あるクラスの小テストの平均点が61点だったとします。「だいたい60点くらいの子が多いクラスなんだな」と感じるのがふつうです。ところが実際の点数を1人ずつ見ていくと、61点のまわり、50点から70点までの21点ぶんに、だれも1人もいません。クラスは「40点台が得意ではない子」14人と「70点台のよくできる子」16人の2つに分かれていて、平均の61点は、だれも立っていない真ん中にぽつんと浮かんだ数字です。この「2つに分かれているクラス」を柱状グラフ(ヒストグラム)にかくとき、階級の幅をいくつにするかで、同じデータがまったくちがう形に見えます。幅10点なら2つの山がはっきり見えますが、幅40点にすると30人全員が1本の柱に収まってしまい、2つの山があったことさえ分からなくなります。実際の数で、何が起きているのかを確かめます。
あるクラス30人の小テストの結果です。40点台が14人、70点台が16人で、それ以外の階級には1人もいません。
| 階級(点) | 人数 |
|---|---|
| 0〜39 | 0人 |
| 40〜49 | 14人 |
| 50〜59 | 0人 |
| 60〜69 | 0人 |
| 70〜79 | 16人 |
| 80〜100 | 0人 |
柱状グラフにすると、40点台の山と70点台の山が2本だけ立ち、真ん中の50点台・60点台は地面のまま(0人)です。1つの山しかない「ふつうの形」ではなく、2つの山に分かれて、真ん中にすき間がある形をしています。この「真ん中にだれもいない」という事実が、このクラスの実力を表す上でいちばん大事な特徴です。
40点台14人の点数と、70点台16人の点数を、実際に書き出して合計します。
クラス全体の平均は、2つの合計をすべてたし、人数30人でわります。
平均は61点です。しかし、さっきの表をもう一度見てください。40点台の最高点は49点、70点台の最低点は71点。61点はそのちょうど真ん中、だれもいない21点ぶんのすき間のど真ん中です。平均点そのものを取った子はおろか、平均点の近く(50〜70点)にいる子が1人もいないのに、「平均61点のクラス」という1つの数字だけが発表されると、まるでふつうに実力がそろったクラスのように聞こえてしまいます。
30人を点数の低い順に並べ、ちょうど真ん中(15番目と16番目)の点数の平均をとると、中央値が求まります。40点台14人が1番目から14番目、70点台16人が15番目から30番目なので、15番目と16番目はどちらも70点台です。
中央値は71.5点。平均の61点とは10点以上ちがいます。平均と中央値がこれほど離れるのは、データが2つのグループに分かれているときによく起きる現象です。しかも中央値の71.5点も、実際に取った子は1人もいません(71点と72点の間にある数字です)。平均も中央値も、代表値はどちらも「実在しない点数」を指しているということが、このクラスの実力をいちばん正しく言い当てています。
次に、同じ30人のデータを、階級の幅40点で柱状グラフにしてみます。階級を「0〜39」「40〜79」「80〜119」の3つに区切ります。
結果は「40〜79点」の1本の柱に、クラス全員の30人が収まってしまうという形です。グラフを見ると、ただ1本の高い柱が立っているだけ。40点台と70点台という2つの山があったことも、50〜70点にだれもいなかったという事実も、このグラフからはいっさい読み取れません。幅を広げすぎると、「クラス全員がだいたい同じくらいの範囲にいる、まとまったクラス」という、実際とは正反対の印象を生んでしまいます。
今度は幅を思いきり狭くして、1点ごとに柱を立ててみます。40点台の点数を見ると、41,42,42,43,44,44,45,45,46,46,47,48,48,49 は9種類の点数にバラけ、どの点数も1人か2人しかいません。70点台も71,72,73,74,74,75,75,75,75,75,75,76,76,77,78,79 で9種類の点数にバラけますが、75点だけ6人と飛び出しています。
18種類もの細かい柱が並ぶと、どこが「山」なのか一目では分かりにくくなります。75点のところだけ少し高い柱が1本立つものの、40点台側にはこれより目立つ柱がなく、「2つの山がある」という大きな特徴がかえって読み取りにくくなるのです。幅を狭くするほど正確になる、というわけではありません。
