レジで「ポイント10%還元です」と言われるのと、値札に「10%引き」と書いてあるのは、どちらも同じ10%です。では聞きます。1000円の品物を買うなら、どちらのお店のほうが得でしょうか。「同じ10%だから同じ」と答えた人は、ここでつまずいています。10%引きはちゃんと10%引きですが、10%ポイント還元は約9.1%引きにしかなりません。しかも還元率を上げるほどこの差は開いていき、「100%ポイント還元」は無料ではなく半額です。得した金額はどちらも100円で同じなのに、割合にすると数がちがう。原因はひとつだけで、5年でならったもとにする量がそろっていないことです。ポイントは、いま小学生が自分の目でいちばんよく見る割合かもしれません。その割合が、なぜ書いてある数のとおりにならないのかを確かめます。
くらべるときは、売り方のちがいを言葉で言いあうのではなく、同じ品物で・同じ金額から・最後にどうなったかを書き出すのが確実です。1000円の品物で、2つのお店をならべます。
ここまでで気づいてほしいのは、得した額はどちらも100円だということです。A店は100円ぶん払わずにすみ、B店は100円ぶん多くもらえた。金額だけを見ればまったく同じで、ここまでは「同じ10%」という感覚が正しいのです。
ずれが出るのは、その100円を割合になおすときです。
割合は、くらべる量をもとにする量でわった答えです。くらべる量はどちらも100円。では、もとにする量は何でしょうか。手に入れた品物の合計でそろえます。
わられる数は同じ100なのに、わる数が1000と1100でちがう。だから答えがちがいます。割合はわり算の答えですから、わる数が変わればかならず答えも動きます。ここに大げさな仕掛けは何もなく、5年の教科書に書いてあるとおりのことが起きているだけです。
同じことを、出したお金の側から見ることもできます。B店では1100円分の品物を1000円で手に入れました。
どちらの向きから計算しても約9.1%になります。2通りのやり方で同じ数が出たら、その数は信じてよい、という確かめ方も覚えておくと便利です。
1000円の品物で、還元率だけを動かしてみます。「手に入る品物」は1000円+もらったポイント分です。
| 還元率 | もらうポイント | 手に入る品物 | 実際の値引き率 |
|---|---|---|---|
| 1% | 10 | 1010円分 | 約0.99% |
| 5% | 50 | 1050円分 | 約4.76% |
| 10% | 100 | 1100円分 | 約9.09% |
| 20% | 200 | 1200円分 | 約16.67% |
| 50% | 500 | 1500円分 | 約33.33% |
| 100% | 1000 | 2000円分 | 50% |
右の列は、ぜんぶ左の列より小さくなっています。しかも小さくなり方が一定ではありません。1%のときは0.99%でほとんど差がないのに、100%になると半分です。表を上から下へ読むと、還元率を上げるほど、書いてある数と実際の数の差が開いていくのが見えます。
この列を作った計算は、いつも同じ形です。還元率を r とすると、
この式には品物のねだんが出てきません。ということは、1000円の品物でも3万円の品物でも、実際の値引き率は同じだということです。高い買い物のときだけ還元が有利になる、ということは起きません。
そして最後の行がこの記事でいちばん強い結論です。「全額ポイント還元」と聞くと、お金が丸ごと返ってくる=無料のように感じます。でも返ってくるのは現金ではなく、次の買い物に使える分だけです。2000円分の品物を1000円で手に入れた、というのが正体なので、半額と同じ。無料と半額では、ずいぶんちがう話になります。
逆に考えることもできます。10%引きと同じ得になる還元率は、いくつでしょうか。式は上で作ったものを使い、答えを0.1にして r を求めます。
約11.1%です。10%引きに追いつくには、11.1%の還元がいる。1%ぶん多く配っても、まだ並んだだけで、勝ってはいません。同じやり方で他の値引きも出しておきます。
ならべると、値引きが大きくなるほど必要な還元率がぐんと重くなるのがわかります。50%引きと同じ得にするには、全額ポイントで返さなければならない。値引きと還元は、数字が同じでも重さがちがうのです。
「では10%還元が10%引きになることは絶対にないのか」と言われると、実はあります。もらったポイントで買った品物にもポイントがついて、それを1円残らず使い続けたときです。
1000円払うと100ポイント。その100ポイントで100円の品物を買うと10ポイント。その10ポイントで10円の品物を買うと1ポイント。これを続けます。
