3年 社会 見学のしかた

見学のしかた ── 行く前に質問を3つ決めると、見えるものが変わる

3年生になると、お店・工場・消防署・市役所へ出かけます。ところが同じ場所に同じ時間いたのに、持ち帰ってくる量は人によってまるでちがいます。差がつくのは、当日ではなく行く前です。

見学は「行けば分かる」ではない

社会の学習では、教科書を読むだけでなく実際にその場所へ出かけます。これは3年生の社会でいちばん大事な勉強の一つです。ただし、こんな感想で終わってしまう子がとても多いのです。

「大きかったです。すごかったです。  たのしかったです。」 ← 3行で書き終わってしまう感想。   これでは、行かなくても書けてしまう。

なぜこうなるのでしょう。目の前にはたくさんのものがあります。機械、はたらく人、においや音。多すぎて、どれを見ればいいのか分からないまま時間が終わってしまうからです。

つまり見学のしかたとは、何を見るかをあらかじめ決めておく方法のことです。決めていない人には全部が同じ大きさに見え、決めてある人にはその一つだけが大きく見えます。

行く前にやること① 知っていることを書き出す

見学の前日までに、ノートを半分に分けて左がわに「もう知っていること」を書き出します。スーパーマーケットへ行くなら、こんなことです。

これを書くのは、思い出すためではありません。知っていることを当日わざわざ見なくてすむように、先によけておくためです。左がわに書いたものは、もう見なくていい。そう決めるだけで、当日の目が空きます。

そして右がわには「まだ知らないこと」を書きます。「やさいはどこから来るの?」「売れ残ったらどうするの?」。左を書いてからのほうが、右はずっと出てきます。

行く前にやること② 質問を3つにしぼる

右がわに書いた「知らないこと」の中から、当日ぜったいに聞きたいものを3つ選びます。10個ではありません。3つです。

理由は二つあります。見学の時間で質問できるのはせいぜい数人分だということ。そしてもう一つ、3つなら紙を見ないでも覚えていられることです。紙を探しているあいだに、店の人は次の場所へ歩き出してしまいます。

ただし、質問には答えやすいものと答えにくいものがあります。ここを直すだけで、返ってくる答えの中身が変わります。

答えが短くて終わる質問言いかえた質問
仕事はたいへんですか一日でいちばんいそがしいのは何時ごろですか
やさいは新しいですか朝、やさいは何時に店にとどきますか
お客さんは多いですか一日に何人くらいのお客さんが来ますか
気をつけていることはありますかならべる場所を決めるとき、何を先に考えますか

コツは、「はい」「いいえ」で終わらない形にすることと、数・時こく・順番のどれかを聞くことです。左の列の質問でも答えてはもらえますが、返ってくるのは「そうですね、たいへんです」で終わりがちです。

当日 ── メモは4つのらんに分けて書く

当日、白い紙にただ書いていくと、あとで見返したときに何が何だか分からなくなります。行く前に、紙を4つに区切っておきます。

らん書くもの書き方の例
見たもの自分の目でたしかめたこと魚のコーナーだけ床がぬれている
聞いたこと人が話してくれたこと「朝5時に市場から来ます」
数数字がついているものレジ6台/店員さん28人
ふしぎその場では聞けなかったことなぜ入口がやさいなのか

「見たもの」と「聞いたこと」を分けるのが大事なところです。あとでまとめるとき、自分が見た事実と、人から教わったことは、あつかいがちがうからです。人から教わったことは「〇〇さんによると」と書けば、そのまま使えます。理科の観察カードで見たこと・思ったことを分けたのと同じ考え方が、社会でも出てきます。

「数」のらんをわざわざ作るのは、数字が見学のいちばんの持ち帰り品だからです。「たくさんありました」は家に帰ると消えてしまいますが、「レジ6台」は消えません。

そして4つ目の「ふしぎ」。これは見学が終わったあとの学習のたねになります。全部その場で解決する必要はありません。

聞くときの順番とマナー

質問には順番があります。いきなり聞きたいことから入らず、この形で始めます。

① 「3年1組の 山田です。」 ← 名のる ② 「今、いいですか。」 ← 都合をきく ③ 「レジは 何台 ありますか。」← 質問 ④ 「ありがとうございました。」← お礼

①と②を入れるのは、はたらいている人は仕事のとちゅうだからです。手が止められないときもあります。断られたら、それは自分がきらわれたのではなく、その人の仕事が今いそがしいだけです。

