6年
理科
てこのはたらき
てこのはたらき ── 小さな力で、大きなものを動かす
大きな石も、棒1本で動かせます。力を増やすしくみを学びます。
てこの3つの点
てこには、3つの重要な点があります。
力点
↓
────────────────
△ ●
支点 作用点
支点 … 棒を支える点(動かない)
力点 … 力を加える点
作用点 … ものに力がはたらく点
この3つの位置関係で、力の大きさが決まります。
力が小さくて済む条件
① 支点から力点までを長くする
② 支点から作用点までを短くする
→ 手ごたえが軽くなる
実際に試すと、すぐ分かります。
実験
同じ重さのものを持ち上げる
【A】力点が支点から遠い
→ 軽く感じる
【B】力点が支点から近い
→ 重く感じる
だから、長い棒を使うほど楽になります。
古代ギリシャの学者アルキメデスは、こう言ったと伝えられます。
「わたしに支点を与えよ。
そうすれば地球をも動かしてみせよう」
→ 十分に長い棒があれば
どんなものでも動かせる
(実際には無理だが、
原理としては正しい)
つり合いのきまり
てこが水平につり合うとき、はっきりした規則があります。
つり合いのきまり
左のうで
(おもりの重さ × 支点からの距離)
=
右のうで
(おもりの重さ × 支点からの距離)
実験用てこで確かめてみましょう。
例1
左:支点から3の位置に20g
右:支点から2の位置に□g
20 × 3 = □ × 2
60 = □ × 2
□ = 30g
例2
左:支点から4の位置に10g
右:支点から□の位置に20g
10 × 4 = 20 × □
40 = 20 × □
□ = 2
この計算は、算数そのものです。□を使った式で解けます。
そして、この関係には意味があります。
なぜかけ算なのか
重さが2倍なら
→ 距離を半分に
距離が2倍なら
→ 重さを半分に
→ 反比例の関係
→ だからかけ算が一定
6年生の算数で学ぶ反比例が、ここで現れています。
複数のおもりがある場合
片方に2つ以上のおもりをつるすこともあります。
そのときは、それぞれを計算して足します。
例:左のうでに
支点から2の位置に10g
支点から4の位置に20g
10×2 + 20×4 = 20 + 80 = 100
右のうでも同じ値になればつり合います。
複雑に見えても、1つずつ計算して足すだけです。
3つの型の道具
てこを使った道具は、3つの型に分けられます。
【第1種】支点が真ん中
力点 ── 支点 ── 作用点
例:はさみ、くぎぬき、ペンチ
シーソー、天びん
→ 力を大きくできる
→ 向きも変えられる
【第2種】作用点が真ん中
力点 ── 作用点 ── 支点
例:せんぬき、空きカン つぶし器
ホチキス、手押し車
→ 力を大きくできる
→ 向きは同じ
【第3種】力点が真ん中
作用点 ── 力点 ── 支点
例:ピンセット、トング、
和ばさみ、釣りざお
→ 力は小さくなる
→ でも大きく速く動かせる
第3種は、力の面では損をします。それでも使われるのはなぜでしょうか。
第3種の利点
力点が少し動くと
作用点は大きく動く
→ 細かい作業ができる
→ 速く動かせる
例:ピンセットで小さいものをつまむ
釣りざおで遠くへ飛ばす
4年生で学んだ人の腕も、第3種のてこです。
人の腕
支点:ひじ
力点:筋肉がつく場所(ひじの近く)
作用点:手
→ 力では損をする
→ でも速く大きく動ける
力を犠牲にして、速さと動く範囲を得ているのです。目的に応じて、型を選び分けているわけです。
身のまわりのてこ
てこの原理は、想像以上に多くの道具に使われています。
| 道具 | 支点 | 力点 | 作用点 |
| はさみ | ねじの部分 | 持ち手 | 刃 |
| くぎぬき | 曲がった部分 | 持ち手 | くぎをはさむ所 |
| せんぬき | 先端 | 持ち手 | ふたをひっかける所 |
| ピンセット | つなぎ目 | 指で押す所 | 先端 |
| ドア | ちょうつがい | ノブ | ドア全体 |
ドアもてこです。だから、ノブがちょうつがいの反対側についています。
試してみる
ドアのちょうつがいに近い所を押す
→ 重い
ノブの位置(遠い所)を押す
→ 軽い
→ 支点から遠いほど楽