| 何回目 | 手に入る品物 | 品物の累計 | 出したお金 | そこまでの値引き率 |
|---|---|---|---|---|
| 1回目 | 1000円分 | 1000円分 | 1000円 | 0% |
| 2回目 | 100円分 | 1100円分 | 1000円 | 約9.09% |
| 3回目 | 10円分 | 1110円分 | 1000円 | 約9.91% |
| 4回目 | 1円分 | 1111円分 | 1000円 | 約9.991% |
| 5回目 | 0.1円分 | 1111.1円分 | 1000円 | 約9.9991% |
9に近づいていって、そのあと9.9、9.99、9.999と9がふえていきます。行き着く先は1111.111…円分で、これを0.9倍するとちょうど1000円。つまり10%引きになるのは、無限に使い続けた先です。1回の買い物では、どうやっても届きません。
それに、ポイントで払った分にはポイントをつけないお店のほうが多いです。そのときは2回目の約9.09%で止まります。表の上から2行目が、ふだんの買い物で起きていることだと思ってよいでしょう。
ここまでは、ポイントがきれいに還元率のとおりつく前提で計算してきました。実際のお店はそうではありません。「100円ごとに1ポイント」のように、区切りごとにつき、あまりは切り捨てになります。
「1%」と書いてあっても、1%になるのはちょうど100の倍数で買ったときだけ。それ以外はかならず1%より小さくなります。いちばん損なのは199円や299円のように「あと1円で次のポイント」というとき。199円では約0.50%で、書いてある率の半分です。金額が大きくなると1%に近づきますが、追いつくことはありません。
もっと差が出るのは、買い方です。切り捨ては会計1回ごとに起きるので、分けて買うほど捨てる端数がふえます。
同じ990円を使っているのに、0ポイントと9ポイントに分かれました。9ポイントは990円に対して約0.91%ですが、分けたほうは0%。ポイントの話で「まとめて買ったほうが得」と言われるのは、ねだんが安くなるからではなく、捨てられる端数が1回分にまとまるからです。
もう少しふつうの数でもやってみます。150円のものを4つ買う場合です。
「20%還元・ポイント上限1000ポイント」という書き方もよく見ます。上限があるとき、実際の還元率はどうなるでしょうか。
上限に当たったあとの還元率は「1000 ÷ 買った額」です。かけ算の答えがいつも1000で一定になる関係、つまり反比例です。買う額が2倍になると率は半分になります。
言いかえると、5000円を超えた分は0%還元と同じあつかいです。10000円買ったときにもらえる1000ポイントは、はじめの5000円だけで出た数です。あとの5000円でふえたポイントは 1000 - 1000 = 0(ポイント)、率になおすと 0 ÷ 5000 = 0% です。「20%還元」という言葉は、5000円までの話しかしていません。上限の数字は、ただの条件ではなくどこまでが20%なのかを決めている数だと読むのが正しい読み方です。
最後に、いちばん見落とされるところです。もらった100ポイントを使わないまま期限が切れたら、実際の値引き率はいくつでしょうか。
0%です。ポイントは、もらった時点ではまだ値引きになっていません。還元は値引きそのものではなく、値引きの予約で、その条件は「またこのお店で買う」です。条件を満たさなければ、割合は0のまま終わります。
いっぽう値札の10%引きは、レジを通った時点で確定しています。この2つをくらべるときは、得の大きさだけでなく、その得がもう決まっているのかどうかもちがう、と分けて考える必要があります。約9.1%という数は、ポイントをぜんぶ使えた場合の、いちばん良い数です。
割引券・ポイント還元・おまけ・まとめ買い、と売り方はいくらでもふえますが、くらべるときの式は1本でたります。3つを書き出すだけです。
ポイントの話がややこしく感じるのは、①と②がずれているのに、頭の中で同じ数として見てしまうからです。書き分ければ、ややこしさはほとんど消えます。この形にそろえておけば、これから新しい売り方が出てきても、同じわり算1本でくらべられます。割合の利用という単元が6年にある意味は、公式を1つふやすことではなく、この「そろえてからわる」を自分でできるようにすることだと思ってよいです。
その1。得した額を出したお金でわってしまう。B店で 100 ÷ 1000 とすると10%になり、A店と引き分けに見えます。でもA店を同じやり方でそろえると 100 ÷ 900 = 約11.1% で、やはりA店のほうが上です。「10%引きも10%還元も同じ10%」と感じてしまうのは、A店だけ品物でわり、B店だけ出したお金でわっているからです。片方ずつちがうものでわった数は、くらべてはいけません。どちらにそろえても結論は変わりませんが、そろえないと結論が変わってしまいます。
