5年生の社会は「世界の中の日本」から始まります。その最初の道具が、地球儀と世界地図です。
教室のうしろに地球儀があり、かべには世界地図がはってあります。同じ世界を表しているのに、なぜ二つも置いてあるのでしょうか。
答えは単純です。どちらも完ぺきではないからです。地球儀は正しいけれど、持ち運べないし、世界全体を一度に見わたせません。世界地図は一目で全部見えるけれど、形や大きさがゆがんでいます。
「地図がゆがんでいる」と言われても、はじめはぴんとこないと思います。教科書の地図がまちがっているなんて、考えたこともないはずです。でも、これは印刷のミスではありません。丸いものを平らにすると、必ずどこかが伸びるという、さけようのない事実です。
みかんの皮をむいて、机の上で平らに広げてみてください。かならずどこかが破れるか、すき間ができます。地球も同じです。
世界地図でいちばん有名なゆがみが、これです。
8倍もちがうのに、地図の上ではほとんど同じ大きさに見えます。理由は、この地図が北や南に行くほど横に引きのばして作られているからです。
なぜ引きのばすかというと、そうすると方位が正しくなるからです。船が「北東へ進む」と決めたとき、地図の上でまっすぐな線を引けます。海をわたる人にとっては、面積が正しいことより、進む向きが正しいことのほうが大事でした。
つまり地図は、何かを正しくするために、別の何かをあきらめているのです。この作り方をメルカトル図法といいます。
世界地図が同時に正しくできるのは、次の三つのうち、ふつう一つだけです。
だから「どの地図が正しいですか」という問いには、答えがありません。何を調べたいかで、使う地図が変わるだけです。
広さをくらべたいときはモルワイデ図法。日本から各国までの距離や方角を知りたいときは、日本を中心にした正距方位図法。そして本当の形をたしかめたいときは、地球儀を回します。
「日本はどこですか」と聞かれて、「アジアのあたり」では、相手に正確には伝わりません。世界のどこであっても一つに決まる言い方が、緯度と経度です。
覚え方はこうです。緯線は「横」、経線は「たて」。「緯」の字はもともと横糸、「経」は縦糸を表します。布を織るときの糸の名前が、そのまま地球にも使われているのです。
二つの数がそろって、はじめて場所が一つに決まります。北緯35度だけでは、その高さでぐるりと一周した線のどこかとしか分かりません。東経135度だけでも同じです。たてとよこ、両方言って初めて交わる一点になるのは、算数のグラフとまったく同じ考え方です。
世界の骨組みは、大きな陸六つと、大きな海三つでできています。
ここで気をつけたいのが漢字です。太平洋の「太」には点がつき、大西洋の「大」には点がつきません。テストでよくまちがえるところです。「太平洋はふとっている」と覚えてしまうのが早道です。
ヨーロッパとアジアは、地図では別の場所のように見えますが、陸は一つながりです。だから合わせてユーラシアと呼びます。「ヨーロッパ+アジア」を縮めた名前です。
①「北が上」だと思いこむ。 地図の北が上なのは、そう決めた人が多いというだけの約束です。地球儀を逆さに持てば、南が上になります。オーストラリアでは、南を上にした世界地図が売られていることもあります。上下は、地球そのものの性質ではありません。
② 緯度と経度がごちゃまぜになる。 「北緯」「南緯」は南北、「東経」「西経」は東西。北と南がつくほうが緯度、東と西がつくほうが経度、と結びつけてしまえば混乱しません。
③ 地図の上のきょりを、そのまま信じる。 世界地図の上で日本からアメリカまで定規ではかっても、本当の距離にはなりません。飛行機が北まわりで飛ぶのは遠回りに見えて、地球儀の上では最短だからです。ひもを地球儀に当ててたしかめると、一度で納得できます。
④ 赤道が通る国を、なんとなくで答える。 赤道はブラジル・ケニア・インドネシアなどを通ります。日本ははるか北にあり、赤道は通りません。
Q1 緯度と経度は、それぞれ何を0度としてはかりますか。
A 緯度は赤道を0度、経度はロンドンを通る線を0度としてはかります。
Q2 メルカトル図法の地図で、グリーンランドが実際よりずっと大きく見えるのはなぜですか。
A 方位を正しくするために、北や南ほど横に引きのばしているからです。実際の面積は南アメリカの8分の1以下です。
Q3 六大陸のうち、いちばん広いものといちばんせまいものは。
A いちばん広いのがユーラシア大陸、いちばんせまいのがオーストラリア大陸です。
Q4 地球儀にひもを当てて、日本から行ってみたい国までの最短の道すじを調べてみましょう。
A そのひもの通り道を、こんどは世界地図の上でなぞってみてください。まっすぐにはならないはずです。そのちがいが、平らな地図のゆがみそのものです。
5年生の社会は、日本国内の学習から一気に世界へ視野が広がります。その入口がこの単元です。
地球儀が家にあれば、それだけで理解の質が変わります。高価なものは必要ありません。ひもを一本そえて、「ここからここまで、いちばん近い道は?」と聞いてみてください。
地図のゆがみは、大人でも知らないことが多い話題です。「グリーンランドは本当は小さい」と子どもから聞かされたら、ぜひ驚いてみせてください。教えた側になる経験が、そのまま定着につながります。
緯度・経度は、天気予報の震源地の表示や、地図アプリの位置情報でも日常的に使われています。実物を見せると「学校の話」で終わりません。
なお、どの図法がすぐれているかを覚える必要はありません。何を優先し、何をあきらめた地図なのかを考える習慣のほうが、この先ずっと役に立ちます。