「りんごは好き?」を英語でたずねると Do you like apples?、その答えは Yes, I do. と習います。何度も練習するので、口はすらすら動くようになります。けれど、立ち止まってよく見ると、この答えはとても変です。聞かれたのは「好きかどうか」なのに、答えの中に like が1つも入っていません。かわりに入っているのは、だれも意味をたずねていない do のほうです。ここを「そういう言い方だから」でおぼえてしまうと、Are you hungry? に Yes, I do. と答えてしまう日がきます。この記事であつかう do・does のはたらきは、中学1年生のいちばん最初につまずきが集まる場所でもあります。この記事では、この do がいったい何者なのか、そしてなぜ答えのほうにそれが出てくるのかを、一本の筋にします。
まず、よく練習する3つの会話をならべてみます。どれも正しい英語です。
1つめは「おなかがすいている?」と聞かれて「すいています」。2つめは「泳げる?」と聞かれて「泳げます」。ここまではしっくりきます。ところが3つめだけ、「りんごは好き?」と聞かれているのに、返しているのは do です。日本語の感じで組み立てるなら Yes, I like. になりそうなものですが、英語ではそうは言いません。
もう一歩ふみこんで、3つの答えがどこから持ってきた言葉なのかをたどってみてください。am は、たずねる文の先頭にあった Are から来ています。can は、先頭にあった Can から来ています。そして do は、先頭にあった Do から来ています。
| たずねる文 | いちばん前の言葉 | Yes の答え |
|---|---|---|
| Are you hungry? | Are | Yes, I am. |
| Can you swim? | Can | Yes, I can. |
| Do you like apples? | Do | Yes, I do. |
3つとも、同じことをしています。英語の答えは、動詞をくり返しているのではありません。たずねる文のいちばん前に出ていた言葉を、そのままくり返しているのです。この1行が分かれば、Yes, I do. はもう丸暗記するものではなくなります。Do で聞かれたら do を返す。Are で聞かれたら am を返す。Can で聞かれたら can を返す。それだけです。
では、なぜ like ではなく do が先頭に出ていたのでしょうか。ここからが本題です。
日本語で質問をつくるときのことを思い出してください。わたしたちは文の終わりをいじります。
言いたい中身はそのままで、終わりに「?」や「か」を足すだけで質問になります。だから日本語では、最後まで聞かないと、それが質問なのかどうか分かりません。
英語はこのやり方をとりません。かわりに先頭をいじります。
are や can が、主語 you をとびこして前へ出ています。前へ出たこと自体が「これから質問です」という合図です。聞く人は最初の1語で質問だと分かるので、身がまえて聞けます。この「英語は2語目でわかる」というつくりについては、英語の語順の記事でくわしく見ています。
さて、ここで同じことを I like apples. でやってみましょう。
言えません。英語では、前へ出てよい言葉が決まっているからです。前へ出られるのは、am・is・are(be動詞)と、can・will のような助ける言葉だけ。like・play・have・go のように中身のある動きを表す言葉は、自分の場所から動けません。この「2つ目の箱」の話は、am は「は」ではないの記事につながっています。
I like apples. という文の中には、前へ出られる言葉が1人もいません。困ったことになりました。この文は、一生質問にできないのでしょうか。
英語が出した答えは、思いきったものでした。前へ出る役を、わざわざ1人やとってくるのです。それが do です。
ここが、この記事でいちばん大事なところです。この do は、「する」という意味では使われていません。ためしに「する」と訳してみてください。「あなたはりんごを好きすることをしますか」。意味が通りません。つまりこの do は、訳せないのではなく、訳すべき中身をそもそも持っていないのです。
持っている仕事は1つだけ。文の先頭に立って、これは質問だと知らせること。中身は後ろの like が受け持っているので、do は中身を持つ必要がありません。むしろ、中身を持っていないからこそ、どんな文にでも呼ばれていけるのです。
do が出てくるのは、たずねる文だけではありません。打ち消す文でも出てきます。
ここでも like だけ do を連れてきています。理由は、たずねる文のときとそっくりです。not は、ひとりで立てない言葉だからです。
not は必ず、am・can のような言葉のすぐうしろにくっつきます。I am not. / I cannot. のように。ところが I not like apples. とは言えません。not がくっつく相手がいないからです。そこで、くっつかれてくれる相手として do を呼びます。do not、ちぢめて don't。
つまり do の仕事は、「先頭に立つ」と「not にくっつかれる」の2つですが、どちらも中身とは関係のない、形の上の役目です。仕事の中身が空っぽな係──それが do の正体です。
| なかま | ふつうの文 | 打ち消す | たずねる | Yes の答え | No の答え |
|---|---|---|---|---|---|
| be動詞 | I am hungry. | I am not hungry. | Are you hungry? | Yes, I am. | No, I'm not. |
| can | I can swim. | I can't swim. | Can you swim? | Yes, I can. | No, I can't. |
| ふつうの動詞 | I like apples. | I don't like apples. | Do you like apples? | Yes, I do. | No, I don't. |
3行とも、やっていることはまったく同じです。ちがうのは前へ出られる言葉が、もともとその文にいたかどうか、ただ1点だけ。be動詞と can はもういたので、そのまま使えました。like にはいなかったので、do をやといました。おぼえることが3つあるのではなく、1つのきまりが3回くり返されているだけなのです。
英語の学習では、もう1つ do がよく出てくる場所があります。What で始まる質問です。
