5年 社会 工業生産

工業生産 ── 1台の車は、3万個の部品でできている

工業は、たくさんの人と工場が協力して成り立っています。

工業の種類

工業は、作るものによって分けられます。

分類種類作るもの
重化学工業金属工業鉄、アルミ
機械工業自動車、電気製品、船
化学工業プラスチック、薬、肥料
軽工業食料品工業加工食品、飲料
せんい工業布、衣類
その他紙、印刷、木製品

日本では、機械工業が最も大きな割合を占めています。とくに自動車工業が中心です。

工業の中身は、時代とともに変わってきました。

日本の工業の変化 明治〜戦前 → せんい工業が中心(軽工業) 戦後〜高度経済成長 → 鉄鋼、造船(重化学工業) 現在 → 機械、自動車、電子部品

より高度な技術を要するものへと移ってきたのです。

工業地帯はなぜ海沿いか

日本の工業は、太平洋側の海沿いに集中しています。

太平洋ベルト 関東から九州北部にかけて 帯のように連なる工業地域 主な工業地帯・地域 ・京浜工業地帯(東京・神奈川) ・中京工業地帯(愛知・三重) ・阪神工業地帯(大阪・兵庫) ・北九州工業地域 ・瀬戸内工業地域 ・東海工業地域

なぜ海沿いなのでしょうか。理由ははっきりしています。

海沿いの利点 ① 原料を船で運びこめる → 鉄鉱石、石油、石炭は ほぼ全部輸入 ② 製品を船で運び出せる → 輸出しやすい ③ 広い土地が確保できる → 埋め立て地を作れる ④ 工業用水が得やすい ⑤ 大都市が近く、働く人がいる

いちばん大きいのは①の原料の輸入です。

日本は資源が少ない国です。鉄を作る鉄鉱石も、燃料の石油も、ほとんど輸入しています。船で運ばれてくるので、港のそばに工場を作るのが合理的なのです。

とくに中京工業地帯は、日本一の生産額をほこります。自動車工業が中心で、愛知県豊田市には巨大な自動車工場があります。

自動車ができるまで

自動車工場では、流れ作業(ライン生産)で車が作られます。

自動車ができる流れ ① プレス 鉄板を型で押して形を作る ② 溶接 部品をつなぎ合わせて 車体の形にする → ロボットが多く使われる ③ とそう さび止めと色をぬる → 何層にも重ねる ④ 組み立て エンジン、シート、 窓、タイヤなどを取り付け → 人の手による作業が多い ⑤ 検査 走行テスト、水もれ、 ブレーキなどを確認 ⑥ 出荷

ポイントは、ラインが動き続けることです。車体がベルトコンベアで流れ、各持ち場で決められた作業を行います。

ライン生産の利点 ・同じ作業をくり返すので速い ・品質が安定する ・大量に作れる ライン生産の課題 ・1か所止まると全部止まる ・同じ作業のくり返しで疲れる ・急な変更がしにくい

そして、ロボットと人の分担にも理由があります。

ロボットが担当 ・溶接(火花が危険) ・とそう(塗料が有害) ・重い部品を運ぶ → 危険・重労働・正確さが必要な作業 人が担当 ・細かい部品の取り付け ・配線 ・検査 → 判断や器用さが必要な作業

それぞれの得意なことを分担しているのです。

大工場と中小工場

1台の自動車には、約3万個の部品が使われています。

これらをすべて自動車会社が作っているわけではありません。

部品を作る工場の関係 自動車会社(大工場) ↑ 第一次関連工場 (エンジン部品、シートなど) ↑ 第二次関連工場 (ねじ、ばね、金具など) ↑ 第三次関連工場 → ピラミッドのような構造

