つぎの式を計算してください、と言われたら、手が止まるはずです。0.5 + 1/3。分数どうしなら通分すれば足せます。小数どうしなら位をそろえれば足せます。ところがこの式は、分数と小数が一つずつ入っています。通分もできないし、位もそろいません。まず、どちらかの書き方にそろえる。それがこの単元でやることのすべてです。そして、そろえる先は毎回きちんと決まっています。分数のほうです。なぜ小数のほうではないのか。そこには、6 年生になったからこそ分かる理由があります。
まず思い出しておきたいのは、分数と小数はまったく別の数ではない、ということです。同じ数を、ちがう書き方であらわしているだけです。
数直線にかいてみると、はっきりします。0.5 と 1/2 は、数直線の上でぴったり同じ一点をさしています。二つの点があるわけではありません。点は一つで、名ふだが二まいついていると考えるとよいでしょう。
では、なぜ二まいも名ふだがあるのでしょうか。それぞれ、とくいなことがちがうからです。小数は大小をくらべるのがとくいです。0.375 と 0.4 はどちらが大きいか、頭からけたを見ていけばすぐ分かります。分数は分けることをあらわすのがとくいです。「3 人で 2 まいのピザを分けた」は 2/3 と一息で書けますが、小数では 0.666… となって書き終わりません。
この「書き終わらない」が、じつはこれからの話のかなめになります。
小数を分数に直す作業は、いつでも必ずできます。やり方も一つしかありません。小数点の右にあるけたの数だけ、10・100・1000 を分母にする。それだけです。
どんな小数を持ってきても、この手つづきは止まりません。小数は「けたが必ずどこかで終わっている数」だからです。終わっているということは、その一番下のけたに合わせて 10 や 100 や 10000 を分母にすれば、きちんと分数になるということです。
ところが、帰り道はちがいます。分数を小数に直すには分子を分母でわりますが、このわり算は終わらないことがあるのです。
1/3 を小数で書こうとすると、3 がどこまでも続きます。どこかで切れば、それはもう 1/3 ではない別の数です。0.33 は 1/3 より少しだけ小さい数で、0.34 は少しだけ大きい数。ぴったり合う小数は、どこまでさがしても見つかりません。
ここまで来れば、そろえる先が決まる理由はもう見えています。小数から分数への道はいつでも通れる道、分数から小数への道は通れるときと通れないときがある道です。まじった式に出会ったとき、必ず通れるほうへ全員を集めるのが安全です。だから、分数のほうにそろえます。
やることは三つだけです。
さいしょの式でためしてみましょう。
0.5 を 5/10 に直し、約分して 1/2。ここまで来れば、あとは 6 年生になる前からやってきた通分のたし算です。答えは 5/6。小数で書くと 0.8333… となって書けませんから、この問題は分数で答えるしかない問題だったことが分かります。
もう一つ、ひき算でも見ておきます。
1.2 のように 1 をこえる小数でも、やることは変わりません。12/10 と直してから約分して 6/5 にします。答えの 9/20 は、たまたま小数にも直せる数で、9 ÷ 20 = 0.45 です。答えを小数で書くよう指示があるときだけ、最後に直せばよいのです。計算のとちゅうで小数にもどってはいけません。とちゅうで直すと、また同じ行きづまりが起きるだけです。
たし算・ひき算では「そろえないと計算できない」という話でした。かけ算とわり算では事情が変わります。じつは小数のままでも計算はできてしまいます。それでも分数に直したほうがよいのは、けたが増えずに、約分で数が小さくなるからです。
どちらも同じ数(0.4 = 2/5)にたどりつきますが、下のやり方は小数点の位置を一度も考えずにすんでいます。かけ算でいちばん多いまちがいは小数点の打ちまちがいですから、その心配ごと自体を消せるのは大きな利点です。
わり算になると、差はもっとはっきりします。
0.4 を 4/10 = 2/5 に直してしまえば、あとは分数のわり算です。ひっくり返してかける、あのやり方がそのまま使えます。もし小数のままやろうとすると、3 ÷ 8 = 0.375 を出してから 0.375 ÷ 0.4 を計算することになり、わる数の小数点を動かす手つづきが増えます。わり算は、分数の世界に入ってしまえばかけ算に変わる。これが分数の最大の強みで、6 年の「分数のわり算」でならったことが、そのまま効いてくる場面です。
整数がまじっていても同じです。6 は 6/1 と見ればよいので、6 × 0.75 = 6/1 × 3/4 = 18/4 = 9/2 = 4.5 のように、ひとつの形にそろえてしまえます。
