産地は分かった。では、だれが、いつ、どうやって運んだのでしょうか。売り場のうらがわには、朝いちばんの仕事があります。
売り場の表示を見て、キャベツが群馬、みかんが愛媛だと分かる。ここまでは、店ではたらく人の学習でやったとおりです。
でも、そこで一度立ち止まってみてください。群馬のキャベツは、群馬から歩いてきたわけではありません。
畑でとれたキャベツが、あなたの町の棚にならぶまでには、まだ長い道のりがあります。この記事は、そのあいだの部分だけを見ていきます。
3年生の学習では、ここが空白になりがちです。「どこで作られたか」と「どこで売られているか」は調べるのに、そのあいだをつないでいる仕事を調べないまま終わってしまうのです。
けれど、町ではたらく人の中には、作る人でも売る人でもない人がたくさんいます。運ぶ人です。
店ではたらく人という単元は、レジや売り場に立っている人だけの話ではありません。その店を成り立たせている人を、店の外まで広げて見ると、学習はもう一段深くなります。
お店が開くのは、たいてい朝の9時か10時です。では、その品物は何時に着いたのでしょうか。
お客さんが店に入るころには、もう仕事の半分は終わっています。
スーパーの裏口を見たことがありますか。売り場とは反対がわに、トラックが止まる場所があります。あそこが品物の入口です。
お客さんが使う入口と、品物が使う入口。店には入口が二つあるのです。この見方をもっておくと、見学のときに気づけることが増えます。
ここでふしぎなことがあります。産地から店まで、まっすぐ運べばいちばん早いはずです。ところが実際には、とちゅうで一度配送センターという場所に集められます。
遠回りに見えます。なぜでしょうか。
| まっすぐ運ぶと | 一度集めると | |
|---|---|---|
| トラックの数 | 産地の数だけ必要 | 店ごとに1台ですむ |
| 店に来る回数 | 1日に何回も来る | 朝に1回でよい |
| 荷物のようす | キャベツだけ、魚だけ | いろいろ混ぜて積める |
| 店の人の手間 | そのつど受け取る | 一度に受け取れる |
キャベツのトラック、たまねぎのトラック、牛乳のトラックが別々に来たら、店の裏はトラックでいっぱいになってしまいます。
そこで、いったん一か所に集めて、「この店に行く分」だけをまとめ直す。これが仕分けです。
回り道に見えて、町全体で見ると走るトラックの数が減っているのです。道のこみぐあいも、使うガソリンも減ります。
手紙も同じです。ポストに入れた年賀状は、あて先の家へ直行しません。いったん郵便局に集められ、地方ごとに分けられてから運ばれます。
集めてから分ける。この順番は、たくさんのものを運ぶときの共通のやり方です。
運ぶ仕事には、ぜったいに守らなければならない約束が二つあります。
朝7時に着くはずのトラックが9時に着いたら、どうなるでしょう。棚が空っぽのまま開店することになります。
お客さんは「この店には品物がない」と思い、次からは別の店に行くかもしれません。遅れは、そのまま店の信用にひびきます。
だから運ぶ人は、道がこむ時間をさけて夜のうちに走ります。深夜のトラックが多いのには、こうした理由があります。
アイスクリームや魚は、運んでいるあいだに一度でもとけたり、ぬるくなったりしたら売り物になりません。
そこで、荷台そのものが冷蔵庫になっているトラックを使います。産地の倉庫から店の冷ケースまで、冷たさが一度も切れないようにつなぐのです。
これは「ものを動かす」というより、「じょうたいを変えずに動かす」仕事だと言えます。むずかしさはここにあります。
| 品物 | 運びかた | 気をつけること |
|---|---|---|
| アイス・れいとう食品 | こおらせたまま | とけたら元にもどらない |
| 魚・肉・牛乳 | 冷やしたまま | いたむのが早い |
| 野菜・くだもの | すずしく、やさしく | ぶつけると傷になる |
| たまご | ゆらさない | われる |
| お米・かんづめ | ふつうに積む | 重いので下に置く |
積む順番にも決まりがあります。重いものを下、こわれやすいものを上。積み方そのものが技術なのです。
もうひとつ、見えにくい仕事があります。どれだけ運んでもらうかを決める仕事です。
店の人は毎日、「明日はこれを何個」と注文しています。この数がずれると、こまったことが起きます。
だから店の人は、天気予報を見ます。暑い日は飲み物とアイス、寒い日はなべの材料が売れるからです。運動会や連休の前も、いつもと数を変えます。
「明日は雨だから、お客さんは少なめ。パンは減らそう」──こんな判断を、毎日しています。
売り場に立っている店員さんの仕事は、レジを打つことだけではありません。明日の町のようすを予想する仕事でもあるのです。
見学やインタビューで、この話題を聞くときの質問を用意しておきましょう。うまく聞けると、ふつうの見学では出てこない答えが返ってきます。
家でもできる調べ方があります。買い物のあと、家に持ち帰った袋の中身を種類ごとに分けてみるのです。
「冷やして運ばれてきたもの」「こおらせて運ばれてきたもの」「ふつうに運べるもの」。三つに分けるだけで、運ぶ人の苦労が数で見えてきます。
作る人と売る人は思いうかぶのに、そのあいだの人が出てこない。
時こく表の形で一日をたどると、深夜や早朝に動いている人がいることが分かります。人がいなければ、品物は一歩も動きません。
ためておく場所だと考えると、意味が分からなくなります。
ここはためる場所ではなく、分ける場所です。着いたその日のうちに出ていきます。「集める→分ける→出す」の三つで説明できると理解できています。
「早く運べばよい」で止まってしまう。
実際には温度・こわさ・時こくという条件がついています。速さは、いくつもある条件のうちの一つにすぎません。
Q1 産地から店へまっすぐ運ばず、とちゅうで一か所に集めるのはなぜですか。
A 店ごとにまとめ直すためです。店に来るトラックが1台ですむので、町全体で走る台数が減ります。
Q2 トラックが遅れると、店ではどんなことが起きますか。
A 棚が空いたまま開店することになります。買いに来た人が買えず、店の信用も下がります。
Q3 冷ケースの中の品物と、そうでない品物を3つずつ書き出しましょう。
A 冷ケース=牛乳・肉・アイスなど。そうでないもの=お米・かんづめ・お菓子など。前者は冷やしたまま運ばれてきたものです。
Q4 暑い日、店の人は何を多めに注文すると考えられますか。
A 飲み物やアイスです。天気によって売れるものが変わるので、数を毎日調整しています。
買い物の帰り道に、店の裏口を一度見せてあげてください。トラックが止まるスペースと、たたまれた箱の山があります。それだけで「ここから入ってくるんだ」と実感できます。
スーパーで「これは冷やして運ばれてきたと思う?」と聞くのも有効です。冷ケースにあるかどうかで子どもが自分で判断でき、運ぶ条件のちがいに自然と気づけます。
宅配便が家に届いたときも同じ話ができます。「この荷物、どこを通ってきたと思う?」──伝票には経由した営業所が書かれていることがあり、集めて分けるしくみがそのまま目に見えます。
この単元は5年生の貿易と運輸につながります。3年生のうちに「運ぶ人がいる」と気づいておくと、あとの学習がぐっと具体的になります。