調べ学習でスライドを作るとき、ほしい写真は五秒で見つかります。見つけやすさと、使ってよいかどうかは、別の話です。
画面に出てくる写真やイラストは、どれも同じように並んでいます。だから、どれも同じ性質のものに見えます。けれども、その一枚一枚には、シャッターを押した人、線を引いた人がいます。時間をかけて作った人がいる、ということです。
作った人が「これをどう使うかを決められる」という権利を、著作権といいます。むずかしいのは、この権利が見えないことです。持ち物なら、ふでばこを勝手に持っていけば、なくなったことですぐに分かります。ところが画像はコピーしても元が減りません。だから「取った」という感じがしないまま、勝手に使ってしまうのです。
減らないのに、なぜいけないのでしょうか。減るのは物ではなく、その人が本来もらえるはずだったものだからです。仕事として絵をかいている人は、使いたい人から使用料を受け取って暮らしています。勝手に使う人が増えれば、その人は絵をかき続けられなくなります。あなたが好きな漫画やゲームの続きが出なくなる、というのは、遠い話ではありません。
ここは大事なところです。著作権は、プロだけのものではありません。作ったしゅんかんに、自動的に生まれます。役所に届け出る必要も、©マークを書く必要もありません。だから、クラスの友だちが書いた作文をだまってコピーして自分の名前で出すことも、同じ種類のあやまちです。
「じゃあ何も使えないのか」というと、そうではありません。使ってよい道は、大きく四つあります。この四つのどれにも当てはまらないなら、使わない。それだけの話です。
| 道すじ | やること | 注意 |
|---|---|---|
| ①自分で作る | 自分で写真をとる、自分で絵をかく、自分でグラフを作る | いちばん確実。人の顔が写るときは別の注意が必要 |
| ②許可をもらう | 作った人に「使っていいですか」と聞いて、いいと言われる | 友だちの作品なら、その場で聞ける |
| ③引用する | きまりを守って、一部だけ借りる | 条件がある(次の見出し) |
| ④使ってよいと決められたものを使う | 「自由に使えます」と書かれた素材を、その条件どおりに使う | 条件は素材ごとにちがう。必ず読む |
④について、ひとつ気をつけたいことがあります。検索したときに「フリー素材」と書いてあるページが出てきても、そのページ自体がよそから無断で持ってきている場合があります。「フリー」と書いてあることと、本当に自由に使えることは、別です。配っている大もとのサイトまでたどって、そこに書かれた条件を読む。遠回りに見えて、これがいちばん速い確認方法です。
条件には、たとえば「作った人の名前を書けば使ってよい」「商売には使ってはいけない」「形を変えてはいけない」といったものがあります。条件つきで許可されているのに、条件を守らなければ、許可がないのと同じことになります。
③の引用は、調べ学習でいちばんよく使う道すじです。人の書いた文章を、許可をとらずに一部だけ借りてよい、という決まりがあります。ただし条件があります。
この四つのうち、いちばん忘れられるのが1番です。スライドの八割が調べたページの写しで、自分の言葉は最後の一行だけ。これは引用ではなく、ただの写しです。調べたことは材料で、作品はあなたの考えのほうです。
そして、引用にはもうひとつ、見落とされやすい線があります。写真やイラストは、一部だけ借りるということができません。文章なら三行だけ借りられますが、写真は切りぬいても写真です。だから画像は引用ではなく、①②④のどれかで解決するのがふつうです。ここを混同して「出典を書いたから画像も大丈夫」と考える人がとても多いところです。
ことばの借り方そのものについては、国語で学ぶ引用のしかたでくわしく練習します。社会では、その手前にある「そもそも、なぜ借りると断らなければならないのか」を考えます。
授業で先生が新聞記事を配ることがあります。あれはよいのか、と思ったことはありませんか。実は、学校の授業で使うときには、特別にゆるされている範囲があります。教育のためなら、必要な分だけコピーしてよい、という決まりがあるのです。
問題は、その特別あつかいが教室の外に出たとたんに消えることです。同じスライドを、学校のホームページにのせる、動画にして投稿する、SNSに上げる。そのしゅんかん、それは授業ではなく発信になります。見る人が世界中に広がるからです。
| 場面 | 見る人 | 考え方 |
|---|---|---|
| 教室で発表する | クラスの人 | 授業のための利用としてゆるされる範囲がある |
