英語の s は、5年生で一度習っています。「2つ以上のときにつける」と覚えた人が多いはずです。ところが6年生の教科書には He likes dogs. という文が出てきます。like についた s は、犬の数とは何の関係もありません。同じ形の文字なのに、つく場所によって意味が反対に動く。ここを一度整理しておくと、中学校の最初のテストで多くの人が落とす点を、先に取り返せます。
まず、次の2文を見くらべてください。犬が何びきいるかを考えながら読みます。
犬の数はどちらも同じで、何びきでもかまいません。変わったのは、好きな人が「わたし」から「かれ」になったところだけです。それなのに like が likes に変わりました。
つまり、うしろの dogs についている s と、like についた s は、別の理由でそこにいます。dogs の s は犬の数の話、likes の s は好きな人の数の話です。1つの文に、意味のちがう s が2つ同時に入っているわけです。
この2つを同じ s だと思ったまま進むと、文を作るたびにどちらへつけるか迷います。まずは「名前の言葉につく s」と「動きの言葉につく s」を、別の道具として分けてしまいましょう。
役目をならべると、正反対だということがはっきりします。
| どこにつく | 意味 | 例 | |
|---|---|---|---|
| 名詞の s | もの・人の名前の言葉 | 2つ以上ある | dog → dogs(犬が2ひき以上) |
| 動詞の s | 動きや心を表す言葉 | 主語がちょうど1人・1つ | like → likes(好きな人が1人) |
名詞のほうは、s があれば数がふえます。動詞のほうは、s があれば数が1にしぼられます。ふえる印とへる印が、同じ文字でできているのです。
ここがはっきりすると、次のような入れかわりが読めるようになります。主語と動詞のあいだで、s がシーソーのように行ったり来たりします。
1行目と2行目では、s がついている場所がちょうど入れかわっています。主語が1つなら動詞に s、主語が2つ以上なら動詞は裸のまま。英語は、動詞のうしろのたった1文字で「いま何人の話をしているか」をもう一度知らせているのです。
この動詞の s を、中学校では 三人称単数現在の s(略して三単現の s)と呼びます。長い名前ですが、中身は「自分でも相手でもない人が」「1人で」「いつもしている」という3つの条件を並べただけです。次の節で1つずつ見ていきます。
動詞に s をつけるのは、次の3つがすべて当てはまるときだけです。1つでも外れたら、動詞はもとの形のままにしておきます。
3つそろって、はじめて s が出てきます。主語をいくつか当てはめてみましょう。
| 主語 | ①I・you でない | ②1人・1つ | 動詞の形 |
|---|---|---|---|
| I | × | ○ | play(s なし) |
| You | × | ○ | play(s なし) |
| He / She / Ken | ○ | ○ | plays |
| My brother | ○ | ○ | plays |
| They / My friends | ○ | × | play(s なし) |
| The cat | ○ | ○ | plays |
表を上から見ると、s がつくのは3行目・4行目・6行目だけです。英語の主語のうち、動詞に s を要求するのはこのなかまだけで、残りはぜんぶそのまま。s がつくほうが少数派だと考えると、身につきやすくなります。
③の「いつものこと」は、6年生の段階では深く考えなくてかまいません。ただ、He played soccer.(かれはきのうサッカーをした)のように過ぎたことを言うときは、動詞が played という別の形に着がえ、s は出てきません。s は今の話のときだけ顔を出す、と覚えておけば十分です。
なぜ I と you だけが特別あつかいなのか、気になった人がいるはずです。英語は人を、次の3つのグループに分けて考えています。
| グループ | だれのこと | ことば |
|---|---|---|
| 一人称 | 話している自分 | I / we |
| 二人称 | 話しかけている相手 | you |
| 三人称 | それ以外のぜんぶ | he / she / it / they / 人の名前 / ものの名前 |
自分と相手は、その場に必ずいます。だから言いまちがえようがありません。ところが三人称は、そこにいない人やもののことまで含む、とても広いグループです。数え切れないほどの相手が入るので、英語は「いま話題にしているのは1つだけですよ」という印を動詞につけて知らせることにしました。それが s です。
気をつけたいのは、目の前にいる人でも三人称になる点です。友だちのケンが横にいても、ケンに向かって話していなければ、ケンは三人称です。だれについての話かではなく、だれに向かって話しているかで決まります。
言っている内容は同じでも、話しかける相手がちがうので、動詞の形が変わりました。my father、the dog、this book のように、人以外の名前もすべて三人称に入ります。my father and my mother なら2人なので、s はつきません。
むかしの英語では、主語によって動詞の形がもっと細かく変わっていました。長い時間をかけてそのほとんどが消え、最後に1つだけ残ったのが、この s です。中学校で「なぜここだけ形が変わるのか」と思ったら、これが生き残りだと思い出してください。
つけると決まったら、次はつけ方です。書き方は4つの型に分かれますが、実際に覚えるのは2つだけで足ります。
| 型 | やり方 | 例 |
|---|---|---|
| ふつう | s をつける | play → plays、like → likes、run → runs |
| s・sh・ch・x・o で終わる | es をつける | watch → watches、go → goes、do → does |
