6年 国語 提案する文章

提案する文章 ── 「困っている」で終わらせない

問題を指摘するだけなら誰でもできます。解決策まで示すのが提案です。

意見文との違い

4年生・5年生で意見文を学びました。提案文は、そこから一歩進んだものです。

意見文提案文
目的考えを伝える行動してもらう
内容主張と根拠課題・解決策・効果
読み手に納得してもらう実行してもらう
「読書は大切だ」「朝読書を始めよう」

提案文の目的は、読み手に動いてもらうことです。

だから、「〜すべきだ」で終わってはいけません。

不十分な提案 「図書室が使いにくい。 何とかすべきだ」 → 何をどうするのか分からない → 動きようがない
よい提案 「図書室に本の場所を示す 案内図を貼ることを提案します。 図書委員が作れば費用もかかりません」 → 具体的で、実行できる

具体性実現可能性。この2つが提案文の生命線です。

提案文の基本の型

提案文には、確立された型があります。

① 課題の提示 今、どんな問題があるか ② 課題の根拠 なぜそれが問題だと言えるか (データ、観察、聞き取り) ③ 提案 具体的に何をするか ④ 効果 それで何が良くなるか ⑤ 実現可能性 費用、手間、協力者 無理なくできるか ⑥ 予想される反論への答え 「でも〜では?」に先回り

とくに⑤の実現可能性が、意見文にはなかった要素です。

なぜ実現可能性が必要か どんなによい提案でも 実行できなければ意味がない 「校舎を建て替えよう」 → 費用が莫大 → 現実的でない 「教室の掲示を工夫しよう」 → すぐできる → 採用されやすい

提案は、実行されてこそ価値があるのです。

課題を見つける

よい提案は、よい課題の発見から始まります。

課題の見つけ方 ・不便だと感じたこと ・困っている人を見たこと ・「もっとこうだったら」と思うこと ・データを見て気づいたこと ・他の場所と比べて気づいたこと

大切なのは、自分だけの不満で終わらせないことです。

個人の不満 → 共通の課題へ 「自分が使いにくい」 ↓ 他の人はどうだろう? ↓ アンケートで確かめる ↓ 「30人中22人が使いにくいと回答」 ↓ 共通の課題だと示せる

データで裏づけると、提案の説得力が大きく変わります。

調べ方には、いろいろあります。

・アンケート(人数と割合) ・観察(実際に数える) ・聞き取り(詳しい事情) ・記録(時間、回数) ・他校の事例を調べる

5年生の「調べて発表する」で学んだ方法が、そのまま使えます。

解決策を考える

課題が見つかったら、複数の案を出してから選びます。

解決策を考える手順 ① できるだけ多く案を出す (実現性は気にしない) ② それぞれの長所短所を書く ③ 実現可能性で絞る ④ いちばんよい案を選ぶ

①で数を出すのがコツです。最初に思いついた案が最良とは限りません。

例:図書室の利用が少ない 案1:おすすめ本のコーナーを作る 案2:貸出時間を延ばす 案3:本を増やす 案4:静かすぎるので雰囲気を変える 案5:図書委員が本を紹介する放送をする → それぞれ検討する
効果実現性
おすすめコーナー高(すぐできる)
貸出時間延長低(先生の負担)
本を増やす低(費用がかかる)
放送で紹介高(委員でできる)

効果が高く、実現性も高い案が最良です。

この表を提案文に入れると、検討したことが伝わります

効果を具体的に書く

提案の後には、それで何が良くなるかを書きます。

効果の書き方 × 「よくなると思います」 → ばくぜんとしている ○ 「本を選ぶ時間が短くなり、 休み時間内に借りられるように なります」 → 具体的

効果は複数挙げると説得力が増します。

効果を複数示す ① 直接の効果 → 本を見つけやすくなる ② 波及する効果 → 利用者が増える → 読書量が増える ③ 別の面での効果 → 図書委員の活動が活発になる → 学校全体の雰囲気が変わる