この関係を関連工場といいます。多くは中小工場です。

大工場中小工場
働く人300人以上300人未満
工場数の割合約1%約99%
働く人の割合約30%約70%
生産額の割合約50%約50%

工場の99%は中小工場です。日本の工業は、たくさんの小さな工場に支えられているのです。

中小工場には、特別な技術を持つところが多くあります。

中小工場の強み ・世界一の精度で削る技術 ・特殊な材料を扱える ・少量でも作れる ・注文に細かく応じられる → 「その工場にしか作れない部品」 があることも

大工場だけでは、ものづくりは成り立ちません。お互いに支え合う関係なのです。

そして、ジャストインタイムという方式も特徴的です。

ジャストインタイム 必要な部品を、必要なときに、 必要な数だけ届ける 利点:在庫を持たなくてよい 課題:一つの工場が止まると 全体が止まる

地震や災害で部品工場が止まると、自動車工場も止まってしまうのは、このしくみのためです。

工業が抱える課題

日本の工業には、いくつかの課題があります。

① 海外への工場移転 人件費の安い国へ工場を移す ↓ 国内の仕事が減る ↓ 「産業の空洞化」
② 環境への負担 かつては公害が大きな問題に ↓ 規制と技術で改善 ↓ 今は二酸化炭素の削減が課題
③ 後継者不足 中小工場の高齢化 ↓ 技術が受けつがれない ↓ 廃業する工場も

とくに③の技術の継承は深刻です。長年の経験で身につけた技は、簡単には伝わりません。

それでも、新しい取り組みが進んでいます。

・環境にやさしい車の開発 (電気自動車、水素自動車) ・リサイクルしやすい設計 ・工場の省エネルギー化 ・技術のデータ化・映像記録 ・海外への技術輸出

とくに自動車の電動化は、大きな転換点です。エンジンが不要になれば、部品の構成が大きく変わります。関連工場のあり方も変わっていきます。

電気自動車の部品数は、ガソリン車の約3分の2と言われます。エンジンや変速機に関わる部品が要らなくなるからです。それらを作ってきた工場は、新しい仕事を探す必要に迫られます。

一方で、電池やモーターの需要は増えます。減る仕事と増える仕事があるのです。変化に対応できるかどうかが、これからの分かれ目になります。

つまずきやすいところ

その1 工業地帯の位置を丸暗記する

名前と場所だけ覚える。
なぜ海沿いかを理解します。原料の輸入と製品の輸出のためです。

その2 大工場だけで作っていると思う

自動車会社がすべて作ると考える。
部品の多くは関連工場(中小工場)が作っています。工場の99%は中小工場です。

その3 重化学工業と軽工業の区別があいまい

どちらに入るか判断できない。
金属・機械・化学が重化学工業、食料品・せんいなどが軽工業です。

やってみよう

Q1 工業地帯が海沿いにある理由は?

A 原料を船で輸入し、製品を輸出するのに便利だからです。

Q2 自動車工場でロボットが担当する作業は?

A 溶接やとそうなど、危険で正確さが必要な作業です。

Q3 工場全体のうち、中小工場は何%ですか。

A 約99%です。日本の工業は中小工場に支えられています。

Q4 身のまわりの製品の「made in」を調べてみましょう。

A 日本製、中国製、東南アジア製など。どこで作られているか分かります。

Q5 ジャストインタイム方式の利点と課題を言いましょう。

A 利点は在庫を持たなくてよいこと。課題は一つの部品工場が止まると全体が止まることです。災害時にこの弱点が表れます。

まとめ

おうちの方へ

工業生産は、身のまわりのものがどう作られているかを知る単元です。抽象的になりがちなので、実物とのつながりを意識させると理解が深まります。
製品の裏側にある「made in」の表示を見るのは、手軽で効果的な活動です。日本製のものが意外と少ないことに気づくかもしれません。
自動車工場の見学は、多くのメーカーが受け入れています。ラインが動く様子、ロボットの動き。実際に見ると迫力があり、強く印象に残ります。
「1台の車に3万個の部品」という事実は、子どもにとって驚きです。それだけの部品が世界中から集まり、決められた時間に届く。そのしくみのすごさを一緒に考えてみてください。
電気自動車への転換は、今まさに起きている変化です。ニュースで話題になったとき、この学習と結びつけると理解が深まります。