| 学級新聞を配る | 学年・家の人 | すこし外に出る。出典は必ず書く |
| ホームページにのせる | だれでも | 許可のあるものだけ。①②④で作り直す |
| 動画やSNSに上げる | だれでも・消せない | 同上。音楽をつけるときも同じ |
だから、発表資料を作るときに一度だけ考えてほしいことがあります。「これは、あとから外に出す可能性があるか」。あるなら、はじめから許可のある素材だけで作っておく。作りなおしは、作るよりずっと大変です。
自分でとった写真なら自由だ、と①で書きました。ただし、そこに人が写っているときは別です。人には、自分のすがたを勝手に使われない権利があります。これを肖像権といいます。著作権が「作った人」の権利なのに対して、肖像権は「写っている人」の権利です。
運動会でとった友だちの写真をスライドに使うとき、写真をとったのはあなたでも、写っているのは友だちです。写した人と、写された人は、別の人。だからひと言、聞きます。「これ、みんなに見せてもいい?」。この一言があるかないかで、あとから起きることがまるでちがってきます。
ついでに覚えておくとよいのは、写真には場所の手がかりが写りこむということです。うしろの校門、電柱の住所表示、制服。一枚の写真から、住んでいる町が分かってしまうことがあります。これは著作権とは別の話ですが、出す前に一度立ち止まるという点では同じ習慣です。
その場で毎回まよわないために、順番を決めておきます。上から順に聞いていって、最初に「はい」になったところで止まります。
「使わない」という結論は、負けたように感じるかもしれません。けれども、自分でかいた下手な図のほうが、拾ってきた上手な図より、発表では強いことがあります。自分でかいた図は、なぜその形にしたかを説明できるからです。質問されて答えられるのは、自分で作ったところだけです。
出典を書くことは、四つの条件のうちのひとつにすぎません。文章なら、残りの三つ(自分の文が主・範囲が分かる・そのまま写す)もそろって初めて引用になります。画像はそもそも引用になりません。出典は魔法の呪文ではありません。
授業のための特別な範囲はたしかにあります。けれども、それは「教室の中で使う分だけ」です。提出したあとに掲示される、ホームページにのる、という可能性がある時点で、外に出る前提で作っておくほうが安全です。
これは著作権にかぎった話ではありません。数が多いことは、正しさの理由にはならない。むしろ、多くの人が気づかないままやっていることほど、ある日いっせいに問題になります。自分の作品に、人のものを混ぜたまま名前を書かない。ここだけは、人数に関係なく決めておいてよいところです。
Q1 友だちがかいたイラストを、学級新聞に使いたい。どうする?
A 道すじ②。本人に「使ってもいい?」と聞き、いいと言われたら、名前も一緒にのせます。作った人の名前を出すことは、感謝の形でもあります。
Q2 好きなキャラクターの絵を、自分でノートにかき写した。これはだめ?
A 自分だけのノートで楽しむ分にはかまいません。線が変わるのは、それを配ったり、インターネットにのせたりして、多くの人が見られる状態にしたときです。
Q3 調べ学習で、ちょうどよいグラフがサイトにあった。使いたい。
A いちばんよいのは、そのグラフのもとになった数字を見つけて、自分でグラフを作り直すことです。①になるうえ、たての単位やよこの目もりを自分で決めるので、内容の理解も深まります。もとの数字の出どころは書きます。
Q4 「フリー素材」と書いてあったのに、あとで使ってはいけないと分かった。
A 気づいた時点で使うのをやめ、差しかえます。大事なのは、次からは配っている大もとのページまでたどって、条件を自分の目で読むことです。
この単元は、一人一台の端末が配られた今、社会科の中でもっとも生活に直結する内容のひとつです。
叱るための知識としてではなく、判断の手順として渡してあげてください。「だめ」とだけ言われた子は、次にまよったときに大人に聞かなくなります。
ご家庭では、条件を読む姿を一度見せるのが効果的です。素材サイトの利用規約を一緒に開いて、「商用利用」「クレジット表記」といった言葉の意味を、そのつど普通の日本語に置きかえてあげてください。
写真の共有についても、この機会に家庭のルールを決めておくとよいと思います。お子さんの写真をご家族が投稿する場合も、本人に聞く。それを大人がやってみせることが、いちばん伝わります。
なお、この記事は小学生が学校の学習で使う場面を想定して、判断の目安をやさしく整理したものです。実際の作品利用や公開でご心配な点があるときは、学校や、権利を持っている方へ直接ご確認ください。