スーパーのレジで、おうちの人がカードやスマホを読みとり機にあてると、「ピッ」と音がして買い物がおわります。お札もこう貨も出てきません。おさいふは、店に入ったときと出たときで同じ重さのままです。それなのに、品物はふくろに入って、いっしょに家へ帰ってきます。では、お金ははらわれたのでしょうか。はらわれています。ただ、へったところが見えなかっただけです。3年生の社会では、店ではたらく人のくふうや、買い物のしかたを調べます。この記事は、その調べ学習でいちばん見えにくいところ──はらったお金がどこへ行ったのか──を、ひとつずつ見えるようにしていきます。
100円玉を5まい持って、80円のガムを買うところを思いうかべてください。1まいわたして、20円のおつりをもらいます。おさいふの中は、100円玉が4まいと10円玉が2まい。のこりがいくらか、開けて数えれば分かります。
このとき、じつは三つのことが同じ一しゅんに起きています。
現金が分かりやすいのは、お金がえらいからでも、数えるのがとくいだからでもありません。三つがくっついているからです。はらったしゅんかんに手元からなくなり、なくなったことが目に入る。三つのうちどれかだけを見のがす、ということがむずかしい作りになっているのです。
「ピッ」ではらうと、この三つがはなれます。はらったのは今なのに、へるのは先だったり、あとだったり。そして、へったことが目に入りません。お金がへっていないのではなく、へるところを見ていないだけ。ここが、この記事でいちばん大事な一行です。
読みとり機にあてる動きは、どれも同じように見えます。けれども中では、お金がへるタイミングがちがっています。大きく分けて三つです。
| よび方 | お金がへるのはいつ | よく見るもの | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| さきばらい | はらう前(チャージしたとき) | 交通のICカード、プリペイドカード、図書カード | 入れた分より多くは使えない |
| そのとき | ピッとしたしゅんかん | デビットカード | こう座ののこりを見ないと分からない |
| あとばらい | 次の月にまとめて | クレジットカード | 使った感じがいちばんうすい |
大事なのは、三つとも、へるお金の金がくは同じということです。180円のパンを買えば、どのはらい方をしても180円へります。まけてくれるわけでも、よけいにとられるわけでもありません。ちがうのは金がくではなく、いつへるかだけ。ここをまぜてしまうと、あとの話がぜんぶこんがらがります。
さきばらいのしくみは、じつはみなさんもよく知っています。プールの回数けんや、おまつりの食けんと同じです。先にお金をわたして、けんに変えておく。使うときにはけんを出すだけなので、そのときお金は動きません。チャージは、お金をけんに入れかえる作業です。1000円チャージしたら、おさいふの1000円はもうありません。カードの中に、1000円分のけんとして入っているのです。
ある子が、1000円をカードにチャージして、三日間こう使ったとします。
使ったのは、あわせて470円です。のこりは530円。ここまでは、計算すればすぐに出ます。ところが実さいには、多くの人が水曜日の時点で、のこりがいくらか言えません。三日分をおぼえていないからです。
現金なら、おぼえていなくてもだいじょうぶでした。おさいふを開けば、そこに答えがあります。カードでは、開いても中は見えません。おぼえておくか、見に行くか、どちらかをしないと分からない。これが、現金とのいちばん大きなちがいです。
そして、のこりが分からないまま使いつづけると、レジで止まります。のこりが230円のときに300円のおやつを出すと、70円たりません。読みとり機は「ピッ」ではなく、ちがう音を出します。はずかしい思いをするだけではなく、後ろにならんでいる人を待たせてしまうので、店ではたらく人にとってもこまることです。
見えないなら、見に行けばよいのです。そのための道具が、ちゃんと三つ用意されています。
| 道具 | 分かること | どこで手に入るか |
|---|---|---|
| レシート | 今、いくらはらったか | レジでもらう(紙) |
| のこりの画面 | 今、いくらのこっているか | 読みとり機、カードのアプリ |
| 使った記録 | いつ、どこで、いくら使ったか | アプリ、あとから届く明さい |
レシートには「おあずかり」「おつり」のほかに、カードではらったときははらい方と、のこりの金がくが印字されていることがよくあります。ふだんは見ずにすててしまう紙ですが、じつは「今のへり方」を紙にして持ち帰れる、たった一つの道具です。
店がレシートを必ずわたすのは、お客さんへの親切というだけではありません。いくらはらったかを、店と客の両方が同じ紙で確かめられるようにするためです。品物がちがっていたときや、まちがえて二回引かれてしまったときに、この紙がないと話し合いが始まりません。買い物のしかたを調べるときは、レシートを一まい持ち帰って見てみると、店のくふうがそのまま読み取れます。
おうちの人にたのんで、レシートを一まい見せてもらいましょう。①合計 ②はらい方(現金・カードなど) ③のこりの金がくが書いてあるかの三つをさがします。三つ目が書いてある店と、書いていない店があります。そのちがいを見つけられたら、それだけで立ぱな調べ学習になります。
