教科書や資料集に、木の切りかぶのような、左右にひろがった変わった形のグラフが出てきます。人口ピラミッドです。多くの人は「日本はおじいさんおばあさんが多いんだな」で読み終わってしまいます。ところが、この図がすごいのはそこではありません。人口ピラミッドは、今のことを見せている図ではなく、これから何年後に何が起きるかを見せている図です。読む順番を3つ決めるだけで、同じ図から未来が読めるようになります。
いちばん最初につまずくのが「これは何のグラフなのか分からない」というところです。折れ線でも円でもありません。答えはかんたんで、横にねかせた棒グラフが、2つ背中合わせにならんでいるだけです。
たての軸は年れいです。下が0さい、上にいくほど年をとります。横の軸はその年れいの人が何人いるか。まん中から左にのびているのが男の人、右にのびているのが女の人です。左右に分けてあるのは、男女で数のちがいが出る年れい(たとえば高れい者は女の人のほうが多い)を、一目でくらべられるようにするためです。
なぜ棒をたてに立てず、横にねかせたのでしょうか。理由は「年れいを下から上へ積み上げたかったから」です。人は0さいから順に年をとって、上へ上へと動いていきます。この図の中では、人は毎年1段ずつ上へ引っこすのです。だから年れいをたての軸にしておくと、時間の流れと図の向きがぴったり一致します。ここが、この図の最大のしかけです。
資料の読み取り問題でつまずく人の多くは、図をながめて「なんとなく上が太い」と感じたところで終わっています。感想ではなく読み取りにするには、見る順番を決めてしまうのが確実です。
手順1は、未来の入口です。0さいの棒が短ければ、6年後に小学校へ入る子どもが少ないということです。これは予想ではなく、すでに決まっている事実です。まだ生まれていない子は増やせても、すでに生まれた人数はもう変えられないからです。だから人口ピラミッドの下の段は、6年後・12年後の学校の様子や、20年後に働く人の数を、かなりの正確さで言い当ててしまいます。
手順2は計算です。たとえばいちばん太いところが50さいだったとしたら、15年たつと65さい、つまり高れい者の仲間入りをします。「15年後に高れい者がどっとふえる」と読めます。ニュースで出てくる「◯◯年問題」という言い方は、たいていこの計算から来ています。
手順3は割合です。上のほう(65さい以上)と、まん中(15〜64さい)のかたまりの大きさをくらべます。まん中が細くて上が太いほど、少ない人数で多くの人を支える形になります。ここまで来てはじめて、税や社会保障の話とつながります。
人口ピラミッドの形には名前がついています。名前を覚えることが目的ではなく、形がその国の「今どの段階にいるか」を表しているから意味があります。
日本は、この3つを順番に通ってきました。戦後すぐの日本は、きれいな富士山型でした。1つの家庭に子どもが4人5人いることがめずらしくなく、そのかわり病気で亡くなる人も多かったからです。そこから医りょうが進んで長生きするようになり、同時に生まれる子どもの数がへって、つりがね型を通りすぎ、今はつぼ型になっています。
ここで大事なのは、つぼ型が「悪い形」なのではない、ということです。下がすぼまった理由の一つは、子どもが病気で亡くならなくなったからでもあります。昔は何人か亡くなってしまうことを見こんで、多く産む社会でした。形の変化は、良い悪いではなく、社会のしくみが変わった記録として読むのが正しい読み方です。
世界に目を向けると、今も富士山型の国がたくさんあります。アフリカや南アジアの多くの国です。これらの国ではこれから働く人がどんどんふえるので、経済が大きく成長すると予想されています。同じ図を国どうしで並べると、その国の未来のちがいが見えてくるわけです。逆に、ヨーロッパの国ぐにには日本とよくにたつぼ型もあり、同じ課題を先に、あるいは後から通っていることが分かります。
日本の人口ピラミッドをよく見ると、つぼ型の横腹に、こぶのようなふくらみが2か所あります。これは形のくずれではなく、歴史がそのまま図に残っている部分です。
上のふくらみは、戦争が終わった直後の数年間に生まれた人たちです。戦地から人が帰ってきて、家庭がいっせいに再開されたため、生まれる子どもの数が一気にふえました。下のふくらみは、その人たちの子どもの世代です。親の数が多ければ、子どもの数も多くなります。ふくらみは1回で終わらず、約25〜30年おきに下の世代へ受けつがれるのです。
