5年 社会 環境を守る

環境を守る ── 公害の反省から、守るくらしへ

工業がさかんになり、くらしは便利になりました。しかしそのかげで、空気や水がよごれ、人びとの健康がおびやかされる公害が起きました。その反省から、日本は環境を守るしくみを整えてきました。その歩みを見ていきましょう。

公害ってなに?

公害とは、工場のけむりやはい水などによって、空気・水・土などがよごされ、多くの人の健康やくらしがそこなわれる問題のことです。

日本は、1950年代の後半から1970年ごろにかけて、工業が急に発展しました。これを高度経済成長といいます。国は豊かになりましたが、そのいっぽうで、工場が有害なものをじゅうぶんに処理せずに出したため、各地で深刻な公害が起きました。よごれた空気を吸ったり、よごれた水や魚を口にしたりして、体をこわす人が多く出たのです。便利さや豊かさを追い求めるあまり、人の健康や自然を後回しにしてしまった——公害は、その大きな反省を、社会全体につきつけました。

四大公害病

とくに被害が大きかった4つの公害は、「四大公害病」とよばれ、社会に大きなえいきょうをあたえました。

公害病おもな場所原因
水俣病熊本県・水俣湾工場はい水中の有害な物質
新潟水俣病新潟県・阿賀野川同じく有害な物質
イタイイタイ病富山県・神通川鉱山から出た有害な物質
四日市ぜんそく三重県・四日市市工場のけむり(大気汚染)

水俣病やイタイイタイ病は、工場や鉱山が出した有害な物質が、川や海の水、魚、農作物にたまり、それを口にした人びとの体をむしばみました。四日市ぜんそくは、石油化学工場が集まる地いきで、工場のけむりによって空気がよごれ、多くの人がぜんそくに苦しみました。これらの公害病では、被害を受けた人びとが会社や国を相手に裁判を起こし、やがて会社の責任がみとめられました。この経験が、環境を守る法律をつくる、大きなきっかけになったのです。

環境を守るしくみ

公害の反省から、国や地方は、環境を守るためのさまざまなしくみを整えていきました。

国は、公害を防ぐための法律を定め、工場が出すけむりやはい水に、きびしいきまり(きじゅん)をもうけました。有害なものを勝手に出せないようにしたのです。のちに、これらをまとめた「環境基本法」がつくられ、環境を守ることが国の大切な方針となりました。地方の都道府県や市町村も、その地いきに合った条例(きまり)をつくり、川や空気を見はっています。また、環境の問題に取り組む役所として、環境省もつくられました。こうしたしくみのおかげで、一度は死の海とまでいわれた場所の水質が回復するなど、少しずつ環境がよみがえってきています。

回復への努力

よごれてしまった自然を元にもどすには、長い年月と、多くの人の努力が必要です。

公害でよごれた海や川では、有害なものを取りのぞいたり、水をきれいにする設備をつくったりする取り組みが、長年つづけられてきました。工場も、はい水やけむりをきれいにしてから外に出すよう、多くの費用をかけて設備を整えました。人びとや会社、役所が協力した結果、魚がもどってきた海や、水遊びができるまで回復した川もあります。いっぽうで、公害病で健康を失った人びとの苦しみは、今も完全にはなくなっていません。だからこそ、「同じあやまちをくり返さない」という思いが、環境を守る取り組みの土台になっているのです。

公害の経験を語りつぐ

公害の被害を受けた地いきでは、二度と同じことをくり返さないために、その経験を後の世代に伝える取り組みが行われています。

たとえば水俣市には、水俣病の歴史や、被害を受けた人びとの思いを伝える資料館があり、多くの人が学びにおとずれます。当時のことを知る人が、自分の体験を語りつぐ活動もつづけられています。公害は、遠いむかしの話ではなく、便利さを求める社会が、いつでも起こしうる問題です。だからこそ、「なぜ公害が起きたのか」「どうすれば防げるのか」を、事実として正しく知り、忘れずに伝えていくことが大切にされています。過去の苦しい経験から学ぶことは、これからのよりよい社会をつくる力になります。わたしたちも、こうした歴史をしっかり受けとめたいものです。

これからの環境を守る

環境の問題は、公害だけではありません。今は、より広い、地球全体の環境を守ることが大切になっています。

地球温暖化や、ごみの問題、資源の使いすぎなど、わたしたちのくらしは、地球全体の環境とつながっています。ごみを減らし、資源をくり返し使う「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」の取り組みや、電気やエネルギーをむだにしないくふうが、家庭や学校でも広がっています。「ごみのしょりと利用」の単元で学んだことも、この環境を守る取り組みの一つです。便利さと、環境を守ることの両方を、どうやって大切にしていくか。これは、これからの社会を生きるわたしたち一人ひとりが、考えつづけていく課題です。まずは、自分にできる小さなことから始めてみましょう。

ここが大事

その1 公害は工業の発展のかげで起きた

高度経済成長で豊かになる一方、公害が各地で起きました。
便利さと引きかえに、健康や自然が害されたのです。

その2 四大公害病が社会を動かした

被害を受けた人びとの裁判が、会社の責任をみとめさせました。
これが環境を守る法律づくりのきっかけになりました。

その3 守るしくみと努力で回復してきた

法律・条例・設備の整備で、環境は少しずつよみがえっています。
回復には長い年月と多くの努力が必要です。

たしかめよう

Q1 工場のけむりやはい水などで環境がよごれ、健康が害される問題を何という?

A 公害

Q2 四大公害病を1つあげましょう。

A 水俣病(ほかに新潟水俣病・イタイイタイ病・四日市ぜんそく)

Q3 環境を守ることを国の方針として定めた法律は?

A 環境基本法

Q4 ごみを減らし資源をくり返し使う取り組みを何という?

A 3R(リデュース・リユース・リサイクル)

まとめ

おうちの方へ

「環境を守る」は、高度経済成長という日本の発展の光と影を通して、社会のしくみと自分たちのくらしを結びつけて考える単元です。四大公害病は、地名・原因・被害を丸暗記するよりも、「なぜ起きたのか」「その後、社会はどう変わったのか」という流れで理解すると、記憶に残りやすくなります。ご家庭では、住んでいる地域の川や海がどう守られているか、ごみの分別やリサイクルがなぜ大切かを、身近な話題として話し合うのがおすすめです。ニュースで環境の話題が出たときに、「これも環境を守る取り組みだね」と声をかけると、学びが日常とつながります。「工業生産(5年)」「ごみのしょりと利用(4年)」の記事とあわせて読むと、産業・くらし・環境の関係が立体的に見えてきます。公害の歴史は重いテーマですが、事実を正しく知ることが、これからの環境を守る力につながります。お子さんが関心を持ったら、地域の資料館や環境の取り組みを一緒に調べてみるのもよい学びになります。