「ピッとするだけだから、お金を使っていない」と感じてしまうことがあります。とくに、ゲームの中でアイテムを買うときです。画面の中で数字が動くだけで、お札もこう貨も出てきません。
けれども、そこで使われているのはおうちの人の、本物のお金です。あとばらいのカードなら、次の月に家へ金がくが知らされ、こう座からその分がへります。買ったのは自分でも、へるのはおうちの人のお金です。だから、使う前に必ず聞く。これは「しかられるから」ではなく、そのお金は自分のものではないから、という理由で守るきまりです。
ここも、現金なら自然に守れていたことです。おうちの人のおさいふから勝手にお札を出す子はいません。見えなくなったせいで、自分のものではないという感じまでうすくなってしまう。それが、ピッではらうしくみのいちばん気をつけたい落とし穴です。
カードは、お金ではありません。お金の入れ物でもありません。
「あなたのお金はここにありますよ」と指ししめす、かぎのようなものです。だからカードを落としても、お金がそのへんに散らばることはありません。そのかわり、ひろった人がそのかぎを使えてしまうことがあります。落としたらすぐにおうちの人に伝えて、使えないように止めてもらいましょう。
チャージのあと、画面に「1000円」と出ます。金がくが大きく表示されるので、もうかったように感じます。
けれども、そのときおさいふからは1000円が出ています。ふえたのではなく、場所が変わっただけです。回数けんに変えたのと同じで、持っているお金の合計は1円も動いていません。
あとばらいのカードは、その場でへりません。だから「もらえた」ように見えます。
じっさいには、おくれてやってくるだけです。しかも、1か月分がまとめて来るので、思っていたより大きな数字になりやすい。600円、1200円、350円と少しずつ使っても、次の月に来るのは2150円です。一回ずつの感かくと、まとめた金がくは、かなりちがって見えます。
Q1 1000円をチャージしたカードで、320円と450円の買い物をしました。のこりはいくらですか。
A 230円です。1000−320−450=230。カードの中でも、へり方は引き算そのままです。ちがうのは、この計算を自分でやるか、画面を見に行くかだけです。
Q2 1000円の現金で320円の品物を買うと、おつりは680円。1000円チャージのカードで同じ品物を買うと、のこりは680円。この二つは、どこがちがいますか。
A 金がくはまったく同じで、ちがうのは見え方だけです。現金の680円は手の中にあって数えられます。カードの680円は画面の中にあって、見に行かないと分かりません。
Q3 あとばらいのカードで、今月600円・1200円・350円を使いました。次の月にまとめて来るのはいくらですか。
A 2150円です。600+1200+350=2150。一回ずつだと小さく見えても、まとめると急に大きく見えるのが、あとばらいのこわいところです。
Q4 のこりが230円のカードで、300円のおやつを買おうとしました。何が起きますか。
A 70円たりないので、はらえません。300−230=70。そのままではレジが止まるので、チャージするか、たりない分を現金でわたすことになります。先にのこりを見ておけば、この場面は起きません。
Q5 カードではらったのに、レシートをもらいませんでした。あとでこまるのは、どんなときですか。
A ほんとうにその金がくが引かれたのかを、確かめられないときです。品物がちがっていたときや、二回引かれてしまったときに、いくらはらったかを示すものがありません。カードは手元がへらないので、紙がないと手がかりがゼロになります。
Q1とQ2は、じつは同じことを言っています。カードでも計算は現金とまったく同じ。変わったのは計算ではなく、答えが目の前にあるかどうかです。だから、身につけるべき力も「新しい計算」ではなく、のこりを見に行くしゅうかんのほうになります。
「まだ早い」と感じられるかもしれませんが、お子さんはすでに毎日この場面を見ています。レジで音が鳴り、品物が手に入り、財布は減らない。説明がないままその光景だけを何百回も見ることのほうが、実際にはリスクが大きいと考え、3年生の買い物調べの延長としてまとめました。
この記事では、覚えることを増やさないために、芯を一行に絞っています。「現金は、はらう・へる・見えるが同時に起きる。カードはそれがばらばらになる」。前払い・即時・後払いの区別も、使いすぎの話も、すべてこの一行から導けるようにしてあります。カードの種類の名前を暗記させる必要はありません。
ご家庭で一度やっていただけると効くのは、買い物のあとにレシートを一緒に見ることです。合計と、支払い方法と、残高。三つを声に出して読むだけで、「見えないものを見に行った」という経験が一回残ります。交通系ICカードをお持ちなら、改札機や券売機で残高表示を見せていただくのもおすすめです。数字が動くところを自分の目で見ると、「減っていない」という誤解はその場で消えます。
なお、分割払いや手数料、リボ払いといったしくみには、この記事では踏みこんでいません。3年生の段階では、支払いが遅れてやってくるところまでで十分だと判断しました。金額をともなう操作は必ず大人が行う、という線だけ、ご家庭のきまりとして先に決めておいていただけると安心です。