はさみにも、用途による設計のちがいがあります。
はさみの種類
紙を切るはさみ
→ 刃が長い
→ 一度に長く切れる
枝を切るはさみ
→ 刃が短く、持ち手が長い
→ 強い力が出せる
→ 目的に合わせた設計
道具の形には、すべて理由があるのです。
てんびんとはかり
てこの原理を使った重要な道具がてんびんです。
上皿てんびんのしくみ
支点が真ん中
左右の腕の長さが同じ
↓
つり合ったとき
左右の重さが等しい
→ 重さを正確に測れる
使い方には、決まりがあります。
上皿てんびんの使い方
① 水平な台に置く
② 針が中央で止まるか確認
(ずれていたら調整ねじで)
③ 測るものを左に
(右利きの場合)
④ 分銅を重いものから順に
⑤ 針が中央で止まればつり合い
※分銅は必ずピンセットで
(手でさわるとさびる、汚れる)
重い分銅から試すのがコツです。軽いものから試すと、時間がかかります。
てんびんには、大きな利点があります。
てんびんの利点
・重力が変わっても正確
(月でも同じ結果になる)
・電気がいらない
・こわれにくい
・原理が単純で信頼できる
→ 何千年も使われてきた
「公正さ」の象徴として、てんびんの絵がよく使われるのも、この正確さゆえです。
力の得と損
てこを使うと、力は得をします。しかし、ただでは済みません。
てこの原理
力が半分になると
↓
動かす距離は2倍になる
→ 力 × 距離 は変わらない
これを仕事の原理といいます(中学で詳しく学びます)。
例
100kgのものを1cm持ち上げる
【直接】
100kgの力 × 1cm
【てこで】
10kgの力 × 10cm
→ 力は10分の1
→ でも10倍動かす必要がある
→ 全体の「仕事」は同じ
楽になるが、その分たくさん動かす必要があるのです。
これは、他の道具でも同じです。
同じ原理の道具
・坂道(スロープ)
→ 力は少ないが距離が長い
・ねじ
→ 何回も回すが小さい力で
・滑車
→ 力は半分、引く長さは2倍
→ すべて「力×距離」が一定
自然界には、「うまい話はない」という原則があります。何かを得れば、何かを払う。てこも例外ではありません。
それでも道具が役立つのは、人間にとって力を出すほうが難しいからです。距離を多く動かすほうが楽なのです。
つまずきやすいところ
その1 3つの点を見つけられない
道具のどこが支点か分からない。
動かない場所が支点です。手で力を加える所が力点、ものに触れる所が作用点です。
その2 つり合いの計算をまちがえる
足し算にしてしまう。
重さ × 距離のかけ算です。両方が等しくなればつり合います。
その3 てこで力が「増える」と思う
エネルギーが増えると考える。
力は小さくなりますが、動かす距離は長くなります。全体では得をしていません。
やってみよう
Q1 てこの3つの点を言いましょう。
A 支点・力点・作用点です。支点は動かない場所です。
Q2 小さい力で動かすには、どうすればよいですか。
A 支点から力点までを長く、支点から作用点までを短くします。
Q3 左のうでの3の位置に20gのおもり。右の2の位置には何g?
A 20×3=60、60÷2=30gです。
Q4 家にある道具から、てこを使ったものを探してみましょう。
A はさみ、せんぬき、ピンセット、ドアなど。3つの点がどこかを確かめてみてください。
まとめ
- てこには支点・力点・作用点がある。
- つり合いは重さ × 距離が左右で等しいとき。
- 道具は3つの型に分けられる。
- 第3種は力で損をするが、速く大きく動ける。
- 力が小さくなる分、動かす距離は長くなる。
おうちの方へ
てこは、身のまわりの道具の原理を理解できる、実感の持ちやすい単元です。
まず、実際に試してみることをおすすめします。ドアのちょうつがい側と ノブ側を押し比べるだけで、原理が体で分かります。
つり合いの計算は、算数の反比例と同じ構造です。教科をまたいでつながっていることを伝えると、理解が深まります。
家にある道具を分類する活動も面白いです。「これは第何種?」と考えると、道具の設計に目が向きます。
「力が小さくなる分、距離が長くなる」という原理は、中学で学ぶ「仕事」の考え方につながります。「うまい話はない」という自然の法則を知る、良い機会でもあります。