2年 国語 かなづかい

かなづかい ── 「ちかづく」か「ちかずく」かは、耳では 決められない

作文に 赤が 入る まちがいの 中に、「ちかずく」「つずく」「とうい」の ような ものが あります。この 手の まちがいは、ていねいに 聞きなおしても ぜったいに 直りません。音が 同じだからです。決め手は 耳では なく、もとの ことばに さかのぼること。そこには きちんとした 決まりが あります。

「ちかづく」と「ちかずく」── 声では 区べつが つかない

つぎの 四つの ならびを、声に 出して 読んで みて ください。左と 右で、音が ちがって 聞こえるでしょうか。

ちかづく / ちかずく はなぢ  / はなじ とおい  / とうい おおきい / おうきい

どれも まったく 同じに 聞こえます。それも そのはずで、むかしの 日本語では ちがう 音だったのに、いまは 一つの 音に なって しまった からです。音は 一つに なったのに、字だけが 二つ のこった ── これが やっかいの 正体です。

ですから、この なかまの まちがいを「よく 聞いて 書きなさい」と 注意しても 意味が ありません。聞いても 分からない ものを 聞かせて いる ことに なるからです。かわりに 使うのが、ことばを もとの すがたに もどして 見る という 方ほうです。これが かなづかい の きまりです。

字が 二つ ある ところは、四つ しか ない

先に 安心して ほしい ことが あります。音が 同じで 字が 二つ ある ところは、日本語じゅうを さがしても つぎの 四つ だけです。

① は・を・へ   → 音は「ワ・オ・エ」なのに、字は は・を・へ ② じ と ぢ ③ ず と づ ④ のばす 音   → 「おう」か「おお」か/「えい」か「ええ」か

①は 1年生で ならった 「は」「を」「へ」の つかいかた の 話です。文の 中の はたらきで 決まるので、ここでは あつかいません。この 記事で かたづけるのは ②③④の 三つに なります。

そして ②③には、はっきりした きまりが あります。④は 半分が きまりで、半分は 覚える ものです。覚えなければ ならないのは、思って いるより ずっと 少ないと 先に 言って おきます。

きまり① 同じ 音が つづいたら「ぢ・づ」

一つめは、すぐに 目で 分かる きまりです。すぐ 前の 字が「ち」か「つ」なら、にごる 字は「ぢ」「づ」に なります。

ち+ぢ → ちぢむ ちぢれる ちぢこまる つ+づ → つづく つづり つづみ つづら

「ちぢむ」を もし「ちじむ」と 書くと、ち・じ で 音の なかまが とぎれて しまいます。もとの 形は「ちち」「つつ」で、うしろが にごっただけ。だから 字も「ち」「つ」の すがたを のこす、と いう 考え方です。

学校の テストに よく 出るのは、この 中の「つづく」です。「つずく」と 書いて しまう 子は とても 多いのですが、前の 字を 見れば 一しゅんで 決まります。前が「つ」。だから つづく。まよう ところが ありません。

きまり② 二つに 分けて、うしろの はじめを 見る

二つめは、少し 頭を つかいます。その ことばが 二つの ことばから できて いて、うしろの ことばが「ち」か「つ」で はじまるなら、「ぢ」「づ」に なります。

はな + ち   → はなぢ   (鼻血) みか + つき  → みかづき  (三日月) て  + つくり → てづくり  (手作り) ちから+ つよい → ちからづよい(力強い) こ  + つつみ → こづつみ  (小包) かた + つく  → かたづく  (片づく)

右がわだけを 見ると ばらばらな ことばに 見えますが、左がわに もどすと 同じ しくみだと 分かります。うしろの ことばが 一人で 立って いた ときは、ち・つ だったのです。くっついた ときに 音が にごっただけで、もとの 字は 消えません。

ためしに、いま 読んで いる この 記事の 見出しの ことばを 分けて みて ください。かな+つかい。うしろが「つ」で はじまって いますね。だから「かなずかい」では なく「かなづかい」と 書きます。きまりの 名前 じしんが、その きまりで できて いるのです。

