天気予報の読み方 ── 「降水確率30%」は、雨の強さのことではない

この単元について

天気予報は、たぶん子どもが人生でいちばん多く目にする「理科の情報」です。朝のテレビ、スマートフォンの画面、学校のろうかにはられた予報。毎日見ているのに、そこに出てくる数字や記号が何をあらわしているのかは、あんがい習わないまま大人になります。

とくに「降水確率30%」は、多くの人が意味をとりちがえたまま使っています。「小雨だろう」「3割くらいの場所で降る」「1日の3割の時間降る」。どれもちがいます。降水確率は、雨の強さでも、広さでも、長さでもありません。ここをきちんと直すと、天気予報は「見るもの」から「読むもの」に変わります。天気の変化で学んだ「日本の天気は西から東へ動く」という決まりと合わせると、予報がなぜその形で出されるのかまで見えてきます。

降水確率が意味していること

気象庁が出している降水確率の定義は、次のとおりです。

ある地域で、決められた時間のあいだに、1mm以上の雨(または雪)が降る可能性が何%あるか。

言いかえると、「同じような気象の条件が100回あったとしたら、そのうち何回、1mm以上の雨が降ったか」という数字です。降水確率30%なら、同じ予報が出た100日のうち、およそ30日は1mm以上の雨が降ったということになります。

まちがえやすい3つの読み方

よくある思いこみ正しくは
30%=弱い雨が降る強さは関係ない。30%でも土砂ぶりになることはある
30%=地域の3割で降る広さは関係ない。全部の場所で降ることもある
30%=3割の時間降る長さは関係ない。1分でも1mm以上なら「降った」

「0%」は「降らない」ではない

降水確率は10%きざみで発表されます。つまり0%と書かれていても、それは「0〜4%を四捨五入して0にした」という意味で、ぜったいに降らないという保証ではありません。逆に100%も「99.5%以上」をまとめた表示です。天気の予報に「ぜったい」はない、というのは、この10%きざみという書き方そのものに表れています。

1mmという区切り

なぜ1mmなのでしょうか。1mmの雨とは、地面にたまった雨水の深さが1mmになる量です。これはだいたい「かさをさしたくなるかどうか」の分かれ目にあたります。つまり降水確率は、かさを持って出るかどうかを決めるための数字として作られている、と考えると使い方が分かります。40%をこえたらかさを入れる、と自分の基準を決めておくのがいちばん実用的です。

晴れとくもりは、雲の量で決まる

「今日は晴れ」と言うとき、何を見て決めているのでしょうか。太陽が見えているかどうか、ではありません。気象の世界では、空全体を10としたとき、雲がどれくらいをおおっているか(雲量)で決まります。

雲量天気の呼び名見え方のめやす
0〜1快晴雲がほとんどない、青一色に近い空
2〜8晴れ雲があっても、青空のほうが目立つ
9〜10くもり空のほとんどが雲。すきまから青空が見えても、くもり

この表を見ると、ふしぎなことが2つ分かります。1つめは、空の8割が雲でも「晴れ」だということ。2つめは、青空が少し見えていても「くもり」になることがあるということです。「晴れなのに雲だらけ」「くもりなのに青空が見える」という、日常の感覚とのずれは、ここから生まれています。

屋上や校庭で空を見上げて、「今、雲量はいくつ?」と数えてみると、これがなかなかむずかしいことが分かります。だからこそ、天気の変化の観察では、写真をとって記録に残すことがすすめられています。

天気図に出てくる記号

ニュースの後半に出てくる、うずまきと線が書かれた地図が天気図です。ここに出てくるものは、じつはそれほど多くありません。

記号名前おきること
H・高高気圧空気が上から下へ動く。雲ができにくく、晴れやすい
L・低低気圧空気が下から上へ動く。雲ができやすく、雨になりやすい
▲がならぶ線寒冷前線冷たい空気が入りこむ。短い時間に強い雨。通過後は気温が下がる
●がならぶ線温暖前線あたたかい空気がのり上げる。弱い雨が長く続く
▲と●が交互停たい前線動かずに居すわる。梅雨や秋雨のときの長雨

雲ができる場所が、雨の場所

高気圧と低気圧のちがいは、空気が下へ向かうか上へ向かうかだけです。空気は上へ行くほど冷えるので、上へ動くところでは水じょう気が水のつぶに変わり、雲になります。水のすがたで学んだ「水は温度によって、すがたを変える」という決まりが、そのまま空の上でおきている、というだけの話です。天気図の読み方は、暗記ではなく、この1つの理由から組み立てなおせます。

なぜ予報は外れるのか

「昨日の予報、外れたね」と言われるとき、予報を出している側は手をぬいたわけではありません。外れる理由には、はっきりした種類があります。

1. 最初のわずかなちがいが、大きく育つ

予報は、今の空気の状態を数字にして、コンピュータで計算して作ります。しかし、空気の状態を地球じゅうすべての場所で測ることはできません。測っていないすきまは、まわりの数字から推測して埋めます。このわずかなずれが、計算を先へ進めるほど大きくなっていくのが、天気予報の宿命です。だから明日の予報はよく当たり、1週間先の予報はぼんやりしています。