その2。ポイントを税抜きの金額につくと思ってしまう。多くのお店は税込みの支払額にポイントをつけます。本体1000円+税100円の1100円なら110ポイントです。ただし本体価格につけるお店もあるので、ここは計算で決まらずお店の決まりで決まるところ。レシートの下のほうに、何円に対して何ポイントついたかが必ず書いてあります。
その3。ポイントを使った回のことを考えていない。ポイントで払った分に還元がつかない決まりのお店では、ポイントを使うほど次にたまるポイントが減ります。1100円の買い物に100ポイントを使えば、還元がつくのは残りの1000円だけ。得はしているのに、率だけを見ると下がったように見えます。率が下がったことと損したことは別だと分けて読めるかどうかが、ここの分かれ目です。
Q1 2000円の品物を10%ポイント還元で買いました。実際の値引き率は何%ですか。
A 200ポイントもらえるので、手に入る品物は2200円分。200 ÷ 2200 = 約9.09%。1000円のときと同じ数です。式に品物のねだんが出てこないので、ねだんを変えても率は動きません。
Q2 「25%ポイント還元」は、何%引きと同じ得ですか。
A 25 ÷ (100 + 25) = 25 ÷ 125 = 0.2 なので 20%引き。25と20で5もちがいます。還元率が大きいほど、ここの落差が大きくなります。
Q3 「50%引き」と同じ得にするには、何%の還元が必要ですか。
A r ÷ (1 + r) = 0.5 を解いて r = 1、つまり100%還元です。全額ぶんをポイントで返して、やっと半額に並びます。「全額還元」が「無料」ではないことが、この1行で確かめられます。
Q4 100円ごとに1ポイントのお店で、1つ150円のものを4つ買います。1つずつ4回に分けたときと、まとめて1回で買ったときで、ポイントはいくつちがいますか。
A 1つずつなら 150 ÷ 100 = 1 で1ポイント、4回で4ポイント。まとめると 600 ÷ 100 = 6 で6ポイント。ちがいは2ポイントです。毎回50円ぶんの端数が捨てられ、4回で200円ぶん捨てていたことになります。
Q5 「20%還元・ポイント上限600ポイント」のお店では、何円から上限に当たりますか。また6000円買ったときの実際の還元率は何%ですか。
A 600 ÷ 0.2 = 3000円から上限です。6000円なら 600 ÷ 6000 = 10%。3000円の2倍買ったので、率はちょうど半分になりました。上限に当たったあとは反比例です。
Q6 1000円の買い物で100ポイントもらいましたが、使わないまま期限が切れました。実際の値引き率はいくつになりますか。
A 0%。1000円払って1000円分の品物しか手に入っていないので、得した額が0です。約9.1%という数は、ポイントを最後まで使えたときの上限だったとわかります。
Q7 A店は「200円ごとに3ポイント」、B店は「100円ごとに1ポイント」です。1000円の買い物ではどちらが多くもらえますか。
A A店は 1000 ÷ 200 = 5 で 5 × 3 = 15ポイント、B店は10ポイント。A店です。区切りの数がちがうものは、「何円ごとに何ポイント」のままではくらべられないので、1000円という同じ金額にそろえてから計算します。
割合は5年でならったあと、6年では「割合の利用」として、答えを出すことより何をもとにする量に選ぶかが問われる形に変わります。ここでつまずく子は計算ができないのではなく、問題文のどの数でわるのかを決められないのです。ポイント還元は、その「決める」を練習する題材として条件がとてもよいものです。得した額が同じなのに割合が変わる、という体験が1回できると、もとにする量を書き出す習慣がつきやすくなります。
ご家庭で扱うなら、レシートを1枚持ってきて「何円に対して何ポイントついた?」と読ませるところから始めるのがおすすめです。多くのレシートには支払額とポイント数が並んで印刷されているので、わり算1回で本当の率が出ます。表示が「1%」なのに計算すると0.9%だった、というずれを自分で見つけた経験は、公式を10回書くより残ります。なお、ポイントを集めること自体が良いか悪いかはご家庭の考え方によるところです。ここは算数の題材として扱うと決めておいたほうが、話が続けやすくなります。損得の判断そのものは、数が出たあとに落ち着いて話せば十分です。