「か」に てんてんを つけると「が」。みなさんは 毎日 あたりまえに 書いて います。では、あの 点 2つは、字の どこを かえて いるのでしょう。じつは、かわって いるのは 口では なく、のどです。この きじでは、だくてんと はんだくてんの 正体を、じっけんで たしかめます。
さいしょに、ふしぎな じっけんを 1つ。となりの 人に 聞こえない くらいの ささやき声で、「がっこう」と 言って みて ください。こしょこしょ話の 声です。
どうでしょう。じぶんの 耳には、「かっこう」と 言って いるように 聞こえませんか。ささやき声に すると、てんてんの 音だけが、すっと きえて しまうのです。「ざる」は「さる」に、「でんき」は「てんき」に 近づきます。
点を 書きわすれた わけでも ないのに、音が きえる。と いう ことは、てんてんの 正体は 字の 形では なく、声の 出しかたの ほうに ある、と いう ことです。
のどを つかわずに、いきだけで 話す 声の ことです。だから、のどで 作って いる 音は、ささやくと 出せなく なります。ここに てんてんの ひみつが かくれて います。
こんどは、のどに 手のひらを あてて、「すーーー」と 長く 言って みます。つぎに、おなじまま「ずーーー」。
「ずー」の ときだけ、手のひらに ブルブルと ふるえが つたわります。口の 形は、「す」も「ず」も まったく おなじ。ちがうのは、のどを ふるわせて いるか どうか、それだけです。
つまり、てんてんは こう 読みます。「この 字は、のどの スイッチを 入れて 言ってね」。あたらしい 音の 字を ふやす かざりでは なく、おなじ 口の 動きに のどの ふるえを たす、あいずなのです。だから 組に なる 字は、いつも きまって います。
| のどの スイッチ オフ | オン(てんてん) |
|---|---|
| か き く け こ | が ぎ ぐ げ ご |
| さ し す せ そ | ざ じ ず ぜ ぞ |
| た ち つ て と | だ ぢ づ で ど |
| は ひ ふ へ ほ | ば び ぶ べ ぼ |
てんてんが つくのは、この 4つの 行だけです。ひらがなの きじで「てんてんは のどを ふるわせる しるし」と ひとこと 出て きましたが、今日は その 1行が 主やくです。
てんてんは 音を かえるので、書きわすれると こまった ことが おきます。字が ちょっと おしく なるのでは ありません。まるごと べつの ことばに なって しまうのです。
| てんてん なし | てんてん あり |
|---|---|
| かき(くだもの) | かぎ(ドアを あける) |
| ふた(びんに かぶせる) | ぶた(どうぶつ) |
| さる(どうぶつ) | ざる(ざるそばの ざる) |
| こま(まわす おもちゃ) | ごま(ごはんに かける) |
| てんき(はれ・あめ) | でんき(ライトが つく) |
「ふたの 絵を かいてね」と 「ぶたの 絵を かいてね」では、できあがる 絵が ぜんぜん ちがいます。てんてんの 書きわすれは、字の 小さな ミスでは なく、つたわる いみが かわって しまう 大きな ちがいなのです。書いた あとに 点だけ 見なおす ねうちが、ここに あります。
てんてんの となりには、もう 1つ、まる(゜)が あります。「ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ」の まるです。この まるは、は行にしか つきません。どうして でしょう。
口の 形を くらべる じっけんを して みます。かがみが あると よく 見えます。
おどろく ことに、「ぱ」と「ば」は 口の 動きが そっくりの きょうだいで、「は」だけが くちびるを つかいません。「ば」は、じつは 「は」よりも 「ぱ」に ずっと 近い 音なのです。
だから、は行には しるしが 2しゅるい 用意されて います。まる(゜)は「くちびるで ぽんと 言ってね」、てんてん(゛)は さらに のどの スイッチも オン。ほかの 行には くちびるの きょうだいが いないので、まるの 出番も ないのです。
音の ようすを あらわす ことばを ならべると、てんてんには もう 1つ はたらきが ある ことが 見えて きます。
| てんてん なし | てんてん あり |
