6年 国語 物語を書く

物語を書く ── 書くのは「出来事」ではなく「変わったところ」

「何も思いつかない」のは、想像力が足りないからではありません。決める順番がちがうからです。

出来事を並べても、物語にはならない

物語を書きましょう、と言われて原稿用紙を前にすると、多くの人はまず「何が起きるか」を考えます。宝の地図を見つけた。犬が話しかけてきた。転校生が来た。たしかに出来事です。けれど、それを順番に並べただけでは、読んだ人は「それで?」と言います。

朝、公園でネコをひろった。
家に連れて帰った。
お母さんに「飼ってもいい」と言われた。
うれしかった。

これは出来事の記録で、物語ではありません。ではどこが足りないのか。主人公が、はじめと終わりで変わっていないのです。

これまで読んできた物語を思い出してみてください。こわがりだった子が一歩ふみ出す。友達を悪く言っていた子が、その子の事情を知る。ひとりで平気だと思っていた子が、ひとりではないと気づく。どの話も、最後のページの主人公は、最初のページの主人公と同じ人ではありません。

だから物語を書くとき、いちばん先に決めるのは事件ではなく、この一行です。

主人公は、(    )だと思っていたが、
       (    )だと気づいた。

この一行が書けたら、もう物語の半分はできています。事件は、この気づきを起こすための道具として、あとから選べばいいからです。順番が逆だと、いくら面白い事件を思いついても話がまとまりません。

決める順番は、結末が先

書けなくなる人のほとんどは、頭から順に書こうとしています。けれど物語は、読む順番と作る順番がちがいます。

決める順決めること例
1終わりの主人公妹をうるさいと思わなくなっている
2はじめの主人公妹が自分の物をさわるのが許せない
3変えた出来事妹がこわしたと思った物が、妹が直そうとした物だった
4場所と時夏休み、家の中の三日間
5書き出しの一文その日、ぼくは妹の部屋のドアをける寸前だった。

1と2は、同じ主人公の前後の姿です。ここが離れているほど話は動き、近すぎると「何も起こらなかった話」になります。かといって、いじわるだった子が急に聖人になるほど離すと、読む人が信じません。三日で変われるくらいのはばがちょうどいい、と考えてください。

3が、いわゆる山場です。ここで注意したいのは、山場は大きな事件である必要がないということ。竜が出てこなくても、妹の手にばんそうこうが貼ってあった、それだけで人は変われます。物語の大きさは、事件の大きさではなく、気づきの深さで決まります。

4の場所と時をせまくするのも、じつは大事なこつです。「世界中を三年かけて旅する話」より「家の中の三日間」のほうが、細かいところまで書けます。書けることが多いほうが、読む人には豊かに感じられます。

場面は四つあれば足りる

原稿用紙3〜5枚なら、場面は四つで十分です。多くすると、一つ一つが説明だけで終わってしまいます。

場面役わり目安の量
①はじまり主人公が「こう思っている」と分かる行動を見せる2割
②ゆれ思っていたのとちがうことが起きる3割
③山場気づく・決める。いちばん細かく書く3割
④むすび変わったあとの主人公を、行動で一つだけ見せる2割

とくに④で失敗が多く出ます。「ぼくは妹を大切にしようと思いました。」と書いてしまうのです。これは感想文の終わり方であって、物語の終わり方ではありません。物語なら、こう書きます。

ぼくは、はしの上の一本を、妹の皿にのせた。

気持ちは書かれていませんが、変わったことは伝わります。読む人の中に気持ちが生まれる ── これが、読んだあとに残る終わり方です。

書き出しは、説明から始めない

「ぼくの名前は山田太郎です。小学六年生です。妹が一人います。」 ── この書き出しは、読む人がまだ興味を持っていないうちに、覚えることだけを渡しています。

人物の設定は、動いている場面の中に混ぜて出します。

伝えたいこと説明で出す場面の中で出す
妹がいる妹が一人います。妹の上ばきが、ぼくのとなりに並んでいた。
おこっているぼくはおこっていました。ふでばこを、いつもより強く閉じた。
夏である季節は夏でした。せんぷう機が、首をふるたびに紙をめくった。