| 子音+y で終わる | y を i に変えて es | study → studies、cry → cries |
| have だけ特別 | has になる | have → has |
2つ目の型が es になるのは、そのまま s を足すと音がくっついて聞こえなくなるからです。watch に s だけを足しても、「ウォッチ」と「ウォッチス」はほとんど区別できません。そこで母音の e をはさんで「ウォッチズ」と、はっきり1つ分ふくらませます。読み方が先にあって、書き方があとからついてきた型です。
3つ目も理由は同じです。study に s を足した studys という形は、英語の目に読みにくいものと映ります。play → plays に y の変身がないのは、y の前が a(母音)だからです。y の1つ前を見て、母音なら s、子音なら ies と決まります。
have → has だけは、型で説明がつきません。よく使う言葉ほど短く言おうとして形がくずれる、という言葉の性質によるものです。ここは覚えるしかありませんが、裏を返せば、覚える特別形はこの1語だけということでもあります。
He plays soccer. を「しない」「しますか」の形にすると、せっかくつけた s が消えます。
plays の s が does のほうへ移りました。打ち消す文とたずねる文では do という助っ人が出てきますが、主語が三人称で1人のときは、この助っ人が s を引き受けて does になります。s を受けとってもらった play は、もとの形にもどります。
ですから Does he plays soccer? は、s が2つになってしまうまちがいです。does がある文で、うしろの動詞に s を残してはいけません。中学1年生のテストで、もっとも多く出るまちがいでもあります。
can のときも同じで、He can play soccer. と、play はもとの形のままです。can が「できる」という意味を引き受けているあいだ、うしろの動詞は形を変えません。
ここまでで、三人称単数の s のきまりはひととおりそろいました。あとは、まちがえやすい場所を先に見ておきましょう。
be動詞の記事で「s は文に1つだけ」と書きました。あれは動詞の s についての話です。名詞の s は別の s なので、He likes dogs. のように動詞の s と名詞の s が同じ文にならぶことは、ふつうにあります。数えているものがちがうから、両方いてよいのです。
Dogs likes Ken. のような文です。s が2か所についていますが、犬が2ひき以上いるなら好きな相手は1人ではないので、動詞の s は要りません。主語に s がついたら動詞からは外す、と覚えると防げます。
I likes dogs. / You plays tennis. というまちがいです。「1人だから s がつくはず」と考えると、こうなります。1人かどうかより先に、I と you は最初から仲間外れだと決めてしまってください。
He ises my brother. のような形を書く人がいます。is はもともと三人称で1人のときの形なので、すでに仕事を終えています。am・is・are はもとから主語ごとに姿を変える言葉で、s とは別のしくみで動いています。
My brother and my sister like music. は、主語が2人なので s はつきません。ところが My brother in Osaka likes music. のように主語のうしろへ説明がつくと、すぐ前の Osaka につられてしまいます。数えるのは、文のいちばん前にある言葉です。長い主語が出てきたら、まず「何人・何個か」を数えるくせをつけましょう。
Q1 He likes dogs. の dogs の s と likes の s は、それぞれ何の数を表していますか。
A dogs の s は犬の数(2ひき以上)、likes の s は好きな人の数(ちょうど1人)です。
Q2 My friends (play / plays) soccer. どちらが正しいですか。
A play です。friends に s がついていて2人以上なので、動詞には s をつけません。
Q3 study を、主語が she のときの形にしてください。
A studies です。y の前が d(子音)なので、y を i に変えて es をつけます。
Q4 Does he plays the piano? のまちがいを直してください。
A Does he play the piano? です。does が s を引き受けているので、play はもとの形にもどります。
Q5 横にいる友だちのケンのことを先生に伝えるとき、動詞に s は要りますか。
A 要ります。話しかけている相手は先生で、ケンは三人称だからです。Ken plays the guitar. となります。
三人称単数の s は、中学1年生の1学期につまずきが集中する項目です。理屈がむずかしいからではなく、「s = 複数」という5年生で入れた知識と真正面からぶつかるからです。先に入っている規則を上書きする作業になるため、1回の説明では入りません。
ご家庭では、正しい形を教え込むより「その s は、何の数を数えている s かな」と聞いてあげてください。数えている対象がちがうと気づけば、子どもは自分で置き場所を決められます。
もう一つ。この s は、つけ忘れても意味は通じます。英語を話す国の子どもも、小さいころは同じつけ忘れをします。ですから、まちがえた瞬間に直すよりも、伝わったことをまず認めてあげるほうが、話す量が減りません。書くときにだけ確かめる、という順番で十分に間に合います。
小学校の外国語では文法用語を使わずに進みますが、He plays 〜. の形そのものは6年生の教科書に何度も出てきます。用語を覚えさせる必要はありません。「英語は、1人のことを話すときだけ動詞にしるしをつける言葉なんだね」と一度言葉にしておくだけで、中学校での学習がぐっと楽になります。