|---|---|
| とんとん(かるく ノック) | どんどん(つよく たたく) |
| さらさら(かわいた すな) | ざらざら(あらい かみやすり) |
| ころころ(小さい ボール) | ごろごろ(大きな 岩) |
| ぱらぱら(小雨) | ばらばら(ちりぢりに なる) |
てんてんが つくと、おなじ ことばでも 大きく、おもく、つよく 聞こえます。のどを ふるわせる ぶん、音に ずっしりと おもみが のるからです。おはなしを 書く とき、雨の ふりかたを「ぱらぱら」に するか「ざあざあ」に するかで、読む 人に つたわる 雨の つよさが かわります。点 2つは、ここでも しごとを して います。
さいごに、いちばん ふしぎな 話です。つぎの ことばを 見て ください。
「ひ」「かみ」「そら」には、てんてんが ありません。ところが、ことばと ことばが くっついた とたん、うしろの ことばの さいしょの 字に、てんてんが ひょっこり 生まれるのです。だれかが きめた わけでも ないのに、日本中の 人が むかしから しぜんに そう 言って きました。2つの ことばが「1つの ことばに なったよ」と いう 目じるしの ように、てんてんが ともるのです。
この くっつきの しくみは、5年生の ふくごうごの きじで くわしく べんきょうします。1年生の うちは、「はなび」の「び」を 見つけたら、「あ、『ひ』が へんしんして いるな」と 気づけたら 十分です。
ちなみに 「はなぢ」は 「はな+ち」なので、「じ」では なく「ぢ」と 書きます。「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の えらびかたには きまりが あって、2年生の かなづかいの きじが その 話の つづきです。
てんてんと まるは、字の 右上に 小さく 書きます。字の 中に めりこませたり、左に 書いたり すると、読む 人が べつの 字と 見まちがえます。ます目の 右上の かどを つかう、と きめて しまうのが こつです。
「ふた」か「ぶた」か まよったら、声に 出して、のどに 手を あてて みます。ブルブル きたら てんてんが いる 音です。目で おぼえるより、のどで たしかめる ほうが、ずっと まちがえにくく なります。
てんてんと まるは、かたかなにも そのまま つかいます。「パン」「バス」「ページ」。ひらがなで できた ことは かたかなでも できる、と 知って おくと、あたらしく おぼえなおす ひつようは ありません。
Q1 のどに 手を あてて たしかめます。「く」と「ぐ」、のどが ふるえるのは どっち?
A 「ぐ」。口の 動きは おなじで、のどの スイッチが オンに なって います。
Q2 「はら」に てんてんを つけると、なんと 読む? どんな いみに なる?
A 「ばら」。おなかの「はら」が、とげの ある 花の 名前に かわります。点 2つで ことばが まるごと かわる れいです。
Q3 まる(゜)が つけられるのは、どの 行?
A は行だけ。「ぱ ぴ ぷ ぺ ぽ」。くちびるで ぽんと 言う 音の しるしだからです。
Q4 「かみ」は、「て」と くっつくと なんに なる?
A 「てがみ」。くっついた あいずに、「か」に てんてんが 生まれて「が」に なります。
Q1で のどの ふるえを 手で 見つけられたら、てんてんの 正体は もう つかまえて います。
濁点は「か゛」のように字の一部として丸暗記させられがちですが、実体は音声の仕組み(声帯の振動=有声音)を表す、世界でもめずらしい合理的な記号です。仕組みごと理解した子は、濁点の書き忘れが「形のミス」ではなく「別の言葉になる事故」だと分かるので、見直しの目が変わります。
確かめ方は、本文の実験をいっしょにやるだけです。のどに手を当てて「すー/ずー」、ささやき声で「がっこう」。どちらも道具なしで5分あれば足ります。書き間違いを見つけたときは、「点を忘れてるよ」ではなく「これだと『ふた』じゃなくて『ぶた』になっちゃうよ」と、意味が変わる面白さの側から声をかけると、直しが遊びに変わります。
なお「じ/ぢ」「ず/づ」の使い分けは1年生ではまだ扱いません。お子さんが「はなぢはどうして『ぢ』?」と聞いてきたら、この記事の「ことばがくっつくと」の節と、2年生のかなづかいの記事につながる良い質問です。