作文がうまい人は、書くのが速い人ではありません。直すのがうまい人です。
書き上げた文章を読み返して、よりよく直すことを推敲といいます。
この言葉には、昔の中国の詩人の話が由来としてあります。
たった一字に、それだけ悩む価値があるということです。
とはいえ、いきなり一字で悩む必要はありません。推敲には大きい直しから小さい直しへという順番があります。
順番が逆になると、時間をむだにします。漢字をていねいに直した段落を、あとから丸ごと消すことになるからです。
小学6年生の作文で最も多い不具合は、文の頭とおしりが合っていないことです。
これをねじれと呼びます。書いているときは気づきません。長い修飾語をはさんでいるうちに、自分が何を主語にしたか忘れてしまうからです。
見つけ方はかんたんです。
主語と述語だけを声に出して読む。これだけで、ねじれの大半は自分で見つけられます。
読みにくい文章のほとんどは、一文が長いだけです。内容が難しいのではありません。
これを、意味のかたまりで切ります。
目安は一文四十字から五十字までです。原稿用紙なら二行半ほど。それを超えたら、切れる場所をさがします。
| 合図 | やること |
|---|---|
| 「〜ので、」が続く | そこで文を切る |
| 「〜して、〜して、」 | 順番を示す語に置きかえる |
| 読点が四つ以上 | 二文に分ける |
| 息継ぎできない | 音読して切れ目を決める |
ただし、短い文ばかりでも読みにくくなります。長短をまぜると、文章にリズムが生まれます。
6年生の説明的な文章では、見たことと思ったことを区別して書けているかが問われます。
推敲では、自分の文に印をつけながら読みます。事実の文には○、考えの文には△。△ばかり並んでいたら、その主張には根拠がありません。
文末をそろえるのも有効です。
逆に、事実なのに「〜と思う」と書いていると、自信のない文章に見えてしまいます。調べた数字は言い切ってかまいません。
組み立てと一文の点検が終わったら、ようやく言葉えらびです。
「すごい」を消して、そう感じた理由になった事実を書く。これだけで文章の説得力は大きく変わります。
同じ語のくり返しにも注意します。
実際に見直すときは、次の順に一度ずつ読み返します。一回の読みで一つの観点だけを見るのがコツです。
| 回 | 見るところ | 合格の目印 |
|---|---|---|
| 1回目 | 段落の順番 | 入れかえたくならない |
| 2回目 | 主語と述語 | 骨だけで意味が通る |
| 3回目 | 一文の長さ | 息継ぎなしで読める |
| 4回目 | 事実と考え | 根拠が数や場面で示せている |
| 5回目 | 言葉と表記 | あいまい語とくり返しがない |
全部を同時に見ようとすると、結局どれも見落とします。人間の目はそこまで器用ではありません。
もう一つ、強力な方法があります。
そして、できれば一日おいてから読み返します。書いた直後は、自分の頭の中の内容と紙の上の文章の区別がつきません。時間をおくと、他人の目に近づきます。
Q1 「わたしの願いは、みんなが本を読んでほしいです。」を直しましょう。
A 主語と述語がねじれています。「わたしの願いは、みんなに本を読んでほしいということです。」または「わたしは、みんなに本を読んでほしい。」とします。
Q2 「今日の給食はすごくおいしかったです。」を、事実で説明し直しましょう。
A 例として「今日のカレーは辛さがちょうどよく、おかわりの列が十人以上できていた。」のように、そう感じた理由になった事実を書きます。
Q3 自分の作文を音読して、つまずいた場所に印をつけましょう。
A つまずいた場所は、たいてい一文が長いか読点が足りない場所です。そこで文を切ってみましょう。
Q4 書いた文章の文末だけを縦に読んでみましょう。
A 「〜です。」ばかりだと単調です。事実は「〜だった」、考えは「〜と考える」と使い分けると、内容の区別もはっきりします。
作文が苦手な子の多くは、「書けない」のではなく「書いたものを直せない」ままになっています。書き上げた時点で力尽きてしまい、そのまま提出するからです。
ご家庭で読んであげるときは、内容の良し悪しより先に、声に出して読んでもらうのが効果的です。本人が読みながらつまずいた場所こそが、直すべき場所になります。大人が指摘するより、本人が気づくほうがずっと定着します。
直しを求めるときは、一度に一つだけにしてください。「主語と述語だけ見てみよう」「今日は長い文を切るだけ」というふうに観点をしぼると、直すこと自体が苦しくなくなります。
また、消しゴムで消させるより、鉛筆の色を変えて上から書き足す形にすると、直した跡が残って達成感につながります。中学以降のレポートや高校入試の作文にも、この見直しの習慣がそのまま生きてきます。