3年の理科では、日なたと日かげの地面や、水のあたたまり方を調べます。そのときに使うのが温度計です。ところが、同じ場所を同じ時こくにはかったのに、となりの人と3度ちがう、ということが実際によく起きます。原因は、たいてい温度計そのものではありません。置き方・待ち方・読み方のどれかです。この3つをそろえるだけで、クラスの数字はぴたりと近づきます。
まず、なぜ温度計を使うのかという話からです。
プールの水に入って「つめたい!」と言う人と、「ちょうどいい」と言う人が同じ日にいます。どちらもうそをついていません。手や体が感じるあつさ・つめたさは、その前に何をしていたかで変わってしまうからです。走ってきた人には水はつめたく感じ、日かげでじっとしていた人にはぬるく感じます。これでは、記録にしても後から比べられません。
そこで登場するのが温度計です。温度計は、だれがはかっても同じ数字が出る道具です。感じ方を、数字に置きかえてくれます。「日なたのほうがあたたかい」ではなく「日なた28度・日かげ22度」と書けたとき、はじめてどれくらいちがうのかが人に伝わります。理科で温度計を使うのは、感じたことをやめるためではなく、感じたことをくらべられる形に変えるためです。
温度計を横から見ると、下のはしに赤い液(えき)がたまっている小さなふくらみがあります。ここをえきだめといいます。
温度をはかっているのは、細いガラスの管ぜんぶではなく、このえきだめの部分だけです。えきだめがあたたまると中の液がふくらんで、行き場がなくなった液が細い管をのぼっていきます。冷えるとちぢんで、下がってきます。つまり、管をのぼった液の高さは「えきだめのまわりの温度」を表しているということです。
ここが分かると、使い方のきまりがぜんぶ理由つきで分かります。「はかりたいものに、えきだめをつける」。温度計の使い方は、けっきょくこの一文につきます。
「えきだめを、はかりたいものにつける」を、3年でよくはかる3つにあてはめてみます。
| はかるもの | えきだめをどうする | 気をつけること |
|---|---|---|
| 空気(気温) | 地面から1.2〜1.5mの高さで、風通しのよいところに持つ | 日光が直接当たらないように、紙などで日かげを作る |
| 水 | 水の中に入れ、入れっぱなしのまま読む | 入れものの底やかべにつけない(底の温度になってしまう) |
| 地面 | 土を少しほって、えきだめを土でうすくおおう | おおいすぎない。地面の温度をはかるので、手でにぎらない |
空気をはかるときに日かげを作るのは、日光が直接えきだめに当たると、空気ではなく温度計そのものがあたためられた温度が出てしまうからです。晴れた日に日なたで直接はかると、本当の気温より5度以上高く出ることがあります。「気温は日かげではかる」という決まりには、ちゃんとこういう理由があります。
水の温度で底につけてはいけないのも、同じ理由です。えきだめは、ふれているものの温度を出します。底のガラスにふれていれば、水ではなくガラスの温度に近い数字が出ます。はかりたいものだけに、えきだめをふれさせる。これが共通のきまりです。
温度計を置いてすぐ読んでしまうのが、いちばん多いまちがいです。
えきだめの液は、まわりと同じ温度になるまで少しずつ動きます。置いた直後は、まだ前にいた場所(教室の中や、手の中)の温度が残っています。液が上がったり下がったりしている間の数字は、まだ本当の温度ではありません。
目安は、液が動かなくなってから読むことです。時間でいうと、空気なら1〜2分、水なら30秒ほど。「もう止まったかな」と思ったら10数えて、それでも同じ場所にいたら止まっています。ここで待てるかどうかで、記録の正しさが決まります。
そして、いちばん大事なこと。読むときも、温度計は置いたまま・入れたままにします。水から引き上げて読むと、その数秒で液は空気の温度に向かって動き始めています。引き上げた瞬間から、その数字は水の温度ではなくなっているのです。
ここが、この記事のいちばんの中心です。
温度計の目もりを、上から見下ろして読んだ人と、下からのぞきこんで読んだ人では、同じ温度計なのに数字がちがってきます。これは、目もりが書いてある面と、液が入っている細い管の位置が、少しだけ前後にずれているからです。ななめから見ると、液の先が実際とはちがう目もりの位置に重なって見えてしまいます。
だから、読むときは液の先と、自分の目の高さをそろえる。そして真横から見ます。かがむのが正しいのではなく、液の先の高さに目を持っていくのが正しいのです。温度計が高いところにあるなら背のびをし、低いところにあるならしゃがみます。
