5年 国語 複合語

複合語 ── 二つの言葉がくっつくと、音が変わる

「たび」と「ひと」で「たびびと」。「ひと」のままではありません。くっついたときだけ音が変わる。この不思議には、はっきりした決まりがあります。

複合語とは、二つ以上の言葉が合わさって一つになった言葉

もとは別々だった言葉が合わさって、新しい一つの言葉になったものを複合語といいます。

やま + みち → やまみち(山道) はな + ひ  → はなび(花火) ながい + くつ → ながぐつ(長ぐつ) おもう + だす → おもいだす(思い出す)

だいじなのは、合わさって「一つの言葉」になっているという点です。「山の道」は説明ですが、「山道」は一語です。だから国語辞典を引くと、「やまみち」でひとつの見出しになっています。

この単元では、もとになる言葉の種類でいくつかの型に分かれることをまず押さえます。

組み合わせ例できた言葉の働き
名詞+名詞山道、花火、朝ごはんものの名前
形容詞+名詞長ぐつ、青空、細道ものの名前
動詞+動詞思い出す、飛びこむ、行き来動きを表す
名詞+動詞草取り、月見、山登り動きやその名前

「思い出す」のように、動詞どうしがくっついた形も立派なものです。二語に見えないほどなじんでいますが、「思う」と「出す」に分けられます。

くっつくと、うしろの語の音がにごる ── 連濁

いちばん目立つ変化が、うしろの言葉の最初の音がにごることです。これを連濁といいます。

たび + ひと → たびびと(旅人) おり + かみ → おりがみ(折り紙) て  + かみ → てがみ(手紙) まき + すし → まきずし(巻きずし) ほん + たな → ほんだな(本だな)

「ひと」は単独では「ひと」ですが、後ろにつくと「びと」になります。単独の言葉を覚えているだけでは説明できない変化です。くっついたときにだけ起きることに気づくのが、入り口になります。

音がどう変わるかは、五十音の並びで決まっています。

もとの音にごった音例
か行が行かみ→てがみ
さ行ざ行すし→まきずし
た行だ行たな→ほんだな
は行ば行はこ→すなばこ

もとの音とにごった音は、口の形が同じで、のどのふるえだけがちがう関係です。だからこそ、しゃべる速さの中で自然に切りかわります。声に出して「て・かみ」「てがみ」と続けて言ってみると、にごったほうが言いやすいことが体感できます。

にごらない場合にも、理由がある

連濁は、いつでも起きるわけではありません。ここが面白いところです。

おお + かぜ → おおかぜ(「おおがぜ」とは言わない) やま + かじ → やまかじ(「やまがじ」とは言わない)

これらは、うしろの言葉の中にすでににごった音があるという共通点があります。「かぜ」には「ぜ」、「かじ」には「じ」があります。ひとつの言葉の中ににごる音が二つ重なるのをさけるのです。昔から日本語にある、目に見えないルールです。

もう一つ、にごりにくい場合があります。前とうしろが対等に並んでいるときです。

やま + かわ → やまかわ(山と川。並んでいる) くさ + き  → くさき(草と木。並んでいる) くさ + かり → くさかり(草を刈る。関係がある)

二つが横に並ぶ関係のときは、にごらないことが多くなります。反対に「うしろがおもな言葉で、前がそれを説明する」関係のときは、にごりやすくなります。「山道」は「山の道」で、道が中心です。だから「みち」は「やまみち」のままでも、「かみ」は「てがみ」とにごるのです。

さらに、漢語や外来語はにごらないという傾向もはっきりしています。「入学+試験」は「にゅうがくしけん」で、「じけん」にはなりません。「コーヒー+カップ」も「コーヒーガップ」とは言いません。にごりの決まりは、もともとの日本語である和語にはたらくものなのです。和語・漢語・外来語という言葉の出身のちがいが、こんなところに顔を出します。

変わるのは、にごりだけではない

ほかにも音の変化が起こります。

変化の種類例何が起きたか
前の語の音が変わるあめ+かさ→あまがさ「あめ」が「あま」に
同じくふね+たび→ふなたび「ふね」が「ふな」に
音がつまるま+あか→まっか「っ」が入る
音が消えるかわ+はら→かわら「は」が落ちる