ところが、そのまた次にあたる3つ目のふくらみは、はっきりとは現れませんでした。一人ひとりが育てる子どもの数がへったため、親の人数が多くても子どもの人数がふえなかったからです。ふくらみが消えたところが、日本が富士山型からつぼ型へ切りかわった地点だと言えます。図の中の小さなでこぼこが、そのまま歴史の出来事とつながっている。人口ピラミッドが年表とならぶ資料としてあつかわれるのは、このためです。
6年の社会では、年表も折れ線グラフも人口ピラミッドも出てきます。にているようで、読み取れることがちがいます。
| 資料 | 分かること | 苦手なこと |
|---|---|---|
| 年表 | いつ何が起きたかの順番 | 人がどれくらいいたかは分からない |
| 人口の折れ線グラフ | 合計がふえたかへったか | どの年れいがふえたかは分からない |
| 人口ピラミッド | 年れいごとの人数と、未来の予測 | 1枚だけでは変化の向きが分からない |
最後の「1枚だけでは変化の向きが分からない」が重要です。人口ピラミッドは、ある年の一しゅんを切り取った写真だからです。だから教科書では、かならず1950年・2000年・2050年のように何枚か並べてのせてあります。並べてあるときは、必ず同じ年れいの段どうしを横に見くらべるのが読み方のコツです。1枚ずつ別々に感想を言っても、変化はつかめません。
人口ピラミッドには、実際の人数で書かれたものと、全体を100%としたときの割合で書かれたものの2種類があります。割合で書かれた図では、全体の人口がへっていても棒が短くなるとはかぎりません。図の下や横に「万人」と書いてあるか「%」と書いてあるかを、読む前にかならず確かめることです。ここを見落とすと、「子どもの数は変わっていない」という逆の結論を出してしまいます。
まん中より左が男、右が女ですが、若い年れいでは左右はほとんど同じ長さです。差がはっきり出るのは高れいの段だけで、これは女の人のほうが平均して長生きするためです。若い段のわずかなちがいを見て「男のほうが多い地域だ」と書いてしまうと、読み取りすぎになります。図から言えることと、言えないことを分けるのも読み取りの力です。
すでに生まれている人が何年後に何さいになるかは、計算するだけで分かる決定ずみの事実です。一方、これから何人生まれるかは予想です。答案では、この2つをはっきり書き分けると強くなります。「2040年に高れい者がふえるのは、すでに生まれている人が年をとるからです」と書ければ、単なる感想ではなく、根きょのある読み取りになります。
Q1 人口ピラミッドで、たての軸と横の軸は何を表していますか。
A たては年れい(下が0さい)、横はその年れいの人数です。まん中から左が男、右が女です。
Q2 いちばん太いところが50さいの国では、何年後に高れい者が大きくふえますか。
A 約15年後です。50+15=65で、65さい以上の段に入るからです。
Q3 下が広く上が細い形を何といい、人口はどうなる段階ですか。
A 富士山型で、人口はふえていく段階です。
Q4 教科書の人口ピラミッドを2枚ならべて、0〜9さいの段の長さだけを見くらべてみましょう。
A 何年でどれくらい短く(長く)なったかを言葉にできれば、資料の読み取りの答案になります。数字を1つでも書きそえると、さらに強くなります。
人口ピラミッドは、資料の読み取り問題で毎年のように出るわりに、読み方そのものを教わる機会が少ない図です。
おすすめは、教科書の図を指でなぞりながら「この段の人は、何年後に何さいになる?」と1回だけ問いかけることです。図の中で人が上へ動くというイメージがつかめると、以後は自力で読めるようになります。
「あなたが40さいになるころ、この図はどんな形になっていると思う?」という問いも有効です。正解を当てる必要はなく、理由を言えれば十分です。
なお、つぼ型を「悪い形」と断定しないことも大切です。子どもが亡くならなくなった結果でもある、という両面を伝えると、社会の変化を一面的に決めつけない見方が育ちます。
ニュースで「◯◯年問題」という言葉が出たときにこの図を思い出せると、学校の学習と世の中がつながります。