夏休みや修学旅行の思い出を英語で言うページには、きまってこういう文がならんでいます。It was fun./It was delicious./How was your summer vacation?。どれも was です。ところが、同じ気持ちで「わたしたちは つかれていました」と言おうとしたとたん、多くの人が止まります。We was tired. でいいのか、We were tired. なのか。止まって当然です ── was の相棒である were は、小学校で読む文の中にほとんど顔を出さないからです。この記事では、見えていなかったほうの半分を、表を丸暗記するのではなく1つの見分け方でつかまえます。
まず、日本語で「すぎたこと」を言うとどうなるかを見てみます。
だれの話をしていても、うしろは「でした」のままです。1人でも大ぜいでも、日本語は形を変えません。だから日本語だけで考えていると、英語もひとつ覚えれば足りるはずだと思ってしまいます。
同じ4つを英語にすると、こうなります。
2通りに割れました。was と were です。日本語で1つだったものが英語では2つあるので、「どちらにするか選ぶ」という仕事がここで新しく生まれます。逆に言えば、選び方さえ決まれば、この単元で覚えることはほとんど終わりです。
いま見ている was・were のことを、中学では be動詞の過去形 という名前で習います。たいそうな名前がついていますが、中身は「です・いますの、すぎたこと版」というだけです。
am は「は」ではないの記事で見たとおり、「です・います」の担当は今の形で3つに分かれていました。am・is・are です。では、すぎたことの形もやはり3つあるのでしょうか。ならべて見ます。
| 主語 | 今の形 | すぎたことの形 |
|---|---|---|
| I(わたし) | am | was |
| he / she / it / 名前(1人・1つ) | is | was |
| you(あなた・あなたたち) | are | were |
| we / they(2人以上) | are | were |
3つが2つになりました。am と is がいっしょになって was に、are だけが were になります。ここが、この単元でいちばん助かるところです。今の形を3つ知っている人は、すぎたことの形をあらたに覚え直す必要がありません。
見分け方も、1行で言えます。
ためしてみます。「かのじょはいそがしかった」なら、まず今の形を思いうかべます。She is busy. ── is なので、すぎたことは She was busy.。「かれらはしずかだった」なら、They are quiet. ── are なので They were quiet.。主語を1つずつ覚えるのではなく、すでに知っている今の形を通り道にするのがこつです。
ひとつだけ、ひっかかるところがあります。you です。
you は1人を指していても、今の形が are でした。だからすぎたことも were になります。「1人なんだから was では?」と考えるとまちがえますが、「are のなかまだから were」と考えれば迷いません。ここでも、今の形を通り道にするやり方がそのまま効きます。
ここまで読んで、ふしぎに思った人がいるかもしれません。were がふつうに使う形なら、どうして教科書では見かけなかったのでしょうか。
答えは、感想を言う文の主語が、いつも it だからです。
「楽しかった」「おいしかった」「きれいだった」と言うときの主語は、したこと全体を指す it。it は is のなかまなので、出てくるのは was だけになります。夏の思い出の記事や小学校の思い出の記事でならった It was fun. や It was delicious. が was ばかりだったのは、英語に were が少ないからではなく、感想文が it で始まるからだったのです。
主語を人にかえたとたん、were の出番がやってきます。
思い出を話すとき、ほんとうに言いたいのは、この4つのような文かもしれません。「楽しかった」だけでは、だれがどうだったのかが伝わらないからです。were を持っているかどうかで、話せる思い出の幅が変わります。
ここからが、中学でいちばん多いまちがいです。すぎたことを言おうとして、印を2つ重ねてしまう形。
気持ちは分かります。「すぎたこと」なのだから、was も went も入れておけば安心に見えるのです。けれどもam は「は」ではないの記事で確かめたとおり、英語の文で動詞が入る場所はちょうど1つでした。今の形で I am play soccer. と言えないのと、まったく同じ理由で、すぎたことでも2つはならべられません。すぎたことになっても、入る場所の数は増えません。
では、どちらを入れるのか。見分けるところは1か所だけです。
この2つは、意味もちゃんとちがいます。
