「ギガが減った」「ギガが足りない」── ひと月に何回も口にする言葉です。ところが「ギガって何ですか」と聞かれると、答えられる人はぐっと少なくなります。それもそのはずで、ギガという言葉は、学校の算数の教科書に出てきません。でも中身は、6年生でならう量の単位のしくみとまったく同じ話です。キロ・ミリが分かる人なら、あと5分で分かります。そして分かったとたんに、「32GBのはずのカードが29.8GBと出る」「1か月7GBって1日どれくらい?」「倍速で見ればギガが節約できる?」といった、身のまわりの数の話がぜんぶ計算できるようになります。この記事では、その計算をぜんぶ2通りのやり方で出して、答えが合うかどうかを自分でたしかめるところまでやります。
ここがいちばん大事なところです。ギガは単位ではありません。単位の前につける印です。
6年生で、長さや重さの単位をならったときのことを思い出してください。km(キロメートル)の「キロ」だけを取り出して「キロが3つある」とは言いませんでした。キロは1000倍を表す印で、メートルにくっついて初めて長さになります。kg も kL も同じで、キロの部分は1000倍という意味しか持っていません。
ギガもまったく同じ立場です。ギガにくっついている本当の単位はバイト(記号は B)です。だから正しく言えば、減っているのは「ギガ」ではなく「ギガバイト」。もっと正確に言えば、その月に使えるバイト数の残りが減っているのです。
「ギガ」だけで言い切ってしまう言い方は、長さの話で「キロが減った」と言っているのと同じ形です。ふだんの会話ではそれで通じますが、計算しようとしたとたんに通じなくなります。何の単位の話なのかが消えてしまうからです。
データ量の単位は、算数の教科書に章として立っていません。けれども新しい世界というわけではなく、量の単位のしくみでならった階段の、上のほうにそのまま並んでいるだけです。その階段は、ミリからキロまででした。じつは上にも下にもまだ続いています。上のほうだけを取り出すと、こうなります。
| つける印 | 記号 | 何倍か | 1000をかけた回数 |
|---|---|---|---|
| (なし) | ― | 1倍 | 0回 |
| キロ | k | 1000倍 | 1回 |
| メガ | M | 100万倍 | 2回 |
| ギガ | G | 10億倍 | 3回 |
| テラ | T | 1兆倍 | 4回 |
右の列を見てください。1段のぼるごとに1000をかけるだけです。キロの上だからといって新しい決まりが増えたわけではなく、同じ動作をくり返しているにすぎません。
ここで、4年生でならった「大きな数は4けたごとに区切って読む」が効いてきます。100万・10億・1兆は、どれも読み方でつまずきやすい数ですが、1000をかけた回数で数えれば取りちがえません。
ここで1つめのたしかめをしておきます。1GBが何バイトかを、別々のやり方で2回出してみます。
合ったので安心して先へ進めます。答えが1つしかない計算でも、道すじを2本用意すると、自分で○がつけられるようになります。
倍の数だけ分かっても、実感がわきません。もとの1バイトがどのくらいの量なのかを見ておきます。
1バイトは、半角の英数字1文字ぶんです。a も 7 も 1バイト。ひらがなや漢字は形が複雑なぶん場所を取り、ふつう1文字で3バイト使います。これを使うと、身のまわりのものが計算できます。
1GBは、文庫本3300冊ぶんの文字が入る量です。ところがスマホで動画を見ると、1GBは30分ほどで消えてしまうことがあります。ここから、写真や動画は文字にくらべてけたちがいに重いことが数で分かります。文字で1GBをうめるには一生かかっても足りませんが、動画なら昼休みのあいだに使い切れてしまうのです。
「32GB」と書かれたSDカードやUSBメモリをパソコンにつなぐと、29.8GBのように、買ったはずより少ない数が出ます。だまされたように感じますが、算数の目で見るとまったく別のことが起きています。ものさしが2本あるのです。
これまで見てきた階段は、1000をかけていく階段でした。ところがコンピューターの中身は2をかけていく作りになっていて、そちらの世界では1000のかわりに1024を1段ぶんに使う習わしがあります。1024は、2を10回かけた数です。