どちらでも なければ「じ・ず」

ここまでの 二つに あてはまらなければ、のこりは ぜんぶ「じ」「ず」です。まよったら こちら、と 覚えて かまいません。日本語の ことばは、じ・ず の ほうが ずっと 多いからです。

じ じめん(地面) じかん(時間) もみじ にじ ず ずこう(図工) しずか(静か) みず すずめ

とくに まちがえやすいのが「じめん」です。土の 地めん だから「ち」が もとでは?と 考えて「ぢめん」と 書く 子が います。でも「地」と いう 漢字の 読みは、はじめから「ジ」です。「ち」から にごったのでは ないので、じ を つかいます。

ここで 手じゅんを 一つの 表に まとめて おきます。まよったら、上から 順に あてはめて ください。

順たしかめる こと答え
1すぐ 前の 字が「ち」「つ」かはい → ぢ・づ(ちぢむ・つづく)
2二つに 分けられて、うしろが「ち」「つ」で はじまるかはい → ぢ・づ(はなぢ・みかづき)
31でも 2でも ないいいえ → じ・ず(じめん・みず)

三つしか ありません。そして 1と 2は、声を 出さずに 目だけで たしかめられます。かなづかいを 耳の 仕事から 目の 仕事に 変える ── それが この 表の ねらいです。

分けられるのに「ず」と 書く ことば

正直に 言って おきたい ことが あります。きまり②で 分けられそうなのに、いまは「ず」と 書くのが ふつうに なった ことばが、いくつか あるのです。

いなずま きずな つまずく うなずく せかいじゅう

「いなずま」は もともと「いね(稲)の つま」でした。でも いま その もとを 感じながら 使って いる 人は ほとんど いません。二つの ことばだと だれも 思わなく なった ものは、じ・ず の がわに うつる ── そう 決められて います。

数は 多く ないので、出て きた ときに 一つずつ 覚えれば 足ります。それより 大事なのは、例がいが ある ことを 知って おくと、じてんを 引く 手が 止まらなく なる ことです。ことばの 正しい 形は、国語じてん が いつでも 教えて くれます。

のばす 音は「う」が ふつう、「お」は 決まった ことばだけ

四つめの なかま、のばす 音に いきます。「オー」と のばす 音を 書く とき、ほとんどの ことばは「う」を つかいます。

おとうさん おはよう そうじ とうばん ほうき こうえん

ところが、ごく 一部だけ「お」を つかう ことばが あります。そして この なかまは 数が 決まって いて、ふえません。よく 出る ものを ならべます。

とおい とおる とお とおり おおい おおきい こおり こおる こおろぎ おおかみ おおやけ ほのお ほお もよおす いきどおる

十五こ です。二年生の 間に 出会うのは、この うち「とおい・おおきい・おおい・こおり・とお」くらいでしょう。五つ なら 覚えられます。ここに ない ことばは「う」だと 決めて しまって かまいません。

「エー」と のばす 音は もっと かんたんです。「え」と 書くのは 「ええ」と「ねえさん」だけ。あとは ぜんぶ「い」を つかいます。

「え」と 書く → ええ ねえさん 「い」と 書く → せんせい とけい えいが けいさん

ちなみに 音を のばす ときの きまりは、小さい「っ」や「ゃゅょ」と ならぶ 一年生の 山でした。そちらは のばす音の きほん で くわしく 見て います。

つまずきやすい ところ

その1 声に 出して たしかめようと する。ほかの 国語の 場面では 音読が よく ききますが、この 単元だけは 通用しません。音が 同じ ものを 区べつする 話だからです。紙に 書いて、目で 分ける。順番が ぎゃくに なって います。

その2 きまり①と きまり②を まぜる。「つづく」は ①(前が つ)、「てづくり」は ②(分けると つくり)。どちらも づ に なるので 同じに 見えますが、たしかめる 場しょが ちがいます。①は すぐ 左の 一字、②は ことばの 切れ目です。

