運ぶにはお金がかかります。だったら、いちばん近い畑のものが店にならぶはずです。ところが実際の売り場は、そうなっていません。なぜ、わざわざ遠くから運ぶのでしょうか。
品物の産地をしらべる学習は、たいていこう進みます。ふくろやラベルの表示を書き写す。おうちのレシートを持ちよる。黒板にはった日本地図に、シールをぺたぺたとはっていく。
そして「北海道が多かったです」「いろいろな所から来ていました」と書いて、おしまい。
ここで止まってしまうのが、この単元のいちばんもったいないところです。シールの数を数えるのは作業であって、考えたことにはなっていません。
地図にシールがたまったそのあとに、やっと問いが立ちます。「どうしてここに集まったのだろう」。この一言を言えるかどうかで、学習の深さがまるで変わります。
3年生の社会科は、身のまわりを見て、その裏にあるしくみに気づいていく教科です。産地の学習も同じで、地名をおぼえるためのものではありません。その地名がえらばれた理由を考えるためにあります。
ですからこの記事では、シールをはったあとの話だけをします。集め方そのものは、店ではたらく人の学習でやったとおりで十分です。
キャベツが群馬。ねぎが千葉。じゃがいもが北海道。ぶどうが山梨。ぐうぜんそうなったわけではありません。理由は、だいたい次の三つのどれかに当てはまります。
| 理由 | どういうことか | 例 |
|---|---|---|
| 土地や天気が合っている | すずしい・あたたかい・雨が少ない・土がやわらかい | すずしい高原のキャベツ、日ざしの強い土地のみかん |
| むかしから作りつづけてきた | 作り方や道具、売り先が土地にたまっている | お茶、りんご、焼きもの |
| 運びやすい場所にある | 大きな町や港、高速道路に近い | 大都市のまわりで作る葉もの野さい |
この三つで見ると、ばらばらに見えた地名がつながりはじめます。たとえば「すずしい所のキャベツ」は、夏でもすずしいから、夏に作れるという意味です。
あたたかい土地でキャベツを作ろうとすると、夏にはとけたようになってしまいます。作れないのではなく、その季節には作れないのです。
ここが、この単元でいちばんおもしろくなるところです。産地は、場所の話であると同時に季節の話でもあるのです。
一年を通してキャベツの産地を追いかけると、こんなふうに動いていきます。
スーパーのキャベツは一年中あります。でも、ずっと同じ畑のキャベツではありません。すずしい所をリレーのように移りながら、切れ目なくとどけられています。
だから産地しらべは、一回だけやると、まちがった答えが出ます。六月に調べた結果と十二月に調べた結果は、ちがっていて当たり前なのです。
「五月に調べたら群馬が多かった」は正しい記録です。「キャベツは群馬から来る」と書いてしまうと、言いすぎになります。いつ調べたかを必ず書きそえる。これは調べ学習ぜんたいで通用する作法です。
ノートにまとめるときも、「五月〇日に、家にあった品物二十こを調べた」と書いておく。そうすると、あとで見返した人がその記録をそのまま使えます。
表示を集めると、都道府県の名前にまじって、国の名前が出てきます。バナナはフィリピン、えびはベトナム、牛肉はオーストラリア、といったぐあいです。
これも、理由は同じ三つで説明できます。バナナは日本ではほとんど育ちません。あたたかさが足りないからです。作れないものは、作れる土地から運ぶしかありません。
いっぽうで、日本でも作れるのに外国から来ているものもあります。そちらは「作れない」ではなく「そのほうが安くたくさん手に入る」という理由です。
| タイプ | 理由 | 例 |
|---|---|---|
| 日本では育ちにくい | 気候が合わない | バナナ、コーヒー、パイナップル |
| 日本でも作れる | 広い土地で作ると安くなる | 小麦、大豆、牛肉 |
この二つを分けられると、五年生で習う食料の学習でつまずきません。「外国産だからわるい」でもなく、「国産ならいつでも正しい」でもない、ということが先に分かるからです。
地図にシールをはるときは、日本地図のよこに世界地図も出しておくことをおすすめします。日本地図だけだと、はれないシールが出てしまいます。
遠くから運べば、ガソリンを使い、時間もかかります。そこで「近くでとれたものを、近くで食べよう」という考え方があります。これを地産地消といいます。
給食で地元の野さいが使われる日があるのは、この考え方によるものです。運ぶきょりが短いので、とれたてに近い状態で食べられ、作った人の顔も見えます。
ただし、地産地消だけですべてをまかなうことはできません。近くで作れないものもあるし、地元の畑が雪でうまっている季節もあります。
どちらかがえらいのではなく、両方があるから、店の棚が一年中うまっている。この見方ができると、発表のときの言葉がぐっとしっかりします。
「北海道」とだけ書きとると、あとで何の産地だったか分からなくなります。「じゃがいも/北海道」と、かならず二つで一組にします。
シールの合計だけ数えても、気づけることはあまりありません。野さい・くだもの・肉や魚・かんづめ、と種類で分けると、種類ごとにかたよりが見えてきます。
「国産」「〇〇県ほか」のように、はっきりしない書き方もあります。むりに決めつけず、見たまま写しておきます。あとで「なぜぼかして書くのだろう」という新しい問いになります。
都道府県の名前を書けるかどうかは、この単元の目標ではありません。
だいじなのは理由とセットで言えるかです。「すずしいから、夏のキャベツはここ」と言えれば、県名をど忘れしていても理解できています。
その日の店にあったものが、一年中そうだとはかぎりません。
産地は季節で入れかわります。調べた日をいっしょに書くだけで、この行きすぎはふせげます。
「近いほうがよい」と単純に結んでしまう子がいます。
けれど遠くから来るものがなければ、冬に食べられるものはぐっと減ります。よい・わるいではなく、それぞれの役わりで考えると正しくとらえられます。
Q1 夏のキャベツが、すずしい高原から来るのはなぜですか。
A キャベツはすずしい所でよく育つからです。あたたかい土地では夏には作れないので、その季節だけ産地が入れかわります。
Q2 バナナがフィリピンから来るのは、小麦が外国から来るのとどうちがいますか。
A バナナは日本では育ちにくいから。小麦は日本でも作れますが、広い土地で作ると安くたくさん手に入るからです。理由の種類がちがいます。
Q3 産地しらべのノートに、調べた日づけを書くのはなぜですか。
A 産地は季節で入れかわるからです。日づけがないと、べつの季節に調べた人と、どちらが正しいか分からなくなります。
Q4 地産地消のよいところを一つ、できないことを一つ書きましょう。
A よいところは、運ぶきょりが短く、新しいまま食べられること。できないことは、近くで作れないものや、季節外れのものはそろえられないことです。
Q5 「北海道が多かったです」で終わらせないために、次に何を書けばよいですか。
A どうして北海道が多いのかという理由です。広い土地、すずしい気候、むかしから作ってきた、のどれに当てはまるかを考えて書きます。
いちばん手軽なのは、冷蔵庫の中のものを五つだけ見てもらうことです。ふくろやラベルに産地が書いてあります。全部やろうとすると続かないので、五つで切り上げてください。
そのとき「どうしてここなんだろうね」と一言そえるだけで、この単元のねらいにまっすぐ届きます。答えが分からなくてもかまいません。問いのほうが大事です。
季節がめぐったころ、同じ品物をもう一度見てみると、産地が変わっていることがあります。これに自分で気づけた子は、しばらく忘れません。
店に着くまでの道のりは品物が店にとどくまでに、都道府県そのものの覚え方は都道府県にまとめてあります。