同じ「1GB」と書いてあるのに、中身が7%ほどちがう2本のものさしが世の中に同時にあるわけです。売る側は1000のものさしで「32GB」と書き、パソコンは1024のものさしで数えて表示します。では表示はいくつになるでしょうか。ここを2通りで出します。
実際の表示が29.8より少し小さいこともありますが、それはカードの中に目次の場所を作るぶんが引かれているためで、29.8までは単位の読みかえだけで説明がつきます。「へっている」のではなく「別のものさしで測り直されている」。5年でならった単位量あたりの大きさと同じ考え方で、比べるときはものさしをそろえてからでないと比べられません。
なお1024のものさしのほうには、きちんと別の名前が用意されています。GiB(ギビバイト)です。表示がGiBになっていれば食いちがいは起きません。名前を分けずに両方GBと書いてしまうから混乱するだけなのです。
ここからは、じっさいに使う計算です。スマホの契約が「1か月7GBまで」だとします。1日あたりどれくらい使えるでしょうか。5年でならった単位量あたりの大きさそのものです。
わり算の答えが割り切れないので、逆算でたしかめます。
ここで、GBのままわらなかったことに注目してください。7÷30=0.2333…GBでも正しい答えですが、0.2333GBという数は頭に残りません。233MBなら「写真70枚ぶんくらいか」と見当がつきます。単位を選ぶのは飾りではなく、その数を自分で扱えるかどうかを決める作業です。
「動画1分で何MB使うか」は、調べても数字がばらばらです。画質や中身でちがうので、ばらばらなのが正しいのです。だから自分の端末で測ってしまうほうが確かです。やり方は、5年の速さとまったく同じ形をしています。
たとえば前が1250MB、後が1460MBだったとします。
この「変わったぶん ÷ かかった時間」という形は、速さのときの「進んだ道のり ÷ かかった時間」と同じです。のりものでも水道でもデータでも、1あたりを出す式は1つしかありません。だから公式を新しく覚える必要はありません。
今月の残りが2.5GBで、1日に0.4GBずつ使うとします。あと何日もつでしょうか。
答えは6.25ですが、「6.25日もつ」と答えると正しくありません。聞かれているのは「まる1日ぶん使える日が何日あるか」なので、7日めのとちゅうで足りなくなります。だから答えは6日です。あまりの0.25日ぶんは使えますが、1日としては数えません。
逆に、こんな問題なら答えが変わります。「2.5GBを0.4GBずつに分けて保存するには、入れものはいくつ必要か」── このときは6つでは0.1GBがあふれるので、7つです。同じ6.25という数から、6と7の両方が出てきます。
4年のがい数でならった「切り捨てか切り上げか」は、数の見た目では決まりません。何を聞かれているかで決まります。ここを機械的に四捨五入して「6日」でも「7こ」でもなく「6.3」と書いてしまうのが、いちばんもったいないまちがいです。
スマホの画面には「データ使用量 50%」「バッテリー 50%」のように、パーセントで出てくる表示もあります。ここで5年の割合が顔を出します。
50%は「半分」です。これは正しい。でも半分が何GBなのかは、50%という数字の中には入っていません。7GBの契約なら50%は3.5GB、20GBの契約なら50%は10GBです。同じ50%が、3.5GBにも10GBにもなります。
バッテリーでも同じことが起きます。「50%だから2時間もつ」は、その端末の100%が4時間ぶんのときにだけ正しい話です。機種がちがえば100%の中身がちがうので、そのまま持ち込めません。友だちのスマホが自分より早く減るように見えるのは、使い方が悪いからではなく、100%のもとの量がちがうだけのことがあります。
割合の学習でいちばん強調される「もとにする量を見つける」は、テストのための作業ではありません。%で書かれた数を量に戻せるかどうかという、毎日の力です。
「1.5倍速で見れば時間が短くなるから、通信量も少なくなる」── とても自然な考えですが、これは合っていません。理由は、送られてくるものが何かを考えると分かります。
