3年 社会 じどうはんばいき

じどうはんばいきは「むじんの店」ではない ── 見えない店員が、毎日来ている

学校からの帰り道にも、公園のよこにも、じどうはんばいきは立っています。お金を入れてボタンをおすと、ガタン、と音がして、つめたいジュースが出てくる。店員さんはどこにもいません。だから「人のいない店」とよばれることがあります。けれども、よく考えてみてください。きのうも今日も、中ののみものはちゃんと冷えていて、売り切れはいつのまにかなおっていて、おつりもまちがえない。人がいないはずなのに、店としてまったくこまっていないのです。3年生の社会では、店ではたらく人のくふうを調べます。この記事では、いちばん身近なのに中が見えない「じどうはんばいき」という店を、とびらを開けるつもりでのぞいてみます。

店がまるごと、一台の箱に入っている

スーパーには、品物をたなにならべる人がいて、レジでお金を受け取る人がいて、品物をわたしてくれる人がいます。じどうはんばいきの中でも、じつは同じ三つの仕事が行われています。

店の仕事スーパーではじどうはんばいきでは
品物をならべる店員さんが、たなにならべる人が、とびらを開けてつめる
お金を受け取るレジの店員さんが数える機械が見分けて数える
品物をわたす店員さんが手わたしする機械が取り出し口に落とす

こうしてならべてみると、機械が受け持っているのは、下の二つだけだと分かります。いちばん上の「ならべる」は、今も人間の仕事です。じどうはんばいきは、店員がゼロの店ではなく、レジと手わたしだけを機械にまかせた、とても小さな店なのです。店ではたらく人のきじで見た「商品のならべ方には、すべて理由がある」という話は、この小さな店の中でもそのまま生きています。

機械のレジ係は、お金をどうやって見分けるのか

100円玉を入れたとき、中では何が起きているのでしょう。こう貨は、入り口から入ると、ころがりながらけんさを受けます。見られているのは、おもに三つです。

  1. 大きさ 10円玉と100円玉では、まるの大きさがちがう
  2. 重さ にた大きさでも、重さまで同じにはなりにくい
  3. ざいりょう こう貨の金ぞくの種類によって、電気のつたわり方がちがう

三つぜんぶに合格したこう貨だけが「100円」と数えられます。おもちゃのコインや外国のこう貨は、けんさのとちゅうで落とされて、返きゃく口にもどってきます。見た目ではなく、大きさと重さとざいりょうで決めるので、人間の目よりだまされにくいのです。

数えたあとは、計算です。160円のジュースに500円玉を入れると、500−160で、340円のおつりが出てきます。レジの店員さんが頭の中でやっている引き算を、この機械は一しゅんでやっています。さいきんは、カードやスマホを「ピッ」とあてるだけではらえる機械もふえました。そのとき、お金がどこでへっているのかは、「ピッ」ではらったお金のきじにくわしく書いてあります。

見えない店員は、毎日来ている

ここで、さいしょのなぞにもどります。売り切れの赤いランプは、だれがなおしているのでしょうか。

答えは、トラックでじどうはんばいきを順番に回る人です。この人は、一日に何十台もの機械をたずねて、こんな仕事をしていきます。

つまり、売り切れの赤いランプは、買う人への「今は出せません」という知らせであると同時に、回ってくる人への「人気です。つぎはこれを多くつんできて」という注文書でもあるのです。どの列を多くするかは、この記録を見て決められます。ならべ方が売れゆきで変わっていくところは、スーパーのたなとそっくりです。

のみものそのものは、工場で作られ、トラックで運ばれてきます。品物が店にとどくまでのきじで見たとおり、店のたなは朝お客さんが来る前にととのえられていました。じどうはんばいきも同じで、あなたがボタンをおすずっと前に、町はもう動いているのです。ラベルを見ると、そののみものがどこの工場から来たのかが分かることもあります。産地しらべのやり方は、じどうはんばいきの前でも使えるのです。

ならべ方にも、おき場所にも理由がある

じどうはんばいきの見本のならびを、じっと見たことはありますか。よく買われるのみものは、見つけやすい場所に置かれることが多く、きせつによって中身が入れかわります。冬になると、赤いふだの「あたたかい」のみものがふえ、夏になると、青いふだの「つめたい」のみものだけになる。一台の機械の中で、きせつのたながえが起きているのです。あたたかいものとつめたいものを同時に売れるのは、箱の中が、温める部屋と冷やす部屋に分けられているからです。

おき場所にも理由があります。駅の前、公園のそば、工場の中。どれも「人がたくさん通って、のどがかわきやすい場所」です。そしてもう一つ、わすれてはいけない条件があります。電気がとどいている場所です。じどうはんばいきは、夜中もずっと中を冷やしたり温めたりし続けています。電気のない野原のまん中には、置きたくても置けません。夏のひるま、電気がいちばん多く使われる時間だけ冷やすのを休み、それでもつめたさを保てるようにくふうされた機械もあります。

日本は、じどうはんばいきの国

日本には、のみもののじどうはんばいきだけで、およそ220万台あるといわれています。人数のわりに台数が多い国として、世界でも知られています。

どうして日本には、こんなにたくさん置けるのでしょうか。じどうはんばいきの中には、品物とお金が入ったまま、夜も外に立っています。こわされたり、お金をぬすまれたりすることが少ない町でないと、外には置けないのです。道ばたにじどうはんばいきがならんでいる風けいは、じつは、まちの安全のしるしでもあります。

