2年 国語 メモを とるとき

メモを とる ── ぜんぶ 書かないのが、じょうずな メモ

きのう 先生が 言った ことを、ゆうがたに おうちの 人へ つたえられますか。聞いた ときは 分かって いたのに、もう 思い出せない ── そういう ときの ための 道具が メモです。ただし、メモには 多くの 人が かんちがいして いる ことが 1つ あります。じょうずな メモとは、たくさん 書いた メモでは なく、書かない ことを えらんだ メモなのです。「メモを とるとき」の たんげんです。

話す はやさと 書く はやさは、10倍 ちがう

まず、かくれた 数字を 1つ 見せます。人が ふつうに 話す はやさは、1分間に およそ 300字です。いっぽう、2年生が えんぴつで ていねいに 書ける はやさは、1分間に およそ 30字。くらべて みましょう。

300 ÷ 30 = 10  ← 話す はやさは、書く はやさの 10倍

話は、書く はやさの 10倍で とんで きます。10文字 聞いて いる あいだに、書けるのは たったの 1文字。ぜんぶ 書きとろうと するのは、歩いて 車を おいかける ような ものです。

ここで いちばん 大切なのは、ぜんぶ 書けないのは、書くのが おそい せいでは ないと 分かる ことです。字を 書くのが どんなに はやい 大人でも、話す はやさには かないません。だから 大人の メモ帳も、よく 見ると みじかい ことばの きれはしばかりで できて います。ぜんぶ 書かないのは サボりでは なく、はじめから そういう 勝負なのです。まけずに すむ 方ほうは ただ 1つ、書く ことばを えらぶ ことだけです。

メモは、文しょうでは ない

つぎに、メモが ほかの 書きものと どう ちがうかを ならべて みます。

書く もの読む 人文の かたち
にっきや 作文先生や クラスの みんなちゃんと した 文に する
手紙とどく あい手ちゃんと した 文+あいさつ
メモあとの 自分 だけことばの きれはしで よい

にっきも 手紙も、読む 人の ために 書く 文しょうです。でも メモを 読むのは、あとの 自分 ただ ひとり。だから「です」「ます」は いりません。きれいな 字も いりません。自分さえ 読めれば、字が ななめでも、ひらがなだらけでも かまわないのです。

つまり メモは、文しょうを 書く 勉強では ありません。とんで くる ことばの 中から、のこす ものを その場で きめる ── 「えらぶ」勉強です。

ひろうのは、「名前」と「数」

では、なにを 書いて、なにを 書かないのか。きめ手は 2つ、名前と 数です。

町たんけんで、パンやさんが こう 話して くれたと します。

「あさの 4じに おみせに きて、パンを 300こ やきます。
 いちばん にんきは メロンパンです。」

この 話の 中で、あとから 自分で 作りなおせない ことばは どれでしょう。「あさの」「おみせに」「いちばん」は、わすれても あとで 思い出せます。でも 4じ・300こ・メロンパンの 3つは、聞いた しゅんかんに つかまえて おかないと、二どと もどって きません。だから、メモは こう なります。

4じ 300こ メロンパン

もとの 話は、空白と まる(。)を かぞえずに 38字。メモは 11字です。3分の1より みじかく なったのに、だいじな 中身は ぜんぶ のこって います。あとで この 11字を 見れば、「あさ 4じから パンを 300こ、にんきは メロンパン」と、話を 自分の ことばで 立てなおせるからです。けずったのは、あとで 自分が ただで たせる ことばだけなのです。

本当に 間に合うのか、けいさんして たしかめる

さっきの 一文を、パンやさんは およそ 8びょうで 言いおわります(1びょうに 5字 話す けいさんです)。1字 書くのに 2びょう かかると して、書く ほうは どうでしょう。

ぜんぶ 書く……38字 × 2びょう = 76びょう
メモに する……11字 × 2びょう = 22びょう

76びょうは 1分より 長い 時間です。ぜんぶ 書きおわる ころには、パンやさんは もう つぎの つぎの 話に すすんで います。そして こちらは、その 話を まるごと 聞きのがして います。

メモの 22びょうなら、おいつけます。話には「間(ま)」が あるからです。話す 人が いきを すう、あるきながら 場しょを うつす、だれかの しつもんに うなずく ── その あいだに、11字は 書けて しまう。えらんだ 人だけが、話に ついて いけるのです。

きごうは、メモの ちかみち

ことばを けずった うえで、さらに はやく する 道具が きごうです。

きごういみつかう ばめん
→つぎに・だからこむぎこ → こねる → やく
?あとで 聞きたい300こ?(聞きのがした とき)
○で かこむここが いちばん だいじメロンパン を ○で かこむ

