調べ学習をしていると、かならず一度は行きづまります。図書室の本にも、教科書にも、その先が書いてない。そこから先へ進める方法が、聞き取り調査(インタビュー)です。本は「もう分かったこと」しか載せられませんが、人は、まだどこにも書かれていないことを持っています。
4年生の社会では、水道・ごみ・消防・伝統工芸・地域の発展につくした人など、自分の住む地いきについて調べる学習が続きます。このとき、多くの人がこういう場所で止まります。
ここに書いてあることは、すべて正しい。けれども、これはあなたが調べたものではありません。紙に書いてある時点で、もうだれかが調べ終わったことだからです。
では、紙に載っていないことは何でしょうか。たとえば「分け方をまちがえる人がいちばん多いのは、どのごみか」。「雨の日と晴れの日で、集める時間は変わるのか」。「この20年でいちばん変わったことは何か」。こういうことは、実際にその仕事をしている人の頭の中にしかありません。それを取り出す方法が、聞き取り調査です。
聞き取り調査とは、知っている人に会って話を聞き、それを記録して調べたことの一部にする方法をいいます。3年生でやった見学のしかたが「見て持ち帰る」方法だとすれば、聞き取り調査は「聞いて持ち帰る」方法です。
いきなり質問を作りはじめてはいけません。先に決めるのは相手のほうです。なぜなら、質問の中身は相手によって変わるからです。同じ「ごみ」でも、清掃工場の人に聞くことと、近所のお年寄りに聞くことはまるでちがいます。
相手を決めるときは、次の表のように考えます。
| 知りたいこと | 聞く相手 | その人しか知らない理由 |
|---|---|---|
| 今、どう動いているか | その仕事をしている人 | 毎日やっているから、細かいことを覚えている |
| 昔はどうだったか | 長く住んでいる人・家族の年上の人 | 変わる前を実さいに見ている |
| 使う側はどう思っているか | お店の人・近所の人・自分の家族 | 使っている立場からの困りごとを知っている |
| 数や決まりのこと | 市役所・その係の人 | 記録を持っている |
ここで大事なのは、いちばん えらい人を選ばないということです。市長さんより、毎日ごみ収集車に乗っている人のほうが、ごみのことはくわしいのです。「その場にいる人」を選びましょう。
そして相手が決まったら、いきなり行かず、先生かおうちの人に相談します。ひとりで知らない大人に会いに行ってはいけません。約束をとってもらう(アポイントメントをとる)ところまでが、大人にお願いする部分です。
聞ける時間は、たいてい15分から20分です。この中で聞けるのは、多くて5つ。10も20も用意した人は、全部を早口で聞いて、どれも浅い答えしか持ち帰れません。
質問には、次の三つの型があります。
| 型 | 例 | 返ってくるもの |
|---|---|---|
| 数を聞く | 「1日に何けん回りますか」 | 数字。あとで表やグラフにできる |
| 順番を聞く | 「朝、来てから何をする順で動きますか」 | 流れ。図にかける |
| 気持ち・理由を聞く | 「いちばん こまるのはどんなときですか」 | 本には絶対に載っていない話 |
5つの質問のうち、数を聞くものを1つ、理由を聞くものを1つは必ず入れます。数はあとでグラフや表にできますし、理由はあなただけが持ち帰れる話になります。
そして、やってはいけない形が一つあります。
「はい」「いいえ」や、ひとことで終わる形にしないこと。いつ・どこで・何を・どれくらいのどれかを入れると、答えが長くなります。
順番も決めます。答えやすい数の質問から始めて、最後に理由の質問を置きます。人はいきなり気持ちを聞かれると言葉が出ませんが、しばらく話したあとなら出てくるからです。
ノートを3つに分けておきます。分けずに書くと、あとで「これは聞いた話か、自分がそう思っただけか」が分からなくなります。ここが聞き取り調査でいちばん事故が起きるところです。
| らん | 書くもの | 書き方の注意 |
|---|---|---|
| 言われたこと | 相手が実さいに言った言葉 | とくに大事なひと言は、そのままの言い方で書く |
| 数 | 数字・時こく・年 | 単位まで書く(「30」ではなく「30けん」) |
| 思ったこと | 自分が感じたこと・次に調べたいこと | ここに書いたものは、聞いた話ではない |
ぜんぶを書き取ろうとしてはいけません。書くのに必死になると、相手の顔を見られなくなります。書くのは数と、心が動いた ひと言だけ。あとは聞くことに使います。
話がとちゅうで分からなくなったら、その場で聞き返します。「すみません、それは○○ということですか」。これは失礼ではありません。分からないまま持ち帰って、家でまちがえて書くほうがずっと失礼です。
また、聞いているうちに、用意していなかった面白い話が出てくることがあります。そのときは予定の質問を1つ捨てて、そちらを追いかけてかまいません。予定どおり全部聞くことが目的ではないからです。
