5年 社会 米づくり

米づくり ── 1年がかりの仕事と、続く工夫

お茶わん1杯のご飯の裏には、1年間の仕事があります。

なぜ日本で米なのか

日本人の主食は米です。それには理由があります。

日本の気候と稲 ・夏に高温多雨 → 稲の生育に最適 ・梅雨がある → 田に水を張れる ・山が多く水が豊富 → 用水を引ける → 稲作に非常に向いている

稲はもともと熱帯の植物です。だから、高温多湿の日本の夏がぴったり合うのです。

そして、米には大きな利点があります。

米の利点 ・同じ面積で多くの人を養える ・保存がきく(1年以上) ・連作ができる → 毎年同じ田で作れる → 水を張るので土がやせにくい

連作できるのは、水田の大きな特徴です。畑作では同じ作物を続けると土がやせますが、水田は水が養分を運んでくれます。

だから、千年以上前から同じ場所で米を作り続けられるのです。

米づくりの1年

米づくりは、春から秋まで続きます。

時期仕事内容
3〜4月種もみの準備よい種を選び、芽を出させる
4月苗づくり育苗箱で苗を育てる
4月田おこし土を掘り返して空気を入れる
5月代かき水を入れて土を平らにする
5月田植え苗を植える
6〜8月水の管理・除草水の量を調節、草取り
7〜8月中干し一度水を抜いて土を乾かす
8月出穂・開花穂が出て花が咲く
9〜10月稲刈り・だっこく刈り取り、もみを外す
10〜11月乾燥・もみすり乾かして、もみがらを取る

とくに理解しておきたいのが「中干し」です。

中干しの目的 一度水を抜いて田を乾かす ↓ ・土に空気を入れる ・根を強くする ・無駄な茎が増えるのを防ぐ ・収穫時に機械が入りやすくなる

水を張り続けるのではなく、あえて乾かす時期を作るのです。長年の経験から生まれた技術です。

そして、水の管理が米づくりの中心です。

水の深さを変える 田植え直後 … 深め(苗を守る) 成長期 … 浅め(根に酸素を) 中干し … 抜く 穂が出るころ … 深め(実を充実させる)

「米づくりは水づくり」と言われるほど、水の管理が重要なのです。

品種改良の歴史

今の米は、長い年月をかけて改良されてきたものです。

品種改良の目的 ・味をよくする ・寒さに強くする ・病気に強くする ・倒れにくくする ・収穫量を増やす

とくに寒さに強くすることは、日本の農業を大きく変えました。

北海道の例 昔:稲作に向かない土地とされた ↓ 寒さに強い品種の開発 排水設備の整備 ↓ 今:日本有数の米どころ (「ゆめぴりか」など)

もともと熱帯の植物である稲を、北の大地で育てられるようにしたのです。これは大きな成果です。

品種改良のしかたは、こうです。

かけ合わせ(交配) 「味はよいが寒さに弱い品種」 × 「味はふつうだが寒さに強い品種」 ↓ たくさんの子ができる ↓ その中から「味がよくて寒さに強い」 ものを選ぶ ↓ さらに増やす → 1つの品種を作るのに 10年以上かかることも