この読み方は、6年でメスシリンダーの目もりを読むときにも、まったく同じ理由で出てきます。実験器具の使い方(6年)で「目の高さで読む」と習うのは、3年のこの話の続きです。器具は増えても、考え方は増えません。
目もりの線が、1本で1度とはかぎりません。学校の温度計には、1本が1度のものと、2度のものがあります。
たしかめ方はかんたんです。数字が書いてある線と線の間に、線が何本あるかを数えます。たとえば「20」と「30」の間に10ますあれば、1目もりは1度です。5ますしかなければ、1目もりは2度になります。使う前にこれを1回やっておけば、読みまちがいはほとんど起きません。
液の先が線と線のちょうど間にあるときは、近いほうの線の数字を読みます。3年では、そこまでこまかく読む必要はありません。それより、単位(度)をつけて書くことのほうが大切です。「22」ではなく「22度」。記録は、あとで自分が読む相手のために書きます。この考え方はかんさつカードの書き方(3年)と同じです。
温度計はガラスでできています。われると、けがをします。次の5つは、必ず守ってください。
| やってはいけないこと | 理由 |
|---|---|
| ふる・たたく | ガラスがわれる。体温計とちがい、ふって下げる必要はない |
| かきまぜる棒がわりに使う | 先が細くて弱いので、当たるとかんたんにわれる |
| 目もりの上のほうまで熱する | 液が上まで来るとこわれる。100度をこえる場所では使わない |
| えきだめを手でにぎる | 手の温度(約36度)が出てしまい、はかれない |
| われた温度計をそのまま片づける | ガラスも中の液もあぶない。手を出さず、すぐ先生を呼ぶ |
とくに最後の1つは覚えておいてください。われたときにあわてて自分で拾おうとするのが、いちばんけがにつながります。手を出さないことが、正しい行動です。
まず、読む角度をそろえてみてください。2人で同じ温度計を真横から読めば、たいてい同じ数字になります。それでもちがうなら、はかっている場所がちがいます。日かげのはしと真ん中では、数度ちがうことがふつうにあります。「地面の同じところに印をつける」など、はかる場所を先に決めておくと、この問題は起きなくなります。
日かげをはかったあと、すぐ日なたに持っていって読んでいませんか。温度計はまだ日かげの温度を持っています。場所を変えたら、また動かなくなるまで待つ。これを守るだけで、はっきり差が出ます。時間がないときは、温度計を2本用意して、同時にはかるのがいちばん確実です。太陽とかげ(3年)の実験でも、この待ち時間が結果を分けます。
冬に外ではかると、0より下がることがあります。0の下は−1、−2と続きます。数としては0から下にいくほど大きな数字が出てきますが、温度としては0より下は0より冷たいということです。「−3度」と書き、マイナスの記号を忘れないようにします。マイナスを落として「3度」と書くと、6度もちがう記録になってしまいます。
Q1 温度計で、実際に温度をはかっている部分の名前は?
A えきだめ(下のふくらみ)。ここにふれているものの温度が出る。
Q2 水の温度をはかるとき、水から出して読んでもよい?
A よくない。出した瞬間から空気の温度に向かって動くので、入れたまま読む。
Q3 目もりは、どの向きから読む?
A 液の先と目の高さをそろえて、真横から。ななめから見るとずれる。
Q4 「20」と「30」の間にます目が5つある。1目もりは何度?
A 2度(10度 ÷ 5ます = 2度)。
Q5 温度計がわれてしまった。どうする?
A さわらずに、すぐ先生を呼ぶ。自分で拾わない。
3年は、道具を使ってはかるという行為がはじまる学年です。ここでつまずくお子さんの多くは、器具の扱いが苦手なのではなく、「待つ」「角度をそろえる」といった、結果に見えない手順の意味がまだ腑に落ちていません。数字がちがったときに「ちゃんとはかりなさい」と言うより、「置いてから何秒待った?」「どこから見た?」と手順を1つずつたずねてください。原因が自分で見つかると、次から自然に待つようになります。ご家庭では、料理用の温度計やお風呂の湯温計で、同じものを上から・真横から読み比べてみるのが手軽で効果的です。数度ずれることを自分の目で見た経験は、教室で何度言われるより強く残ります。「かんさつカードの書き方(3年)」「太陽とかげ(3年)」とあわせて読むと、はかった数字をどう記録し、何と見くらべるのかまでつながります。