終わったらお礼を言って、その場をはなれます。そして、はなれてから10分以内にノートを開きます。書きなぐった字を直し、思い出したことを足します。ここでやることは3つです。
相手の名前と役わりを書くのは、礼ぎのためだけではありません。発表のときに「だれから聞いたか」を言えるようにするためです。これを出典といいます。本のときに書名を書くのと同じで、聞いた話にも出どころが要ります。
そして数日のうちに、お礼の手紙を出します。長くなくてかまいません。教えてもらったことのうち、いちばん心にのこった一つを書くと、それだけで伝わります。「お忙しいところありがとうございました」だけの手紙より、「30けんも回ると聞いておどろきました」の一行のほうが、相手はうれしいのです。
持ち帰った話は、そのまま並べてはいけません。書き方には決まりがあります。
ちがいは3つあります。だれから聞いたかが書いてあること、数が入っていること、そして「〜だそうです」「〜と話していました」で、聞いた話だと分かるようにしてあることです。
この最後の書き分けが、とても大事です。自分の考えと、聞いた話が同じ文の中でまざると、読む人はどこまでが事実か分からなくなります。
| その文は何か | 文の終わり方 |
|---|---|
| 人から聞いたこと | 〜だそうです/〜と話していました |
| 自分が見たこと | 〜がありました/〜でした |
| 自分の考え | 〜だと思います/〜ではないでしょうか |
この3つを使い分けられるようになると、あなたの発表はぐっと信用されるものになります。高学年のレポートでも、中学でも、そのまま使う書き分けです。
その1 質問を多く作りすぎる。15個も用意してきて、時間が足りず全部を早口で聞き、どの答えもひとことで終わる。5つにしぼって、1つを深く聞いたほうが、持ち帰れる量は多くなります。
その2 自分の思っている答えを言ってしまう。「やっぱり夏がいちばん大変ですよね?」と聞くと、相手はつい「そうですね」と合わせてくれます。これでは、自分が最初から思っていたことが返ってきただけで、何も新しく分かっていません。答えを入れずに聞くのがこつです。
その3 聞いた話を自分の意見のように書く。「ごみの分け方は もっと分かりやすくするべきだ」と発表に書いたとき、それが自分の考えなのか、聞いた人がそう言ったのかが分からない。かならず「〜だそうです」か「〜だと思います」で区別します。
Q1 聞き取り調査は、本で調べるのとくらべて何が手に入りますか。
A まだどこにも書かれていないことです。本や資料に載っているのは、だれかが調べ終わったことだけだからです。
Q2 質問と相手、先に決めるのはどちらですか。理由もあわせて答えましょう。
A 相手が先です。同じテーマでも、聞く相手によって答えられることがちがうので、質問の中身が変わるからです。
Q3 「この仕事は大変ですか」という質問は、なぜよくないのですか。
A 「はい」のひとことで終わってしまうからです。「一日のうち、いちばん大変なのは何時ごろの、どんな作業ですか」のように、いつ・何を・どれくらいを入れてたずねます。
Q4 メモを「言われたこと・数・思ったこと」の3つに分けるのはなぜですか。
A あとで、聞いた話と自分の考えを区別できるようにするためです。まざると、発表のときにどこまでが事実か分からなくなります。
Q5 自分の住む町のことで聞いてみたいことを一つ決めて、相手と質問を3つ書いてみましょう。
A 相手を先に決めてから質問を考えます。3つのうち1つは数を聞くもの、1つは「いちばん こまるのは」など理由を聞くものにしましょう。
身近なところから始めてかまいません。おうちの人に「この町で、20年前と今でいちばん変わったことは何?」と聞いてみる。それだけでも、りっぱな聞き取り調査です。返ってきた答えは、どの本にも載っていません。
聞き取り調査は、4年生の社会で急に求められはじめて、けれども「やり方」はあまり教わらないまま終わりがちな技能です。実際には、質問の作り方・記録の分け方・出典の書き方という三つの独立した力が同時に必要で、どれか一つでも欠けると「聞いてきたけれど使えない」状態になります。
ご家庭でできる最初の一歩は、お子さんの練習相手になることです。「この町で、お父さん・お母さんが子どものころと今でいちばん変わったことは何?」。この一問を実際に聞かせてみてください。相手が身内でも、質問を口に出す・答えを書き取る・数字を確かめる、という流れは本番とまったく同じです。
もう一つ、外部の方へ聞きに行く場合は、約束をとる連絡だけは大人がしてあげてください。お子さんが自力でできる部分は「何を聞くか」と「どう記録するか」であって、知らない相手に会う段取りではありません。ここを分けておくと、安全を確保したまま、調べる力の部分だけを本人にまかせられます。