その3 漢字の 読みを 見おとす。「じめん」「ずこう」「ずつう」のように、漢字が はじめから ジ・ズと 読む ものが あります。にごった 結かなのか、もともと そう 読むのかを 分けて 考えて ください。

その4 「おお」の ことばを 多く 見つもる。「おうさま」「おうだん」「ほうそう」は ぜんぶ「う」です。「お」の なかまは 上の 十五こが 中心で、それ 以外は まず 出て きません。まよったら「う」が、当たる 見こみの 高い えらび方です。

やって みよう

紙と えんぴつ だけで できる、三つの たしかめです。

① 二つに 分ける ゲーム。「はなぢ」「みかづき」「てづくり」「こづつみ」を、もとの 二つの ことばに 分けて 書いて みます。うしろの ことばが ぜんぶ ち・つ で はじまる ことを 目で たしかめて ください。分けた しゅんかんに にごりが 消える ── ここが 気持ちの いい ところです。

② まちがい さがし。つぎの 五つの うち、まちがって いるのは どれでしょう。「つずく」「ちぢむ」「はなぢ」「かなづかい」「みかずき」。答えは「つずく」と「みかずき」で、正しくは つづく・みかづき です。

③ 十五この 音読み。「お」で のばす ことば 十五こを、一日 一回 声に 出して 読みます。三日 つづけると、見た とたんに「あ、これは お だ」と 分かるように なります。書いて 覚えるより、読んで 覚える ほうが 早い なかまです。

よくある しつもん

Q1 「ひとりずつ」は、「づつ」では ないのですか。

A いまは「ずつ」と 書くのが ふつうです。むかしは「づつ」と 書いて いたので、年上の 人が そう 書く ことも あります。まちがいでは ありませんが、テストでは「ずつ」に して おくと 安心です。

Q2 パソコンで うつ ときは どうすれば いいですか。

A 「ぢ」は di、「づ」は du と うつと 出ます。「はなぢ」なら hanadi です。ローマ字の うち方と、かなの 書き方は べつの きまりなので、そこは 分けて 覚えて ください。

Q3 どうして むかしの 字が のこって いるのですか。

A 字を 先に 変えて しまうと、もとの ことばとの つながりが 切れて しまうからです。「はなぢ」が「はなじ」に なると、鼻の 血 だと いう ことが 見えなく なります。字は、音だけで なく 意味も 運んで いるのです。

Q4 この きまりは いつまで 使いますか。

A 大人に なっても ずっと 使います。書く 量が ふえる 高学年ほど 出番が 多く なります。いま 手じゅんを 三つ 覚えて おくと、あとで まよう 回数が はっきり へります。

まとめ

おうちの方へ

この単元のまちがいは、注意力や聞き取りの問題ではありません。現代の日本語では「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の音が完全に統合されているため、耳で判別することが原理的に不可能です。「よく聞いて書きなさい」という声かけだけは避けてください。子どもは聞き分けようと努力し、それでもできず、自分の能力の問題だと受け取ってしまいます。
かわりに有効なのが、「その言葉、二つに分けられる?」という一言です。はなぢ、みかづき、てづくり、かたづく ── 二語に分解して後ろの語頭を見る、という手順は、大人が横で一度実演してみせるだけで伝わります。分けたとたんに濁点が消えるところを見せると、納得の度合いが違います。
のばす音については、「お」と書く語が十数語で固定されているという事実を伝えるのが近道です。範囲が有限だと分かると、暗記の負担感が大きく下がります。逆に言えばそれ以外は「う」と機械的に決めてよく、一語ずつ悩む必要はありません。
なお、「いなずま」「きずな」のように語源上は「つ」に由来しながら現在は「ず」と書く語があります。大人でも判断が割れるところですので、迷ったら辞典で確かめる姿を見せてください。辞典は答えを写す道具であると同時に、大人も迷うことがあると伝えるための道具にもなります。