今回のデータは、いちばん低い点数が41点、いちばん高い点数が79点なので、全体の範囲は38点ぶん(79-41)です。この範囲を、だいたい5〜10本くらいの柱に分けられる幅を選ぶと、山の形も、すき間も、両方が見えやすくなります。
今回使った幅10点は、ちょうど柱が「40〜49」「70〜79」の2本(他は0人で地面のまま)になり、2つの山とその間のすき間が、いちばんはっきり伝わる幅でした。幅を決めるときは「本数を増やせば正確」でも「本数を減らせば見やすい」でもなく、伝えたい特徴(今回は2つに分かれていること)が消えない幅を選ぶのが目的です。
その1。階級の幅は細かいほど正しいと思ってしまう。幅1点の例で見たとおり、細かくしすぎると18種類の柱にバラけて、かえって山の形がつかみにくくなります。細かさと正しさは同じではありません。
その2。平均点を聞いただけで「その点数のあたりに子どもたちがいる」と思い込んでしまう。今回は平均61点のまわり(50〜70点)に1人もいません。平均は「みんなの点数を均等にならしたときの数字」であって、「そのあたりにみんながいる数字」ではありません。実際にだれかがその点数を取っているかどうかは、柱状グラフを見ないと分かりません。
その3。柱状グラフを見ずに、平均点の数字だけで判断してしまう。「平均61点」という1つの数字は、40点台が得意ではない子と70点台のよくできる子が混ざっていることを隠してしまいます。表やグラフまで見てはじめて、2つのグループに分かれていることが分かります。
Q1 40点台14人の合計点と平均点はそれぞれ何点ですか。
A 合計は630点、平均は 630 ÷ 14 = 45点です。
Q2 70点台16人の合計点と平均点はそれぞれ何点ですか。
A 合計は1200点、平均は 1200 ÷ 16 = 75点です。
Q3 クラス全体30人の平均点は何点ですか。
A (630 + 1200) ÷ 30 = 1830 ÷ 30 = 61点です。
Q4 クラス全体の中央値(15番目と16番目の平均)は何点ですか。
A 15番目は71点、16番目は72点なので (71 + 72) ÷ 2 = 71.5点です。
Q5 階級の幅を40点にして「40〜79点」を1つの階級にすると、その柱には何人入りますか。
A 40点台14人と70点台16人を合わせて、30人(クラス全員)です。
Q6 平均点61点に、実際にいちばん近い点数を取った子は何点で、40点台・70点台のどちらのグループですか。
A 61点との差は、49点の子で |49-61|=12点、71点の子で |71-61|=10点。差が小さいのは71点の子なので、71点・70点台のグループです。平均点にもっとも近い子でも、10点も離れています。
Q7 40点台14人を、階級の幅5点で「40〜44」「45〜49」の2つに分けると、どちらの階級が何人で多いですか。
A 41,42,42,43,44,44 の40〜44点は6人、45,45,46,46,47,48,48,49 の45〜49点は8人。45〜49点のほうが多いです。
6年の「データの調べ方」では、平均値・中央値・最頻値という代表値の求め方を学びますが、現実のデータでより大きな落とし穴になるのは、代表値を求める前の段階、つまり柱状グラフの階級の幅をどう決めるかです。同じ30人分の点数でも、幅10点なら「2つに分かれたクラス」、幅40点なら「ふつうにまとまったクラス」に見えてしまいます。ニュースや広告で見る棒グラフ・柱状グラフも、区切り方しだいで印象が大きく変わります。「平均〇点でした」という結果だけを受け取らず、「じゃあ、その点数の近くには実際にだれがいるの?」と聞き返す習慣がつくと、数字に振り回されにくくなります。
ご家庭で試すなら、クラスやきょうだいのテストの点数でなくても構いません。家族の年齢、1週間の気温、好きな本のページ数など、10個くらいの数字を用意して、幅を変えて何度か柱状グラフをかいてみるのがおすすめです。幅を変えるだけでグラフの形が変わる体験は、公式を覚えるよりも強く残ります。