ただし、大げさに書かないことも大切です。

誇張は逆効果 × 「読書量が10倍になります」 → 根拠がない → 信用されない ○ 「利用者が増えることが 期待できます」 → 慎重で誠実
提案書の形式

提案文を書くときは、読みやすい形式にすると効果的です。
・見出しをつける(課題/提案/効果)
・箇条書きを使う
・図や表を入れる
・重要な部分を強調する
・1ページにまとめる

長い文章を最後まで読んでもらうのは大変です。ぱっと見て要点が分かるようにしましょう。
これは、大人が仕事で作る「企画書」と同じ考え方です。

反論に先回りする

提案には、必ず反対意見が出ます。

よくある反対 ・「費用がかかる」 ・「手間がかかる」 ・「今のままでも困らない」 ・「前にやってうまくいかなかった」 ・「他にもっと大事なことがある」

これらに先回りして答えておくと、提案が通りやすくなります。

書き方 「費用がかかるという心配が あるかもしれません。 しかし、図書委員が 画用紙で作れば、 材料費は1000円程度で済みます」

反論に答えるときのコツは、まず相手の心配を認めることです。

よい流れ ① 「たしかに〜という心配があります」 (相手の懸念を認める) ② 「しかし、〜という方法なら」 (解決策を示す) ③ 「だから、実行できると考えます」 (結論)

いきなり否定すると、相手は聞く気をなくします。認めてから返すのが大人の書き方です。

提案文が使われる場面

提案文の力は、学校の中だけのものではありません。

学校での場面 ・学級会での提案 ・児童会・生徒会の活動 ・行事の企画 ・委員会の改善案 社会での場面 ・会社の企画書 ・自治体への要望 ・地域の活動提案 ・研究の申請書

大人になっても、ずっと使い続ける技術です。

そして、この力があると世界を変えられます

変化は提案から始まる 「不便だ」と感じる ↓ 「こうすればよい」と考える ↓ 提案する ↓ 誰かが動く ↓ 変わる

不満を言うだけでは、何も変わりません。提案する人がいて、初めて物事は動きます。

そして、提案が採用されなくても意味はあります。考えた過程が自分の力になり、次につながるからです。

つまずきやすいところ

その1 問題の指摘で終わる

「困っている」だけ書く。
提案文は解決策まで示すものです。具体的に何をするかを書きます。

その2 実現可能性を考えない

費用や手間を無視した提案をする。
実行できるかが重要です。誰が、いつ、どうやってできるかを示します。

その3 効果をばくぜんと書く

「よくなります」で済ませる。
何がどう良くなるかを具体的に。複数挙げると説得力が増します。

やってみよう

Q1 提案文と意見文のちがいは何ですか。

A 意見文は納得してもらう、提案文は行動してもらうことが目的です。

Q2 提案文に必要な要素を3つ言いましょう。

A 課題・提案・効果です。さらに実現可能性も重要です。

Q3 解決策を考えるとき、最初にすることは?

A できるだけ多く案を出すこと。実現性は後で検討します。

Q4 学校や家庭の課題を1つ選び、提案文を書いてみましょう。

A 課題・根拠・提案・効果・実現可能性の順に。実際に提出してみると、さらに学べます。

まとめ

おうちの方へ

提案文は、社会に出てからも使い続ける実用的な技術です。企画書、要望書、報告書。形は変わっても、構造は同じです。
この単元でぜひ育てたいのは、「不満を提案に変える」姿勢です。文句を言うだけでなく、どうすればよいかを考える。これは生き方に関わる力でもあります。
家庭でも実践できます。「お小づかいを増やしてほしい」という要求を、提案文の形で書いてもらう。課題、根拠、提案、効果、そして親の懸念への答え。実利があるので真剣に取り組みます。
「実現可能性」という視点は、大人でも忘れがちです。理想だけでなく、実際にできるかを考える習慣は、大きな財産になります。
提案が通らなくても、考えた経験は残ります。その点も伝えてあげてください。