5年 社会 水産業

水産業 ── とる漁業から、育てる漁業へ

日本の海はなぜ豊かなのか。そして、なぜとれる魚が減ったのか。

日本の海が豊かな理由

日本の周りの海には、たくさんの魚がいます。それには3つの理由があります。

理由1:暖流と寒流がぶつかる

日本近海の海流 暖流:黒潮(日本海流) 対馬海流 寒流:親潮(千島海流) リマン海流 暖流と寒流がぶつかるところ = 潮目(しおめ) = よい漁場

なぜ潮目がよい漁場なのでしょうか。

寒流には栄養分が多い ↓ プランクトンが大量に発生 ↓ それを食べる小魚が集まる ↓ さらに大きな魚が集まる → 生き物の連鎖ができる

とくに三陸沖は、世界三大漁場の一つに数えられるほどの好漁場です。

理由2:大陸だなが広い

大陸だな 海岸から続く、 水深200mくらいまでの浅い海 ・日光が届く ・海そうが育つ ・魚の産卵場所になる → 魚が集まりやすい

理由3:海の面積が広い

4年生と前の単元で学んだ通り、日本のEEZは世界6位です。それだけ漁ができる範囲が広いのです。

漁業の種類

漁業は、行く距離で分けられます。

種類範囲期間とれるもの
沿岸漁業海岸近く日帰りいわし、あじ、たい
沖合漁業数十〜200km数日さば、いわし、いか
遠洋漁業遠い外国の海数か月〜1年まぐろ、かつお

それぞれの漁獲量は、時代とともに大きく変化しました。

遠洋漁業の変化 1970年代まで … 最も盛んだった ↓ 1970年代後半 各国が200海里水域を設定 → 他国の海で漁ができなくなった ↓ 石油危機で燃料費が高騰 ↓ 大きく減少

200海里水域(EEZ)の設定は、日本の漁業を大きく変えました。それまで自由に漁をしていた海が、他国の管理下に入ったのです。

その後、沖合漁業が中心になりましたが、それも魚の減少で厳しくなっています。

なぜ魚が減ったのか

日本の漁獲量は、ピーク時の3分の1以下になっています。

漁獲量の変化 1984年 … 約1282万トン(ピーク) 現在 … 約400万トン以下

原因は複数あります。

① とりすぎ(乱獲) ・小さい魚まで とってしまう ・卵を産む前にとる → 次の世代が育たない ② 環境の変化 ・海水温の上昇 ・魚のすむ場所の変化 ・海の汚染 ③ 200海里水域の設定 ・遠洋漁業ができなくなった ④ 漁業をする人の減少 ・高齢化と後継者不足

とくに①のとりすぎは、人間が原因です。

とりすぎの悪循環 魚が減る ↓ 収入が減る ↓ もっととろうとする ↓ さらに減る

この悪循環を止めるため、ルール作りが進められています。

資源を守るルール ・漁獲量の上限を決める ・とってよい大きさを決める ・禁漁期間を設ける ・網の目を大きくする (小さい魚は逃がす)

今とらないことで、将来もとれるようにする。この考え方が広まっています。

育てる漁業

とる量に限りがあるなら、育てればよい。そう考えて生まれたのが「育てる漁業」です。

養殖漁業栽培漁業
やり方最後まで人が育てる途中で海に放す
場所いけす、水そう育ててから自然の海へ
ぶり、たい、のり、かき、真珠さけ、ひらめ、まだい
利点計画的に生産できる自然の力も使える

養殖は、卵から出荷まですべて人の管理下で行います。

養殖の利点 ・安定して出荷できる ・大きさや品質をそろえられる ・とる手間がかからない 養殖の課題 ・えさ代がかかる ・病気が広がりやすい ・水が汚れる ・自然の魚のえさを使うことも

