6年 国語 二重敬語

二重敬語 ── ていねいに重ねるほど、かえって変になる

「先生がおっしゃられました」。一見、とても丁寧に見える言い方ですが、これは間違った敬語です。5年生で習った敬語には、それ自体ですでに尊敬や謙譲の意味を持つ特別な形があります。そこへもう一度、敬語の仕組みを重ねてしまうのが「二重敬語」です。

「おっしゃられる」が間違いなわけ

「おっしゃられる」を分解してみましょう。

おっしゃられる を分ける おっしゃる … 「言う」の尊敬語(これだけで尊敬語が完成している) +られる … 動詞に付けて尊敬を表す言い方 おっしゃる(尊敬①)+ られる(尊敬②) → 尊敬の仕組みが2回使われている

「おっしゃる」は、「言う」という動詞がまるごと形を変えた特別な尊敬語です。この時点で、すでに「先生を敬う」意味が入っています。そこにさらに、ふつうの動詞を尊敬語にするときに使う「れる・られる」を付け足すと、同じ意味を2回くり返すことになり、文法として誤りになります。

正しい形は2つ ① 特別な尊敬語だけを使う → 先生が おっしゃいました。 ② ふつうの動詞に「れる・られる」を付ける → 先生が 言われました。 × どちらも使う → 先生が おっしゃられました。(誤り)

「おっしゃる」か「言われる」か、どちらか一方だけを選べば、十分に丁寧な尊敬語になります。

二重敬語になりやすい「特別な動詞」

5年生の敬語の学習で、「特別な形に変わる動詞」を習いました。これらはすべて、それだけで尊敬語・謙譲語が完成している動詞です。

ふつうの動詞特別な尊敬語特別な謙譲語
言うおっしゃる申す・申し上げる
行く・来るいらっしゃる・おいでになる参る・伺う
いるいらっしゃるおる
するなさるいたす
食べる・飲む召し上がるいただく
見るご覧になる拝見する
聞く(お聞きになる)伺う・拝聴する
知っているご存知だ存じ上げる

この表の中の言葉は、どれも「特別な形」になった時点で、もう尊敬語・謙譲語として完成しています。ここに「れる・られる」や「お〜になる」をもう一度付け足すと、すべて二重敬語になってしまいます。

よくある二重敬語の例 誤 おっしゃられる → 正 おっしゃる / 言われる 誤 ご覧になられる → 正 ご覧になる / 見られる 誤 召し上がられる → 正 召し上がる / 食べられる 誤 いらっしゃられる → 正 いらっしゃる / 来られる 誤 お越しになられる → 正 お越しになる / 来られる 誤 なさられる → 正 なさる / される

「お〜になる」にも、同じことが起きる

二重敬語は「れる・られる」だけの問題ではありません。「お〜になる」という尊敬語の形自体にも、もう一度「られる」を付けてしまう間違いがよく見られます。

お読みになられる を分ける お読みになる … 「読む」を「お〜になる」の形にした尊敬語 +られる … さらに尊敬の「られる」を付け足す → 尊敬の仕組みが2回使われている(誤り)

「お〜になる」は、「お」と「になる」で動詞をはさむだけで、尊敬語が完成する便利な形です。だからこそ、そこに「られる」まで付け足しても、文としては読めてしまい、間違いだと気づきにくいのです。

「お〜になる」の二重敬語 誤 お読みになられる → 正 お読みになる / 読まれる 誤 お書きになられる → 正 お書きになる / 書かれる 誤 お帰りになられる → 正 お帰りになる / 帰られる 誤 お使いになられる → 正 お使いになる / 使われる

見分け方はいつも同じです。「お〜になる」か「〜れる・られる」か、どちらか一方だけを選ぶ。これだけ覚えておけば、新しい動詞が出てきても自分で正しい形を作れます。

謙譲語を重ねすぎる言い方

二重敬語は、相手を高める尊敬語だけでなく、自分をへりくだらせる謙譲語でも起こります。ニュースやあいさつでよく聞く、次の言い方を考えてみましょう。

伺わせていただきます を分ける 伺う … 「行く・聞く・訪ねる」の謙譲語(これだけで謙譲語が完成) +させていただく … 「相手の許可を得て〜する」という、へりくだった言い方

