地震を思い出すと、たいてい「いきなりドンと来た」という記憶になります。でも実際には、その前に一度、小さくゆれている。そこがこの記事の芯です。
地震のとき、こんな順番になっていなかったでしょうか。まず食器がカタカタ鳴る。窓がカタカタ鳴る。「あれ、地震かな」と思う。そのあとで、体がユサユサと持っていかれるような、大きなゆれが来る。
このカタカタとユサユサは、気のせいでも、地震が2回起きたのでもありません。1回の地震から、速さのちがう2種類のゆれが出ているのです。
先に着く小さなゆれを初期微動、あとから来る大きなゆれを主要動といいます。「微動」は小さなゆれ、「主要」はその地震の本体という意味です。
2種類のゆれは、地面の中の伝わり方がちがいます。
P波は、地面を進む向きに押したり引いたりしながら伝わります。ばねを床に置いて、はしを進行方向にポンと押すと、縮んだところが向こうへ走っていきます。あの伝わり方です。押し引きなので、岩の中をするりと速く抜けていきます。
S波は、地面を進む向きと直角にゆさぶりながら伝わります。長いなわとびのはしを持って上下に振ると、波の形が向こうへ進みますね。あちらです。岩をよこにずらしながら進むぶん、P波より足がおそい。そのかわり、建物をゆさぶる力が大きいのです。
ここが大事なところで、こわいのはおそいほうのゆれです。速いゆれは先に着くのに被害が小さく、被害が大きいゆれはあとから着く。この「順番のねじれ」が、次に話す警報を成り立たせています。
テレビやスマートフォンから、あの音とともに「まもなく強いゆれが来ます」と流れることがあります。地震が起きる前に分かっているように聞こえますが、ちがいます。
つまり速報は、地震が起きたあとに、電波でゆれを追いこしているだけです。電波は秒速30万km、S波は秒速4km。追いこせて当たり前なのです。
だからこそ、この方法には限界もあります。震源が自分のすぐ下だと、間に合いません。追いこす距離が無いからです。速報が鳴らないまま大きくゆれることがあるのは、機械の故障ではなく、しくみの上でそうなる場合があるということです。
逆に、遠くの大きな地震なら、十数秒の余裕が生まれることもあります。十数秒あれば、火を止める、机の下に入る、ドアを開ける、ぐらいはできます。速報は「にげきる時間」ではなく「身を守る姿勢をとる時間」をくれるもの、と考えてください。
ニュースで「マグニチュード7.1、最大震度6弱」と読み上げられます。どちらも大きさの数字なので混ざりがちですが、測っているものがちがいます。
| マグニチュード | 震度 | |
|---|---|---|
| 何を表す | 地震そのものの規模 | その場所のゆれの強さ |
| 1つの地震で | 1個だけ | 場所の数だけある |
| たとえると | 電球のワット数 | そこの明るさ |
| 目安 | 1大きいと約32倍のエネルギー | 0〜7の10段階 |
電球のたとえで考えると分かりやすくなります。60Wの電球は、どこから見ても1個で60Wです。これがマグニチュード。でも、その電球の真下は明るく、となりの部屋は暗い。これが震度です。
だから「マグニチュードが大きいのに、うちは震度3だった」はふつうに起こります。遠かった、というだけのことです。反対に、規模が小さめでも、震源が浅くて真上に住んでいればゆれは大きくなります。
段階の数も勘違いされがちです。震度は0から7までで、8はありません。そして5と6には「弱」と「強」があるので、実際の区分は0・1・2・3・4・5弱・5強・6弱・6強・7の10段階になります。
地球の表面は、プレートという岩の板に分かれています。板はそれぞれゆっくり動いていて、日本のまわりは4枚もの板がぶつかり合う、世界でもまれな場所です。
じょうぎのはしを指で押してたわませ、ぱっと放すとはね返ります。あの「たわむ→はね返る」が、海の底で何十年もかけて起きていると考えてください。はね返るときに海の水ごと持ち上げれば、それが津波になります。
この板の動きは、6年生の単元である大地のつくりと変化で学ぶ地層や火山とも、もとは同じ話です(地層は、大地が書いた日記)。地層は大地が過去に何をしたかの記録、地震は大地が今まさに動いている現場、という関係になります。
①「ゆれが2回来た=地震が2回起きた」と考えてしまう
1回の地震から速さのちがう2つのゆれが出ているだけです。ただし、本震のあとに別の地震(余震)が来ることも本当にあるので、「ゆれが止まった=もう安全」とは考えないでください。
②「震度が大きい=大きな地震」と言ってしまう
震度は自分がいる場所の話です。地震そのものの規模を言いたいときはマグニチュードを使います。ニュースを聞くときに、どちらの数字なのかを意識して聞き分けてみてください。
③「速報が鳴ってから動けばいい」と思ってしまう
震源が近ければ鳴らないか、鳴ると同時にゆれます。速報はおまけの数秒であって、備えの代わりにはなりません。家具を固定してあるかどうかのほうが、はるかに効きます。
Q1 次に地震があったら(または訓練のときに)、最初のゆれの感じを覚えておきましょう。カタカタでしたか、いきなりユサユサでしたか。
A カタカタが数秒あったなら、震源はある程度はなれています。いきなり大きかったなら、震源が近かった可能性が高いです。初期微動の長さは、震源までの遠さの手がかりになります。
Q2 なわとびとばねで、2種類のゆれのちがいを再現してみましょう。
A なわを上下に振ると、波の形は進むのに、なわ自体は上下しているだけです。ばねを進む向きに押すと、縮みが向こうへ走ります。どちらも「ものは移動せず、ゆれだけが伝わる」ことが目で見えます。
Q3 同じ地震のニュースで、いくつの震度が発表されているか数えてみましょう。
A 市町村ごとに並ぶので、いくつも出てきます。マグニチュードは1つしか出てきません。この本数のちがいが、2つの言葉のちがいそのものです。
Q4 家の中で、地震のときに落ちてきそうなもの・たおれてきそうなものを3つさがしてみましょう。
A 高い所の本や箱、固定していない本だな、テレビ、電子レンジなどが定番です。見つけたら家族に伝えてください。伝えるところまでが防災です。
この単元は、知識がそのまま身の安全に直結するめずらしい内容です。
おすすめは、緊急地震速報の音を家族で一度きちんと聞いておくことです。あの音は、はじめて聞くと何の音か分からず固まってしまいます。音を知っているだけで、最初の数秒の動きが変わります。
また「震度とマグニチュードのちがい」は、大人でも混ざっていることが多い話です。お子さんから説明してもらうと、理解が定着します。説明できたら十分に分かっている証拠です。
家具の固定や避難場所の確認は、この記事をきっかけに一度だけ見直せば十分です。完璧をめざすより、「高い所の重いものを下ろす」の1つだけでも実行するほうが効果があります。