栽培漁業は、少しちがう考え方です。

栽培漁業のしくみ 卵から稚魚まで人が育てる ↓(いちばん死にやすい時期を守る) ある程度大きくなったら海へ放す ↓ 自然の中で成長 ↓ 大きくなったところをとる

弱い時期だけ守るという発想です。えさ代がかからず、自然に近い形で育ちます。

さけの放流は、この代表例です。川で生まれたさけの稚魚を育てて放し、数年後に戻ってきたところをとります。

食卓に届くまで

とれた魚は、どうやってわたしたちのところへ来るのでしょうか。

魚の流れ 漁港で水揚げ ↓ せり(市場で値段が決まる) ↓ 仲買人が買う ↓ トラックで各地へ ↓ スーパー・魚屋 ↓ 食卓

この流れで大切なのが鮮度を保つことです。

鮮度を保つ工夫 ・とった直後に氷でしめる ・保冷トラックで運ぶ ・冷凍技術(急速冷凍) ・活魚車(生きたまま運ぶ) ・航空機で空輸

コールドチェーンといって、産地から店まで冷たいまま運ぶしくみが整っています。

だから、海のない内陸の県でも新鮮な魚が食べられるのです。

そして、加工も重要な産業です。

水産加工品 ・かまぼこ、ちくわ ・干物、塩蔵品 ・缶詰 ・削り節 → 保存がきく → 別の商品として価値が上がる

とった魚をそのまま売るだけでなく、加工して価値を高める取り組みも進んでいます。

輸入と自給率

日本は、魚をたくさん輸入しています。

魚介類の自給率 1964年 … 約113%(輸出もしていた) ↓ 現在 … 約55% → 約半分を輸入に頼っている

なぜ輸入が増えたのでしょうか。

・国内の漁獲量が減った ・外国産のほうが安い ・日本人が好む魚(さけ、えび、まぐろ)が 外国でとれる ・輸送と冷凍の技術が進んだ

スーパーで見る魚を確かめると、チリ産のさけ、ベトナム産のえび、ノルウェー産のさばなど、世界中から来ていることが分かります。

一方で、日本から輸出している魚もあります。ほたてやぶりは、海外で人気があります。

ここで考えたいことがあります。

世界的な問題 ・世界人口の増加 ・健康志向で魚の需要が増加 ・各国が魚を求めて競争 → 「買い負け」することも (他国が高く買うので 日本に入ってこない)

これまで、日本はお金を出せば魚が買えました。しかし、それが当たり前ではなくなりつつあります

だからこそ、国内で育てる漁業の重要性が高まっています。とる漁業から育てる漁業へ、という流れには、こうした背景もあるのです。

つまずきやすいところ

その1 養殖と栽培漁業を混同する

どちらも「育てる」ので区別がつかない。
養殖は最後まで人が育てる、栽培漁業は途中で海に放すのがちがいです。

その2 潮目がなぜよい漁場か分からない

ただ暖流と寒流がぶつかる場所だと覚える。
寒流が運ぶ栄養分でプランクトンが大量に発生するためです。食べ物があるところに生き物が集まります。

その3 漁獲量減少の原因を1つだけ考える

「とりすぎ」だけだと思う。
環境変化・200海里・後継者不足など複数の原因が重なっています。

やってみよう

Q1 潮目がよい漁場になるのはなぜですか。

A 寒流の栄養分でプランクトンが増え、それを求めて魚が集まるからです。

Q2 養殖漁業と栽培漁業のちがいは?

A 養殖は最後まで育てる、栽培漁業は途中で海に放す点がちがいます。

Q3 遠洋漁業が減った理由を言いましょう。

A 各国が200海里水域を設定し、他国の海で漁ができなくなったためです。

Q4 スーパーで魚の産地を見て、地図で確かめてみましょう。

A 国産か輸入か、養殖か天然かも書かれています。表示を読む練習にもなります。

まとめ

おうちの方へ

水産業は、日本の食文化と直結する内容です。魚を食べる機会に、この学習を思い出させてあげてください。
スーパーの魚売り場は、生きた教材です。産地表示を見れば、どこでとれたかが分かります。「養殖」「天然」の表示も、この単元の内容そのものです。
「なぜ魚が減ったのか」という問いは、環境問題の入り口でもあります。とりすぎ、海水温の上昇、汚染。どれも人間の活動と関わっています。
「持続可能」という考え方も、この単元で自然に学べます。今とらないことで将来もとれる。この発想は、他の資源にも当てはまります。
回転寿司や魚料理を食べるとき、「これはどこから来たんだろう」と話題にするだけでも、学びが深まります。