5年 理科 ふりこのきまり

ブランコを立ってこぐとリズムが速くなる ── 体が軽くなったのではなく、ふりこが短くなっている

ブランコに座ってゆれていて、立ち上がってこぎ出すと、行ったり来たりのリズムがはっきり速くなります。座っていたときと立ったときで、体重は1gも変わっていません。それなのに速くなるのですから、変わったものが何かあるはずです。この記事ではその「変わったもの」を、遊具の寸法を測るだけで見つけます。そしてその先に、教科書には書かれていないのに一度知ると忘れられない関係が待っています。ふりこの長さを2倍にしても、1往復の時間は2倍にならないのです。4倍にして、やっと2倍になります。

立ち上がったとき、動かなかったものと動いたもの

まず、立ち上がる前と後で何が変わって何が変わらないのかを、一つずつ確かめます。変わらないものは、ブランコのくさりの長さと、自分の体重です。くさりは伸びも縮みもしませんし、体重計に乗ったまま立ち上がっても数字は動きません。それでもリズムは変わります。だから答えは、この2つ以外にあります。

ここで「ふりこの長さ」の定義を思い出します。ふりこの長さは、糸の長さではありません。ふりこのきまりで確かめたとおり、支点からおもりの中心までの長さです。ブランコの場合、おもりはあなた自身です。では、あなたの「中心」はどこでしょうか。

体の重さが集まっていると考えていい一点を重心といいます。まっすぐ立っているとき、重心はへそのあたり、床から身長の約0.55倍の高さにあります。身長140cmの人なら、足の裏から約77cmの位置です。そして座ると、重心はいすの座面のすぐ上まで下がります。立つ・座るで動いたのは、くさりでも体重でもなく、この重心の高さだったのです。

支点(くさりの上のとりつけ)から いすまで 2.5m とする 【座ったとき】  重心は いすの少し上(約0.3m 上)  支点から重心まで … 2.5 - 0.3 = 2.2(m) 【立ったとき】  重心は 足の裏から 約0.9m 上(身長140cmくらいの人)  支点から重心まで … 2.5 - 0.9 = 1.6(m) ふりこの長さが 2.2m → 1.6m へ 0.6m 短くなった

くさりは1cmも縮んでいないのに、ふりことしての長さは0.6mも短くなりました。ふりこは短いほど1往復が速くなります。これで「立つと速い」の正体は見えました。あとは、0.6m短くなったことが何秒のちがいになるのかです。そこを出すために、長さと時間の関係を先に調べます。

長さと時間は、同じ倍率では増えない

「長いほどゆっくり」は知っていても、どれくらいゆっくりかは表にしないと見えません。ふりこの長さを25cmから順にのばして、1往復の時間を並べてみます。

ふりこの長さ25cmの何倍1往復の時間1.00秒の何倍
25cm1倍約1.00秒1倍
1m(100cm)4倍約2.01秒2倍
2m25cm(225cm)9倍約3.01秒3倍
4m(400cm)16倍約4.01秒4倍

右の2つの列を見てください。時間は1倍、2倍、3倍、4倍と、きれいに1つずつ増えています。ところがそのために必要な長さは、1倍、4倍、9倍、16倍です。この4つの数に見覚えはありませんか。

1 = 1 × 1 4 = 2 × 2 9 = 3 × 3 16 = 4 × 4 時間を □倍 にしたいなら  長さを (□ × □)倍 にする

長さの倍率は、時間の倍率を2回かけた数になっています。だから時間を2倍にしたければ長さは2×2=4倍、3倍にしたければ3×3=9倍が必要です。逆向きに言えば、長さを4倍にしても時間は2倍しか増えないということです。ふりこはのばしても、のばしたぶんだけはゆっくりになってくれません。

では、長さをちょうど2倍にすると何倍になるのか

ここまでは1倍・4倍・9倍・16倍という、都合のよい長さだけを見てきました。いちばん知りたいのは、2倍にしたらどうなるかでしょう。1mを2mにして比べます。

1m のとき … 約2.01秒 2m のとき … 約2.84秒 2.84 ÷ 2.01 = 1.41…(倍)

