3年 理科 アリの観察

アリの行列 ── 道を覚えているのではなく、においをなぞっている

きれいに一列にならんで歩くアリ。だれも指示を出していないのに、なぜ列になるのか。その正体は、地面に残された1本のにおいです。

先頭のアリが、みんなを案内しているのではない

公園や玄関先でアリの行列を見つけたとき、多くの子はこう考えます。「かしこいアリが先頭にいて、みんなを連れて行っているのだろう」と。

ところが、行列の先頭のアリを1ぴきだけつまんでどかしても、行列はこわれません。すぐに次のアリが同じ道を進んでいきます。だれかが案内しているなら、案内役がいなくなった時点で列は止まるはずです。止まらないということは、案内役はいないということになります。

アリがたどっているのは、先頭の仲間ではありません。地面そのものに残された、目に見えない道です。

においの道は、こうしてできる

はじめにえさを見つけるアリは、行列ではなく、ばらばらに歩き回っています。あちこちを気まぐれに探しているだけです。

その1ぴきがおかしのかけらを見つけると、こうします。

えさを見つける ↓ かけらを持って巣へ帰る ↓ このとき おしりを地面につけながら歩き、 においのする液を少しずつ出していく ↓ 巣からえさまで、においの線が1本できる ↓ においに気づいた仲間が、その線の上を歩く ↓ 歩いた仲間も、帰りににおいを足す ↓ どんどん濃くなる 太い行列になる

ここが大事なところです。アリは、通るたびに道をつけ足しています。多くのアリが通った道ほどにおいが濃くなり、濃い道ほどさらに多くのアリが集まります。

だから、えさが多いところへ行く道だけが、自然と太くなっていきます。会議かいぎも命令もしていないのに、集団としてはちょうどよい道が選ばれる。これがアリのしくみのおもしろさです。

指1本で、たしかめられる

「においをたどっている」というのは、本当なのでしょうか。教室でも家の前でも、その場で確かめられます。

  1. 行列を見つける じっと10秒見て、進む向きをたしかめる
  2. 列を横切るように、地面を指でこする 5cmくらい、強めに1回
  3. こすった場所のアリを見る どうなるかを声に出して予想してから見る
  4. 1分待つ そのままにして、変化を記録する

指でこすった場所に来たアリは、いきなり立ち止まり、頭を左右にふって、うろうろします。道が切れたからです。まわりを探し回り、においの続きを見つけると、また進み出します。

やがて何ぴきかが切れ目をまたぎ、そこににおいを足すので、行列はつなぎ直されます。数分もあれば元どおりです。

やるときの注意

アリをつぶさないように、列のないところをこすります。
水をかけたり、食べ物をたくさん置いたりはしません。観察のあとに巣がこまってしまいます。
さわった手は、あとで必ず洗います。

においが消えるのは、失敗ではない

においの道は、そのままにしておくとだんだん弱くなって、やがて消えます。

これは一見、不便に思えます。せっかくつけた道が消えてしまうからです。けれども、消えるからこそ役に立っています。

においが消えないとにおいが消えると
えさが無くなった道いつまでも通い続ける自然に使われなくなる
新しいえさ場古い道に負けて広がらないそちらが太い道になる

えさを取りつくした場所から帰るアリは、もうにおいを足しません。足されない道は消えていきます。「今、えさがある道」だけが残るしくみになっているのです。

雨がふったあとに行列が見当たらなくなるのも、同じ理由です。水で道が流されたので、アリはもう一度さがすところからやり直しています。

巣の中では、仕事が分かれている

外を歩いているアリは、じつは巣にいるアリのごく一部です。

よび名すること
女王アリたまごを産む。ふだんは巣の奥にいて外へ出ない
はたらきアリえさ運び・子育て・巣ほり・そうじ。外にいるのはこの仲間
羽アリ決まった時期だけ現れ、飛んで新しい巣をつくりに行く

夏の夕方に、羽のあるアリがいっせいに飛ぶことがあります。あれは別の生き物ではなく、同じ巣で育ったアリです。ハエやハチとまちがえられますが、体が頭・むね・はらの3つに分かれ、あしが6本という点は、行列のアリとまったく同じです。

こん虫の体のつくりそのものについては、こん虫のからだの記事でくわしく見られます。

アリの観察の進め方

見つけたその場で終わらせず、記録に残すと、気づくことが増えます。アリの観察で書きとめたいのは、次の4つです。

向きを見分けるコツは、口に何か持っているアリを目で追うことです。荷物を持っている方向が巣です。カードの書き方の型は観察カードの記事にまとめてあります。

つまずきやすいところ

その1 アリは目で道を見ていると思っている

人間は目じるしを見て道を覚えるので、アリも同じだと考えてしまいます。
アリの目は、あまりよく見えません。かわりに、頭にある2本の触角しょっかくでにおいを感じています。歩きながら触角を細かく地面にふれさせているのは、道をさわって読んでいるのです。

その2 黒いアリは、全部同じ種類だと思っている

日本には280種類以上のアリがいます。大きさも、歩く速さも、好むえさもちがいます。
同じ公園でも、大きいアリと小さいアリはたいてい別の巣です。2つの行列を見つけたら、両方の大きさをくらべて記録すると、それだけで発見になります。

その3 巣をほって中を見ようとする

中が知りたい気持ちは当然ですが、ほると巣はこわれ、たまごも幼虫も死んでしまいます。
知りたいときは、飼育用の観察ケースを使うか、地面の上の出入り口だけを見ます。こわさずに分かることは、思っているよりたくさんあります。

やってみよう

Q1 アリの行列は、何をたどってできていますか。

A 地面に残されたにおいです。仲間の姿ではありません。

Q2 行列を指で横切るようにこすると、アリはどうなりますか。

A その場で立ち止まり、うろうろして続きをさがします。やがて別のアリがにおいを足し、道はつながります。

Q3 においの道が時間とともに消えるのは、なぜ都合がよいのですか。

A えさが無くなった道が自然に使われなくなるからです。今えさがある道だけが残ります。

Q4 行列を見て、どちらが巣の方向か見分けるには、どこを見ますか。

A 荷物を持っているアリを目で追います。その進む先が巣です。

Q5 雨あがりに行列が見つからないのは、なぜだと考えられますか。

A においの道が水で流されたから。えさをさがすところからやり直しています。

まとめ

おうちの方へ

この内容は、道具も費用もいりません。玄関先や公園のブロックのすきまで、5分あれば試せます。
お子さんには、指でこする前に「どうなると思う?」と必ず聞いてみてください。予想を口に出してから見ると、結果が記おくに残ります。予想が外れても、そこが一番おもしろいところです。
「先頭のアリが案内している」という思いこみが、目の前でくずれる体験は貴重です。見えないものが世界を動かしているという理科の考え方に、はじめてふれる場面になります。
なお、家の中まで行列が入ってくる場合は、えさになる食べこぼしを片づけ、通り道をぬれた布でふくと効果があります。においの道そのものを消すやり方で、これも今回の内容がそのまま役に立つ例です。