右の列は、どれも目に見えるものしか書いていません。物語を書くときの原則は、これに尽きます。気持ちは、物や動きに置きかえる。これを「気持ちを外に出す」と言います。

会話文に、気持ちを言わせない

会話文は、物語を生き生きさせる一番の道具です。けれど、こう書いてしまうと台なしになります。

×「ぼくは、妹のことが心配なんだ。」と、ぼくは心配そうに言った。

心配という言葉が二重になっている上に、人はふつう、自分の気持ちをこんなにはっきり口に出しません。実際の会話は、もっと外れます。

○「……ばんそうこう、どこにあるか知ってる?」

心配という言葉は一度も出ていないのに、心配していることは分かります。会話文のこつは三つです。

また、会話文は行を変えてかぎかっこから書き始め、句点とかぎを同じますに入れます。書き方のきまりは、読む人が話し手を追うための道具です。守るほど、内容が伝わりやすくなります。

つまずきやすいところ

よくある状態原因直し方
思いつかない事件から考えている「〜だと思っていたが、〜と気づいた」の一行を先に書く
長くなって終わらない場面が五つ以上ある山場に関係ない場面を、丸ごと消す
感想文みたいになる気持ちを直接書いているその気持ちのときにする行動を一つ探して、置きかえる
登場人物が多すぎる出したら出しっぱなし三人までにする。名前を出すのは、二回以上出てくる人だけ

書き終えたら、声に出して読んでみてください。つっかえたところが、直すところです。読み返しのやり方は、文章の推敲でくわしく説明しています。

読むことと、書くことはつながっている

ここまで読んで気づいたかもしれません。物語を書くときに決めることは、物語を読むときに探すことと、ぴったり同じです。

読むとき探すもの書くとき決めるもの
主題終わりの主人公
人物像はじめの主人公
山場変えた出来事
情景びょうしゃ気持ちを外に出した一文

つまり、一度自分で書いた人は、次から物語を読むときに作者の設計図が見えるようになります。物語の主題や人物像のとらえ方で学んできたことは、そのまま書く力になっています。

やってみよう

Q1 物語を書くとき、いちばん先に決めるのは何ですか。

A 事件ではなく、終わりの主人公です。「〜だと思っていたが、〜と気づいた」の一行を先に書きます。

Q2 「ぼくは妹を大切にしようと思いました。」という終わり方の、どこが問題ですか。

A 気持ちを直接書いているので感想文の終わり方になっています。変わったことが分かる行動を、一つだけ書きます。

Q3 「ぼくはおこっていました。」を、目に見える形に書きかえましょう。

A 例「ふでばこを、いつもより強く閉じた。」のように、そのときにする行動や物の様子に置きかえます。

Q4 場面はいくつにするとよいですか。また、いちばん長く書く場面はどれですか。

A 原稿用紙3〜5枚なら四つ。いちばん細かく書くのは③山場で、全体の3割ほどが目安です。

まとめ

おうちの方へ

創作が苦手なお子さんの多くは、想像力ではなく手順でつまずいています。「自由に書いていいよ」は、実はいちばん難しい指示です。「主人公は、はじめはどんな子? 最後はどう変わってる?」と二つだけ聞いてあげると、そこから先は自分で進められることがよくあります。
書きあがったものに、内容の評価をする必要はありません。物語は正解のない領域なので、「ここ、どきっとした」「この一行が好き」と、読者としての感想を一つ返すだけで十分です。直したいところがあっても、誤字と読みにくさにとどめてください。
題材は、遠い世界より近い場所のほうがうまくいきます。家族、学校、通学路。よく知っている場所ほど、細かいところが書けるからです。
この単元で育つのは、物語を作る力だけではありません。人は、きっかけがあれば変われるという見方そのものです。読書感想文や説明文とはちがう、この単元にしかない価値だと考えています。