4年 社会 地域の発展につくした人

地域の発展につくした人 ── 今の暮らしは、誰かの苦労の上にある

今ある田んぼも、水路も、堤防も。誰かが作らなければ、存在しなかったものです。

「もともとあった」ではない

まちを歩くと、田んぼが広がっています。水路に水が流れています。川には堤防があります。

これらを見て、「昔からあったもの」と思うかもしれません。でも、ちがいます。

たとえば、水の少ない台地 【昔】 水がないので、田んぼが作れない 作物が育たない 人が住みにくい ↓ 誰かが用水路を引いた ↓ 【今】 水が届く 田んぼが広がる 人が住み、まちができる

誰かが働きかけたから、今の姿があるのです。

この単元では、そういう人たちの働きを学びます。教科書に出てくる人は地域によってちがいますが、やったことと苦労は共通しています。

先人がしたこと

地域の発展につくした人の仕事には、いくつかの型があります。

種類やったこと解決した問題
用水水路を引いて水を運ぶ水がなくて作物が育たない
治水堤防を築く、川の流れを変える洪水で田畑や家が流される
新田開発荒れ地や湿地を田にする米が足りない、土地が足りない
干拓海や湖を陸地にする平らな土地が足りない
産業おこし新しい作物や技術を広める収入が少ない
教育・医療学校や病院を作る学べない、治せない

共通しているのは、「困っている人がいた」ということです。

水がなくて苦しむ人、洪水で家を失う人、貧しくて学校に行けない子ども。その苦しみを何とかしたいという思いが、大きな事業の出発点でした。

用水を引くという事業

いちばん多く取り上げられるのが用水です。どれほど大変なことか、考えてみましょう。

用水を引くのに必要なこと ① どこから水を取るか調べる (高い所から低い所へ流れるので、 水源は目的地より高くないといけない) ② 測量する わずかな傾きを正確に測る (急すぎると水が土をけずり、 ゆるすぎると水が流れない) ③ ルートを決める 山があればトンネルを掘る 谷があれば橋やサイフォンを作る ④ 許可をもらう 通る土地の持ち主、他の村、 殿様や役所の許可 ⑤ お金を集める ⑥ 人を集めて掘る 何年、何十年もかかる

とくに②の測量が難しい仕事でした。

今のような機械はありません。それでも、何kmも先までわずかな傾きを保って掘らなければなりません。少しでも間違えれば、水は流れないのです。

昔の人は、水を張った容器やちょうちんの明かりを使って、夜に測量したと言われています。知恵と工夫の結晶でした。

そして、山にトンネルを掘る場合は、両側から掘り進めて中で出会うという高度な技術が必要でした。

反対と困難

大きな事業には、必ず反対がありました。

なぜ反対されたか ・失敗したらお金がむだになる ・自分の土地を通されたくない ・水を取られる村が困る ・工事で人が死ぬかもしれない ・「そんなことできるはずがない」

とくに上流の村との対立は深刻でした。水を分けてもらう側と、取られる側。どちらも生活がかかっています。

だから、先人たちは説得に長い時間を費やしました。何度も足を運び、話し合い、時には自分の財産を投げ出して信用を得ました。

そして、工事そのものも危険でした。

当時の工事 ・道具はくわ、つるはし、もっこ ・機械はない ・トンネルの落盤事故 ・水の事故 ・長い年月(数十年かかることも) → 完成を見ずに亡くなった人も多い

自分が生きている間に完成しないかもしれない。それでも始めた人たちがいました。

「次の世代のために」という思いです。この考え方こそ、この単元で学ぶべきいちばん大切なことかもしれません。

記録の残り方

先人の働きは、いろいろな形で残っています。
石碑:功績をたたえて建てられた
神社:神としてまつられていることもある
地名:その人の名前がついた土地や水路
祭り:感謝を伝える行事が続いている
資料館:道具や記録が保存されている
まちを歩いていて古い石碑を見つけたら、読んでみてください。そこに地域の歴史が刻まれていることがあります。

調べ方と考え方

自分の地域の先人を調べる方法を紹介します。

【どこで調べるか】 ・郷土資料館、歴史民俗資料館 ・図書館の郷土資料コーナー ・市町村のホームページ ・お年寄りに聞く 【何を調べるか】 ① いつごろの人か ② どんな問題があったか ③ 何をしたか ④ どんな苦労があったか ⑤ その後どうなったか ⑥ 今もそれは残っているか

とくに大事なのが②と④です。

「何をしたか」だけでは、ただの出来事です。どんな問題があって、どんな苦労をしたかを知ってはじめて、その人のすごさが分かります。

そしても忘れずに。作られた用水や堤防が、今も使われているかどうか。もし今も使われているなら、何百年も役立ち続けているということです。

実際、江戸時代に作られた用水が、今でも現役で水を運んでいる例がたくさんあります。それだけ しっかり作られたのです。

今につながる考え方

先人の働きから学べることは、歴史の知識だけではありません。

学べること ・困っている人のために働く ・目の前の利益より、長い目で見る ・反対されてもあきらめない ・自分の世代で終わらない仕事もある ・みんなで協力する

とくに「自分の世代で終わらない仕事」という考え方は、今の社会でも重要です。

環境問題、災害への備え、人口減少への対策。どれも、すぐに結果は出ません。それでも、次の世代のために今やる必要があります。

先人たちは、それをやってのけました。何十年もかかる事業を始め、自分は完成を見られなくても、後の人に託しました。

今わたしたちが使っている水路や堤防は、その人たちからの贈り物です。そして、わたしたちも次の世代に何かを残せます。

つまずきやすいところ

その1 名前と業績だけ覚える

「〇〇さんが用水を作った」で終わる。
どんな問題があったか、どんな苦労をしたかを知ってこそ、意味が分かります。

その2 昔話だと思う

過去の出来事として片づける。
作られたものは今も使われています。自分の生活とつながっていることを確かめましょう。

その3 一人の力だと思う

その人だけがすごいと考える。
大きな事業は多くの人の協力で成り立ちました。名前が残らなかった人たちの働きもあります。

やってみよう

Q1 先人の事業には、どんな種類がありますか。

A 用水・治水・新田開発・干拓など。どれも「困っている人がいた」ことが出発点です。

Q2 用水を引くとき、なぜ測量が難しかったのですか。

A 機械がない時代に、何kmも先までわずかな傾きを保つ必要があったからです。

Q3 なぜ反対されることが多かったのですか。

A 失敗の心配、土地の問題、水を取られる村との対立など、それぞれに生活がかかっていたからです。

Q4 自分の地域の先人を、資料館や図書館で調べてみましょう。

A 石碑や地名にも手がかりがあります。作られたものが今も使われているか確かめてみてください。

まとめ

おうちの方へ

この単元は、地域によって取り上げる人物がまったくちがいます。教科書や副読本に載っている人が、その土地の先人です。
おすすめは、実際にその場所へ行ってみることです。用水路、堤防、開かれた土地。今も残っているものが多く、見に行くと実感がまるでちがいます。
郷土資料館も貴重な学習の場です。当時の道具や、工事の記録が展示されています。「これで何kmも掘ったのか」と分かると、苦労が伝わります。
石碑を見つけたら、一緒に読んでみてください。難しい漢字も多いですが、そこに刻まれた名前と功績が、地域の歴史そのものです。
「次の世代のために今やる」という考え方は、大人になっても大切な価値観です。この単元を通じて伝えられる、大きな学びだと思います。