6年の理科では、道具が一気に増えます。使い方を暗記するのではなく、どうしてその決まりがあるのかを知ると、初めて見る器具でも扱えるようになります。
3年や4年の理科では、目で見て分かることをそのまま記録すれば足りました。虫の足の数、かげの向き、水がわき立つようす。数えたり、見たりできることばかりです。
ところが6年になると、調べる相手が急に「目に見えないもの」になります。
見えないものを調べるには、道具の力を借りて目に見える数や形に変えるしかありません。とけている物の量は電子てんびんで数字に変え、気体の正体は気体検知管で色に変え、小さな生き物はけんび鏡で大きさに変えます。器具は、見えないものを見えるようにする通訳のような役わりをしています。
だからこそ、器具の使い方をまちがえると結果そのものがくずれます。実験の内容は正しく理解しているのに答えが合わない、という子の多くは、じつはここでつまずいています。
水よう液の実験では「水50mLに食塩をとかす」といった指示がよく出てきます。このとき使うのがメスシリンダーです。ビーカーにも目もりはついていますが、あれはおおよその目安で、正確に量るためのものではありません。
メスシリンダーには三つの決まりがあります。
三つめが分かりにくいところです。細いガラスの中に水を入れると、水面はまっすぐにならず、ふちが少し持ち上がってお皿のようにへこみます。読むのはいちばん低くなっている真ん中です。ふちを読むと、いつも少しだけ多い数字になってしまいます。
また、目もりと目もりの間の値は、その十分の一まで目分量で読みます。50mLと51mLのあいだにあれば「50.4mL」のように書きます。きりのいい数字しか書いてはいけない、というわけではありません。
電子てんびんは、ボタン一つで数字が出るので簡単に見えますが、順番をまちがえると結果が変わります。
大事なのは4番です。容器をのせた状態で0にしておくと、そのあと表示される数字は中身だけの重さになります。これをしないと、あとから容器の重さを引く計算が必要になり、引き忘れという失敗が生まれます。
粉を直接のせないのも決まりです。薬包紙という紙を敷き、その上にのせます。てんびんの皿が汚れると、次に使う人の測定までずれてしまうからです。実験器具の決まりには、自分の実験のためのものと、次に使う人のためのものの二種類があります。
風が当たる場所や、机をゆらしながら量るのも避けます。電子てんびんは0.1g単位まで感じ取るので、人が近くを歩いただけで数字がゆれることがあります。数字が落ち着くのを待ってから読みます。
水よう液にとけている物を取り出すとき、蒸発皿を使います。浅くて広い形をしているのは、水の表面積を大きくして早く蒸発させるためです。深い容器では時間がかかるうえ、中身が飛び散りやすくなります。
熱するときの決まりは、どれもけがを防ぐためにあります。
「最後まで熱しきらない」は、理由を知らないと守れない決まりです。水がほとんどなくなったあとも熱し続けると、残った固体が急にはじけて飛び散ります。水が少し残っているうちに火を止め、あとは皿の熱だけで乾かすのが正しいやり方です。
実験用ガスコンロは、使い終わったあとも本体が熱をもっています。かたづけるのは冷めてからです。また、火をつけたまま席を離れないことも、実験室では絶対の決まりになっています。
水の中の小さな生き物を観察するとき、けんび鏡を使います。手順を丸暗記しようとすると混乱するので、明るさ→低い倍率→ピント→高い倍率という流れで覚えます。
4と5が入れかわる子がとても多いところです。のぞきながら近づけると、当たったことに気づけずプレパラートを割ってしまいます。近づけるときは横から見る、のぞくときは遠ざけると覚えます。
倍率をいきなり高くしないのも大切です。倍率を上げると見える範囲がせまくなり、その分だけ暗くなります。広い範囲が見える低い倍率でまず目当てのものを見つけ、真ん中に動かしてから上げます。なお、けんび鏡で見える像は上下左右が逆になっているので、右に動かしたいときはプレパラートを左にずらします。
直射日光を鏡に当ててはいけないのは、目をいためるからです。明るければよいというものではありません。
| 器具 | 使う場面 | いちばんの注意 |
|---|---|---|
| メスシリンダー | 体積を量る | 真横から、へこんだ真ん中を読む |
| 電子てんびん | 重さを量る | 容器をのせてから0にする |
| 蒸発皿 | とけた物を取り出す | 最後まで熱しきらない |
| 実験用ガスコンロ | 熱する | 離れない・冷めてから片づける |
| けんび鏡 | 小さい物を見る | 低い倍率から。直射日光は使わない |
| ろうと・ろ紙 | 混じり物を分ける | ガラス棒を伝わせて静かに注ぐ |
表にすると、共通するものが見えてきます。どの器具でも「急がない」「近づけすぎない」「まず弱いほうから」という形をしています。理科の器具の決まりは、ばらばらの暗記事項ではなく、この三つの言いかえだと考えるとおぼえやすくなります。
机に置いたメスシリンダーを立ったまま読むと、必ず上から見る形になります。しゃがんで目の高さを水面に合わせるところまでが読み方です。同じ実験なのにはんの結果だけ数字がずれるときは、たいていこれが原因です。
テストでは「体積を正確に量るにはどれを使うか」という形で問われます。名前と役わりを結びつけて覚えていないと、ビーカーとメスシリンダーのどちらでもよいと考えてしまいます。正確に量るならメスシリンダー、混ぜたり運んだりするならビーカーと、目的で分けて整理します。
理由を知らない決まりは、急いでいるときに必ず飛ばされます。保護めがねは飛び散りから目を守るため、熱しきらないのははじけるからと、何から身を守っているのかまで言えるようにしておくと、忘れなくなります。
Q1 メスシリンダーの目もりは、どこをどう読みますか。
A 平らなところに置き、真横から、へこんだ水面の真ん中を読みます。
Q2 電子てんびんで薬品の重さだけを量るには、どうしますか。
A 先に薬包紙や容器をのせて「0」にしてから、はかりたい物をのせます。
Q3 蒸発皿を熱するとき、水がほとんどなくなったらどうしますか。
A 火を止めます。残りは皿の熱で乾かします。熱し続けると固体がはじけて危険です。
Q4 けんび鏡で、プレパラートに対物レンズを近づけるときはどうやって見ますか。
A 横から見ながら近づけます。のぞきながら近づけると、当たって割ることがあります。
Q5 けんび鏡で見たい物を右に動かしたいとき、プレパラートはどちらに動かしますか。
A 左です。見えている像は上下左右が逆になっているためです。
この記事は特定の単元ではなく、6年理科の複数の単元にまたがって出てくる器具の扱い方をまとめたものです。水よう液・燃焼・生き物の観察など、実験の内容自体は分かっているのに結果が合わない、テストで点が取れないというとき、原因が器具の側にあることは少なくありません。
ご家庭で確認するときは、使い方を言わせるより「なぜそうするの?」とたずねてみてください。理由まで答えられれば、初めて見る器具でも自分で考えて扱えます。理由を言えないまま手順だけ覚えている状態は、少し形を変えた問題で崩れやすいところです。
学校の実験は班で行うため、器具を実際にさわった回数には差が出ます。目もりの読み取りや0にする操作を一度も自分でやっていない、ということも起こりえます。料理用のはかりや計量カップでも、平らなところに置く・目の高さで読むという感覚は練習できます。
安全の決まりについては、家庭でも「何から身を守るためのものか」を話題にしておくと、学校の実験室でも守れるようになります。守らせることより、理由を共有することのほうが長持ちします。