ここがだいじ

じどうはんばいきの体には、その機械が置いてある場所の住所を書いたステッカーがはってあることがあります。知らない場所で事故や火事にあって110番や119番に電話するとき、「今どこですか」と聞かれて答えられなくても、近くのじどうはんばいきを見れば住所を伝えられます。さいがいのときに、中ののみものを無りょうで取り出せるようにできる機械もあります。じどうはんばいきは、まちの中で、売る仕事のほかの仕事も受け持っているのです。

よこの箱は、ごみばこではない

じどうはんばいきのよこには、まるいあなの開いた箱が置いてあります。あれはごみばこではなく、あきかんとペットボトルせんようの回しゅうボックスです。集められたかんやボトルは、リサイクルの工場へ運ばれて、新しいかんやボトルに生まれ変わります。ごみのしょりのきじで見るとおり、もやしても「なくなる」わけではないからこそ、生まれ変わらせる道が大切なのです。

ここにおかしのふくろや紙コップを入れてしまうと、どうなるでしょう。回しゅうした人が、あとで一つずつ手で分け直すことになります。あなの形がのみものの入れ物に合わせてまるいのは、「ここに入れてよいのは、かんとボトルだけですよ」という、言葉を使わない説明なのです。

つまずきやすいところ

その1 「機械がぜんぶ、ひとりでやっている」と思ってしまう

機械が受け持っているのは、お金を数えることと、品物を落とすことだけです。
つめるのも、運ぶのも、売れゆきを見て決めるのも人間です。機械の前と後ろに、人の仕事がつながっている。これが見えると、まちの見え方が一だん変わります。

その2 売り切れを「こしょう」だと思ってしまう

赤いランプは、こわれた知らせではありません。それだけ売れた、というしょうこです。
記録はちゃんと残っているので、つぎに回ってくる人が多めにつめていきます。しばらくすると、ちゃんとなおっています。

その3 品物が出てこないとき、たたいてしまう

お金を入れたのに出てこない。くやしくても、たたくのはやめましょう。たたいてもお金はもどりませんし、機械をこわすと大きな事故につながります。
機械の体には、かんり番号と、連らく先の電話番号が書いてあります。番号をひかえて、おうちの人といっしょに電話するのが、いちばん早くお金がもどる道です。

やってみよう

Q1 160円のジュースを買うのに、500円玉を入れました。おつりはいくらですか。

A 340円です。500−160=340。この引き算を、機械は一しゅんで計算して、こう貨をえらんで返しています。

Q2 120円のお茶と、150円のココアを買って、1000円さつを入れました。おつりはいくらですか。

A 730円です。120+150=270、1000−270=730。二本買うときも、やっていることは「たしてから引く」だけです。

Q3 店の三つの仕事「ならべる・お金を受け取る・わたす」のうち、じどうはんばいきの機械がやっていないのはどれですか。

A 「ならべる」です。とびらを開けてのみものをつめるのは、トラックで回ってくる人の仕事です。だから、じどうはんばいきを「人のいない店」とよぶのは、半分だけ正しくて、半分まちがいなのです。

Q4 じどうはんばいきにはってある住所ステッカーは、何の役に立ちますか。

A 知らない場所から110番や119番に電話するとき、自分のいる場所を正しく伝えられます。じどうはんばいきは動かないので、住所の目じるしとして使えるのです。

Q5 家や学校の近くのじどうはんばいきで、赤いふだと青いふだの数をかぞえてみましょう。何が分かりますか。

A きせつによって数が変わることが分かります。冬は赤いふだがふえ、夏は青いふだばかりになります。何か月かあけて二回かぞえると、一台の機械の中で、たながえが起きたことをたしかめられます。

まとめ

おうちの方へ

3年生の社会科「店ではたらく人」の学習は、スーパーマーケットの見学を中心に進みますが、子どもが毎日いちばん多く利用している「店」は、実は自動販売機かもしれません。この記事は、販売機を「店の仕事が一台に圧縮されたもの」として読み直すことで、見学で学んだ「ならべ方の工夫」「開店前に進んでいる仕事」が、通学路の機械にもそのまま当てはまることを示すために書きました。
芯に置いたのは一行です。「機械がやっているのはレジと手わたしだけで、ならべる仕事は今も人がやっている」。補充に来るルートドライバーの存在に気づくと、売り切れランプが「故障」から「よく売れた記録」へ、路上の販売機が「ただの機械」から「毎日人が手入れしている小さな店」へと見え方が変わります。社会科の目標である「仕事の工夫を見つける目」は、見学先だけでなく日常の風景にも向けられる、というのがこの記事の狙いです。
お子さんと一緒にできることを三つ挙げておきます。①住所表示ステッカーを探す(防犯・防災教育としても有効です)。②ホットとコールドの札の数を季節をおいて二回数える(棚替えの発見)。③補充作業の場面に出会えたら、少し離れて眺めてみる(商品の入れ方や、売れ行きを確認する様子が見えます)。どれも、お金を使わずにできる社会科見学です。
なお、台数(約220万台)は飲料用自動販売機のおおよその数で、年により増減します。また、金銭トラブルの際に機械を叩かない・管理番号を控えて連絡する、という行動は、記事内で安全指導として明記しました。