気の長い作業です。それでも続けられてきたのは、それだけ価値があるからです。

機械化と共同作業

米づくりは、大きく変わりました

作業
田おこし牛や馬、くわトラクター
田植え手で1本ずつ田植え機
稲刈りかまで手刈りコンバイン
だっこく足踏み脱穀機コンバインが同時に

機械化によって、作業時間は昔の5分の1以下になりました。

10aあたりの作業時間 1950年ごろ … 約200時間 現在 … 約23時間 → 大幅に減った

ただし、問題もあります

機械化の課題 ・機械が高い(数百万円) ・使う期間は年に数日だけ ・維持費もかかる → 一軒だけでは負担が大きい

そこで、共同で使う取り組みが行われています。

工夫の例 ・農業協同組合(JA)で共同購入 ・作業を請け負う会社に依頼 ・農地を集めて大規模化 ・複数の農家で法人を作る

また、耕地整理も進められました。小さな田を集めて大きく四角い形にすることで、機械が使いやすくなります。

米づくりの課題

米づくりは、いくつかの深刻な問題を抱えています。

① 米の消費量が減っている 1962年 … 1人年間118kg 現在 … 1人年間約50kg → 半分以下に → パンや麺を食べる人が増えた

作っても売れない状況が続き、生産調整(減反)が行われた時期もありました。

② 農家の高齢化と後継者不足 農業で働く人の平均年齢 → 約68歳 若い人が農業を選ばない → 収入が不安定 → 休みが取りにくい → 「もうからない」イメージ
③ 外国からの輸入 1993年の米不足をきっかけに 輸入が始まった ↓ 安い外国産との競争

こうした課題に対して、さまざまな取り組みが行われています。

・ブランド米づくり (味で勝負する) ・有機栽培、減農薬 (安全性を売りにする) ・直売、インターネット販売 (中間費用を減らす) ・米粉の利用 (パンや麺に加工) ・輸出 (海外で日本米の評価は高い) ・スマート農業 (ドローン、自動運転、 データ活用で効率化)

とくにスマート農業は期待されています。人手不足を技術で補おうという試みです。

米を運び、届けるしくみ

収穫された米は、どうやってわたしたちのところへ来るのでしょうか。

米の流れ 農家が収穫 ↓ カントリーエレベーター (大型の乾燥・保管施設) ↓ 農業協同組合(JA)や 卸売業者 ↓ 精米工場 ↓ スーパー・米屋 ↓ 食卓

カントリーエレベーターは、地域の米をまとめて乾燥・保管する施設です。品質を均一に保ち、必要な分だけ精米して出荷できます。

米は玄米の状態で保管されます。精米すると味が落ちやすいためです。

玄米 → 精米 → 白米 精米日が新しいほど おいしい → 袋に「精米年月日」が書いてある

お米の袋を見ると、産地・品種・精米日・等級が書かれています。それだけの情報が管理されているということです。

最近は、農家から直接買う方法も広がっています。インターネットで注文したり、産地直売所で買ったり。

直接買う利点 農家側 → 中間費用がかからず収入が増える → 消費者の声が直接届く 買う側 → 生産者が分かる安心感 → 新鮮なものが手に入る

作る人と食べる人が近くなる。これも、農業を支える新しい形です。

つまずきやすいところ

その1 作業の順番があいまい

田おこしと代かきの区別がつかない。
田おこしは水を入れる前、代かきは水を入れて平らにする作業です。順番は田おこし→代かき→田植えです。

その2 中干しの意味が分からない

なぜ水を抜くのか疑問に思う。
土を乾かして根に酸素を届け、丈夫にするためです。ずっと水を張るのがよいわけではありません。

その3 課題を他人事だと思う

農家だけの問題だと考える。
米を食べるのはわたしたちです。食料をどう確保するかは、社会全体の問題です。

やってみよう

Q1 日本が稲作に向いている理由を言いましょう。

A 夏に高温多雨で、稲の生育に適しているからです。水も豊富です。

Q2 中干しの目的は何ですか。

A 根を強くし、土に空気を入れるためです。収穫時の作業もしやすくなります。

Q3 米づくりが抱える課題を2つ言いましょう。

A 消費量の減少後継者不足です。外国産との競争もあります。

Q4 お米の袋を見て、産地と品種を確かめてみましょう。

A どこで、どんな品種が作られているか。地図帳で場所も調べてみてください。

まとめ

おうちの方へ

この単元は、食べ物と社会のつながりを学ぶ入り口です。毎日食べているお米が、どうやって作られているかを知る機会になります。
お米の袋を見るだけでも学習になります。産地、品種、精米日。「新潟のコシヒカリ」と書いてあれば、地図で新潟を確かめる。それだけで知識が生きたものになります。
可能であれば、田んぼを見に行くのがおすすめです。季節によって様子がまったくちがいます。水を張った春、緑が茂る夏、黄金色の秋。同じ田んぼを何度か見ると、1年の流れが実感できます。
農業の課題については、答えのない問題として一緒に考えてみてください。「安い外国産と国産、どちらを選ぶ?」という問いに正解はありませんが、考えること自体が学びになります。