今まで学んできたのは、誰かがつくった俳句・短歌を読む力でした。6年生のこの単元、俳句・短歌をつくるでは、何もない場所から自分で言葉を選びます。
詩を読むとき、あなたは「なぜこの言葉を選んだのだろう」と考えます。言葉はすでに置かれていて、その理由を解きほぐす作業です。
つくるときは、向きが逆になります。まだ何もない場所に、自分で言葉を置いていくのです。
読むときに見つけた「季語」「省略」「体言止め」といった技は、つくるときにそのまま道具として使えます。読む力があるからこそ、つくる力が育つのです。
俳句は五・七・五(17音)、短歌は五・七・五・七・七(31音)です。まず、「音」の数え方を正確にしましょう。
この数え方で「しんかんせん」を数えると、し・ん・か・ん・せ・ん で6音になります。「きょうしつ」は、きょ・う・し・つ で4音です。小さい「ゃゅょ」を2音と数えてしまうのが、いちばん多いまちがいです。
季語は、季節を表す1つの言葉です。俳句には季語が必ず必要で、原則として1句に1つだけ入れます。
| 季節 | 季語の例 |
|---|---|
| 春 | さくら・つくし・いちご |
| 夏 | せみ・ひまわり・花火 |
| 秋 | とんぼ・もみじ・いねかり |
| 冬 | ゆき・こたつ・みかん |
季語がなぜ必要なのか。それは、季節の説明を1語にまとめてしまうためです。
季語は、説明を省くための道具です。1語で季節を言えるから、残りの文字数を「今、この瞬間」を描くことに使えるのです。
短歌は、季語がなくてもかまいません。短歌には俳句より14音多く、その分、季語なしでも場面を描く余裕があるからです。
日記は、起きたことを全部書きます。俳句・短歌は、その反対です。心に残った一瞬だけを選びます。
何を書くか決めるには、まず何を書かないかを決めなければなりません。これが、音数の決まりがもたらすいちばん大きな効果です。17音・31音という狭さが、「どれが一番大事か」を自分に問わせるのです。
「きれいだった」「うれしかった」と、気持ちを直接書いてしまいがちです。しかし俳句では、見えたもの・聞こえたものだけを書き、気持ちは書かないのが基本です。
感想を書く代わりに、感想が生まれる材料だけを置く。読む人の中に同じ気持ちを作り出すのが、俳句の技です。
俳句と短歌の大きな違いは、気持ちを言ってよいかどうかにもあります。
| 音数 | 季語 | 気持ち | |
|---|---|---|---|
| 俳句 | 五・七・五(17音) | 必ず入れる | 直接は言わない |
| 短歌 | 五・七・五・七・七(31音) | なくてもよい | 下の句で言ってもよい |
短歌は上の句(五・七・五)で場面を描き、下の句(七・七、14音)で気持ちを言うことができます。
俳句の17音には気持ちを言う余裕がありませんが、短歌の31音には場面を描いたあとに、気持ちまで言う余裕があります。これは音数の違いがそのまま生み出す違いです。
③で五感を1つに絞るのがポイントです。「見えて、聞こえて、においもした」と全部書こうとすると、17音には収まりません。
起きたことを順番に書いていくと、必ず17音・31音を超えます。
いちばん心に残った1つの場面だけに絞りましょう。
「さくら」(春)を入れたのに「ゆきがふる」(冬)も書いてしまう。季節が2つ混ざると、読む人が場面を思い浮かべられません。
季語を選んだら、そのあとに書く言葉もその季節に合わせることを確認します。
「きれいだと思った」「うれしかった」で終わると、気持ちを説明しただけになります。
何を見て、何を聞いてそう感じたのか、その材料だけを書きましょう。
Q1 「ちょうちょう」は何音ですか。数え方のルールを使って答えましょう。
A ちょ・う・ちょ・う で4音です。小さい「ょ」は前の文字とくっついて1音と数えます。
Q2 「赤とんぼ 夕焼け空に とけていく」の音数を確認しましょう。季語は何ですか。
A あかとんぼ(5)・ゆうやけぞらに(7)・とけていく(5)で五・七・五。季語は「とんぼ」(秋)です。
Q3 「花火がきれいだった」を、見えたものだけで書き直すとしたら、どこを変えますか。
A 「きれいだった」という感想の部分を、見えた色や形など、具体的な材料に変えます。
Q4 俳句と短歌で、気持ちの言い方に違いがあるのはなぜですか。
A 短歌は俳句より14音多く、場面を描いたあとに気持ちを言う余裕が下の句にあるためです。
俳句・短歌づくりは、6年生国語の「読む」単元の延長にある「書く」活動です。これまで物語や詩を読むときに見つけてきた表現技法を、自分の手で使う番です。
いちばんつまずきやすいのは、音数を正確に数えることと、気持ちを直接書いてしまうことの2点です。
音数は、小さい「ゃゅょ」「っ」、長くひく音を1音として数えるルールさえ分かれば、あとは機械的に数えられます。お子さんが作った句を、一緒に指で押さえながら数えてみてください。
気持ちを直接書いてしまうクセは、「その気持ちになったのは、何を見た(聞いた)から?」と聞き返すと直りやすいです。見えたものだけを書けば、気持ちはおのずと読む人に伝わります。
うまくできなくても構いません。季語を1つ選んで、一瞬を切り取る体験そのものに価値があります。