6年 理科 送電と変圧

送電と変圧 ── 電気は、なぜ高い電圧で送られるのか

発電所の電気は、家に届くまでに一度ものすごく高い電圧にされます。わざわざ強くしてから、また弱める。なぜそんな回り道をするのでしょうか。

電気が通る道

4年生の社会で、電気の道すじを習いました。

電気の道すじ 発電所 ↓(送電線・高い電圧) 変電所 ↓(配電線) 電柱の変圧器 ↓(弱めた電圧) 家(コンセント)

家のコンセントは100ボルトです。けれど、発電所を出たばかりの送電線は、数十万ボルトという、家庭用とは比べものにならない高さの電圧で電気を運んでいます。

社会科では「そういう道すじになっている」ことを習いました。この記事では、なぜそうなっているのかを理科の目で考えます。

電線も、少し熱くなる

「電気の利用」の実験を思い出してください。電熱線に電流を流すと、線が熱くなりました。

電熱線の実験(ふくしゅう) 電流を流す → 熱くなる 流れる電流が多いほど → より熱くなる

送電線も金属の線ですから、同じことが起きます。電気を送っている間、送電線そのものも少し熱くなります。この熱は、送った電気の一部が姿を変えて逃げてしまったものです。

つまり、電気を送るときには、必ずいくらかの電気が熱になって失われるのです。これを送電の「ロス」と呼びます。

ロスが大きいほど、発電所でがんばって作った電気が、家に届く前にむだになってしまいます。できるだけロスを小さくしたい。これが、送り方を工夫する理由です。

電圧を上げると、電流が減る

電気の強さを表す言葉には、電圧と電流の2つがありました。送りたい電気の量(電力)は、この2つをかけ合わせたもので決まります。

電力の関係 電力 = 電圧 × 電流 同じ電力を送るなら 電圧を2倍にすると → 電流は半分でよい 電圧を10倍にすると → 電流は10分の1でよい

これは6年生の算数で学ぶ反比例と同じ形をしています。電圧と電流は、電力を一定にしたまま、どちらかを増やせばもう片方が減る関係にあるのです。

数で確かめてみましょう。1000の電力を送りたいとき、電圧と電流の組み合わせは何通りも考えられます。

電圧電流電力(電圧×電流)
101001000
100101000
100011000

どの組み合わせでも、送れる電力は同じ1000です。しかし、電流だけを見ると、上の行ほど電流が大きく、下の行ほど小さくなっています。電線が熱くなりやすいのは、電流が大きい上の行の送り方です。

ここで、さきほどの電熱線の実験とつながります。電流が少ないほど、電線は熱くなりにくいのでした。

電圧を上げる理由 電圧を高くする ↓ 同じ電力でも電流が減る ↓ 電線が熱くなりにくい ↓ 送電中に失う電気(ロス)が減る

だから発電所は、送り出す電気をあえて高い電圧・小さい電流に変えてから、送電線に流しているのです。

では、なぜ家では100ボルトなのか

「ロスを減らすなら、電圧はどこまでも高いほうがよいのでは」と思うかもしれません。しかし、高い電圧には別の問題があります。

高い電圧家庭用の電圧
送電中のロス少ない多い(電流が増えるため)
感電の危険非常に高い低い(それでも注意は必要)
必要な設備太い鉄塔・厳重な絶縁ふつうの配線でよい
家電での使いやすさそのままでは使えないそのまま使える

家庭用の電気製品は、100ボルトという決まった強さで動くように作られています。もし送電線のままの高い電圧を家に引き込んだら、家電はこわれ、感電の危険も大きくなってしまいます。

そこで、送るときだけ高い電圧にして、使う直前の変電所と電柱の変圧器で、段階的に弱めているのです。

まとめると 遠くまで運ぶとき → 高い電圧(ロスを減らす) 家で使うとき → 低い電圧(安全・そのまま使える) → 「運ぶ」と「使う」で ちがう強さが必要だから 途中で変えている

電圧を変える道具 ── 変圧器

電圧を上げたり下げたりする道具を変圧器といいます。電柱の上についている、バケツのような形の機械も変圧器です。

変圧器のしくみをくわしく学ぶのは中学校ですが、いまの時点では次のことを知っておけば十分です。

変圧器についての大切な区別 変圧器は、電気を「作る」のではない 変圧器は、電気の「強さ」だけを変える 発電機 … 電気を作る 変圧器 … 電圧を変える(高く/低く)

発電所、変電所、電柱の変圧器。この3つは、それぞれ役割がちがいます。発電所は電気を作る場所、変電所と電柱の変圧器は電気の強さを変える場所です。

実際の電圧は、一気に下げるのではなく、何段階にも分けて下げられています。

電圧が下がっていく例 発電所 … 数万ボルト 送電線 … 数十万ボルト(いちばん高い) ↓ 変電所で下げる 配電線 … 数千ボルト ↓ 電柱の変圧器で下げる 家 … 100ボルト → 一度に下げず、 段階を分けて少しずつ下げる

段階を分けるのにも理由があります。一度に大きく変えるより、少しずつ変えるほうが、設備の負担が小さく、安全に管理しやすいのです。

太陽光発電でも起きていること

太陽光パネルで作られる電気は、電池と同じ種類の電気(直流)で、発電所の発電機が作る電気(交流)とは種類がちがいます。

そのため、太陽光発電にはパワーコンディショナーという機械が必ずついていて、電気の種類を変換したうえで、電圧を調整して送電網に送り出しています。

太陽光のような新しい発電方法でも、「電気を送るときには電圧を調整する」という考え方は変わらないのです。

つまずきやすいところ

その1 電圧が高い=危ないだけだと思う

たしかに高い電圧は危険です。しかし、危ないのに使うのは理由があります。送電中のロスを減らすという、はっきりした利点があるからです。危険と利点の両方を知っておきましょう。

その2 電流を増やせば早く届くと考える

電流を増やすと、むしろ電線が熱くなりロスが増えます。速さの問題ではなく、電気がむだにならないようにするための工夫です。

その3 変圧器が電気を作っていると思う

変圧器は電気を作りません。すでにある電気の電圧だけを変える道具です。電気を作るのは発電所の発電機です。

やってみよう

Q1 送電線で電気を送るとき、電線が少し熱くなるのはなぜですか。

A 電流が流れると電線自身が熱くなる性質があるからです。電熱線の実験と同じ現象です。

Q2 同じ電力を送るとき、電圧を高くすると電流はどうなりますか。

A 電流は減ります。電力=電圧×電流なので、電圧を上げた分だけ電流を減らせます。

Q3 電圧を高くして送ると、何がよいのですか。

A 電流が減るので、送電線で失われる電気(ロス)が少なくなることです。

Q4 では、なぜ家の中では高い電圧を使わないのですか。

A 感電の危険が大きく、家電もそのままでは使えないからです。使う直前に変圧器で弱めています。

まとめ

おうちの方へ

社会科で学ぶ「発電所→送電線→変電所→家」という道すじに、理科の目で「なぜそうなっているか」を補う内容です。
電熱線の実験(電流が多いほど熱くなる)という既習事項と、6年算数の反比例という既習事項を橋渡しすることで、教科をまたいで知識がつながる体験になります。
家の近くの電柱にある変圧器を見つけて、「これは電気を作っているのではなく、強さを変えているだけ」と話してみると、理解が深まります。
電気料金の明細や、電力会社のホームページには、送電の仕組みを図解したページがあることもあります。あわせて見てみるのもおすすめです。