3年から、理科でかんさつカードを書きます。ホウセンカを見て「大きくなりました」と書いた人は多いはずです。でも、そのカードを1か月後に読み返しても、どれだけ大きくなったのかは分かりません。かんさつカードは、あとの自分に向けた手紙です。あとで読んで役に立つ書き方を、順番に見ていきましょう。
かんさつカードは、先生に見せるために書くのではありません。前のカードと、あとのカードを比べるために書きます。
理科で調べたいのは、たいてい「かわり方」です。ホウセンカがどう育つのか、チョウがどう育つのか、かげがどう動くのか。かわり方は、一回見ただけでは分かりません。ちがう日に見た2まいのカードを、ならべて見くらべたときに、はじめて「7日で3cmのびた」と分かります。つまり、1まいのカードだけでは意味が半分しかなく、2まいそろって意味が出てくるのです。だから、書くときにいつも「1か月後の自分が、このカードとあとのカードを見くらべられるかな」と考えます。この一つの見方をもっているだけで、書くことがはっきり決まります。
どのカードにも、まず日づけ・時こく・天気・気温を書きます。これは形だけの決まりではありません。
日づけがないカードは、順番がならべられません。何日たったのかが計算できないので、「はやい」「おそい」も言えなくなります。時こくが大事なのは、太陽やかげのように、同じ日でも時こくでようすがかわるものがあるからです。天気と気温を書くのは、植物や虫のようすが、その日の天気や気温と関係していることが多いからです。「あたたかい日がつづいたら、急にのびた」というつながりは、気温を書いていた人だけが見つけられます。書いているときには使い道が分からなくても、あとで見返したときに役に立つ。それが、はじめの4つをいつも書く理由です。
「しらべたもの」に「1ばんの鉢」と書いてあるところに注目してください。同じホウセンカが何本もあるとき、ちがう株を見てしまうと、のびたのかどうかが分からなくなります。同じものを見つづけるために、番号や目じるしを決めて書いておきます。
いちばん大事なのはここです。ようすを、数字とたんいに置きかえて書きます。
| あとで比べられない書き方 | あとで比べられる書き方 |
|---|---|
| 大きくなった | くきの高さ 12cm |
| 葉がふえた | 葉の数 8まい |
| 花がさいた | 花 3つ(つぼみ 5つ) |
| 虫がいっぱいいた | アリ 15ひきくらい |
| かげがのびた | かげの長さ 45cm |
左と右で、書くのにかかる時間はほとんど変わりません。それなのに、あとで使えるかどうかは正反対になります。「大きくなった」は、書いた本人でさえ、一週間たてばどのくらいだったか思い出せません。「12cm」は、次に「15cm」とはかったしゅんかんに「3cmのびた」という新しい発見にかわります。数字は、あとの自分にわたすバトンです。はかれるものは、めんどうでもものさしを当てて、たんい(cm、まい、ひき、度)までつけて書きましょう。
数えきれないほど多いときは、むりに正しい数を書かなくてかまいません。「15ひきくらい」「20まいより多い」のように、だいたいの数と、だいたいだと分かる書き方にします。ぴったり数えたのか、見当をつけたのかがカードから分かることのほうが大切だからです。
カードの中身は、2つに分けて書きます。目で見て分かることと、自分の頭で考えたことです。
「葉のふちが黄色くなっていた」は、見たことです。だれが見ても同じように書けます。「水がたりなかったのだと思う」は、思ったことです。これは自分の考えで、あたっているかどうかはまだ分かりません。この2つをまぜて書くと、あとで読み返したときに、たしかめた事実なのか自分の想像なのかが分からなくなります。だから、カードの中で場所を分けます。上に「見たこと」、下に「思ったこと・ぎもん」というらんを作っておくと、自然に分けられます。
思ったことを書かないほうがよい、という話ではありません。むしろ「なぜだろう」は次に調べることのたねになるので、どんどん書きます。分ける理由は、どちらも大事だからこそ、まざらないようにするためです。
かんさつカードの絵は、図工の絵とは目的がちがいます。うまく見せる絵ではなく、あとで比べるための絵です。
だから、気をつけるのは3つだけです。1つめは、形をそのまま写すこと。葉のふちがぎざぎざなのか、なめらかなのかは、あとで種類を見分けるときに効いてきます。2つめは、数を合わせること。葉が8まいなら、絵にも8まいかきます。かきやすいからと5まいにへらすと、記録としてはうそになってしまいます。3つめは、色えんぴつを使い、うすいところ・こいところまで分けてぬることです。全体をきれいにしあげる必要はありません。むしろ、見えた部分だけを大きくかき、まわりは省いてよいのです。「花の中だけを大きく」「葉のつけねだけを大きく」と決めてかくほうが、記録としてはよくなります。絵の横に矢じるしを引いて、言葉で書きこんでおくと、さらに分かりやすくなります。
細かいところを見るときは、虫めがねを使います。使い方には、覚えておくべききまりが2つあります。
1つめは、虫めがねを目の近くに持つということです。虫めがねを目に近づけて持ち、そのまま見たいものを動かして、はっきり見えるところで止めます。動かせないもの(かべにとまった虫、木の花など)を見るときだけ、虫めがねを目に当てたまま、自分の顔ごと近づいたり、はなれたりします。虫めがねだけを前後にふらふら動かすと、いつまでもはっきり見えません。
2つめは、虫めがねで太陽を見てはいけないということです。虫めがねには光を1点に集めるはたらきがあるので、太陽を見ると目をいためます。黒い紙が虫めがねの光でこげるのは、そのはたらきのためです。人の目も同じようにやけてしまうので、絶対に太陽の方向へ向けてはいけません。この2つを守れば、虫めがねは、はだかの目では見えなかった葉の毛や、こん虫の口の形まで見せてくれます。
「大きくなった」ではなく「12cm」と書きます。
数字とたんいで書けば、次にはかったときに差が出せます。
目で見て分かることと、自分の考えは、らんを分けて書きます。
あとで、たしかめた事実だけを取り出せるようにするためです。
「2ばんの鉢」のように、見る相手を決めて書いておきます。
ちがう株を見ると、そだったのかどうかが分からなくなります。
Q1 かんさつカードは、なんのために書く?
A あとで前の記録と比べるため
Q2 「葉がふえた」は、どう書きなおすとよい?
A 「葉の数 8まい」のように、数字とたんいで書く。
Q3 「水がたりないのだと思う」は、見たこと・思ったことのどちら?
A 思ったこと(自分の考えなので、らんを分けて書く)。
Q4 虫めがねは、どこに近づけて持つ?
A 目の近く(見るものを動かしてピントを合わせる)。
Q5 虫めがねでぜったいに見てはいけないものは?
A 太陽(光が集まって目をいためるため)。
3年は、理科で観察記録を書きはじめる学年です。ここでつまずくのは観察力の不足ではなく、「あとで比較できる形で残す」という発想がまだ経験として無いことによります。声かけとしては、書けているかを確かめるより、「これ、来月の自分が読んで分かる?」と一言たずねるのが効きます。それだけで、子どもは自分から数字を足しはじめます。また、お子さんが「思ったこと」を書いていたら、当たっているかどうかは指摘せず、「どうやったら確かめられそう?」と返してください。予想が外れる経験こそが、次の観察の動機になります。ものさしと色えんぴつを観察場所のそばに置いておくと、はかる・色を分けるという手間のハードルが下がります。「植物のからだと育ち(3年)」「身近な自然の観察(3年)」の記事とあわせて読むと、実際に何を記録すればよいかが具体的につかめます。