テストで「『それ』は何を指していますか」と聞かれて、手が止まったことはありませんか。じつはこの問題は、思い出す問題でも、考えつく問題でもありません。答えは、かならず文章の中に、それも多くは「それ」より前に、そのまま書いてあります。さがす場所が決まっているのですから、こそあど言葉の問題は、やり方さえ知れば取りこぼさないところなのです。
「これ」「それ」「あれ」「どれ」のように、ものや場所を指し示す言葉を、頭の音をとってこそあど言葉(指示語)といいます。
なぜこんな言葉があるのでしょう。同じ言葉を何度もくり返さずにすむからです。「ぼくは赤い自てん車を買った。赤い自てん車は、兄のおさがりだ。赤い自てん車のタイヤは……」では、読んでいてうんざりします。二回目からを「それ」に置きかえれば、文章はすっきりします。
ここから大事なことが分かります。こそあど言葉は、前に出た言葉の代わりに立っているふだだということです。ふだの裏には、かならずもとの言葉が書いてあります。だから「指すものをさがす」というのは、頭をひねることではなく、ふだをめくることなのです。
四つの頭の音には、それぞれ役わりがあります。話している場面では、きょりで決まります。
| 頭の音 | どんなとき | もの | 場所 | 方こう | ようす |
|---|---|---|---|---|---|
| こ | 話す人の近く | これ | ここ | こちら | こんな |
| そ | 聞く人の近く | それ | そこ | そちら | そんな |
| あ | どちらからも遠い | あれ | あそこ | あちら | あんな |
| ど | 分からない・たずねる | どれ | どこ | どちら | どんな |
この表でとくに見てほしいのは、いちばん下の「ど」の行です。「ど」だけは、指すものが決まっていません。だから「どれ」「どこ」は、答えではなくしつ問を作る言葉になります。「これ・それ・あれ」が指さす指なら、「どれ」は指さす先をたずねる言葉なのです。
そして、文章の中ではきょりの感じが少し変わります。目の前にものがないので、すぐ前に出たことがらには「その・それ」を、もっと前や、みんなが知っていることには「あの・あれ」を使います。説明文にいちばん多く出てくるのは「その・それ」です。
「それは何を指していますか」という問題は、次の順番でとけば、ほとんど外しません。
③の入れかえが、この学習でいちばん大事なところです。答えを書いて終わりにせず、かならず入れて読み返してください。やってみましょう。
もし「クモの糸」だけを答えにしていたら、入れかえたときに「クモの糸を使い分けて」となり、何と何を使い分けるのかが分からなくなります。入れかえて読むと、答えが足りないこともちゃんと分かるのです。
指すものは、一つの単語とはかぎりません。二語のこともあれば、文の一部まるごとのこともあります。どこからどこまでを答えにするかで、正かいかどうかが変わります。
| 指すもののかたち | 文の例 | 答え |
|---|---|---|
| ものの名前 | 白い花がさいた。それをつんだ。 | 白い花 |
| 場所 | 校庭のすみに池がある。そこに金魚がいる。 | 校庭のすみの池 |
| したこと | 毎朝水をやった。それが芽を出させた。 | 毎朝水をやったこと |
三つ目のように、動きを指しているときは、答えの終わりに「〜こと」をつけると形がととのいます。「毎朝水をやった」のままだと文の中にうまくおさまりませんが、「毎朝水をやったこと」にすれば、「毎朝水をやったことが芽を出させた」ときれいに入ります。入れかえて読んだときに言葉がつっかえたら、「こと」「ところ」をつけ足せないか試してみてください。
ここまで「前をさがす」と言ってきましたが、例外が一つあります。書き手がわざと先に「ふだ」を出して、読む人に「何だろう」と思わせる書き方です。
見分け方はかんたんで、前をさがしても入れかえられる言葉が見つからないときは、すぐ後ろを見ればよいのです。多くの場合、「それは〜です」「つぎの〜」という形になっています。まず前、なければ後ろ——この順番だけ覚えておけば十分です。
読むときには便利なこそあど言葉ですが、自分が書くときは少しやっかいです。書いている本人は何を指しているか分かっているので、つい使いすぎてしまいます。
目安は、一つの段落に二つまで。三つ目が出てきたら、どれか一つをもとの言葉にもどしてみてください。とくに、こそあど言葉が指せるものが二つ以上あると、読む人はどちらのことか決められません。「弟と妹が来た。その子はケーキを食べた」では、どちらの子か分かりません。指せるものが二つあるときは、こそあど言葉を使わない——これは作文でずっと使えるきまりです。
いちばん多い失点がこれです。近くにある目立つ言葉をなんとなく選んで書いてしまい、本当に合うか確かめません。入れかえて声に出して読むだけで、多くはその場で気づけます。三秒でできる見直しです。
心配になって一文まるごと書きうつすと、入れかえたときに二重になって意味が通りません。反対に、短くしすぎても足りません。入れかえてちょうど意味が通る長さが、いつでも正しい長さです。
「ど」の言葉は、まだ決まっていないものを表します。さがす相手がいないので、「どこに行きますか」の「どこ」に答えはありません。同じこそあど言葉でも、「ど」だけは役わりがちがうと覚えておきましょう。
Q1 こそあど言葉が指すものは、ふつう文章のどこにある?
A その言葉より前(同じ文か、一つ前の文が多い)
Q2 答えが合っているかを確かめる方法は?
A 見つけた言葉をこそあど言葉の場所に入れて読み、意味が通るか見る
Q3 「毎日水をやった。それが花をさかせた」の「それ」は?
A 毎日水をやったこと(動きを指すので「〜こと」をつける)
Q4 「こ・そ・あ・ど」のうち、指すものが決まっていないのはどれ?
A 「ど」(どれ・どこ・どんな)。たずねるための言葉だから
Q5 作文で「それ」「あれ」が一つの段落に三つ出てきたら、どうする?
A どれか一つをもとの言葉にもどす(指せるものが二つあるときは使わない)
指示語の問題は、読解の中でめずらしく「解き方が決まっている」ところです。ですから、分からないと言われたときに内容を説明してあげる必要はありません。「その言葉より前をゆびでたどってごらん」「見つけたら、そこに入れて読んでみて」と、手順のほうを声に出してあげてください。入れかえて読ませる一手間さえ習慣になれば、正答率はそれだけで上がります。もう一つ、日常会話で「それ取って」の「それ」が通じるのは、同じものが見えているからです。作文では相手に見えていない——この一点を伝えると、書くときの使いすぎが自然に減ります。つなぎ言葉や説明文の要点の記事とあわせて読むと、文と文のつながりを追う力として一本につながります。