約1.41倍です。2倍ではありません。では1.41という数は正しいのか、さきほどの決まりで検算します。時間が1.41倍なら、長さは1.41を2回かけた数だけ必要なはずです。

1.41 × 1.41 = 1.9881 ほとんど 2 になった → 「長さ2倍 なら 時間は約1.41倍」で合っている

表から出した1.41倍と、決まりから計算した1.9881という数が、同じ「長さ2倍」を指しました。2通りで同じところに着いたので、この関係は信用してよいということになります。長さをこまかく変えた表も作っておきます。

ふりこの長さ1往復の時間25cmのときとくらべて
25cm約1.00秒─
50cm約1.42秒長さ2倍で 約1.41倍
1m約2.01秒長さ4倍で ちょうど2倍
1m50cm約2.46秒長さ6倍で 約2.45倍
2m約2.84秒長さ8倍で 約2.83倍
3m約3.48秒長さ12倍で 約3.46倍
4m約4.01秒長さ16倍で ちょうど4倍

右の列に注目すると、長さを6倍にしたときの2.45倍、8倍にしたときの2.83倍、12倍にしたときの3.46倍という数が出てきます。2.45を2回かけると6.0025、2.83を2回かけると8.0089、3.46を2回かけると11.9716。どれも長さの倍率に戻ってきます。表のどこを取っても同じ決まりが働いているということです。

ブランコの数字を入れて、何秒ちがうか出す

道具がそろったので、最初の2.2mと1.6mを入れます。

【座ってこぐ】ふりこの長さ 2.2m   1往復 … 約2.98秒 【立ってこぐ】ふりこの長さ 1.6m   1往復 … 約2.54秒  2.98 - 2.54 = 0.44(秒)短くなった

0.44秒です。1回ぶんだと「そんなものか」と思うかもしれません。ところがブランコは何度も往復しますから、ふりこのきまりで使った10往復の測り方をそのまま当てると、ちがいは10倍に積み上がります。

10往復にかかる時間  座ってこぐ … 2.98 × 10 = 29.8(秒)  立ってこぐ … 2.54 × 10 = 25.4(秒)  差 … 4.4秒

4.4秒です。ブランコの前で友だちを待っているとき、4秒ははっきり長く感じる時間です。だから立ちこぎに変えた瞬間、リズムが速くなったと体が気づきます。もう一つ、1分間に何往復できるかという見方もしておきます。

1分間(60秒)の往復回数  座ってこぐ … 60 ÷ 2.98 = 20.1… → 約20回  立ってこぐ … 60 ÷ 2.54 = 23.6… → 約24回

約20回が約24回になります。1分あたり4往復ぶん多いのですから、感じるのも当然です。ここで、この0.44秒という差がどこから来たのかをもう一度たどってみてください。体重からは来ていません。腕の力からも来ていません。重心を0.6m持ち上げた、その0.6mだけから来ています。立ち上がるという動作が、ふりこの寸法を書きかえたのです。

「速くなる」と「高くまでふれる」は、別のこと

ここでひとつ、混ざりやすい話を分けます。立ってこぐと、リズムが速くなるだけでなくだんだん高くまでふれるようにもなります。この2つは同時に起きるので、ひとまとめに「立つと速い」と感じてしまいます。ところが原因はまったく別です。

ふれはばを大きくしても、1往復の時間は変わりません。これはふりこのきまりで実験して確かめたことです。つまり高くふれるようになっても、リズムは速くなりません。逆もそうで、リズムが速くなったからといって高くふれるわけでもありません。表にして分けます。

起きていること原因1往復の時間は
リズムが速くなる重心が上がり、ふりこが短くなった短くなる
高くまでふれるようになるこぐたびに少しずつ力を足している変わらない

この分け方が効くのは、こんな場面です。座ったままでも、こぎ続ければ高くふれます。公園で小さい子が座ってこいで高くまで上がっているのは、力を足し続けているからで、ふりこの長さは変わっていません。だから座ったままの子は、高く上がってもリズムはゆっくりのままです。高さは力の話、リズムは長さの話。ふりこを見るときは、この2本を混ぜないようにします。

