6年の社会では、一年のあいだに何度も人物を調べてまとめる場面が出てきます。ところが書き上がったものを見ると、生まれた年と死んだ年、そして「えらい人でした」の一行で終わっていることがよくあります。調べる力が足りないのではなく、調べる順番が逆になっているだけです。
多くの人は、名前を決めたらすぐその人の一生を調べ始めます。これが手の止まる原因です。一生をたどると、生まれ・育ち・仕事・死という順に情報が並び、どれも同じ重さに見えてしまうからです。書く側は選べなくなり、結局いちばん見つけやすい年号だけが残ります。
逆の順にします。先に「この人が出てくる前と後で、何がちがうか」を決めてから、人物を調べるのです。歴史の人物が教科書にのっているのは、長生きしたからでも有名だからでもなく、その人の前後で世の中の何かが入れかわったからです。
この一文が先にあると、調べているとちゅうで出会った情報を「これは〇〇と△△に関係があるか」で選び分けられます。関係のないエピソードは、おもしろくても入れません。人物調べが長くなりすぎるのは、この物差しを持たずに集めているからです。
ノートやカードを、はじめから四つの欄に区切っておきます。読みながら、見つけたことをその場でどこかの欄に入れます。あとで整理しようとすると、たいてい整理できません。
| 欄 | 入れるもの | 使いどころ |
|---|---|---|
| ①いつ・どこ | 時代、活やくした場所、年表での位置 | 書き出しの一文 |
| ②したこと | 実際に行った事がら(作った・決めた・戦った) | まん中の中心 |
| ③変わったこと | その後の世の中のちがい | いちばん点になる部分 |
| ④出どころ | 本の名前・ページ・見た日づけ | 最後にそえる |
②と③のちがいが分かりにくいかもしれません。②はその人がしたこと、③はまわりが受けた変化です。「太閤検地をした」は②、「田畑の広さと収かく高が全国で同じものさしではかられるようになった」は③です。人物調べの評価が分かれるのは、ほぼこの③の欄があるかどうかです。
③が書けないときは、まだ調べ足りないのではなく、年表でその人の少し後ろを見ていないことが多くあります。人物のページだけを読んでいると、変化はぜったいに見つかりません。変化は、次の時代のページに書いてあるからです。
「だれを調べてもいい」と言われたときほど決まりません。次の三つのどれかで決めると早く進みます。
とくに③はすすめられます。武士が政治を動かした時代のように、同じ時代に何人もの人物が出てくる場面では、二人を並べるとそれぞれ単独では見えなかった特ちょうが浮かびます。くらべる相手がいると、「この人はここがちがった」という書き方ができるようになります。
調べたことをノートに書くときは、必ずその横に本の名前とページを書いておきます。面どうに見えますが、これは発表のためというより自分のためです。
まとめの途中で「あれ、この年号はどちらだったか」と分からなくなることが必ずあります。出どころが残っていれば、その一冊をもう一度開けば終わります。残っていないと、はじめから探し直しになります。
| 調べたもの | 残す内容 |
|---|---|
| 本・図かん | 本の名前/ページ |
| 教科書・資料集 | 教科書○ページ、資料集○ページ |
| インターネット | だれが出しているページか/見た日づけ |
| 見学・インタビュー | 場所または相手の名前/行った日 |
本文の中に文章をそのまま持ちこむときの決まりは、国語で習う引用と同じです。かぎかっこに入れて一字一句そのまま写し、どこから借りたかを書きます。歴史の人物調べでは、当時の人が残した言葉を一つだけ入れると、まとめ全体がぐっとしまります。
集めたことは、渡された紙のかたちに合わせて置き直します。同じ材料でも、置く順番が変わります。
| 形 | 順番 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 人物カード | ①いつ→②したこと→③変わったこと | 一枚に一人。欲ばらない |
| 歴史新聞 | 見出し→③→②→当時の声 | 見出しに年号を入れない |
| 発表(口で言う) | ③→②→①の順 | 結論から先に言う |
歴史新聞の見出しを「1600年 関ヶ原の戦い」とすると、それは題名であって見出しではありません。新聞の見出しは変わったことを短く言い切る場所なので、「天下、東の大名のものに」のように③から作ります。年号は本文に書けば足ります。
発表のときに①から話し始めると、聞いている人は最後まで何の話か分かりません。「わたしが調べたのは、武士の世をつくった人です」と③から入ると、そのあとの説明がすべて理由として聞こえます。
生まれてから死ぬまでを均等に書くと、いちばん大事な部分がうもれます。人物調べは伝記の要約ではありません。立てた一文に関係する時期だけをくわしく書き、それ以外は一行で通り過ぎてよいのです。
この二語が出てきたら、そこがまだ調べ切れていない印だと考えてください。そう書きたくなった理由が必ずあるはずで、それを事がらに直します。「すごい」ではなく「それまで20年かかっていたことを3年で終わらせた」と書けば、読む人が自分でそう思います。
歴史には、良い人・悪い人という分け方はありません。同じ人物でも、立場によって書かれ方が変わります。二つの本でちがうことが書いてあったら、それは失敗ではなく発見です。「Aの本ではこう、Bの本ではこう書かれていた」と両方書くのが、6年の調べ学習でいちばん高く評価される形です。
Q1 人物を決めたあと、いちばん先に立てるものは何ですか。
A 「その人の前と後で何がちがうか」の一文です。これが集めた情報を選ぶ物差しになります。
Q2 「参勤交代のきまりを作った」は、四つの欄のどれに入りますか。
A ②したことです。「大名が国もとと江戸を行き来し、費用がかさむようになった」が③になります。
Q3 ③変わったことが見つからないとき、どこを見ればよいですか。
A 年表や教科書の、その人より少し後ろの部分です。変化は本人のページではなく、次の時代に書かれています。
Q4 歴史新聞の見出しは、何をもとに作りますか。
A ③変わったことです。年号や事件名だけの見出しは、題名になってしまいます。
Q5 二冊の本で書いてあることがちがったら、どうしますか。
A どちらも、どの本に書いてあったかをそえて両方書きます。片方を消す必要はありません。
6年の社会は歴史が中心になり、人物カード・歴史新聞・調べ発表といった形で、一年に何度も同じ作業がくり返されます。ここで扱ったのは特定の時代の知識ではなく、そのどれにも共通して使える手順です。中学以降のレポートにもそのまま引きつげます。
お子さんが手を止めているときは、内容を教えるより先に「その人がいたから、何が変わったんだと思う?」と一つだけ聞いてみてください。答えられない場合は、調べ足りないのではなく、本人のページばかり読んでいることがほとんどです。次の時代のページを一緒に開くだけで進み始めます。
まとめが短くて心配になることがあるかもしれませんが、量は評価の中心ではありません。むしろ一生を均等に書いた長いまとめより、変化を一つ言い切った短いまとめのほうが高く評価されます。書き足させるより、どの一文がいちばん言いたいことかを聞いてあげるほうが効果があります。
本やインターネットで見た内容をそのまま写している場合も、頭ごなしに止める必要はありません。「どこで見たか、横に書いておこう」と促すだけで、自分の言葉に直す作業が自然と始まります。