5年 国語 引用

引用のしかた ── 借りた言葉は、借りたと分かるように書く

調べたことをまとめる学習で、本に書いてあった一文をそのまま写した。悪いことはしていないつもりなのに、返ってきた紙に「これはだれの言葉?」と書かれていた。写したこと自体ではなく、写したと分かる書き方をしなかったことが問われています。

調べて書くと、必ず人の言葉が入ってくる

五年生になると、自分の頭の中だけでは書けない文章が増えます。米づくりのこと、森林のこと、災害のこと。どれも自分で見に行けないので、本やインターネットで調べたことを土台にします。

つまり、調べ学習の文章には他人が書いた言葉が必ずまじるということです。まじること自体は正しい姿です。問題になるのは、そこが自分の言葉なのか、だれかの言葉なのかを読む人が見分けられないときだけです。

自分で考えたこと ── 自分の名前で責任を持つ 本から借りたこと ── 借りた先の名前を書いておく この二つが混ざったまま出すと、 読む人はどこを信じてよいか分からない

この、借りたと分かるように書く方法が引用です。

引用とは「そのまま持ってくる」こと

引用は、元の文を一文字も変えずに自分の文章の中に置くことをいいます。言いかえたり短くしたりしたら、それはもう引用ではありません。

本にこう書いてあった: 「日本の森林は、国土の約三分の二をしめている。」 引用として書くなら: 『森林のはたらき』には「日本の森林は、 国土の約三分の二をしめている。」とある。

かぎかっこの中は、本のままです。「約」を「およそ」に直したくなっても直しません。直した瞬間に、それはその本が言っていないことになってしまうからです。

引用の三つのきまり

学校で求められることは、つきつめると三つしかありません。

きまりやぶるとどうなるか
①かぎかっこでかこむどこからどこまでが借りた分か分からない
②一字一句そのまま写すその本が言っていないことになる
③どこから借りたか書く読む人が元を確かめられない

三つとも、目的は同じです。読む人が元にたどりつけるようにすること。ここを外さなければ、書き方の細かい形はあとから調整できます。

とくに③は忘れられがちです。かぎかっこはつけたのに、どの本から取ったのかが書いていない。これでは、かこんだ意味が半分しかありません。

引用と要約は、別のもの

借りた言葉の入れ方には、もう一つ要約という道があります。元の文を自分の言葉で短くまとめて書く方法です。

引用要約
言葉元のまま自分の言葉に直す
かぎかっこつけるつけない
出典必要必要
向く場面言い方そのものが大事なとき長い話を短く伝えたいとき

まちがえやすいのは、要約なら出典はいらないと思ってしまうことです。言葉を自分に直しても、中身を教えてもらったことに変わりはありません。要約でも「〜によると」と元を示します。

使い分けの目安はかんたんです。数字や決まった言い方をそのまま見せたいときは引用、話の流れだけ伝えたいときは要約。三行以上写したくなったら、たいてい要約にしたほうが読みやすくなります。

出典の書き方

「どこから借りたか」を書いたものを出典といいます。小学校では、次の形が書ければ十分です。

本 : 書いた人『本の名前』出版社、出た年 図かん: 『図かんの名前』出版社、〇ページ ウェブ: サイトの名前「ページの見出し」(見た日づけ)

ウェブで見た日づけを書くのは、インターネットのページは書きかえられることがあるからです。紙の本とちがい、去年の内容と今日の内容が同じとは限りません。日づけがあれば、「その日はそう書いてあった」と示せます。

出典は、文章の終わりにまとめて並べても、その場で「〇〇によると」と入れてもかまいません。学校で形が指定されていれば、それが最優先です。

どこまで借りてよいか

ここが五年生でいちばん迷うところです。目安は自分の文が主、借りた文が従。自分の書いた分より借りた分のほうが多くなったら、それは調べたことの写しであって、自分の報告ではなくなっています。

よい形: 自分の文 ■■■■■■■■ 引用 ■■ こまる形: 自分の文 ■■ 引用 ■■■■■■■■

もう一つ、借りた文のあとには必ず自分の一言を置くと決めておくと形がくずれません。「〜とある。つまり、木を切らないことだけが森を守る方法ではないということだ。」のように、借りた言葉をどう受け取ったのかを書きます。

この一言があるかどうかで、読む人の印象は大きく変わります。引用だけ並んだ文章は資料集ですが、受け取り方が書いてあれば、それは自分の考えを持った報告になります。

つまずきやすいところ

一、少しだけ言葉を変えて写す。「約三分の二」を「だいたい三分の二くらい」に変えて、かぎかっこもつけずに書く。本人はまねをしていないつもりでも、中身は借りたままです。これは要約でも引用でもない、いちばんあいまいな形になります。変えるなら要約として書き、変えないなら引用として書く。どちらかに寄せます。

二、出典を「インターネット」とだけ書く。これでは、読む人はさがしようがありません。「インターネット」は場所の名前ではなく、道の名前です。せめてサイトの名前とページの見出しまで書きます。図書室の本なら、背表紙をそのまま写せば書名と出版社がそろいます。

三、写した紙をそのまま清書に持っていく。下書きのときに、本から写した部分と自分で考えた部分を同じ書き方でノートに並べてしまうと、清書のときにどちらだったか思い出せなくなります。ノートの段階で、借りた文には初めからかぎかっこと本の名前をつけておくと、あとで迷いません。

やってみよう

教科書でも図かんでもよいので、一冊開いて次の三つを順にやってみてください。

1 「これはすごい」と思った一文に付せんをはる 2 その一文を、かぎかっこつきでノートに写す 3 その下に、書名・出版社・ページを書く そのあと、写した文の下に自分の一言を足す 「わたしはこれを読んで〇〇だと思った」

これだけで、引用の形は完成しています。あとは報告文の中に置く位置を決めるだけです。何度かやるうちに、写す前から「これは引用、これは要約」と分けられるようになります。

まとめ

おうちの方へ

写して書いてきたお子さんに、まず「うつしただけでしょう」と言わずにすむ話でもあります。調べ学習で人の文章を使うのは正しい行いで、足りないのは作法だけだからです。
ご家庭でできることは一つ、下書きのノートを見るときに「この行はどこから来たの?」と聞いてみることです。答えられれば作法は身についています。答えられなければ、それは怒る場面ではなく、本の背表紙を一緒に写す場面です。
出典の形式は学校や先生によって指定が異なります。この記事の書き方は一般的な目安ですので、指示がある場合はそちらを優先してください。細かい形よりも、借りたものは借りたと示すという考え方のほうが、ずっと長く役に立ちます。
この作法は中学・高校のレポート、大学の論文、そして仕事の資料づくりまで、そのまま続きます。ここでつまずかせずに通しておくと、後の学習でひとつ強い足場になります。