6年 国語 推敲

文章の推敲 ── 書き終わってからが、ほんとうの勝負

作文がうまい人は、書くのが速い人ではありません。直すのがうまい人です。

推敲って、なに?

書き上げた文章を読み返して、よりよく直すことを推敲といいます。

この言葉には、昔の中国の詩人の話が由来としてあります。

賈島(かとう)という詩人が、 詩の一行に悩んでいた。 「僧は推す 月下の門」 (おぼうさんが門を押す) それとも 「僧は敲く 月下の門」 (おぼうさんが門をたたく) 「推す」か「敲く」か。 考えこんで道で人にぶつかるほど 悩んだ、という話。 → ここから「推敲」という 言葉が生まれた

たった一字に、それだけ悩む価値があるということです。

とはいえ、いきなり一字で悩む必要はありません。推敲には大きい直しから小さい直しへという順番があります。

推敲の順番 ① 組み立て(順番・段落) ↓ ② 一文ずつ(意味が通るか) ↓ ③ 言葉えらび(もっと合う語) ↓ ④ 表記(漢字・句読点・符号)

順番が逆になると、時間をむだにします。漢字をていねいに直した段落を、あとから丸ごと消すことになるからです。

いちばん多いミス ── 主語と述語のねじれ

小学6年生の作文で最も多い不具合は、文の頭とおしりが合っていないことです。

× ぼくの目標は、 毎日走ろうと思います。 「目標は」→「思います」 かみ合っていない。 ○ ぼくの目標は、 毎日走ることです。 ○ ぼくは、 毎日走ろうと思います。

これをねじれと呼びます。書いているときは気づきません。長い修飾語をはさんでいるうちに、自分が何を主語にしたか忘れてしまうからです。

見つけ方はかんたんです。

ねじれの見つけ方 文の中の飾りを全部けずって、 骨だけにする。 「わたしが去年の夏に家族と 行った海は、とてもきれいで 楽しかったです。」 ↓ 骨だけにすると 「海は 楽しかった」 ↓ 海は楽しくない。 楽しかったのは「わたし」。 ○「海はとてもきれいで、 わたしはとても楽しかった。」

主語と述語だけを声に出して読む。これだけで、ねじれの大半は自分で見つけられます。

一文が長すぎないか

読みにくい文章のほとんどは、一文が長いだけです。内容が難しいのではありません。

△ ぼくは委員会で図書の係を やっていて、本の整理をした のですが、その中でよごれた 本が多いことに気づいて、 直したいと思ったので先生に 相談してみました。 読点でつなぎ続けて、 一文が七十字を超えている。

これを、意味のかたまりで切ります。

○ ぼくは委員会で図書の係を している。本の整理をして いたとき、よごれた本が多い ことに気づいた。直したいと 思い、先生に相談した。 一文=一つの内容。 三文に分けただけで、 読む速さが変わる。

目安は一文四十字から五十字までです。原稿用紙なら二行半ほど。それを超えたら、切れる場所をさがします。

合図やること
「〜ので、」が続くそこで文を切る
「〜して、〜して、」順番を示す語に置きかえる
読点が四つ以上二文に分ける
息継ぎできない音読して切れ目を決める

ただし、短い文ばかりでも読みにくくなります。長短をまぜると、文章にリズムが生まれます。

事実と考えを混ぜない

6年生の説明的な文章では、見たこと思ったことを区別して書けているかが問われます。

事実(だれが見ても同じ) 「調査した二十人のうち、 十四人が朝食を食べていた」 考え(人によってちがう) 「朝食は大切だと思う」 混ざった書き方 「みんな朝食を食べている から、朝食は大切だ」 ↓ 「みんな」が何人か不明。 事実の部分があいまい。