体重が関係ないから、大人と子どもは同じリズムでゆれる

1往復の時間はおもりの重さで変わりません。これもふりこのきまりで確かめたことです。ものと重さで「形をかえても重さは変わらない」を見たときのように、ここでも重さは主役ではないのです。すると、おもしろい結論が出てきます。

同じブランコに大人が座っても子どもが座っても、1往復の時間は同じ約2.98秒です。体重が3倍ちがっても関係ありません。ならんだ2つのブランコに親子が座って同時に手をはなせば、ずっとそろったままゆれ続けます。

ただし、本当にぴったりそろうかというと、ひとつだけずれる理由があります。ふりこの長さは重心までの長さでしたから、体の大きさがちがうと、座ったときの重心の高さもわずかにちがうのです。大人は座っても重心が子どもより高いところにきます。仮に2cm高いとすると、2.20mが2.18mになります。

2.20m … 約2.977秒 2.18m … 約2.963秒  1往復あたり 0.014秒 ちがう  50往復すると   0.014 × 50 = 0.7秒 のずれ

1往復では気づけない0.014秒でも、50往復すると0.7秒に育ちます。最初はそろっていたのに、だんだんずれてくるのはこのためです。ちがうのは体重ではなく、座り方の高さ。ずれ始めたら「重いほうが遅れた」ではなく「重心が低いほうが遅れた」と読むのが正しい読み方です。

ふりこ時計のふりこが、だいたい1mある理由

古い柱時計の中では、長いふりこが左右にゆれています。あの長さは飾りではありません。1秒に1回カチッと鳴らしたいという目的から決まった長さです。左右に1回ずつで1往復ですから、片道1秒なら1往復は2秒。そうなる長さを、さきほどの表から探します。

1往復が ちょうど2.000秒 になる長さ   … 99.29cm(約1m) 25cm が 約1.00秒 だったので  時間を2倍にするには 長さを 2 × 2 = 4倍  25 × 4 = 100cm  → 表の決まりからも 約1m と出る

99.29cmという数字と、表の決まりから出した約1mが合いました。柱時計のふりこが1mくらいあるのは、秒をきざむためだったのです。ではこの長さが少しずれたら、時計はどれくらい不正確になるでしょうか。1cm長くしてみます。

99.29cm … 1往復 2.000秒 100.29cm … 1往復 2.010秒   1往復あたり 0.010秒 おそい 正しい時計は 1日に  86400 ÷ 2 = 43200 往復 する  0.010 × 43200 = 432(秒)  432 ÷ 60 = 7.2(分)

たった1cmで、1日に約7分おくれます。1週間なら約50分です。だからふりこ時計のおもりには、上下に動かすためのネジが必ず付いています。時計が遅れたらおもりを少し上げてふりこを短くし、進んだら下げて長くする。このネジは長さと時間の関係を手で回せるようにした部品なのです。0.5cmでも約3.6分ですから、調整はとても細かく効きます。

最後に、この記事の関係を別の単元と並べておきます。車が止まるまでの長さでは、速さが2倍になると止まるまでの長さが4倍になりました。ふりこはその逆向きです。長さが4倍になって、やっと時間が2倍。2倍と4倍が組になって現れる関係は、理科と算数のあちこちに顔を出します。滑車と輪じくで「力は半分、引く長さは2倍」を見たときのように、何かを得れば何かが釣り合う形になっているのです。

つまずきやすいところ

よくある思いこみほんとうは
立ってこぐと速いのは、体が軽くなるから体重は変わらない。重心が上がってふりこが短くなっている
ふりこの長さは、くさりや糸の長さ支点から重心(おもりの中心)までの長さ
長さを2倍にすれば、1往復も2倍になる約1.41倍。2倍にするには長さを4倍にする
長さを半分にすれば、1往復も半分約0.71倍。半分にするには長さを4分の1にする
高くふれるようになった=リズムが速くなった別のこと。ふれはばを変えても1往復の時間は変わらない
重い人が乗ったブランコのほうがゆっくりゆれる重さでは変わらない。同じブランコなら同じ時間
親子でならんでこぐと、体重差でずれていくずれの原因は重心の高さの差。体重の差ではない
ふりこ時計のふりこの長さは、見た目で決めた1往復2秒にするための長さ。99.29cmで約1m
時計のふりこが1cmずれても、たいしたことはない1日で約7.2分おくれる。だから調整ネジが付いている