What はもう「たずねる言葉」なのだから、do はいらないのでは、と思いたくなります。けれど英語では、What のあとにもやはり do が必要です。なぜなら、この形はYes/No の質問の上に、What をのせて作られているからです。
土台にあるのは Do you like 〜? のままで、たずねたい部分だけが What になって先頭へ引っこしたのです。だから do は、引っこした What のうしろに、そのまま残っています。
そして答え方は変わります。What で聞かれたときは Yes や No では答えません。「何が」という中身を聞かれているので、I like apples. や Apples. と中身で返します。do を返すのは、Do で始まる質問に答えるときだけです。このちがいは、英語の質問は2しゅるいの記事で見た「いちばん前の1語を見る」という見分け方と、そっくり重なります。
ここまで読むと、次の文を見たときに手が止まるかもしれません。
do が2回出ています。書きまちがいではありません。2つの do は、別の仕事をしています。
| どこにいる do か | 仕事 | 訳す? |
|---|---|---|
| 主語の前/not の前 | やとわれた係 | 訳さない |
| 主語のうしろ(動詞の場所) | 「する」という動き | 「する」と訳す |
1つめの do は you の前にいるので、やとわれた係。2つめの do は動詞の場所にいるので、「する」という意味の動詞です。見分けるのは、意味ではなく場所です。
ではなぜ、同じ形の言葉が2つの顔を持っているのでしょうか。じつは do はもともと「する」という意味の動詞で、そちらが本業でした。あとから、中身を置いてきて形だけをととのえる係の仕事も引き受けるようになったのです。意味を捨てられたからこそ、どんな動詞の文にも呼ばれる係になれたと考えると、2つの顔はひとつながりに見えてきます。
やとわれた do は、文の形に合わせて姿を変えます。変わるのは do のほうで、後ろの動詞ではありません。
1つめでは、likes についていた s が消えて、do が does になっています。2つめでは、played の「すぎたこと」の印が消えて、do が did になっています。どちらも同じことが起きています。やとわれた係が、印をぜんぶ引き受けるのです。印を渡した動詞は、like・play という裸の形にもどります。
これは、この記事の最初に見た「答えは前に出た言葉をくり返す」と、じつは同じ考え方です。英語は印を1か所にしか置かないようにできています。だから s も、すぎたことの印も、係と動詞の両方につけることはありません。Does he plays soccer? が×なのは、s が2か所にあるからです。この s の引っこしについては、He likes の s の記事が、一本まるごとあつかっています。
ここまでの筋が通っていれば、中学のテストでよく出るまちがいは、どれも同じ1行で直せます。
1つめは、答えに動詞を返してしまった形です。返すのは前に出ていた言葉でした。
2つめは、係を2人やとってしまった形です。are がもう前に出られるのだから、do を呼ぶ必要はありません。係はいつも1人だけです。
3つめは、印を2か所に置いてしまった形です。does が s を引き受けたのだから、play は裸にもどります。
この3つは、どれも「おぼえまちがい」ではなく、1つのきまりを知らないまま形だけをまねたときに出るまちがいです。裏を返せば、きまりを1本持っているだけで、3つまとめて防げます。
Q1 Do you have a pen? と聞かれました。持っているとき、なんと答えますか。
A Yes, I do.(Do で聞かれたので do を返します。Yes, I have. とは言いません)
Q2 Are you tired? と聞かれました。つかれているとき、なんと答えますか。
A Yes, I am.(Are で聞かれたので am を返します。ここで Yes, I do. と言ってしまうのが、いちばん多いまちがいです)
Q3 Do you like apples? の do を「する」と訳してはいけないのは、なぜですか。
A この do は中身を持っていない係だから。中身は後ろの like が持っていて、do の仕事は先頭に立って質問だと知らせることだけです。
Q4 「わたしは牛乳が好きではありません」を I not like milk. と書きました。どこを直しますか。
A I don't like milk.(not はひとりで立てないので、くっつく相手として do を呼びます)
Q5 Do you do your homework? の2つの do は、どうやって見分けますか。
A 意味ではなく、いる場所で見分けます。主語 you の前にいる1つめが係、動詞の場所にいる2つめが「する」という意味の動詞です。
Q6 What do you want? に Yes. と答えてはいけないのは、なぜですか。
A What は「何が」という中身をたずねているから。Yes・No で答えるのは Do で始まる質問のときだけで、ここでは A new bike. のように中身で返します。
小学校の外国語では、Do you like 〜? と Yes, I do. は会話の型として何度も練習します。型として入れること自体はとてもよい方法で、音とリズムはそのやり方でしか身につきません。ただ、型のまま中学へ進むと、最初の学期で必ず立ち止まる場所があります。be動詞の文と一般動詞の文がならんで出てきて、Do you are 〜? のような混ざった文を書いてしまうところです。これは理解が足りないから起きるのではなく、2種類の型を、どちらも正しくおぼえているからこそ起きる混線です。ですから、まちがいを見つけても直し方から入らないでください。おすすめは、答えのほうから話すことです。「Are で聞かれたら何を返す? Do で聞かれたら?」と、答えの言葉だけをそろえて聞いてみてください。答えが前の言葉と同じだと本人が気づいた瞬間に、たずねる文の形も後からついてきます。順番を逆にするのがコツです。もう一つ。do は英語でいちばん説明しにくい言葉のひとつで、大人でも「なぜ要るのか」と聞かれると困ります。お子さんに聞かれたときは、無理に文法として説明せず「意味を持たない係の人がいるんだって」と伝えるだけで十分です。意味がないことが仕事なのだと分かっていれば、訳そうとして止まることがなくなります。中学の教科書で「助動詞の do」という用語に出会ったときにも、用語だけが先に来るのではなく、すでに知っているものに名前がついた、という順番になります。