推敲では、自分の文に印をつけながら読みます。事実の文には○、考えの文には△。△ばかり並んでいたら、その主張には根拠がありません。

文末をそろえるのも有効です。

事実 → 「〜だった」「〜である」 考え → 「〜と考える」「〜と思う」 文末を見るだけで、 どちらの文かが分かる。

逆に、事実なのに「〜と思う」と書いていると、自信のない文章に見えてしまいます。調べた数字は言い切ってかまいません。

言葉を選び直す

組み立てと一文の点検が終わったら、ようやく言葉えらびです。

ぼんやりした語をさがす 「すごい」「いろいろ」「とても」 「ちゃんと」「みたいな感じ」 これらは、書いた本人にしか 中身が分からない。
△「すごく大変だった」 ○「三時間かかっても 半分しか終わらなかった」 △「いろいろな意見が出た」 ○「賛成が四人、反対が二人、 どちらでもないが三人だった」

「すごい」を消して、そう感じた理由になった事実を書く。これだけで文章の説得力は大きく変わります。

同じ語のくり返しにも注意します。

△ 図書室の本は古い本が多く、 その本を直す活動をする本 好きの人を集めたい。 「本」が四回。 ↓ 言いかえる ○ 図書室には古い本が多い。 それを修理する活動に、 読書が好きな人を集めたい。

推敲チェックリスト

実際に見直すときは、次の順に一度ずつ読み返します。一回の読みで一つの観点だけを見るのがコツです。

見るところ合格の目印
1回目段落の順番入れかえたくならない
2回目主語と述語骨だけで意味が通る
3回目一文の長さ息継ぎなしで読める
4回目事実と考え根拠が数や場面で示せている
5回目言葉と表記あいまい語とくり返しがない

全部を同時に見ようとすると、結局どれも見落とします。人間の目はそこまで器用ではありません。

もう一つ、強力な方法があります。

声に出して読む 目だけで読むと、 頭が勝手に補って読んでしまう。 口に出すと ・つまる場所 → 文が長い ・息が切れる → 読点が足りない ・言いにくい → 語のえらび直し つまずいた場所が、 そのまま直す場所になる。

そして、できれば一日おいてから読み返します。書いた直後は、自分の頭の中の内容と紙の上の文章の区別がつきません。時間をおくと、他人の目に近づきます。

やってみよう

Q1 「わたしの願いは、みんなが本を読んでほしいです。」を直しましょう。

A 主語と述語がねじれています。「わたしの願いは、みんなに本を読んでほしいということです。」または「わたしは、みんなに本を読んでほしい。」とします。

Q2 「今日の給食はすごくおいしかったです。」を、事実で説明し直しましょう。

A 例として「今日のカレーは辛さがちょうどよく、おかわりの列が十人以上できていた。」のように、そう感じた理由になった事実を書きます。

Q3 自分の作文を音読して、つまずいた場所に印をつけましょう。

A つまずいた場所は、たいてい一文が長いか読点が足りない場所です。そこで文を切ってみましょう。

Q4 書いた文章の文末だけを縦に読んでみましょう。

A 「〜です。」ばかりだと単調です。事実は「〜だった」、考えは「〜と考える」と使い分けると、内容の区別もはっきりします。

まとめ

おうちの方へ

作文が苦手な子の多くは、「書けない」のではなく「書いたものを直せない」ままになっています。書き上げた時点で力尽きてしまい、そのまま提出するからです。
ご家庭で読んであげるときは、内容の良し悪しより先に、声に出して読んでもらうのが効果的です。本人が読みながらつまずいた場所こそが、直すべき場所になります。大人が指摘するより、本人が気づくほうがずっと定着します。
直しを求めるときは、一度に一つだけにしてください。「主語と述語だけ見てみよう」「今日は長い文を切るだけ」というふうに観点をしぼると、直すこと自体が苦しくなくなります。
また、消しゴムで消させるより、鉛筆の色を変えて上から書き足す形にすると、直した跡が残って達成感につながります。中学以降のレポートや高校入試の作文にも、この見直しの習慣がそのまま生きてきます。