6年間、たくさんの英語の文を口に出してきました。I like dogs. I can swim. I want to join the tennis team. どれもばらばらの単元で習った文ですが、じつは全部、同じならび方をしています。その共通のならび方のことを英語の語順と呼びます。ここを一度はっきりさせておくと、中学校で出会う新しい文も「知らない形」ではなく「知っている形に、知らない言葉が入っただけ」に見えてきます。
まず、日本語と英語をならべて見てみましょう。言っている内容はまったく同じです。
気づきましたか。日本語では「します」がいちばん最後に来ています。英語では play が2番目、早いうちに出てきます。そして日本語で2番目だった「サッカーを」は、英語ではいちばん後ろの soccer になっています。つまり、まん中とうしろが入れかわっているのです。
これは、たまたまこの文だけがそうなっているのではありません。もう少しならべてみます。
三つとも、日本語では最後にあった「食べます・勉強します・好きです」が、英語ではぜんぶ2番目に来ています。ここが、日本語と英語のいちばん大きなちがいです。日本語は「どうする」が最後に来る言葉、英語は「どうする」が早く来る言葉なのです。
では、なぜ日本語は最後まで聞かないと分からないのに、それで困らないのでしょうか。ためしに、日本語のならび方をわざと入れかえてみます。
ならび方は変えましたが、どちらも「さがしたのはゆうか、さがされたのはたろう」です。意味は変わりません。なぜかというと、日本語には「が」「を」という小さな目印がついているからです。「ゆうかが」の「が」は〈この人がする側〉という札で、「たろうを」の「を」は〈この人がされる側〉という札です。札がついているので、どこに置いても迷いません。荷物に名札がついていれば、たなのどこに置いてもだれの物か分かるのと同じです。
この「が・を・は・に」のような小さな言葉を、国語では助詞と習いましたね。日本語は助詞が役目を決めてくれる言葉なので、ならび方はかなり自由にできるのです。ふだん自分が話すとき、順番をあまり気にしていないのは、このおかげです。
ところが英語には、この名札がありません。soccer にも dogs にも、〈される側〉という札はついていません。では英語はどうやって見分けているのでしょうか。答えは置き場所です。
使っている三つの単語はまったく同じです。それでも意味は正反対になりました。英語では、動きを表す言葉の前に置かれた人が「する側」、後ろに置かれた人が「される側」と決まっているからです。札がないかわりに、席順そのものが札のかわりをしているのです。
だから英語では、ならぶ順を変えることは、意味を変えることと同じです。日本語の感覚で「言いやすい順に言えばいい」と思ってならべると、伝わらないどころか、反対の内容になってしまうことがあります。ここが、英語を学ぶうえでいちばん最初に押さえておきたい約束です。
英語の文は、左から順に三つの箱にものを入れていくようなものだと考えると分かりやすくなります。
| 1つ目の箱 だれが | 2つ目の箱 どうする | 3つ目の箱 なにを・どんな |
|---|---|---|
| I | play | soccer. |
| I | like | dogs. |
| She | studies | English. |
| We | have | a big park. |
| My brother | is | a soccer fan. |
どの行も、左から〈だれが〉〈どうする〉〈なにを〉の順にならんでいます。6年間で習ってきた文も、ほとんどがこの三つの箱に入ります。I can swim. は〈I〉〈can swim〉、I want to join the tennis team. は〈I〉〈want to join〉〈the tennis team〉です。can や want to は、2つ目の箱の中がすこしにぎやかになっただけで、箱のならび自体は変わりません。
2つ目の箱は、けっして空にはできません。日本語では「わたしはサッカー。」でも通じてしまう場面がありますが、英語で I soccer. とは言えないのです。英語の文には必ず、動きや様子を表す言葉が一つ要ります。「〜です」にあたる am・is・are も、この2つ目の箱をうめるための大切な言葉でした。
三つの箱がうまったら、そのうしろに「くわしく言う言葉」を足していけます。ここにも、ゆるやかな決まりがあります。
英語では、場所を先に、時を後に置くことが多いです。日本語は「日曜日に公園で」と、時を先に言うのがふつうですから、ここでも前後が逆になります。おもしろいのは、日本語がだんだん内側にしぼっていくのに対し、英語は中心をまず言ってから外側へ広げていく形になっていることです。