「いつも分数」とおぼえてしまうと、かえって遠回りになることもあります。次の式を見てください。
この式にふくまれる分数は 1/4 ひとつだけで、しかも 0.25 という終わる小数に直せます。分数にそろえて 1/2 + 1/4 + 1/4 と通分してもよいのですが、小数にそろえたほうが暗算で終わります。
見わけ方はかんたんです。式の中の分数が、全部きちんと終わる小数に直せるかどうか。終わる小数になるのは、分母が 2 と 5 だけでできている分数です。
| 分数 | 分母のつくり | 小数にすると | そろえる先 |
|---|---|---|---|
| 1/2 | 2 | 0.5(終わる) | どちらでもよい |
| 3/4 | 2×2 | 0.75(終わる) | どちらでもよい |
| 7/20 | 2×2×5 | 0.35(終わる) | どちらでもよい |
| 1/3 | 3 | 0.333…(終わらない) | 分数しかない |
| 5/6 | 2×3 | 0.8333…(終わらない) | 分数しかない |
| 2/7 | 7 | 0.142857…(終わらない) | 分数しかない |
分母を分解したとき、2 と 5 以外の数(3 や 7 など)が出てきたら、その分数は小数で書ききれません。この見わけができるようになると、問題を見たしゅんかんに「これは分数に行くしかない」「これは小数でも楽に行ける」が判断できます。ただし迷ったら分数。分数を選んで損をすることはありませんが、小数を選ぶと途中で行きづまることがあるからです。
見た目に 3 が出てくるので、いちばん多い取りちがえです。0.3 は 3/10 で、1/3 は 0.333… です。数直線にならべると、この二つはちがう場所にあります。
直し方は、必ず分母 10・100 から始めること。0.3 →「小数第一位までだから分母は 10」→ 3/10。この順番を声に出しているうちに、分子と分母の取りちがえは消えます。
1/3 を 0.33 に直して計算を進めてしまうと、答えがほんの少しずれます。テストでは正解になりません。
0.33 は 1/3 ではなく、1/3 に近いだけの別の数です。「近い数でよいのは、およその大きさを見積もるときだけ」と、はっきり分けておきましょう。
1 と 1/2 のような帯分数が式に入っていると、そのまま上下をひっくり返してしまう子がいます。逆数を作れるのは仮分数だけです。
1 と 1/2 → 3/2 → 逆数は 2/3。帯分数はまず仮分数にを、小数を分数に直すのと同じ「そろえる」作業の一部として一度にやってしまうと、忘れません。
8/20 のままにして減点されるのは、もったいないまちがいです。小数を分数に直すと分母が 10・100 になるので、約分できる形が出やすいのです。
分母に 10 や 100 が出てきたら約分の合図、と決めておきます。計算が終わったら、分子と分母をもう一度見る。この三秒が点数を守ります。
Q1 0.75 を分数に直すと?
A 3/4。小数第二位までなので 75/100、これを 25 で約分して 3/4 です。
Q2 0.2 + 1/6 を計算しましょう。
A 11/30。0.2 = 2/10 = 1/5 なので、1/5 + 1/6 = 6/30 + 5/30 = 11/30 です。
Q3 5/9 ÷ 0.5 を計算しましょう。
A 10/9。0.5 = 1/2 なので、5/9 ÷ 1/2 = 5/9 × 2/1 = 10/9 です。わったのに大きくなるのは、1 より小さい数でわったからです。
Q4 1/8 と 2/9 のうち、小数で書ききれるのはどちら?
A 1/8(=0.125)。分母 8 は 2×2×2 で 2 だけでできています。2/9 の分母 9 は 3×3 なので、書ききれません。
中学以降では、分数と小数はどちらも有理数という同じ仲間として整理されます。この記事で扱った「分母が 2 と 5 だけなら有限小数になる」という見わけは、そのまま中学の内容につながる考え方です。ここで大切にしたいのは、答えを出す速さよりも、なぜ分数に寄せるのかを子ども自身の言葉で言えることです。手順だけを覚えた子は、小数のほうが簡単そうに見える式に出会うと、つい 1/3 を 0.33 と置いてしまいます。これは計算間違いではなく、切り捨てた瞬間に別の数になっているという理解が抜けている状態で、中学の文字式や方程式でも同じ形で現れます。ご家庭で確かめるなら、「0.33 と 1/3 は同じ数?」と一問だけ聞いてみてください。「ちがう。1/3 は終わらないから」と答えられれば、この単元の芯はつかめています。なお、電卓が 1/3 を 0.3333333 と表示することも、よい話題になります。機械にも書ききれないものを、分数はたった三文字で正確に書けている。分数がいまも使われ続けている理由が、そこにあります。