やってみよう

Q1 ふりこの長さを25cmから1mにすると、1往復の時間は何倍になりますか。表を見ないで答えられますか。

A 長さは 100 ÷ 25 = 4倍です。時間の倍率は「2回かけて4になる数」なので2倍。約1.00秒が約2.01秒になります。

Q2 1往復の時間を3倍にしたいとき、長さは何倍にしますか。25cmから始めるなら何cmですか。

A 3 × 3 = 9倍です。25 × 9 = 225cm(2m25cm)で、1往復は約3.01秒になります。

Q3 ふりこの長さを半分にすると、1往復の時間は約何倍になりますか。

A 時間の倍率を□とすると □ × □ = 0.5 です。0.7 × 0.7 = 0.49、0.71 × 0.71 = 0.5041 なので約0.71倍。1mの約2.01秒を50cmにすると約1.42秒で、2.01 × 0.71 = 1.427 と合います。半分にしても半分にはならないのがポイントです。

Q4 支点からいすまで3mのブランコがあります。座ったとき重心はいすの0.3m上、立ったとき足の裏から0.9m上とすると、ふりこの長さはそれぞれ何mですか。

A 座ると 3 - 0.3 = 2.7m、立つと 3 - 0.9 = 2.1mです。2.5mのブランコと同じく0.6m短くなる点は変わりません。差の0.6mは、しゃがむか立つかという体の動きで決まるので、ブランコの高さによりません。

Q5 友だちが「立ちこぎで高くふれるようになったから、リズムも速くなったんだ」と言いました。どこがまちがっていますか。

A 高くふれるようになったこと自体は合っています。まちがっているのは結びつけ方です。ふれはばを変えても1往復の時間は変わらないので、高さからリズムは出てきません。リズムが速くなった原因は、重心が上がってふりこが短くなったことです。同時に起きた2つを、原因まで1つにしてしまった形です。

Q6 ふりこ時計が1日に3.6分おくれていました。ふりこは何cmずれていると考えられますか。直すにはネジをどちらへ回しますか。

A 1日43200往復で216秒(3.6分)なので、1往復あたり 216 ÷ 43200 = 0.005秒おそい。本文の表から、これは約0.5cm長いときの値です。おそいのは長いからなので、おもりを上げてふりこを短くする向きに回します。

Q7 長さ1mのふりこと長さ4mのふりこを同時にふり始めました。4mのふりこが1往復するあいだに、1mのふりこは何往復しますか。

A 4mは約4.01秒、1mは約2.01秒なので 4.01 ÷ 2.01 = 約2往復です。長さが4倍でも往復回数は4分の1にならず、2分の1にとどまります。ここでも「4倍で2倍」が出てきます。

まとめ

おうちの方へ

この記事は公園のブランコという誰でも体験しているものを入口にしていますが、中身は5年の「ふりこのきまり」で習う 1往復の時間は長さだけで決まる という一文を、数で開いたものです。教科書はここを「長いほどゆっくり」で止めます。止めるのは正しい判断で、長さと時間の本当の関係には平方根が必要だからです。そこでこの記事では平方根を使わず、1・4・9・16 という平方数の並びだけで同じところへ着くようにしました。お子さんが持ち帰れるのは「2倍にしても2倍にならない量がこの世にある」という感覚です。比例しか見たことのない段階でこれに出会っておくと、中学の関数や高校の平方根で、はじめて習う気がしなくなります。

実際に確かめるなら、ひもとナットが1つあれば足ります。25cmで10往復を測ると約10秒、1mで測ると約20秒。4倍の長さで、時間はきっちり2倍です。ここで長さを2倍の50cmにして「20秒の半分の10秒より長い14秒になる」ことまで測れると、予想が外れる経験ができます。理科で強く残るのは、合っていた予想よりも外れた予想のほうです。なおブランコでの検証は、安全のため「座ったまま何往復するか」を外から数える形にしてください。乗っている人が数えるのも、立ち上がって試すのも、手を離す動作が入るのですすめられません。数えるだけなら、同じ遊具が科学の道具になります。