字はていねい。色も使っている。黒板と同じことが全部書いてある。それなのに、テストの前に開いても「これ、なんの話だったっけ」で終わってしまう。これはノートが下手なのではなく、ノートを「写すためのもの」だと思っているせいです。ノートを読むのは、先生ではありません。一週間後の自分です。
4年生になると、黒板に書かれる量が急に増えます。3年生までは先生が「ここを書きましょう」と言ってくれましたが、4年生からは何を書くかを自分で決める場面が出てきます。ここで多くの人が、こう考えます。「全部写せば安心」。
ところが、全部写したノートには決まって同じことが起きます。
ノートの目的は、黒板と同じものを作ることではありません。後で読んだときに、その日の授業を頭の中でもう一度動かせるようにすることです。だから、黒板に書いていないことでも、自分に必要なら書きます。逆に、教科書にそのまま載っていることは、写さずに「教科書42ページ」と書けば足ります。
この考え方に変えるだけで、書く量はへり、思い出せる量はふえます。
ノートを開いたら、内容より先に決めておく場所があります。ページの一番上です。ここが空いていると、後から探すときに一ページずつめくるしかなくなります。
| 書く場所 | 書くこと | なぜ必要か |
|---|---|---|
| 一行目の左 | 日付(9/4 など) | テスト範囲は日付で言われることが多いから |
| 一行目の右 | 教科書のページ | ノートで分からなければ教科書に戻れるから |
| 二行目 | その日の題(単元名・めあて) | 「何の話か」が一行で分かるから |
| 三行目 | 一行あける | あとで書きたす場所になるから |
とくに大事なのは二行目の題です。「わり算」ではなく「大きい数のわり算・あまりの出し方」のように、少しくわしく書きます。題は、その日の学習を一言でまとめた見出しです。見出しをつけるという作業自体が、要約の練習にもなっています。
一ページをまるごと板書のうつしに使うと、書きたす場所がなくなります。そこで、たてに線を一本入れて、ページを次のように分けます。
(1)は今までどおりでかまいません。変わるのは(2)と(3)です。
(2)の右はしは、黒板には書かれないことを書く場所です。ここに入るのは、たとえば次のようなものです。
(3)のふりかえりは、授業が終わってから、または家に帰ってから三分で書きます。書くのは一行か二行だけです。長く書く必要はありません。
授業の中でいちばん大事なことは、黒板ではなく先生の口から出ていることが多くあります。しかし話し言葉は消えてしまうので、全部は書けません。そこで、書き取るものを次の三種類にしぼります。
| 合図になる言い方 | 書き取るもの | ノートでの書き方の例 |
|---|---|---|
| 「ここは大事」「テストに出ます」 | そこを囲む・★をつける | ★整数でわるときはあまりに注意 |
| 「まちがえる人が多いのは」 | まちがえ方そのもの | ×小数点を下ろしわすれる |
| 「つまり」「言いかえると」 | 言いかえた後のことば | つまり=分けた後の一つ分 |
とくに「まちがえる人が多い」は、そのまま自分の答案で起きることです。正しいやり方より、まちがえ方のほうが役に立つ場面は多くあります。
三つ書けたら、その授業のノートは合格です。十個書こうとすると、話を聞く手が止まります。
いちばんもったいないノートは、全部分かったように見えるノートです。実際には分からない場所があったのに、板書だけ写したので、ページの上ではきれいに片づいてしまっています。
そこで、その場でしるしを使い分けます。
「?」を消さないことには理由があります。あとから見たときに、自分がどこでつまずいたのかという記録が残るからです。テスト前に開いて、「?」と「△」の場所だけをやり直せば、全ページを読み直す必要はありません。ノートは、勉強する場所をしぼるための地図になります。
ノートが一番大きく育つのは、じつは授業中ではなく、終わった直後の三分です。休み時間の最初でも、家に帰ってからでもかまいません。(3)のらんに、次の二つだけ書きます。
この二文があると、次の日にノートを開いたとき、読むところが決まります。書かないでおくと、三日後には板書のかたまりだけが残り、どこが山場だったのか分からなくなります。
理科の実験の記録でも、同じ形が使われます(結果のまとめ方)。調べたことを人に伝える発表の下じゅんびとしても、この「一文でまとめる」練習がそのまま効いてきます。
| つまずき | 起きていること | 直し方 |
|---|---|---|
| 写すのが間に合わない | 先生の話を聞かずに手だけ動かしている | 写せなかった所に「…」だけ書いて先に進み、後で友だちか教科書でうめる |
| 色を五色も六色も使う | 色を選ぶことに時間と注意が取られている | 黒+赤(大事)+青(自分の考え)の三色まで。決めたら変えない |
| ぎっしり書いて余白がない | 後から書きたせないノートになっている | 一つの話が終わったら一行あける。右はしは最初からあけておく |
「写すのが間に合わない」は、字が遅いせいだと思われがちですが、原因はたいてい別です。写すことをやめられないのです。黒板は消えても、教科書は消えません。写しきれなかった部分が教科書にあるなら、そこは写さなくてよい部分です。
Q1 ノートを読み返すのはだれですか。そのことから、ノートに書くべきものはどう決まりますか。
A 読み返すのは後の自分です。だから「後の自分が読んで思い出せるかどうか」で書くことを決めます。黒板にあっても教科書に載っていることは省き、黒板になくても自分に必要なことは書きます。
Q2 ページの二行目には何を書きますか。「わり算」ではなぜ足りないのでしょう。
A その日の題(めあて)を書きます。「わり算」だけでは何回も同じ題が並んでしまい、どのページか探せません。「大きい数のわり算・あまりの出し方」のように、その日だけの言い方にします。
Q3 先生が「ここはまちがえる人が多い」と言いました。ノートに書くのは正しいやり方と、まちがえ方のどちらですか。
A まちがえ方です。正しいやり方は板書や教科書に残りますが、まちがえ方はその場でしか出てきません。しかも自分の答案で実際に起きることなので、見直しのときに役立ちます。
Q4 分からなかった場所につけた「?」は、後で分かったらどうしますか。
A 消さずに、横に「✓」を足します。「?」を消してしまうと、自分がどこでつまずきやすいのかという記録がなくなってしまうからです。
Q5 今日の授業のノートに、(3)のふりかえりを二文書いてみましょう。
A 例:「今日いちばん大事だったこと=あまりはわる数より小さくなる。」「まだあやしいところ=とちゅうに0が入るわり算。」の二文。長く書かず、一文ずつで止めます。
次の授業で、右はしを三マスあけるところだけ試してみてください。書く量は変わらないのに、後で読み返せるノートに変わります。
ノートを見て「きれいに書けているね」とほめると、子どもは字のうつくしさが評価の対象だと理解します。しかしノートの価値は見た目ではなく、後日それを読んで学習をやり直せるかどうかにあります。声をかけるなら、「これ、来週読んで思い出せそう?」と聞いてみてください。答えにつまるようなら、書く量ではなく書く場所の設計を変える段階です。
また、「?」が並んでいるノートを心配される方が多いのですが、これは逆です。分からない場所を自分で特定できているという意味で、むしろ良い状態です。分からなかったことが一つも記録されていないノートのほうが、テスト前にやり直す場所を見つけられません。「?」を見つけたら、消させるのではなく、そこだけ一緒に解いてみてください。
4年生は、指示に従って書く段階から、自分で取捨選択して書く段階へ移る学年です。最初のうちは書き落としも増えますが、それは失敗ではなく移行の途中です。全部写せているかを確認するより、ふりかえりの二文が書けているかだけを見てあげると、家庭での声かけがぶれません。