答えてもらっているあいだは、書きながらでも顔を上げる。ずっと下を向いていると、話す人は伝わっているか分からなくなります。長い答えのときは、全部書こうとせず数字と、大事そうな一言だけを書きとめます。

写真をとりたいときは、必ず先に聞きます。工場や店には、他のお客さんや、外に出せない機械がうつってしまうことがあるからです。

帰ってからの10分がいちばん大事

学校にもどったら、ランドセルを置く前に10分だけメモに書きたす時間をとります。これをやるかやらないかで、見学の値打ちは半分になります。

人の記おくは、その日のうちにいちばん多く消えます。「あとでゆっくり書こう」と思ってねてしまうと、次の朝には、書いてある字だけが残って、そのまわりにあったものが思い出せなくなっています。

10分でやることは3つです。

とくに3つ目です。「9月2日、〇〇スーパー、店長の△△さんの話」と書いておけば、新聞や発表に使うときに出どころとして書けます。出どころを書けるかどうかで、その調べ学習は信用されるかどうかが決まります。

つまずきやすいところ

その1 友だちと同じことを見て終わる

グループで動くと、前の人が見ているものを後ろの人ものぞきこみます。全員が同じメモになり、教室にもどってから話し合っても新しいことが出てきません。グループの中で、見る場所を分けておくと直ります。「わたしはレジ、あなたはやさい」。分けた分だけ、持ち帰る量は増えます。

その2 質問を紙に書いたまま聞かずに帰る

用意したのに、はずかしくて聞けないまま終わってしまう。とても多いつまずきです。これは度きょうの問題ではなく、順番の問題です。いちばん聞きやすい質問を1番目に置いておく。数を聞く質問はいちばん答えやすいので、1問目に向いています。一度声が出れば、2つ目からは楽になります。

その3 全部メモしようとして何も見ていない

話をひとことも落とすまいと書きつづけると、目は紙の上にあって、その場所を見ていないことになります。あとから読み返しても、その場のようすが思い出せません。書くのは数字と短い言葉だけ、あとは見る。見学は、写す時間ではなく見る時間です。

やってみよう

Q1 「仕事はたいへんですか」を、答えのくわしくなる形に言いかえてください。

A たとえば「一日でいちばんいそがしいのは何時ごろですか」。時こく・数・順番のどれかを聞く形にすると、短い返事で終わりません。

Q2 見学メモを4つのらんに分けます。それぞれ何を書きますか。

A 見たもの・聞いたこと・数・ふしぎ、の4つです。自分の目で見たことと、人から聞いたことを分けて書くのがポイントです。

Q3 質問をする前に、まず言うことを2つあげてください。

A 自分の学年と名前を名のること、そして「今、いいですか」と都合をきくことです。相手は仕事のとちゅうだからです。

Q4 学校にもどってすぐ10分とるのはなぜですか。

A その日のうちに記おくがいちばん多く消えるからです。字を直し、思い出したことを足し、日付と聞いた相手の名前を書きます。

Q5 次の見学先を一つ決めて、聞きたい質問を3つ書いてみましょう。

A まず「もう知っていること」を書いてから考えると出やすくなります。3つのうち1つは、数を聞く質問にしておきましょう。

見学が終わったあと、自分のメモを開いて、数字にだけ丸をつけてみるとよく分かります。丸が5つ以上ついていれば、その見学は成功です。丸が一つもなければ、次は「数を聞く質問」を1つ持って行きましょう。見た量ではなく、持ち帰れた形の数が、見学のできを決めます。

まとめ

おうちの方へ

社会科見学は、学校行事のように見えて、じつは「調べる力」を実地で使う数少ない機会です。3年生のこの時期に身につくかどうかで、高学年の調べ学習やレポートの質が変わってきます。

ご家庭でできることは、前日に一つだけ聞いてあげることです。「明日、何が知りたいの?」。ここで答えが出てくる子は、当日の目の付けどころが決まっています。出てこない場合は、「行ったことある?」「何が売ってると思う?」と、知っていることのほうから聞いてみてください。知っていることが言葉になると、知らないことが自然に浮かび上がります。

帰ってきた日は、感想よりも先に数を聞いてあげてください。「何台あった?」「何人いた?」。数字を一つ思い出せた子は、そのまわりの景色もいっしょに思い出します。「楽しかった?」から入ると、たいてい「楽しかった」で会話が終わってしまいます。