上は「そこにいた」という話で、下は「そこへ動いた」という話です。英語で夏の思い出を話そうの記事で出てきた went・ate・saw・enjoyed は、すべて下のなかま。was・were といっしょに使うものではなく、どちらか一方を選ぶものだと思ってください。
すぎたことを打ち消したり、たずねたりするときはどうなるでしょうか。do はなんのためにいるのかの記事で、「しない」「〜しますか」を作るときには do・does・did という係がやとわれる、という話をしました。ところが was・were のときは、その係を呼びません。
打ち消すときは、うしろに n't をつけるだけ。たずねるときは、was・were じしんが先頭へ出るだけです。do の記事で見た「係はいつも1人」というきまりが、ここでも効いています。was・were は自分で前へ出られる言葉なので、わざわざ did をやとう必要がないのです。
すでに知っている形にも、このきまりが顔を出しています。
How was ~? は、教科書で何度も読んできた形です。これも was が先頭近くへ出ているだけで、特別な言い方ではありません。相手が複数なら How were your holidays? のように were にかわります。丸ごと覚えた形が、きまりの上に乗っていたと分かると、ほかの場面でも自分で組み立てられるようになります。
よく出るまちがいをならべます。ばらばらに見えますが、どれもここまでの筋の1か所を落としただけです。
1つめは、we の今の形が are だと思い出せなかった形です。are のなかまなので were になります。
2つめは、you を1人だと考えて was にしてしまった形。you は人数に関係なく、いつも are のなかまです。
3つめは、逆に it を複数のように扱った形です。it は is のなかまなので was。
4つめは、すぎたことの印を2つ重ねた形。動詞の入る場所は1つだけです。
5つめは、係を2人やとってしまった形。were が自分で前へ出られるので、did はいりません。
6つめは、主語が friends(2人以上)であることを見落とした形です。名前や「〜たち」が主語のときは、1人か2人以上かを数えてから選びます。
6つとも、「今の形が are になるなら were、そうでなければ was」と「動詞の場所は1つだけ」という2行で説明がつきます。表を丸暗記するより、この2行を手放さないほうが長もちします。
Q1 「わたしたちは いそがしかった」を英語にすると。
A We were busy.(we の今の形は are。are のなかまなので were を選びます)
Q2 You (was / were) great! どちらが入りますか。1人に向かって言う場合です。
A were。you は1人に言うときでも今の形が are なので、すぎたことは were になります。人数では決めません。
Q3 It was fun. の was は、今の形にすると何になりますか。
A is(It is fun. =「それは楽しいです」)。am と is が合流して was になっています。
Q4 I was went to the park. は、どこがまちがっていますか。
A すぎたことの印が2つあるところ。動詞の入る場所は1つだけなので、I went to the park. が正しい形です。「公園にいた」と言いたいなら I was at the park. になります。
Q5 「あなたたちは つかれていましたか」とたずねる文を作ってください。
A Were you tired? were が自分で先頭へ出るので、Did はいりません。
Q6 夏休みの感想が It was ~ ばかりになるのは、なぜですか。
A 感想を言う文の主語が、したこと全体を指す it だからです。it は is のなかまなので was になります。主語を We や They にすれば、were の文になります。
小学校の教科書は、思い出を語る活動で It was fun. / It was delicious. / How was ~? を何度も扱いますが、その相棒である were は登場する機会がほとんどありません。感想文の主語が it に固定されているためで、教材の作りとしては自然なことです。ただ結果として、子どもたちは was だけを「すぎたことの形」だと思ったまま中学に進みます。中学1年の最初の定期テストで We was ~. と書いてしまうのは、覚えていないからではなく、半分しか見せてもらっていなかったからです。
ご家庭では、思い出の話をするときに主語を「わたしたち」に変えてみるだけで、練習になります。「きのう家族でどこか行った? それ、英語で言うと We were ~ になるね」といった具合です。また、I was went ~. のような文を書いたときは、まちがいとして消すかわりに「いたの? 行ったの?」と聞いてあげてください。どちらを言いたいのかがはっきりすれば、入れる言葉は子ども自身が選べます。文法用語を先に教える必要はありません。