46字を おぼえる だけの 勉強では ありません。字の 形を 見わける 力 と 手を 思いどおりに 動かす 力 を 同時に そだてて います。
ひらがなの きほんの 字(清音・せいおん)は 46字 です。これに、てんてん(濁点)や まる(半濁点)が つく 字が くわわります。
| しゅるい | しるし | れい | 字の 数 |
|---|---|---|---|
| 清音(せいおん) | なし | あ・か・さ・た… | 46字 |
| 濁音(だくおん) | てんてん「゛」 | が・ざ・だ・ば | 20字 |
| 半濁音(はんだくおん) | まる「゜」 | ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ | 5字 |
ここで 気づいて ほしい ことが あります。「が」は あたらしい 字では ありません。「か」に てんてんを つけた ものです。
つまり、てんてんの つく 字を おぼえる とき、あたらしく 20字 おぼえる ひつようは ありません。「か」が 書けるなら、てんてんを つけるだけで「が」が 書ける。子どもに この しくみを 教えて あげると、ぐっと 気が らくに なります。
音の 上でも きまりが あります。「か」と「が」は、口の 形は まったく 同じで、のどを ふるわせるか どうかだけの ちがいです。手を のどに あてて「か」「が」と 言って みると、「が」の ときだけ ふるえるのが 分かります。この あそびは 子どもが とても よろこびます。
「書き順が ちがっても 読めれば いいのでは?」── そう 思う 方も いるでしょう。じつは 書き順には ちゃんと 理由が あります。
とくに 2つめが 大事です。書き順が でたらめだと、字の 形が くずれやすく なります。「ぬ」や「ね」の ように、線が 交わる 字ほど はっきり 差が 出ます。
ただし、書き順を まちがえたからと いって、きびしく しかる ひつようは ありません。書く 楽しさが なくなる ほうが よほど そんです。「こう 書くと 書きやすいよ」と 見せて あげる くらいが ちょうど よい でしょう。
1年生が ひらがなで つまずく いちばんの 原いんは、字の 数では ありません。にた 形の 字を 見わける ことです。
| にて いる 字 | ちがう ところ |
|---|---|
| あ ・ お | 右下の はらいの むきが ちがう |
| い ・ り | 左の 線の 長さと むき |
| き ・ さ | よこ線が 2本か 1本か |
| は ・ ほ | よこ線の 数 |
| ぬ ・ め | さいごの 輪が あるか ないか |
| わ ・ ね ・ れ | 右がわの 形(まるい・はねる・はらう) |
| ま ・ も | よこ線が 2本か 1本か |
とくに 「わ・ね・れ」の 3きょうだい は なんかんです。左がわは まったく 同じで、右がわだけが ちがいます。
教えかたの コツは、ちがう ところ だけを 見せる ことです。3つを ならべて 書き、左がわを 手で かくして「ここだけ ちがうね」と 見せます。全体を くらべると こんがらがりますが、ちがう 部分に しぼると 分かりやすく なります。
「し」が 左右 ぎゃくに なる、「く」が 上下 ぎゃくに なる ── これを かがみ文字 と いいます。
ほとんどの 子が、1年生の ころに 一度は 書きます。これは まったく ふつうの こと で、しんぱいは いりません。人の 目と 手が、左右の ちがいを はっきり 区べつできる ように なるまでには 時間が かかるのです。
じっさい、6さいくらいの 子どもは「左右が ぎゃくでも 同じ ものだ」と 感じる 力が つよく はたらいて います。これは 生きて いく うえで やくに立つ 力(横を むいた 犬も、正面を むいた 犬も、同じ 犬だと 分かる)で、けっして 弱点では ありません。
しかる ひつようは ありません。正しい 字を となりに 書いて、見くらべさせる だけで じゅうぶんです。
「どっちが 正しいと 思う?」と 聞くと、多くの 子は 正しい ほうを えらべます。書けなくても、見分けは できる のです。書く 力が 追いつくまで、まって あげて ください。
字が うまく 書けない 原いんが、手の 力や 動かしかた に ある ことも あります。
ひらがなは 曲線が 多く、じつは かなり むずかしい 形です。「あ」「お」「ぬ」「め」など、くるっと まわる 動きは、えんぴつを こまかく コントロールする 必要が あります。
この 力を そだてるには、字の れんしゅうより 手を つかう あそび の ほうが こうかてきな ことが あります。
とくに ぬりえ は、線から はみ出さないように 力を 調せいする れんしゅうに なり、字を ととのえる 力に 直けつします。「字の れんしゅうを させなきゃ」と あせる より、こういう あそびの 時間を 取る ほうが 近道な ことが あります。
字は 書けるのに、文しょうに なると 読めない。これは 1字ずつは 読めるが、つなげて 意味に できて いない じょうたいです。
「ね・こ」と 1字ずつ 読んで、そのあと「ねこ」と つなげる 段かいを ふみます。音読を たくさん する ことが いちばんの れんしゅうです。
大きく 書きすぎる、または 小さすぎる。これは 手の コントロールが まだ そだって いない だけです。
大きい マスの ノート から 始めます。1年生の うちは、マスが 大きいほど よいです。小さい マスに 書かせると、字が きらいに なりやすいです。
にぎりこむ ように 持つ、ゆびが 曲がりすぎる。これは 早めに なおして あげた ほうが よい ところです。
ただし、いっぺんに なおそうと しない こと。「1日 5分だけ、正しい 持ちかたで 書く」 から 始めると、むりなく 直せます。持ちかたを 助ける 補助ぐも 市はんされて います。
Q1 「わ」「ね」「れ」を ならべて 書き、ちがう ところを ゆびで さしましょう。
A 右がわの 形。「わ」は まるく とじる、「ね」は はねる、「れ」は はらう。
Q2 のどに 手を あてて「か」「が」と 言って みましょう。ちがいは?
A 「が」の ときだけ のどが ふるえます。てんてんは「のどを ふるわせる」しるしです。
Q3 「は」に てんてんを つけると? まるを つけると?
A てんてんで「ば」、まるで「ぱ」。もとの 字が 分かれば、3つとも 書けます。
Q4 「き」と「さ」は どこが ちがいますか。
A よこ線の 数。「き」は よこ線が 2本、「さ」は 1本です。ならべて 書くと はっきり します。
この ような「どこが ちがう?」という しつもんは、ただ 字を 書かせるより ずっと 頭を つかいます。ちがいを ことばで 言える 子は、字を 見わける 目が そだって いる しょうこです。まちがえても かまいません。ならべて 見くらべる 時間 じたいが れんしゅうに なって います。
ひらがなの習得速度には、かなり大きな個人差があります。入学前にすらすら書ける子もいれば、夏休み明けにようやく形になる子もいます。この差は、多くの場合その後の学力とは関係ありません。
心配なのは、書けないこと自体より「書くのが嫌いになること」です。うまく書けない字を何度も消させる、繰り返し書かせる──こうした指導は、字を嫌いにさせる最短ルートです。
おすすめは、書く目的を作ることです。おばあちゃんへの手紙、おつかいメモ、絵に添える一言。「誰かに伝えるために書く」経験があると、練習の意味が子どもにも分かります。