「伺う」はそれだけで十分に丁寧な謙譲語です。そこへ「させていただく」を重ねた「伺わせていただきます」は、国語辞典や新聞社の用語の手引きでは敬語を重ねすぎている(過剰敬語)と説明されることが多い言い方です。

ただし、二重敬語とまったく同じようには言い切れない面もあります。「おっしゃられる」のように文法としてはっきり誤りとされる形とちがい、「伺わせていただきます」は実際の社会でとても広く使われていて、相手の許可を得て行うという気持ちを付け加えたい場面では、そのまま使われることも多いのが実情です。シンプルに言うなら「伺います」で十分丁寧ですが、「伺わせていただきます」が絶対にだめ、とまでは言い切れない、という少し複雑な位置づけの言い方だと覚えておきましょう。

同じ仲間の言い方 拝見させていただきます → シンプルには「拝見します」 お伺いさせていただきます → 「お」も重なっていて、こちらはより過剰

見分け方のコツ

二重敬語かどうかを見分けるには、次の順番で考えます。

チェックの手順 ① その動詞は、もとから「特別な尊敬語・謙譲語の形」になっていないか (おっしゃる、召し上がる、ご覧になる、 いらっしゃる、伺う、申す、参る、いたす、拝見する など) ② もし①に当てはまるなら → そこに「れる・られる」や「お〜になる」を、もう一度付けない ③ もとの動詞がふつうの形(言う、読む、来る など)なら → 「れる・られる」か「お〜になる」の、どちらか一方だけを使う

つまり、1つの動詞に、尊敬や謙譲の仕組みを2回使わないというのが、二重敬語を防ぐ一番の原則です。

つまずきやすいところ

その1 テレビやニュースでよく聞くから、正しいと思い込む

「お越しになられる」「おっしゃられる」は、アナウンサーや大人の会話でもしばしば耳にします。よく聞く言い方だからといって、文法的に正しいとは限りません。見聞きした言い方を、そのまま覚えて使う前に、分解して確かめるくせをつけましょう。

その2 丁寧にしようとして、逆に重ねてしまう

「もっと丁寧にしたい」という気持ちが強いほど、敬語を重ねたくなります。しかし敬語は、足せば足すほど丁寧になるわけではありません。特別な形を1つ使えば、それだけで十分です。

その3 「お〜になる」を2回使ってしまう

「お見えにおなりになる」のように、「お〜になる」の形そのものを2回使ってしまう間違いもあります。「お〜になる」は1つの動詞につき1回だけ、と覚えておきましょう。

やってみよう

Q1 「校長先生がおっしゃられました」の、どこが間違っていますか。

A 「おっしゃる」(尊敬語)に、もう一度「られる」(尊敬)を付けているところです。正しくは「おっしゃいました」、または「言われました」です。

Q2 「先生がこちらをご覧になられた」を、正しい形に直しましょう。

A 「先生がこちらをご覧になった」、または「先生がこちらを見られた」です。

Q3 「お客様が商品をお使いになられる」を、正しい形に直しましょう。

A 「お客様が商品をお使いになる」、または「お客様が商品を使われる」です。

Q4 「召し上がられる」が二重敬語になる理由を説明しましょう。

A 「召し上がる」の時点ですでに「食べる」の特別な尊敬語になっているのに、そこへさらに尊敬の「られる」を付け足しているからです。

Q5 二重敬語を防ぐために、文を作るときに確かめることは何ですか。

A その動詞がもとから特別な尊敬語・謙譲語の形になっていないかを確かめ、なっていればそこに「れる・られる」や「お〜になる」を重ねて付けないことです。

まとめ

おうちの方へ

二重敬語は、テレビのニュースや店員の接客などでも実際によく使われているため、大人でも「どちらが正しいか」自信を持てないことが多い分野です。「お越しになられる」「おっしゃられる」はその代表例で、NHK放送文化研究所などの放送用語の解説でも、二重敬語の典型として取り上げられています。
お子さんと一緒に、テレビや町の看板、店員さんの言葉づかいから「これは二重敬語かな?」と探してみると、生きた教材になります。ただし、「伺わせていただきます」のように、文法的には重複と説明されつつも社会で広く定着している言い方もあり、「絶対に間違い」と言い切れない微妙な例があることも、あわせて伝えてあげてください。敬語は正しさだけでなく、相手にどう伝わるかも大切にする言葉です。