三角形のきじでは、二等辺三角形と正三角形を辺の長さで見分けました。そのきじの終わりに、こんな一文がありました。「2年生では『直角』だけを学びました。3年生では、直角以外の角もくらべられるようになります」。でも、直角を使った三角形の名前は、そこから先に出てきません。直角三角形という名前は、2年生で習ったまま、置かれています。
前のきじで分けた3つの三角形は、どれも辺の長さという条件で決まる名前でした。3つの辺が全部同じなら正三角形、2つの辺が同じなら二等辺三角形、3つとも違う長さならどちらの名前もつきません。
この分け方には、共通の決まり文句があります。ものさしで辺を測ってはじめて分かる、という点です。見た目で「なんとなく二等辺っぽい」では判定になりません。
ここからが今日の話です。三角形には、辺の長さとはまったく別に、角の大きさで決まる名前もあります。
3つの角のうち、1つがちょうど直角になっている三角形。これを直角三角形と呼びます。
直角三角形になるかどうかを決めるのは角だけです。辺の長さが3cm・4cm・5cmでも、1cm・1cm・1.4cmでも、どれかの角がちょうど直角になっていれば、どちらも直角三角形です。辺の長さで分けた名前(正三角形・二等辺三角形)とは、まったく別のものさしで分けている──ここが今日いちばん大事なところです。
筆箱に入っている三角定規を2つとも出してみてください。形がちがうので「別の道具」だとは気づいていても、どちらも直角三角形の仲間だと習うことはあまりありません。
| 三角定規 | 直角のかど | 残りの2つの角 | 辺の長さ |
|---|---|---|---|
| A(二等辺のほう) | 1つ | 同じ大きさが2つ | 2つの辺が等しい |
| B(細長いほう) | 1つ | 大きさがちがう2つ | 3つの辺がすべて違う |
Aの直角のかどと、Bの直角のかどを、紙の上に重ねてみましょう。どちらもぴったり同じ大きさです。直角は「どの直角三角形にも1つだけある、決まった大きさの角」だからです。残りの2つの角は、AとBでまったく違う組み合わせになります。
辺の長さで決める名前と、角の大きさで決める名前は、別のものさしです。別のものさしなら、1つの三角形が両方の名前を持つこともあります。
さっきの三角定規Aがその例です。Aは「2つの辺が等しい」ので二等辺三角形。同時に「1つの角が直角」なので直角三角形。つまりAは直角二等辺三角形という、2つの名前を同時に持つ三角形です。
| 直角三角形である | 直角三角形でない | |
|---|---|---|
| 二等辺三角形である | 三角定規A(直角二等辺三角形) | ふつうの二等辺三角形 |
| 二等辺三角形でない | 三角定規B | 辺も角もバラバラな三角形 |
では、正三角形は直角三角形になれるでしょうか。なれません。正三角形の3つの角は、どれも同じ大きさです。三角定規の直角のかどを正三角形のどの角に重ねても、正三角形の角のほうが明らかに小さく、すき間があいてしまいます。1つの角が直角になることは、正三角形では起こらないのです。
紙に好きな三角形を描いて、3つの角(かどの先のとがったところ)を小さく切り取ります。その3つを、辺をそろえてすき間なく並べてみましょう。
3つの角は、ぴったり一直線になります。これはどの三角形でも起きる、不思議な決まりです。直角三角形で考えると、もっとはっきりします。1つの角はもともと直角。残りの2つの角を合わせると、一直線の残り半分になります。一直線は直角2つ分の大きさなので、直角三角形の残り2つの角を合わせると、ちょうど直角と同じ大きさになるというわけです。
「3つの角を合わせると、どんな三角形でも同じ大きさになる」という今日の発見は、5年生で「三角形の角を全部足すと180度」という形で、きちんとした計算の道具になります。今は度という数字を使わずに、切って並べて確かめるだけで十分です。
「二等辺三角形」と習うと、その三角形は二等辺三角形という名前しか持てないと思ってしまいます。
でも、辺で決める名前と角で決める名前は別べつなので、直角二等辺三角形のように2つの名前を同時に持つ三角形もあります。
どちらも「三角定規」で覚えてしまい、違う角度の組み合わせを持つ別の直角三角形だと意識していないことがあります。
直角のかどだけ重ねて、残りの2つの角がちがうことを目で確かめると、2しゅるいあることがはっきり分かります。
少し傾いているだけの角を、直角だと思い込んでしまうことがあります。
三角定規の直角のかどを実際に重ねて確かめるのが、いちばん確実な方法です。目分量は、角の大きさでも通用しません。
Q1 直角三角形とは、どんな三角形ですか。
A 3つの角のうち、1つがちょうど直角になっている三角形です。辺の長さは関係ありません。
Q2 二等辺三角形で、直角三角形でもある三角形はありますか。
A あります。三角定規の片方(直角二等辺三角形)がその例です。2つの辺が等しく、1つの角が直角という、2つの名前を同時に持っています。
Q3 正三角形は直角三角形になれますか。
A なれません。正三角形の3つの角は全部同じ大きさで、どの角も直角より明らかに小さいからです。
Q4 教室にある三角定規の2しゅるいは、どう違いますか。
A 1つは直角のほかに同じ大きさの角が2つある直角二等辺三角形、もう1つは直角のほかに大きさの違う角が2つある別の直角三角形です。辺の長さの組み合わせも違います。
Q5 三角形の3つの角を切って並べると、どうなりますか。
A ぴったり一直線になります。直角三角形なら、残り2つの角を合わせると直角と同じ大きさになることが分かります。
この単元は、前の「三角形」のきじで学んだ辺の長さで分ける見方と、新しく出てくる角の大きさで分ける見方を、混ぜずに両方持っておく力が試されます。「二等辺三角形だから直角三角形ではない」という、ありがちな思い込みに気づかせてあげてください。
お子さんの筆箱にある2本の三角定規を実際に取り出し、直角のかどだけを重ねて「同じ大きさ」であることを確かめ、残りの角がどう違うかを見比べるのがいちばん効果的です。
紙を三角に切って3つの角を切り取り、並べて一直線になることを確かめる実験もおすすめです。度という数字は5年生で習いますが、手で確かめた経験があると、そのときの理解がまったく変わります。