動画は、絵を何枚も順番に送って動いて見せています。1.5倍速にしても、送る絵の枚数は1枚も減りません。同じ枚数をはやくめくって見せているだけです。だから、使うデータの合計は変わりません。変わるのは、かかる時間だけです。
つまり倍速は、合計を減らす操作ではなく、同じ合計を短い時間に詰めこむ操作です。6年の比例と反比例で言えば、かかる時間は倍速に反比例して短くなるのに、データの合計はどちらにも比例していません。「時間が減れば量も減る」は、いつでも成り立つ関係ではないのです。
では、ほんとうに減らしたいときはどうするか。減らせるのは画質です。画質を落とすと、1枚の絵に使う点の数そのものが減ります。
ここも2通りで出してたしかめます。
たてもよこも3分の2にしただけなのに、点の数は9分の4、半分より少なくなりました。これは6年の面積と、5年の割合でならったとおりです。たてよこを同じ割合でちぢめると、面積はその2回ぶんちぢむ。データ量も点の数につれて減るので、実際の通信量もだいたい半分くらいまで落ちます(絵のしまい方によって多少ずれるので「だいたい」です)。
ここが、この記事でいちばん役に立つところかもしれません。倍速は効かず、画質は効く。理由まで言えるなら、それは覚えたのではなく分かったということです。
Q1 1 TB は 何 GB ですか。また、何 MB ですか。
A 1000 GB、100万 MB。テラは1000を4回、ギガは3回なので、差は1回ぶん=1000倍。MBまではもう1段下がるので、さらに1000倍して100万MBです。
Q2 「1か月20GB」の契約で、1日あたり何MBまで使えますか(30日として)。
A 20 × 1000 = 20000 MB、20000 ÷ 30 = 666.6… MB。およそ667MBです。たしかめは 666.7 × 30 = 20001 ≒ 20000 MB で、もとにもどります。
Q3 残り1.8GB、1日に0.25GB使います。あと何日もちますか。
A 1.8 ÷ 0.25 = 7.2。まる1日として数えられるのは7日までなので、答えは7日です。7.2日と書かないこと。8日めはとちゅうで足りなくなります。
Q4 「64GB」と書かれたUSBメモリは、パソコンでおよそ何GBと表示されますか。
A 64 × 0.93132 = およそ59.6GB。1024のものさしで測り直されるためです。64,000,000,000 ÷ 1,073,741,824 でも同じ59.6になるので、2通りで合わせられます。
Q5 「30分の動画を2倍速で見たので、使ったデータは半分になった」。これは正しいですか。
A 正しくありません。送られる絵の枚数は変わらないので、データの合計は同じです。変わったのは見終わるまでの時間(30分 → 15分)だけで、1分あたりのデータ量はむしろ2倍になっています。
Q6 友だちが「うちのスマホは80%も残ってる」と言いました。自分は60%です。友だちのほうが長く使えると言い切れますか。
A 言い切れません。80%と60%は割合なので、もとにする量がちがえば比べられないからです。友だちの100%が3時間ぶん、自分の100%が6時間ぶんなら、80%は2.4時間、60%は3.6時間で、自分のほうが長くもちます。
「ギガ」は、子どもが日常でいちばん多く口にする数の言葉のひとつなのに、学校ではまず扱われません。単元の名前が無いからです。そのため、言葉としては毎日使えるのに、数としては一度も計算したことがないという、ふしぎな状態のまま高学年まで来ます。ここは6年の量の単位のしくみ・5年の単位量あたりの大きさ・割合が、そのまま使える場所です。新しく教えることはほとんどありません。
ご家庭では、正解を教えるより「1日いくらまで使える計算になる?」と聞いて、紙に書かせるのが効きます。答えが合っているかどうかは、逆算でお子さん自身がたしかめられます(1日あたり×30日で、もとの数にもどるか)。もうひとつおすすめなのが、この記事の「1分あたりを自分で測る」です。調べた数字ではなく自分の端末の数字が出てくるので、同じわり算でも手ごたえがまったくちがいます。なお通信量やバッテリーの話は節約のお説教に向かいやすいところですが、算数として扱うぶんには、叱る材料にしないほうが続きます。倍速では減らず画質でなら減る、という話は、我慢の話ではなく理屈の話として面白がれる題材です。