5年 社会 森林とわたしたちのくらし

森林とわたしたちのくらし ── 木を育て、山を守るしごと

日本の国土のおよそ3分の2は森林です。その森を、だれがどうやって守っているのでしょうか。

日本は「森の国」

日本の国土面積のうち、森林がしめる割合はとても高いことで知られています。

日本の森林面積の割合 国土全体 … 約3780万ha 森林 … 約2500万ha → 国土のおよそ「3分の2」が森林 → 世界の中でも森林が多い国のひとつ

山が多く、雨がたくさん降る日本の気候は、木がよく育つ環境だからです。

森林には、大きく分けて2つの種類があります。

種類特徴
天然林人の手を加えず、自然にできた森
人工林人が木を植えて育てた森(スギ・ヒノキなど)

日本の森林のうち、約4割が人工林です。これは、木材を得るために先人たちが植え育ててきたものです。

木を育てるしごと(林業)

木材にするための木を植え、育て、切り出す仕事を林業といいます。

1本の木が使えるようになるまでには、長い年月と多くの手間がかかります。

時期作業内容
植林苗木を植える山の斜面に苗を1本ずつ植える
下草がり雑草をかる苗が雑草に負けないよう、数年間くり返す
枝打ち余分な枝を切るまっすぐで節のない木材にする
間伐木を間引く混みすぎた木を一部切り、光を入れる
伐採木を切り出す50年前後育った木を切って出荷

とくに大事なのが「間伐」です。

間伐のはたらき 木が混みすぎたまま育てると ↓ ・日光が地面まで届かない ・木が細く弱くなる ・下草が育たず土がむき出しに ↓ 一部の木を切って間引く(間伐) ↓ ・残った木に日光と栄養がいきわたる ・下草が育ち、土が安定する ・太くじょうぶな木に育つ

間伐をしないと、森全体が弱ってしまいます。木を切ることが、森を守ることにもなるのです。

1本の木が製品として出荷されるまでには、30〜50年という長い年月がかかります。今切り出している木は、祖父母の世代が植えたものかもしれません。

森林が果たす役割

森林は、木材を生み出すだけでなく、わたしたちのくらしをいくつもの面で支えています。

森林の主な役割 ① 水源涵養(すいげんかんよう) → 雨水を土にたくわえ、少しずつ流す → 「緑のダム」とよばれる ② 山くずれ・洪水の防止 → 木の根が土をつなぎとめる ③ 二酸化炭素の吸収 → 地球温暖化をやわらげる ④ 生き物のすみか → 多様な動植物を育てる ⑤ やすらぎの場 → 登山、キャンプ、森林浴

とくに「緑のダム」としてのはたらきは重要です。

緑のダムのしくみ 雨が降る ↓ 森の土(落ち葉が積もった層)に 水がゆっくりしみこむ ↓ 少しずつ川に流れ出る ↓ ・大雨のときの急な増水を防ぐ ・晴れが続いても川の水が絶えない

もし森林がなければ、雨水は一気に川へ流れこみ、洪水が起きやすくなります。逆に、晴天が続くと川の水がすぐに減ってしまいます。森林があることで、水の量が安定するのです。

林業が抱える課題

森林を守り育てる林業ですが、いくつもの問題を抱えています。

① 外国産木材との競争 1960年代、木材の輸入が自由化 ↓ 外国産木材は安く、大量に入ってくる ↓ 国産木材が売れにくくなった ↓ 木材の自給率が大きく下がった時期も

現在は、国産木材を見直す動きが広がり、自給率は少しずつ回復しています。

② 働く人の高齢化と減少 林業で働く人の数 → 大きく減っている 理由 ・急な斜面での重労働 ・危険な作業(伐採・運搬) ・収入が不安定
③ 手入れが行き届かない森が増える 働く人が減る ↓ 間伐や下草がりができない ↓ 森が荒れる ↓ 災害に弱い森になる

木材が売れず、働く人も減ると、森の手入れそのものができなくなるという悪循環におちいってしまいます。

森林を守るための取り組み

こうした課題に対して、さまざまな工夫が行われています。

主な取り組み ・国産木材の利用をすすめる (学校や公共施設に国産木材を使う) ・林業機械の導入 (高性能な機械で作業の負担を減らす) ・木材のブランド化 (地域の木材に名前をつけて売り出す) ・森林ボランティアの受け入れ (間伐体験などで一般の人も参加) ・森林環境税 (国民みんなで森林整備を支える新しいしくみ)

とくに「森林環境税」は、2024年度から国内に住むすべての人が納めるしくみとして始まりました。都市に住む人も、山を持たない人も、森林を守るための費用を分担するという考え方です。

森林は山に住む人だけのものではありません。水や空気、災害への強さなど、都市に住む人にも大きな恵みをもたらしています。だからこそ、社会全体で支えるという発想が広がっているのです。

また、身近な買い物にも森林を守るヒントがあります。木材や紙の商品には、「きちんと管理された森から作られた」ことを示すマークがついているものがあります。こうしたマークがついた商品を選ぶことも、消費者にできる森林保全のひとつの形です。学校の机や椅子、ノートの紙も、もとをたどれば森林から来ています。ふだん意識しない身のまわりの製品と森を結びつけて考えると、この単元の学びがぐっと実感のあるものになります。

つまずきやすいところ

その1 間伐=木を減らして悪いことと思ってしまう

木を切ることを悪いことだと考えがち。
間伐は森全体を健康に保つための手入れです。混みすぎた木を減らすことで、残った木が丈夫に育ちます。

その2 天然林と人工林の違いがあいまい

どちらも同じ「森」に見えてしまう。
天然林は自然にできた森、人工林は人が植えて育てた森です。日本の森林の約4割は人工林です。

その3 森林の役割を「木材」だけだと思う

森は木材をとる場所という印象だけを持ちがち。
実際は水をたくわえる・災害を防ぐ・二酸化炭素を吸収するなど、多くの役割があります。

その4 林業の課題を昔の話だと思う

木材の輸入自由化は昔の出来事なので、今は関係ないと考えがち。
働く人の高齢化や手入れの行き届かない森は今まさに続いている課題です。森林環境税のような新しいしくみが最近始まったのも、そのためです。

やってみよう

Q1 日本の国土のうち、森林がしめる割合はどれくらいですか。

A およそ3分の2です。

Q2 間伐をするのはなぜですか。

A 木が混みすぎるのを防ぎ、残った木に日光と栄養をいきわたらせるためです。

Q3 森林が「緑のダム」とよばれる理由を説明しましょう。

A 雨水を土にたくわえ、少しずつ川に流すことで洪水や水不足を防ぐからです。

Q4 林業が抱える課題を2つ言いましょう。

A 外国産木材との競争働く人の高齢化・減少です。

まとめ

おうちの方へ

この単元は、直接目にする機会が少ない「森」というものを、社会全体の資源として捉え直す学習です。木材としての価値だけでなく、水や災害防止といった目に見えにくい恵みに気づけるかがポイントになります。
近くに植林地や森林公園があれば、実際に歩いてみるのがおすすめです。人工林の木がまっすぐ並んで植えられている様子や、間伐された跡を見ると、「育てられている森」という実感がわきます。
お住まいの地域に木造の学校や公共施設があれば、「これは国産の木かな?」と話題にしてみるのもよい導入になります。森林環境税のように、都市に住んでいても森を支える仕組みがあることも、社会科らしい気づきにつながります。