2. 夏の夕立は、小さすぎて予報の網にかからない

夏によくある、急に暗くなって激しく降り、30分でやむ雨。あれは数kmの範囲でおきることがあり、市全体に出す予報では表現しきれません。「同じ市内なのに、うちは降ってとなり町は降らなかった」ということがおきるのはこのためです。

3. 山や海が、天気を作りかえる

日本は山が多く、まわりを海に囲まれています。西から流れてきた空気が山にぶつかると、そこで上に持ち上げられて雨を降らせ、山をこえたあとは乾いた風になります。同じ日でも日本海側と太平洋側で天気がまるでちがうのは、この地形のせいです。

つまり天気予報は「当たる・外れる」の勝負ではなく、いま分かっている範囲で、いちばん確からしいことを言っているだけです。100%当たらないことを承知のうえで使う、というのが正しい付き合い方です。

注意報・警報・特別警報のちがい

ここは、命に関わる部分なので正確におさえておきます。3つは強さの段階です。

段階意味とる行動
注意報災害がおこるおそれがある気をつける。天気の情報をこまめに見る
警報重大な災害がおこるおそれがある危ない場所に近づかない。ひなんの準備をする
特別警報数十年に一度の、これまで経験のない規模ただちに命を守る行動をとる

大切なのは、特別警報が出てから動くのでは間にあわないことがあるという点です。特別警報は「すでにとても危ない状態になっている」ときに出されます。だから、警報の段階で、家の人と「どこへ行くか」を決めておくことが役に立ちます。台風と防災で学んだ備えは、大雨や大雪のときにもそのまま使えます。

つまずきやすいところ

「降水確率が高い=大雨」だと思っている

いちばん多いまちがいです。確率と量はまったく別のものだ、とくり返し確認します。「80%の小雨」も「20%の大雨」も、どちらもふつうにありえます。雨の量が知りたいときは、確率ではなく予想降水量(mm)のほうを見ます。

くもりの日に「予報が外れた」と言ってしまう

「晴れの予報だったのに雲が多い」というとき、雲量が8以下ならそれは予報どおりです。晴れの定義を知らないまま外れたと判断してしまう、というつまずきです。

週間予報の後半を、明日の予報と同じ精度だと思っている

週間予報には、じつは「信頼度A・B・C」という記号がついていることがあります。Cは「変わる可能性が高い」という意味です。遠い先の予報は、あとで変わる前提で見るものだと知っておくと、予定を立てるときの構えが変わります。

やってみよう ── 予報の的中率を自分で出す

「予報はどれくらい当たるのか」を、自分の手で確かめられます。用意するのは紙とえんぴつだけです。

  1. 毎朝、その日の降水確率をメモする(例:9/8 → 40%)
  2. その日の夜、実さいに雨が降ったかどうかを○×で書く
  3. これを2週間から1か月続ける
  4. 「降水確率が50%以上だった日」を集めて、そのうち何日ほんとうに降ったかを数える

たとえば50%以上の日が10日あって、そのうち6日降っていたら、6÷10で60%です。この「集めて、割って、%にする」という手つきは、算数の割合そのものです。理科の記録が、算数の計算になり、その答えが理科の結論になるという往復を体験できるところが、この調べ方のいいところです。自由研究のテーマとしても、道具がいらないので取り組みやすいものになります。

おうちの方へ

天気予報は、家庭でいちばん自然に理科の話ができる素材です。むずかしい説明はいりません。朝、予報を見ながら「今日は30%だって。かさどうする?」と一言たずねるだけで、子どもは数字を見て自分で判断するという練習をします。これは、理科の知識より先に身につけてほしい力です。

そして、外れた日こそ話す価値があります。「外れたね」で終わらせず、「なんで外れたんだろうね」と一緒に考えてみてください。予報は、限られた情報から、いちばんありそうなことを言っているにすぎない。そのことが分かると、天気予報だけでなく、世の中に出てくるいろいろな数字との付き合い方が変わっていきます。

なお、防災の話をするときは、こわがらせる必要はありません。「危ないよ」ではなく「こうなったら、うちはここに行く」と行き先を決めておくほうが、子どもにとってはずっと安心できます。

他の教科とのつながり

算数

降水確率は割合そのものです。的中率を出す作業は、百分率の意味を実感させてくれます。気温の変化を折れ線グラフにする活動ともつながります。

社会

日本海側と太平洋側で気候がちがうこと、それが米づくりや漁業とどう結びついているかは、社会の学習と重なります。

国語

「くもりのち雨」「所により一時雨」のような予報の言葉は、短い中に条件を詰めこんだ独特の書き方です。「のち」「一時」「時々」がそれぞれ何時間くらいを指すのかを調べると、言葉の正確さへの関心が育ちます。

まとめ

毎日流れていく予報を、いちど立ち止まって読んでみる。それだけで、空を見上げる時間が少し長くなります。理科の学習で得たいのは、天気を当てる力ではなく、不確かなものを不確かなまま、ちゃんと使える力です。