、江戸時代に作られた用水が、今でも現役で水を運んでいる例がたくさんあります。それだけ しっかり作られたのです。
先人の働きから学べることは、歴史の知識だけではありません。
とくに「自分の世代で終わらない仕事」という考え方は、今の社会でも重要です。
環境問題、災害への備え、人口減少への対策。どれも、すぐに結果は出ません。それでも、次の世代のために今やる必要があります。
先人たちは、それをやってのけました。何十年もかかる事業を始め、自分は完成を見られなくても、後の人に託しました。
今わたしたちが使っている水路や堤防は、その人たちからの贈り物です。そして、わたしたちも次の世代に何かを残せます。
「〇〇さんが用水を作った」で終わる。
どんな問題があったか、どんな苦労をしたかを知ってこそ、意味が分かります。
過去の出来事として片づける。
作られたものは今も使われています。自分の生活とつながっていることを確かめましょう。
その人だけがすごいと考える。
大きな事業は多くの人の協力で成り立ちました。名前が残らなかった人たちの働きもあります。
Q1 先人の事業には、どんな種類がありますか。
A 用水・治水・新田開発・干拓など。どれも「困っている人がいた」ことが出発点です。
Q2 用水を引くとき、なぜ測量が難しかったのですか。
A 機械がない時代に、何kmも先までわずかな傾きを保つ必要があったからです。
Q3 なぜ反対されることが多かったのですか。
A 失敗の心配、土地の問題、水を取られる村との対立など、それぞれに生活がかかっていたからです。
Q4 自分の地域の先人を、資料館や図書館で調べてみましょう。
A 石碑や地名にも手がかりがあります。作られたものが今も使われているか確かめてみてください。
この単元は、地域によって取り上げる人物がまったくちがいます。教科書や副読本に載っている人が、その土地の先人です。
おすすめは、実際にその場所へ行ってみることです。用水路、堤防、開かれた土地。今も残っているものが多く、見に行くと実感がまるでちがいます。
郷土資料館も貴重な学習の場です。当時の道具や、工事の記録が展示されています。「これで何kmも掘ったのか」と分かると、苦労が伝わります。
石碑を見つけたら、一緒に読んでみてください。難しい漢字も多いですが、そこに刻まれた名前と功績が、地域の歴史そのものです。
「次の世代のために今やる」という考え方は、大人になっても大切な価値観です。この単元を通じて伝えられる、大きな学びだと思います。