日本語は大きなわく組みから話し始めて最後に結論、英語は結論から話し始めて後から説明を足す。この感じは、英語で自己しょうかいや発表を組み立てるときにも効いてきます。まず言いたいことを言ってしまう、という英語らしい話し方は、じつはならび方から来ているのです。
質問の文も、この三つの箱がこわれるわけではありません。箱の前に、合図の言葉がつくだけです。
Do は「ここから質問だよ」という合図です。日本語では、最後に「か」をつけて質問にしますね。英語は反対に、先頭に合図を置きます。日本語は文の終わりで、英語は文の始まりで、質問だと知らせるのです。だから英語では、相手が話し始めたしゅんかんに「あ、これは質問だ」と分かります。
What・Where・When のような、たずねる言葉も先頭に来ます。What do you want to join? のように、聞きたいところを先頭に持ってきて、その後ろに合図の do と三つの箱が続く形です。中学校でくわしく習う形ですが、「合図は前」とだけ覚えておけば、初めて見てもこわくありません。
最後に、6年間の単元で口に出してきた文を、三つの箱にもどしてみます。ばらばらに覚えてきた表現が、一つの形でつながっていることを確かめてください。
| 習った文 | だれが | どうする | なにを・どんな |
|---|---|---|---|
| I like blue. | I | like | blue. |
| I can play the piano. | I | can play | the piano. |
| I get up at six. | I | get up | at six は後ろの説明 |
| I went to the sea. | I | went | to the sea は後ろの説明 |
| I want to join the art club. | I | want to join | the art club. |
色の単元も、できることの単元も、一日の生活も、夏の思い出も、中学でしたいことも、ならび方は同じでした。ちがっていたのは、箱に入れる言葉だけです。中学校では he・she が主語になったり、2つ目の箱の形が変わったりしていきますが、左から〈だれが〉〈どうする〉という土台はずっと変わりません。
「わたしはサッカーをします」を I soccer play. としてしまう例です。日本語をそのまま置きかえると、どうしても動きの言葉が最後に来てしまいます。
英語を書くときは、まず〈だれが〉と〈どうする〉の2つだけを先に決めてしまいましょう。なにをするかは、その後で足せます。
「わたしは6年生です」を I sixth grader. と書いてしまう例です。日本語の「です」を消してしまうと起きます。
英語の文には動きや様子を表す言葉が必ず要ります。「です」にあたる am を入れて I am a sixth grader. とします。
「公園でサッカーをします」を In the park I play soccer. とする例です。まちがいではありませんが、ふだんの言い方ではありません。
説明はまず後ろに置く、と決めておくと迷いません。三つの箱をうめ終わってから、場所、そのあと時の順に足します。
Q1 英語の文で、「どうする」を表す言葉はふつう何番目に来ますか。
A 2番目(日本語は最後に来るので、そこが大きくちがいます)
Q2 Taro found Yuka. は、見つけたのはどちらですか。
A たろう(動きの言葉の前にいる人が「する側」だからです)
Q3 「わたしは日曜日に公園でサッカーをします」を英語のならび方にすると、どうなりますか。
A I play soccer in the park on Sundays.(場所が先、時が後ろです)
Q4 I am a sixth grader. の am を消してはいけないのはなぜですか。
A 2つ目の箱が空になってしまうから(英語の文には、動きや様子を表す言葉が必ず一つ要ります)
小学校の英語は表現ごとに学ぶため、文の骨組みを意識する機会が多くありません。しかし中学校では、この骨組みを前提に学習が進みます。ここでつまずくお子さんの多くは、単語を知らないのではなく、日本語の順番のまま英語の単語を置いてしまうために通じなくなっています。ご家庭では、テストのように直すのではなく、「英語だと、だれが→どうする、の順だったね」と土台のほうを思い出させてあげてください。また、日本語の助詞のはたらきに気づくことは、国語の学びにもつながります。二つのことばを見くらべる経験そのものが、ことばへの興味を育てていきます。