「つぎに」と 書けば 3文字ですが、「→」なら 1文字です。しかも 読みかえした とき、やじるしは ことばの じゅんばんまで 思い出させて くれます。「こむぎこ → こねる → やく」と あれば、パンが できる じゅんじょは もう まちがえません。

「?」も つよい きごうです。インタビューの とちゅうで 数を 聞きのがしたら、その場で 止まらずに「300こ?」と 書いて 先へ すすみ、さいごに「パンは 300こで 合って いますか」と 聞きなおせば よいのです。聞きのがしは しっぱいでは なく、?を つけて おけば あとで ひろいなおせる ものに かわります。

その日の うちに、1行だけ たす

メモには よわみが 1つ あります。時間が たつと、書いた 本人にも 読めなく なることです。「4じ 300こ メロンパン」── 1しゅうかん後に ひらいたら、なんの 数だったのか 分からなく なって いるかも しれません。

なおしかたは かんたんです。その日の うちに、メモの 上に 日づけと「なんの 話か」を 1行 たして おきます。

10月5日 パンやさんの 話
4じ 300こ メロンパン

たった 1行で、この メモは 何年 たっても 読めるように なります。メモは 2回 はたらく 道具です。聞きながら 1回、読みかえして もう 1回。2回めの 自分の ために、1行だけ おみやげを のこして おくのです。

こうして のこした メモは、つぎの 書きものの たねに なります。にっきや 作文に 書きなおす とき、この 1行が あれば すぐ 書きはじめられます。3年生で ならう ほうこくする 文しょうも、4年生の ノートの 取り方も、土台は ぜんぶ この「えらんで 書き、見出しを たす」わざです。

つまずき やすい ところ

その1 きれいに 書こうと して、話に おいて いかれる

メモの 字は、自分が 読めれば それで 合かくです。ていねいな 字は、あとで にっきや 手紙に 書きなおす ときの 出番。メモ用の 字と せいしょ用の 字は、べつの 道具だと 分けて おきましょう。字を 直して いる 2びょうの あいだに、話は 10字 先へ 行って しまいます。

その2 さいしょの 一文だけで おわって しまう

ぜんぶ 書こうと する 子ほど、さいしょの 一文を うつして いる あいだに 話が 先へ 行き、メモが 1行で 止まります。聞きはじめる 前に、文は 書かない、名前と 数だけと 心に きめて おくと、手が 話に おいつくように なります。

その3 あとで 読んでも 分からない

げんいんの ほとんどは、日づけと「なんの 話か」の 1行が ない ことです。読めない メモは、ざんねんながら メモの 仕事を して いません。書いた その日の ゆうがたに 1行 たす ── これを しゅうかんに すると、メモ帳が じぶんだけの 小さな 図かんに そだって いきます。

やって みよう

Q1 話を ぜんぶ 書きとれないのは、なぜですか。

A 話す はやさ(1分に およそ 300字)が、書く はやさ(1分に およそ 30字)の 10倍だからです。だれが やっても ぜんぶは 書けないので、ことばを えらびます。

Q2 「山田さんは 犬を 2ひき かって いて、名前は モモと クロです」。メモに のこす ことばを 3つ えらびましょう。

A 2ひき・モモ・クロ。数と 名前だけ のこせば、「かって いて」などは あとで 自分で たせます。

Q3 メモの 中の「→」は、なにを あらわして いますか。

A 「つぎに」「だから」のような、ことばの つながりと じゅんばんです。1文字で 書けて、読みかえす ときに じゅんじょを 思い出させて くれます。

Q4 きのうの メモが、自分でも 読めませんでした。きょうから なにを かえますか。

A 書いた その日の うちに、メモの 上に 日づけと「なんの 話か」の 1行を たします。これだけで、あとから 読める メモに かわります。

まとめ

おうちの方へ

「メモをとるとき」は2年生の話す・聞く領域の単元ですが、本当の主役は「全部は書けない」という速さの差です。話し言葉は毎分およそ300字、低学年の筆記はおよそ30字。この10倍の差は大人になっても縮まらないので、「拾う言葉を選ぶ」判断こそが一生もののメモの技術になります。
家庭で遊ぶなら「30びょうクイズ」がおすすめです。おうちの方が今日の買い物や明日の予定を30秒だけ話し、お子さんはメモを取る。次の日にメモだけを見て話を再現できたら合格です。採点のものさしは字のきれいさではなく、名前と数が拾えていたかどうか。
気をつけたいのは、全部書けなかったことを叱らないことです。速さの差を考えれば、書けないのが正常です。「メロンパンを拾えたね」「数を落とさなかったね」と、選べたことをほめてあげてください。選ぶ目は、4年生のノートの取り方、さらにその先の授業の聞き方まで、そのまま育っていきます。