「雨」が「雨がさ」「雨だれ」で「あま」になるのは、古い形が残っているためです。「さけ」が「さかば(酒場)」になるのも同じ仲間です。今の形とちがう音が、くっついた言葉の中にだけ生き残っている、といえます。化石のようなものです。

さらに、アクセントもまとめて一つになります。「やま」「みち」を別々に読むときと、「やまみち」と続けて読むときでは、声の高さの上がり下がりがちがいます。声に出して比べると、ひとかたまりになっていることが耳で分かります。これは字を見ているだけでは気づけない発見です。

今も新しく生まれている

くっついた言葉は、昔のものだけの話ではありません。私たちは毎日、新しいものを作っています。

消しゴム(和語+外来語) 校内放送(漢語+漢語) 歯ブラシ(和語+外来語) テレビ番組(外来語+漢語)

「歯ブラシ」は和語と外来語が組み合わさった形で、こういう混ざったものも仲間に数えます。言葉は必要になると、すでにある言葉を組み合わせて作られます。まったく新しい音をゼロから発明することは、ほとんどありません。

この見方ができるようになると、知らない言葉に出会ったときに分解して意味を予想することができます。「潮干狩り」を「しお・ひ・かり」と分ければ、「潮が引いたときに何かを取ること」だと見当がつきます。辞書を引く前に予想してから引くと、意味が頭に残ります。

つまずきやすいところ

①「あてはまるかどうか」を字数で決めてしまう
長い言葉ならそうだと思いこむ子がいます。判断のもとになるのは長さではなく、二つ以上の言葉に分けられて、それぞれに意味があるかです。「ひまわり」は長いけれど、今の私たちには分けられません。逆に「手紙」は短いのに、「手」と「紙」に分かれます。

② にごるかどうかを「気分」で決める
「なんとなくにごりそう」で答えると当たりはずれが出ます。うしろの語ににごる音がすでにあるか、二つが並ぶ関係か説明する関係か、和語かどうか。この三つを順に確かめると、理由をもって答えられます。

③ 送りがなを落としてしまう
「思い出す」を「思出す」と書いてしまう例です。動詞どうしがくっついた形は、それぞれの送りがなを残すのが原則です。一語になっても、もとの形が見えるように書きます。

やってみよう

Q1 「ほん」+「たな」は、どう読みますか。そうなる理由も言いましょう。

A 「ほんだな」。うしろの語が中心で前がそれを説明する関係、しかも和語どうしなので音がにごります。「たな」の「た」がだ行の「だ」になります。

Q2 「おお」+「かぜ」が「おおがぜ」にならないのはなぜですか。

A うしろの「かぜ」の中にすでに「ぜ」というにごった音があるからです。一語の中でにごる音が重なるのをさけています。

Q3 「あまぐも」のもとになった二つの言葉は何ですか。

A 「あめ」と「くも」。前の語が「あま」に変わり、うしろの語が「ぐも」とにごる、二つの変化が同時に起きています。

Q4 身のまわりから、和語と外来語が合わさった例を三つ探しましょう。

A 例:歯ブラシ、生クリーム、赤ワイン。カタカナの前に和語がついている言葉を探すと見つかります。

Q5 「山川」と「山道」で、にごり方がちがうのはなぜですか。

A 「山川」は山と川が対等に並ぶ関係、「山道」は山が道を説明する関係だからです。関係のちがいが音に出ています。

まとめ

おうちの方へ

ここは、暗記ではなく気づきで進む数少ない文法単元です。音がにごる決まりは日本語を話す人なら無意識に守っていて、子どもはすでに正しく使えています。学ぶのは「なぜそうなるか」を言葉にすることです。
おすすめは、台所や買い物の場面で言葉を分解してみることです。「たまごやき」「まきずし」「なべしき」など、身近な言葉に音の変化がひそんでいます。にごる例とにごらない例を並べて、なぜだろうと一緒に考えてみてください。答えが出なくても、比べたこと自体が学習になります。
「あまがさ」「さかば」のような古い音の残りは、六年生の古典学習にもつながります。今の言葉の中に昔の形が残っているという感覚は、歴史を身近にします。
正解を教える必要はありません。子どもが「たぶんこうだから」と理由を言えたら、それが到達点です。